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井上哲士ONLINE
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2001年11月6日

法務委員会
「司法制度改革推進法」で質問

  • より国民に身近な裁判や裁判所をつくるため、司法制度改革推進本部の体制立ち上げに際して、官僚主導ではない顧問会議や検討会の人選やリアルタイムでの公開を強くもとめる。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 私たちは、この司法制度の改革に二つの流れがあると思っております。一つは、裁判と裁判所をもっと国民のためのもの、国民に身近にしようという流れ、そしてもう一つは、アメリカや日本の大企業の活動にとって裁判がもっと使いやすい、弱肉強食の経済活動の制約にならないように司法制度を改めていこう、こういう流れがあると思っております。

 審議会の意見書はこういう二つの流れのいわばせめぎ合いにあると思うんですが、ところが法案の第一条、第二条の目的や理念に、規制緩和への対応は強調するけれども、基本的人権、社会正義の実現という言葉がないということが繰り返し問題になってまいりました。大臣は、それは前提だ、だから新たな問題についてだけ法案で書き込んだんだという答弁をされております。

 しかしながら、これまでは問題はなかったけれども、今後新たな問題があるからということでこの司法制度改革は出てきたのではないと思うんですね。やはり、多くの国民が今日の司法のもとで基本的な人権や社会正義が十分に実現していないと考えているからこそ、この改革が大きく声が広がっていると思うんです。

 大臣は、前提と言われています基本的人権の擁護と社会正義の実現というのが今時の司法のもとで十分に保障されていると、そういう認識でしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 我が国の司法制度につきましては、これまで基本的人権の擁護や社会正義の実現を含む国民のニーズにこたえるべく、司法関係者が大変努力を重ねてこられたというふうに認識しておりますが、国民の各層からその改革についてさまざまな提言がなされているということも十分に承知いたしております。

 司法制度改革審議会の意見におきましては、法曹三者は我が国の司法制度改革が社会経済の変化等に柔軟に対応してきたとは言いがたいことについて真摯に反省しなくてはならないという指摘もしておられるところでございます。

 政府といたしましては、これらの意見を十分に踏まえまして、司法制度改革の実現に全力を挙げて取り組み、国民のニーズにこたえ得る司法制度の構築に向けて努力してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 同趣旨で最高裁にも認識を問いたいんです。

 衆議院では、裁判所あるいは司法制度というものは基本的に国民のニーズに対応し得る水準を保ってきたと、こういう答弁がありました。しかし、今、大臣も読み上げられましたし、また意見書ではこういう指摘もあります。「国民の権利・自由の保障を最終的に担保し、憲法を頂点とする法秩序を維持することを期待されたのである。裁判所がこの期待に応えてきたかについては、必ずしも十分なものではなかったという評価も少なくない。」と、こう指摘されているわけですが、最高裁としては、意見書にも書き込まれたこの評価をどう受けとめていらっしゃるのでしょうか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 審議会の意見書に、委員御指摘のような裁判所の評価についての記載があることはもとより承知しているところでございます。

 裁判所は、戦後のさまざまな社会状況の変化の中で、適正、迅速な紛争の解決、あるいはルールに基づく公正な解決という機能を果たすように努めてきたところであり、基本的には国民のニーズに対応することができてきたと言えるのではないかと考えております。

 しかし、この間、社会経済状況や国民の意識は大きく変化してまいりました。そのような中で、司法制度についても、大規模な訴訟あるいは専門的訴訟がなかなか終わらないとか、あるいは司法へのアクセスがしにくい、質、量ともに豊かな法曹が不足している、あるいは国民と司法との距離というものが大きいのではないか、そういった問題点が強く指摘されているところであります。

 これらの点につきましては、裁判所としてもかねて同様の問題意識を有してきたところであり、そのことは、審議会が始まりました当初の裁判所のプレゼンテーションにおいても明らかにしたところであります。

