- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
今日は、三人の参考人、本当にありがとうございます。
まず、派遣の在り方等の問題でお聞きをいたしますが、まず尾崎参考人にお伺いをいたします。
立ち上がりのときの安定的確保のためには有意義だということでありましたが、とりわけ司法過疎の解消のための全国的な配置にとって必要だということも議論があったわけですが、日弁連としてもいわゆる地方大学等への派遣ということでは様々な努力をされているかと思うんですが、その辺の努力の中身と、その上で、かつやはり一定のこういう仕組みが必要だというような実情ですね、それを是非まずお願いいたします。
- 参考人(尾崎純理君)
私ども、今度の司法制度改革というのは、その地域地域に法曹がそこのロースクールで育ってその地域に貢献していくと、こういう制度が非常に必要であろうというふうに思っています。アワタウン、アワコート、アワローヤーというような言葉があるようでございますけれども、そういうような姿として司法制度改革を実現していきたいというふうに思っています。その意味で、日弁連といたしましては、各地域でロースクールを作りたいという、そういう地域における要望に対しては最大限こたえるべき、その該当する単位会の弁護士会がそこの大学等と協力させていただいて、今まで各地域において設立の準備を進めてきております。
具体的にどの地域でどういうことをやっているかというのについての説明は差し控えたいと思いますが、そういう意味で、例えばその単位会では対応し切れなくて、もう少し教官、教員を確保できないかというようなことを言われましたらば、例えば東京の単位会で東北の地域に教官になって行く人はいないかどうかの募集を掛けて、現に手を挙げる人がいて行ってもらうというような、そういうふうな工夫も凝らしているところでございます。
そのような中で、やはり実務家教員、いわゆる公務員の、裁判所、検察官の実務家教員も欲しいんだという、そういう地域があることも事実でございます。そのようなところに対してはやっぱり差別なく公平に派遣してしかるべきであろう、していただかなきゃいけないんじゃないかというふうに私どもは考えておりますということでございます。
- 井上哲士君
次に、宮澤参考人にお聞きいたします。
アメリカのロースクールとの違いを幾つか御発言もありましたし、配付いただいた資料にもあるわけですが、アメリカの場合、多くの裁判官、検察官が非常勤教授として教えていると。それができる日本との今の違い、いろんな素地も含めてあろうかと思うんですが、制度的なことも含めて、何が違っていて、そしてやっぱりアメリカ型にしていくためには一体何が必要だろうとお考えでしょうか。
- 参考人(宮澤節生君)
それは、裁判官、検察官側の行動の自由度が大きいのだというふうに思います。もちろん裁判官、検察官という身分を維持しながらフルタイムでロースクールで教えるということはできません。これはアメリカでも同じ、日本でも同じ問題ですね。その意味で、今回の法案は非常に異例なものであります。フルタイムで法科大学院で教えていながら、フルタイムの判検事としての給料を何とかして保障しようというのは、そういうことをやっているわけですね。
そういう制度はアメリカでは考えられません。なぜかといいますと、裁判官には職務専念義務があり、大学教授としては大学で職務に専念しなければいけないからであります。したがって、現職判検事がロースクールで教えるというのは非常勤講師あるいは客員教授、そういうものに限られます。その場合には一対一の交渉になるわけでありまして、例えば私がニューヨーク大学で教えていたとき、数年前でありますけれども、隣の研究室にはクリントンを追及していたケネス・スター特別検察官がおりました。彼は客員教授で来ていたわけであります。ワシントンから一週間に一回、夜来ていたわけですね。
そういう形で実務家の教員というのが参加しているということです。もしフルタイムの先生になろうとすれば、それは裁判官なり検察官なりをもう辞めなければいけないことはこれはっきりしているわけなんですね。そのことをこの派遣法では非常にあいまいにしているというふうに私は思っています。
ですから、日米の違いという点でもう一度強調いたしますと、非常勤講師として教える自由度というものを日本の裁判官、検察官というものにもう少し大きく認めていただきたい、そのような便宜を図るということが私は派遣法の主たる内容であるべきだというふうに考えております。
- 井上哲士君
さらに、その派遣されてくる裁判官、検察官の問題なんですが、いただいた配付資料でいいますと、今の設置認可申請書のいろんな書式の中で、それを見ていると、言わば司法行政のキャリアを積み重ねた主流派裁判官などに事実上限定されるのではないかと、こういう懸念を言われておりますけれども、この中身、もう少しお願いいたします。
- 参考人(宮澤節生君)
これは、失礼しました、どうもパターンがなかなかのみ込めませんで、失礼しました。
