[news:238] 原点の夏 (2011/08/23) 一覧へ
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 井上哲士です。

 八月もあとわずか。秋のように涼しかった昨日でしたが今日は暑さが戻りました。そ
れでも確実に夏が過ぎようとしています。いかがお過ごしですか。

 福島原発の大事故の被害を目の当たりにし、国会でも原発徹底を求めて政府をただす
中で迎えたこの夏。今年の夏は、自分の原点を見つめなおそうと決めていました。

 そんな私の思いと一緒だったのが、八月九日に田上長崎市長が読み上げた長崎平和宣言
の「『ノーモア・ヒバクシャ』を訴えてきた被爆国の私たちが、どうして再び放射能の
恐怖に脅えることになってしまったのでしょうか」という一節でした。

 そんな思いを持ちながらこの夏、八月六日の広島平和祈念式典に参列し、長崎で原爆病
院や原爆老人ホームを訪問。十九日には、再上映運動が行われている映画「ひろしま」
を渋谷の映画館で鑑賞しました。

 一九五三年製作のこの映画。原作は文集「原爆の子」です。広島の市民ら九万人近く
が出演し、被爆直後の惨状を再現しています。その舞台の一つが、私の母校、広島国泰
寺高校の前身の広島一中です。

 高校一年の時に学校の集団鑑賞でこの映画を見た時、昔話だった原爆が現実のものと
して迫ってきました。先輩たちが、崩れた校舎の下敷きになり、声をかけあいながらも
亡くなっていく様子、私たちが愛唱していた応援歌である当時の校歌「鯉城の夕べ」を
うたって励ましあう姿、人間の姿で死ぬことすらできなかった無念――「なぜこんなこ
とが許されたのか」「理不尽なことには決して屈せず、立ち向かう生き方をしよう」
――十六の夏にこう誓いました。

 ぜひもう一度あの映画を見たいと思っていましたが、昨年から再上映の運動、英語
版をつくり世界に広げる運動が進められてきました。おかげで、福島で再びヒバクシャ
を出してしまったこの夏に、三十七年ぶりに見ることができました。

 誓いも新たに、命と尊厳を脅かす理不尽なもの、核兵器も原発もゼロを目指して訴え
ています。ノーモア・ヒバクシャ。

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