 審議会の意見書は、このような問題点を踏まえ、あるべき司法の将来像という視点からさまざまな改革の提言を行っておりますけれども、最高裁としては、改革の方向性を同じくするものという受けとめであり、このような考えを前提に、現在の司法のあり方に対する批判、評価というものを十分に踏まえた上で、最高裁として今回の司法制度改革に積極的に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

井上哲士君

 不十分だという国民の声を受けとめるということであれば、やはりこれは重要な目的、理念として、基本的人権や社会正義の実現ということをしっかりと私はやはり法案にも書き込むべきだと思うんです。やはり、これを明確にしておきませんと、前提であるはずのこういう問題が今後の具体化の中で横に置かれてしまうんじゃないか、こういう危惧の声もあるわけで、改めてこの点を強く求めておきます。

 それで、審議会が国民各層の代表も入れ、全面公開をし、国民の意見を聞いて意見書を出されました。しかし、多くの大事な問題は今後の検討にゆだねているということになっています。ですから、一層今後国民に根差した議論が必要なわけですが、これが具体化の作業が官僚中心ということになりますと、これまでの努力も台なしになるということになります。その点でも、国民の参加と公開についてしっかり法案にも明記をしていくことが私たちは必要だと思っているんです。

 衆議院では、日本共産党と社民党で修正案も出しました。顧問会議についても、法案に書き込んで、法曹三者や学識経験者、使用者、労働者、消費者や訴訟当事者、こういう者で構成をし、国民の声を反映させるような顧問会議にするべきだ、こういう提案をしてまいりました。

 ぜひ参議院でも提案をし、賛同いただきたいと思っているわけですが、こういう幅広い人々を顧問会議に入れて構成をさせていくという点で、大臣の御所見を伺いたいと思います。

国務大臣(森山眞弓君)

 本部に設置を予定しております顧問会議やテーマごとに検討をしていただく検討会などにつきまして、そのメンバーについては多くの民間人に参加していただくということを考えておりまして、これも当然のことと考えております。

 それぞれの役割に照らして適任の方にお願いできますように、その構成にも十分留意しつつ、今後人選が行われていくものと考えております。

井上哲士君

 これは確認になるんですが、顧問会議のメンバーというのはどういう手順で決めていくことになるんでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 今後それを検討してまいるところでございますが、本部におきまして適切に人選を行っていただけるものと思っております。

井上哲士君

 では、検討会のメンバーの方は、いつ、だれが決めるのか。そして、学者、実務者、一般有識者ということが述べられておりますが、いわゆるユーザーなども含まれるということでよろしいんでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 御指摘の点も踏まえまして、本部の方において人選されていくものと思っております。

井上哲士君

 ユーザーも含まれるということで確認をしてよろしいんですね。

政府参考人(樋渡利秋君)

 現段階できっちりとお答えするわけにはまいらないのでございますが、当然にそれも含めまして検討されていくものと思っております。

井上哲士君

 検討会については、意見交換を行いながら事務局と一体となって立案作業を進めると、こういう答弁がされております。やはり、これが事務局、官僚主導になるんじゃないかという懸念の声もお聞きをします。事務局が出してきたものを追認するような形になれば、これは従来型で全く官僚主導ということになるわけです。

 そうならないためにはかなりの頻度も必要かと思うんです。司法制度改革審議会も二年間で六十三回という大変な頻度で行われたわけですが、そういう会合の頻度も含めて、この検討会と事務局が一体で作業をするということをもう少し具体的に御説明願いたいと思います。

政府参考人(樋渡利秋君)

 検討会におきましては、これを構成していただきます学者、実務家、有識者等と事務局員とが相互に意見交換等を行い、協力をしつつ立案作業を進めていくことを考えております。

 検討会は、三年間の本部設置期限内に必要な立案作業を行うという観点から、所要の頻度、これが相当程度といいますかどうか、とにかく所要の頻度を重ねて開催していく必要があるというふうに考えております。

井上哲士君

 これは本当に官僚主導にならないようにお願いをしたいわけですが、検討会が事務局のいわゆる下にあって、いろいろ検討はするけれども決定は事務局がしていく、こうなれば結局やはり官僚主導ということになります。

