本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2001年11月8日

法務委員会
「司法制度改革推進法」で参考人質問、質問

  • 自由法曹団の野澤裕昭弁護士、吉岡初子主婦連事務局長らに参考人質問。近畿弁護士連合会が発足させた弁護士や学者、市民らで構成する「下級裁判官候補者調査評価に関する協議会」の動きを紹介し、最高裁に対して、弁護士任官を大幅に増やすために、こうしたとりくみを尊重するようもとめる。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、御多忙の中、本当に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 最初に、野澤参考人にお尋ねをいたしますが、今日の司法の現状についてのお話がありました。特に、裁判官への統制という点で人事であるとか判検交流の問題を指摘をされて、これが司法が国民に溶け込めていない理由になっているという御指摘もありました。この問題、もう少し具体的なことも含めてお話をいただけるでしょうか。

参考人(野澤裕昭君)

 先ほど裁判官に対する最高裁の統制が非常にきついということを申し上げましたが、具体的には、私どもで市民集会をことしの四月に催したんですが、そこで元裁判官であった安倍晴彦弁護士がその集会に参加されて発言されたこと、これは非常に端的に物語っているのではないかというふうに思います。

 その点について若干御紹介したいと思うんですが、安倍裁判官という方は、和歌山の地方の簡裁におられたときに、公職選挙法の戸別訪問の規定について、これに違反したということで起訴された事件で、これが憲法に違反するということで無効という判決を書かれた方なんですが、この判決自体は当時はそれほどほかのいわゆる地方裁判所も出ていて極端な判断ではなかったわけですけれども、それが、それ以降、この安倍裁判官は最高裁の方からかなり厳しい処遇を受けたと。

 例えば、給料の差別、これがされまして、同じ採用された裁判官と比較すると月給として十五万とか、十四、五万の差が開き、それがどんどんどんどん年を追うごとによって開いていくと。

 あるいは、裁判官はいろいろ転任するわけですが、その転任に当たっても希望する場所に転任ができない、そういう転任における差別がされていると。例えば、東京に御家族がいて、そこに年老いた両親がいても、なかなかそこに帰ってこれないと。地方に飛ばされるとか。

 それから、最もおっしゃられていたのは、仕事について差別をされたということで、要するに、民事事件あるいは刑事事件とか、それぞれ裁判官の扱う事件の分野というのはありますけれども、そういう事件について自分の希望が入れられないと。安倍さんは家庭裁判所の支部にずっと置かれて、家庭裁判所の家事事件をされたわけですが、それは安倍さんのお話によると、なぜかというと、合議事件がないということなんですね。

 合議というのは、裁判官が複数、三人で合議体を形成して裁判を行う、こういうことですけれども、合議部があるとほかの裁判官にいろいろ合議の中で話をもちろんするわけですね。そういうところで影響がほかの裁判官に及んでは困るというような理由で、つまり合議のないところに回される。安倍さん自身は、もちろん修習生も来ないし、その裁判所の中でも合議から外されて、一人の孤立した状態に置かれると。これがやはり非常に厳しかったというふうにおっしゃっていました。

 また、これも司法修習のことでも関係するんですけれども、今のは裁判官になってからのことですけれども、司法修習の段階においても、五十三期、四期の修習生の中で、この司法制度改革が議論されていることに触発されて、今研修所でどういうことが行われているのかということを告発する資料をつくっているんですけれども、研修所の中で一番問題なのは、やはり裁判官になる任官志望者が裁判教官の目にかなった人しか結局任官していけない。任官希望を持っていても、いわゆる逆肩たたきと言われて、君はもうだめだよとか、あるいはちょっと可能性がないよとか言って任官をあきらめさせていくと、そういうことが行われているということを告発しておりますし、また検察官に関しても、これは何か女性枠というのがあって、一定の数以上は女性の検察官の任官者を採らないということで、そういう枠を設けているという実態があるだとか、そういう告発がされております。

 私が言いたいのは、そういう研修所の段階から判事補となる人たちがその教官によって選別されていく、その中で希望があってもなれない人がいる、そこでなった人たちはそういう研修所やあるいは最高裁の意向をやはり無視できない、従わざるを得ないという、もともとそういうような立場の中で任官をしていって、そして裁判官になった後も、さっき言ったような安倍裁判官のようなそういう統制の実態がある。

 そういう中で、やはり国民の常識に触れるというか、国民の中でどういう問題があってそれを親身になって考える、そういう感覚がやはり持てない状態でどんどん裁判官のその階段を上っていく。それがやはり、さっき私が一例でお示ししましたが、ああいう裁判が生まれている。

 そこの集会では安倍裁判官に来ていただいて、九百名集まりましたけれども、非常に大きな国民の中から驚きがありまして、何でそういうことがあったのかということで、裁判の実態はそういうことなのかと非常に驚きを持って受けとめられました。こういうことがやはり改善されないと、いろんな改革がされても、肝心の裁判自体が国民の常識に合致していないということであっては意味がない、その点を私としては一番強調したかったということです。

井上哲士君

 次に、吉岡参考人にお尋ねをいたします。

 ある雑誌で審議会委員の勤務評価というのを特集しておりまして、その中で吉岡委員は、消費者、女性の視点からの発言が多く、一番市民に近い立場からの議論をされていたように感じると高く評価をされておりまして、敬意を表するところであります。

 敗訴者負担の問題で、消費者運動をされている立場からいいますと、大変一番訴訟のちゅうちょにつながるということを実感をされるんではないかと思うんですが、この辺の問題をもう少し詳しくお話をいただきたいのと、中間答申から最終の、中間意見書から最終のときに表現も多少変わったと思うんですが、その辺の議論の過程なども含めてお話をいただきたいと思います。

