井上議員の今御議論は、大分事態の経緯を誤解しておられると思うわけでございますが、このコーポレートガバナンスという言葉自体も我々は平成九年の時点で、自由民主党のコーポレートガバナンスに関する改正案をまとめたときまでは世間で使われていなかったわけであります。やっと最近使われるようになったわけでありまして、その当時、我々が党内でもって検討したこと、あるいは特に衆議院の法務委員会や、特に参議院の皆様にもお呼びかけをいたしまして、超党派で平成九年から勉強会を繰り返しております。その中からこの法律が出てきたんだというふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
今、コーポレートガバナンスという言葉を使われるときに人は何をイメージするのかといえば、それは株式会社という一つのコミュニティー、株式会社というコミュニティーの中でそこにいる主権者、株主主権とすれば主権者たる株主の長期的な利益を最大にするにはどうしたらいいのか、株主全体の長期的な利益を最大にするにはどうすればいいのかということがコーポレートガバナンスのテーマでございます。そこでは株式会社は株主のものであるという大前提があって、その主権者である、所有者である株主たちの利益をきちんと守るような歯どめになる、みずからを治める、みずからを統治する、みずからをガバーンする仕組みは何かということを考えていくのがこれはコーポレートガバナンスの議論でございます。
その中で、残念ながらいつもアメリカがお手本になってしまうわけでございますが、アメリカのコーポレートガバナンスの仕組みというのは、我が国と同様に、ロッキード事件などのスキャンダルがあったときに集中的にこのことが議論をされて、そして今日の取締役会を中心として社外取締役に重きを置くコーポレートガバナンスの仕組みが確立をしてきたわけでございます。それを我々もモデルにいたしております。
ですから、社外取締役を中心として、そこでもって取締役会の中に主として四つの機能、四つの委員会を設けてやると。一つは、今我々がかかわっております監査委員会というものを取締役会の中に社外を中心にして設ける。それからその次に、訴訟が起きた場合に訴訟に対応する訴訟委員会というものを設ける。それから、取締役、特に代表取締役の人事などを扱う人事委員会。それから、報酬を決める報酬委員会。四つの委員会をもって、いずれも社外が過半数であることが要件でございますけれども、それによって執行権を持っている経営幹部に対するチェック、モニタリングの機能を果たすというのが考え方でございます。
そこで、我々も当然そこに一気に行きたいというふうに思った時期もございますけれども、やはりどうしても我が国は監査役制度でずっとやってきているわけでございますから、監査役制度でそれでは全部これは、この監査役制度を改善することについてできないかというか、とりあえずは考えるわけでございまして、その結果、今日提案したものが出てきたということでございます。
ただ、これはぜひ先生にも御留意いただきたいのは、こういうことなんですね。今の言う四つの委員会の機能、つまりアメリカの取締役会における監査委員会の機能とそれから訴訟委員会の機能は、今度の我々が提案しております代表訴訟にかかわる取り扱いというのはこの二つで、この機能は我が国では、この提案では新しい監査役制度でその機能が果たせるわけでございます。それに加えて、それじゃ代表取締役の人事権を社外取締役を中心にして持たせられるかということは、私はまだちょっと時期尚早ではないかというふうに思っている。それからもう一つは、報酬を社外の人たちに決めさせられるかと、これもなかなか時期尚早だなと思っております。それがこの段階でとどまっている理由でございます。
だから、もし政府で出されるときに、法務省で出されるときに、この後半の二つの機能をあわせて提案をされるんならば新しい提案になりますけれども、そうでないならばここは余り違わないということになるわけでございます。ですから、そう違ったものではないかもしれないという気はいたしますけれども、ただどちらが先だったかということはぜひ誤解のないように。これは我々議員立法の方が五年間先行しておるということは、ぜひそれは御理解をいただきたいと思うのでございます。