 衆議院の審議の中でも、例えば裁判員の数や評決方式をどうするのかという質問に対しては、慎重に検討会等におきまして結論を出していきたいと、こういう答弁もされておりますが、それぞれの問題を検討して、基本的な結論というのはこの検討会の場で出していくんだと、こう認識をしてよろしいでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 改革の立案の責任は本部、内閣にあるというふうに思っておりますが、検討会を開催いたしましてとことん検討していただきまして、その検討結果が反映されるものというふうに思っております。

井上哲士君

 それでは次に、いわゆる審議の参加、公開という問題をお聞きしますが、衆議院の参考人の質疑の中でも、国民が審議の内容を見詰めているということのもたらした緊張感ということを参考人も述べておられます。このリアルタイムの報道で非常に関心も高まった、それが実りある意見書につながったということが口々に述べられているわけであります。

 まず、大臣に、司法制度改革審議会をまさにリアルタイムで公開をしたという、このことについてどういう評価をされているでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 司法制度改革審議会における議事が大変大幅に公開されましたということが国民の皆さんが高い関心と期待を持ってその審議を見守られることになった大きな要因になっているというふうに思います。ですから、今度つくっていただきます司法制度改革推進本部におきましても、顧問会議とか検討会とかそのような会議の議事の公開につきましては、そこに集まっていただくメンバーの方々の御意見を伺いながら、できるだけ公開の努力がなされるように、その必要があるものはぜひそうしていきたいというふうに考えております。

井上哲士君

 先ほどの質問にもあったわけですが、大変大事な問題なので念押しということになるわけですが、司法制度改革審議会も最初は委員の合意がならずにリアルタイムの公開ではありませんでした。途中からなったわけですね。ですから、顧問会議や検討会についても、努力はしたけれどもメンバーの合意が得られずにできませんでしたということでは、これは許されないと思うんですね。先ほどありましたように、リアルタイムの公開では本音が出せないというようなことでは、そもそも委員としての私は資格を欠くとも思うんです。

 それを前提に人選をして、顧問会議も検討会もリアルタイムで公開をしていくという点で、改めて決意をお願いしたいと思います。

国務大臣(森山眞弓君)

 先ほど申し上げましたように、司法制度改革審議会と同様に、できるだけ公開の努力をしていきたいと思いますが、これからつくっていただく本部でございますし、それに置かれる顧問会議や検討会でございますので、これからどういう方がなってくださるかまだわからないわけですので、顔ぶれが決まりました上で、皆さんに御理解をいただき、そして御説明を申し上げて、そしてできるだけ御支持を得てそのようにしていきたいというふうに思う次第でございます。

井上哲士君

 繰り返しになりますが、前提で人選もしていただきたいということを求めておきます。

 そうやって検討会などがやられるわけですが、実際に法案として出していく上での手順の問題です。

 この法務の関係のいろんな重要な法案はいわゆる中間試案という形で公表されまして、関係者や国民の意見を集めていくという手法がとられてきました。今度の今後出されていく法案も大変大事な問題でありますから、やはりこういう手法を踏むべきだと思うんですね。

 特に、例えば裁判員制度につきましては、審議会意見書の中でも、「この制度が所期の機能を発揮していくためには、国民の積極的な支持と協力が不可欠となるので、制度設計の段階から、国民に対し十分な情報を提供し、その意見に十分耳を傾ける必要がある。」と、こうも指摘をされています。法案としては固めてしまって、形ばかり意見を聞くということではだめなわけで、制度設計の段階で示すと。

 ですから、もちろん日常的にインターネット等で意見を集めるのはやりつつも、法案については中間試案というような形で広く公表して意見を聞くという中間的な段階を設けるべきだと思うんですが、その点どうでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 今、先生御自身がおっしゃいましたように、法務省の関係ある特に重要な法案につきましては、試案ができましたところでインターネットその他で公開をいたしまして御意見をちょうだいするということを最近はやっているわけでございますが、それと同様に、この本部において議論の結果、ある程度の案ができましたときには、このような話の状況であり、こういうふうにだんだんまとまってきたというようなことを多くの国民に見ていただいて、そして御意見をちょうだいするということを今までどおりやっていきたいと思っています。