参考人(吉岡初子君)

 敗訴者負担の制度につきましては、中間報告が公表された以降、これに反対する意見が非常にたくさん寄せられております。それと同時に、審議会の場ではないほかの場で、敗訴者負担制度を撤廃させようという消費者団体を初め市民運動があちこちで広がっていったということがあります。そういうことがあって、中間報告の段階と意見書の段階では違ってきているということはお読みいただければおわかりのとおりだと思います。

 ただ、じゃ、撤廃までなぜいけなかったのかという御批判もあると思いますけれども、やはり審議会は一人でやっているわけではありませんから、いろんな意見が当然出てまいります。そういう意見の中で、できるだけ訴訟を阻害する要因、そういうものは外していかなければいけないということで頑張ったわけですけれども、それで意見一致というところまで何とか持っていった、それが意見書の限界だったかなと、そのように思っております。

 ただ、基本的に敗訴者負担を導入して、例外はこれこれよというようなことで、労働訴訟、少額訴訟というような事例が挙げてございました。等となっておりますけれども、やはり一般から見ますと、労働訴訟、少額訴訟以外は敗訴者負担というようにどうしても読めてしまいます。そういうことではいけない、基本的には敗訴者負担制度は入れるべきではないと、私、個人的には思っておりますけれども、きょうの私の意見でも申し上げたんですけれども、そういうことであれば、片面的敗訴者負担を導入するということについても申し上げたんですけれども、なかなかそういう考え方でまとまるということはできなかったというのが実情でございます。

 そういう意味で、できるだけ敗訴者負担が適正ではない、合わないというものの幅を広げていく、そういう実績をつくっていくことによって、実質的には敗訴者負担制度の対象となる訴訟を非常に狭いものにしていく、そういうことがまず段階的には必要だと思いますし、そういう中でやはり国民の声を結集していくというもう一つの問題があるんではないかと思います。

 そういう意味で、私は、検討会議で今度は個別の課題がそれぞれ立法の中で考えられていくわけですけれども、そこのところに国民の声が反映するような仕組み、具体的にはメンバーに入れるということ、それから透明性を確保する、そういうことを続けていかなければいけないということを申し上げます。

井上哲士君

 田中先生にお尋ねをいたします。

 法科大学院構想について詳しくお話がございましたし、同僚委員からいろんな教育内容についても御質問がありましたので、私、財政措置の問題についてお尋ねをするんですが、教育内容の点でも地域的遍在をなくすという点でも、国公立大学がどういう役割を果たすべきとお考えかと。

 そして、それに対する財政措置のあり方、それから経済的困難で入れない者が出てはならないということも指摘されているわけですが、今、実際に学生の指導に当たっていらっしゃる立場で、学生の生活実態などもよく御存じかと思うんですが、実際、資力のない学生が排除をされない上で、奨学金であるとか授業料免除制度のことも意見書は言っておりますけれども、この点についてのお考えをお願いをしたいと思います。

参考人(田中成明君)

 法科大学院を円滑に運営するためには、主として法科大学院の教育体制を充実するための財政的な支援の問題と、それからそこに学ぶ学生がそういう教育に、勉学に専念できるという支援と、両方あると思うんですけれども、どちらにつきましてもやはり今の大学の標準では非常に問題が多いと。

 例えば、法科大学院の体制を整備するといいましても、やはり大学の予算の配分の仕組みを見ましても、やっぱり理工系に比べて文系の予算配当というのは非常に少ない。これは公にされたらびっくりされるほどの差が国立大学でもあるわけでございます。それは、従来、法学というのは何となく大教室で講義して、期末で、ペーパーテストで能力確認すればそれでいいんだというふうにやったわけですけれども、ロースクールの場合には、法科大学院の場合には、やはりもう少し少人数できめ細かにフィードバックをかけながら教育をする、あるいは実務的なセンスを身につけさせるためにインターンとかそういうことをやると。これは人的にも制度的にも設備的にもやはり相当のお金がかかるということで、先ほど別の議員の方からも御指摘ありましたように、我々としてもやる以上は立派なものをつくりたいと。そのためには、従来の大学の文系にはこの程度の予算を配置をしたらいいんだという発想を切りかえて、やっぱりプロフェッショナルスクールとして国際的にも通用する人材を養成するんだというふうな広い視点から、そういう人的あるいは制度的な基盤を整備するために投資が必要、優先、配慮が必要だというのが一つあります。

 それと、学生に対する問題でございますけれども、やはり経済的な、授業料をどうするかというようなことを、特に私立大学の場合いろいろ問題になっておりますけれども、医学部の場合にも似たような問題があるわけでございますけれども、やはり経済的に困難だから法科大学院に行けないというふうなことは、これはならないと。能力とかそういうことは別ですけれども、やはり経済的な理由で法科大学院に学べないというふうなことはなくするための措置が絶対的に必要だというふうに考えておりまして、これは以前に比べますと奨学資金制度とかローンとかいうもの、相当よくなってきておりますけれども、それだけで果たしてカバーできるかどうかというふうになってくると問題がありますので、この法科大学院を立ち上げる場合には、アメリカのロースクールの学生なんかはほとんどローンでお金を借りてやっているというようなことがありますので、新しいローン制度を含めた奨学資金制度とかそういった抜本的な支援策を考えて、やはり法科大学院にいる間は学生が勉学に専念できるという環境を整備するために思い切った財政的な支援が必要だというふうに考えております。

井上哲士君

 以上です。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.