井上哲士君

 今までどおり中間試案的なもので御意見を聞くということで確認をしたいと思います。

 こういう司法制度改革を進める上で、この人的体制というのが大変重要だということが言われております。四月の審議会では、「裁判所の人的体制の充実について」というところで、裁判の迅速、適正化のためには、一人当たり手持ち事件数を現在の百八十から百三十件程度にする、そのためには向こう十年間で五百人程度の裁判官の増員が必要だと、こういうものが出されております。

 どうもこの百八十件、現状の百八十件というのが実感と違うというのを私は随分いろんなところでお聞きをするわけです。六月の当委員会で、中山さんの御答弁によりますと、大都市部を中心に「一時は手持ち件数が三百件近くになったこともございました。しかし、その後、裁判官の増員、さらに繁忙部署への人員の増配置ということを行ってきた結果、現在では二百件を切るというところまでいっております。」と、こういう御答弁ですが、これ間違いないですね。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 そのとおりでございます。

井上哲士君

 この答弁につきまして、随分実感と違うなというお声を聞くんです。

 私、この十月に京都の弁護士会が開きましたこの司法制度改革を考える集いに参加をしたんですが、そこでは京都の人的体制がどうなっているのかと出されておりましたが、一九五〇年には京都の民事裁判事件は六千百二十九件、それが九七年には二万一千一百九件、三倍以上になっているわけですね。ところが、京都地裁の裁判官は、一九五〇年は四十人だったのに、逆に九七年には三十八人に減っていると。減っているわけですね。先ほど繁忙部署への人員の配置増というお話でしたけれども、京都は繁忙部署という認識ではないんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 一九五〇年当時にどの程度京都地裁で事件数があったかというのは、ちょっと調べてみましたけれども、私どもも承知しかねるものでございました。

 ただ、最高裁として、例えば全国的なところで見ますと、戦後の混乱期から安定期に入った昭和三十年の全国における民事、刑事、家事、少年の事件数の合計は約四百七万件、それが平成十二年は約五百五十二万件ということになっております。これに対し、昭和三十年の判事、判事補の定員は千五百九十七人であり、平成十二年にはこれが二千二百四十三人ということになっております。事件の比率から見ますると一三六%増ということになりますが、これに対する裁判官の増は一四〇%ということになります。ただし、これは民事、刑事、家事、少年、いわばごった煮の状態での数字でございますから、直ちにそれでもってどうこうということはなかなか難しいところはございます。

 ただ、近年、バブルの崩壊後、特に裁判所の方では増員に努めてまいりました。平成九年度から平成十三年度の五年間で見ますると、年平均約三十四人の増員でございます。これもまた、三十四人というと大したことがないと、こういうふうに思われるかもしれませんけれども、いささか乱暴な言い方を許していただけるならば、京都地裁というような大規模庁は若干下回りますけれども、同じく大規模庁と言われている千葉地裁あるいは浦和地裁、本庁を上回る数の増員を毎年行ってきた、言葉をかえて言えば、そういった庁を一つずつ毎年つくってきたというところでございます。

 そういうようなことで、裁判所としては、これまでも適正な裁判、迅速な処理のために適切な増員、それから配置というところに努めてきたところであり、今後とも、社会のニーズに的確にこたえるために必要な人的体制を確保してまいりたいと考えているところであります。

井上哲士君

 京都の場合、この間いろんなバブル後の地上げの問題であるとか、いろんな問題がありまして、随分事件の繁忙感というのは多くの皆さんから聞くわけですね。今いろいろ御答弁ありましたけれども、現実の問題としてこの五十年と比べても減っているというのが事実でありまして、やはりこういう問題をしっかりと解決をすることなしに本当に国民の使いやすい司法ということにはなっていかないということを思っているんです。

 衆議院の御答弁では、例えば五百人の増員というのは事件数がふえないという数字なのに、それがひとり歩きしてしまっているということも言われておりますが、では、今後の事件数の増加というものをどういうふうに考え、そのもとでどの程度の一層の増員が必要とお考えなんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 今後の事件数がどのくらいふえていくかということは、率直に申し上げてなかなか難しいところがございます。

 例えば、今回の司法制度改革審議会では ADR といったものが提唱され、さらにその他民事訴訟法の改正、さらに充実策というものを民訴、刑訴両方で言われているようなところもございます。そういったもののほかに、OA 化というものをもっともっと進展させるようにと、こういうことも言われております。

 そういったものを総合的に考えた上で、果たして今後の事件数がふえてきたときにどの程度の裁判官が必要かということを考えていかなければなりません。また、ADR がどういった形で機能していくかということも考えていかなければなりません。そういう意味では、大幅な法曹人口増ということがもう予定されておりますので、事件はふえてくるということは確実でありますが、それがどの程度かということはこの場ではっきりと申し上げられないということは御理解いただきたいと思います。

井上哲士君

 人をつくっていくというのはやっぱり時間のかかることでありますから、事件がふえたからといって後追いでどう対応していくかということでは本当に後手後手に回っていくと思うんですね。やはり、一定の見通しを持ってこの点も進める必要があると。

 裁判官を増員しますと、当然、職員をふやすということも不可欠だと思うんですね。現在でいいますと、大体、裁判官と職員の数の比率が一対七ぐらいだとお聞きをしております。裁判所の職員の労働組合の皆さんなどは、現状でも今の仕事をきちっとこなす上で千四百人近い増員を、職場からの積み上げの数でありますが、出されているわけですね。

 こういう現状を考慮して、今おっしゃっている五百人の増員といった場合に、それに伴った職員増はどれぐらいの規模だとお考えでしょうか。

最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)

 ただいま委員が御指摘になった裁判官と職員の比率というものにつきましては、恐らく職員の数は庁舎管理業務を行う職員まで含めたすべての職員を対象としたものだろうというふうに考えております。

 審議会等でも最も中心的な課題になりました適正、迅速な裁判の実現、その裁判事務に直接かかわる職員としての書記官という者の比率を例にとってみますると、これは民事立会部では、裁判官三人に対し書記官が五人から八人というところが通常でございますし、あるいは執行部のように裁判官の事務よりも書記官事務が非常に多いというところでは、裁判官一人に対して書記官約七人というような状態になっているところもございます。このような実態を踏まえますと、今後どのような種類の事件が増加していくかということによって増員する書記官の人数と裁判官との比率というのは当然変わってくるところでございます。

 さらに、民事・刑事事件を初めとして、各種の手続や制度の改革が進められる。さらには、現在、今、裁判所で進めておりますような民事裁判事務処理システム、刑事裁判事務処理システムといった IT 化の進展に伴う書記官事務の効率化、合理化、そういったものを万般いろいろ考えた上で職員の増員といったものを考えていかなければならないわけでございまして、今、裁判官五百人ふえるから今後十年間でどうだというところはなかなか難しいというところは御理解いただきたいと思います。

 ただし、裁判官だけがふえましても、そのままでは全く実際に裁判がうまく進行しないということになりますので、裁判官の増員に見合う適正な人的体制の整備、確保ということは絶対必要であります。その観点から必要な人員の増加は図っていきたいと考えているところであります。

井上哲士君

 絶対必要ということでありますから、ぜひ、現状を固定化するのではなくて、現状でも足りないんだということからお考えをいただきたいと思います。

 私、京都で、先ほど言った集いでは、京都の弁護士会の皆さんが、例えば五百人ふえたらこれだけの裁判官がそれぞれの地域に新しいチームをつくって配置できるという図をつくって出されているわけですね。やっぱり裁判所としましても、この司法改革が進めばどういう身近な司法になるかという、そのプランといいますか、全体像、未来像をやはり国民に大いに示していくことが必要ではないかと思います。

 その点も求めまして、質問を終わります。


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