それは、文科省が設置申請書類の説明書として、マニュアルとして出したものをごらんいただければ非常に分かりやすいわけでありますけれども、例えばどういう実務家教員が望ましいかということで、どういう経歴が挙がっていると望ましいかといういろんなリストがあるわけなんですけれども、その中に、例えば判検交流で検察官をやったことのある裁判官とか、あるいは最高裁事務総局にいるとか、あるいは最高裁から派遣されて外国に留学したことがあるとか、要するに、そのようにして言わば裁判官あるいは検察官として日の当たる道を歩いてきた人だけがなぜか高く評価されるような仕組みになっているというわけであります。
しかし、そういう経歴と法科大学院教員として例えば一般庶民の苦しみや悩みを理解するような科目を教えられるかどうかということは別の話なのでありまして、法科大学院側としては別の観点から個別に人選したいというふうに考えているわけなんですね。その意味で、私は非常に大きな食い違いがそこに存在しているというふうに考えています。
- 井上哲士君
もう一点、宮澤先生にお聞きします。
第三者評価機関で、実務家教員がいることが評価の対象になるんではないかという懸念がやっぱり大学人の側にあるというお話がありました。
今後の法科大学院の質を決める上では、非常に第三者評価機関というのはもろ刃のやいばでもあり非常に大事だと思うんですが、この第三者評価機関の在り方、構成、そしてそういう評価基準についてどのようにお考えでしょうか。
- 参考人(宮澤節生君)
まず最初に申し上げたいことは、第三者評価機関は複数なければならないというふうに考えます。単一の機関しかなければ、それが全国一律に支配することになるわけですね。そうすると、法科大学院の間で多様性が生まれるということはありません。それから、他の第三者評価機関に比べて、やや高い水準を設定するというような第三者評価機関があれば、それによって徐々に法科大学院全体の水準がまた引き上げられていくという効果も期待できるわけですね。ですから、まず前提として、複数、第三者評価機関というものはなければならないということであります。
それから、その次の段階が今、先生がおっしゃった質問の内容にかかわるわけでありまして、第三者評価のメンバーはどのようにあるべきかということであります。
これは、アメリカですと ABA がやっておりますけれども、アメリカ法曹協会がやっておりますが、この委員の半数以下しか法曹ではないわけですね。それ以外はユーザー代表ということになるわけであります。日本でも同じようにして、法曹三者及び法科大学院関係者はこの第三者評価委員の半数以下にすべきであろうというふうに思います。それ以外の方々は、エンドユーザーの代表であるべきだというふうに思います。例えば、様々な消費者団体、市民団体あるいは企業団体、そういうところの人々が、どういう教育を行っている法科大学院が望ましいのかということが第三者評価の過程でも発言することができる、そのようになるべきだろうというふうに思います。そうしませんと、今までどおりの司法研修所型の、あるいは法学部型の法科大学院がはびこっていくということになるのではないかというふうに私は恐れています。
- 井上哲士君
今、司法研修所型のというお話があったんですが、村井先生にお聞きしますが、そこと大学とは違うんだという先ほどお話もありました。
今、この間の質疑でもあったんですが、最高裁も、それから法務省の方も、一定の教材は準備をするんだということを言われております。先生の論文の中にもありましたように、今の司法研修所の中で、判例に対して非常にこれに沿った判断が奨励をされるという弊害のようなことも書かれております。
そうしますと、教材の在り方というものは大変重要になるかと思うんですが、今、そういう最高裁なり法務省などが作ろうとしている教材の在り方、そして使われ方、この辺について、村井先生、それから宮澤先生、それから尾崎参考人にもそれぞれお聞きをしたいと思います。
- 参考人(村井敏邦君)
最高裁判所や法務省等で教材を作成されるのは、それはそれで結構だとは思うんです。
ただ、それは一つの教材でして、それを使う使わないは大学側の判断になると思うんですけれども、なるようにしなければならないわけで、大学側は大学側としまして、それなりの教材作成を現在進行させております。これは、申請書類の中に既にもう教材を作成しているかどうかなんというようなのも書く欄がありますので、先ほど言いました FD 研究会などでどういうような教育をするかというのを各科目ごとに研究をして、その中で教材をどのような形で作成するかというのをそれぞれのファッハごとに研究をし、我々独自の教材を作り、その独自の教材が全国的になればそれはそれで結構なんですけれども、出版社とも話し合ったりしながら作成をしていくという段階です。もう既にいろいろな出版社でもそういった形での教材作成というのが進行しております。
幾つかの教材が出てきて、それはそれぞれの法科大学院がそれぞれの法科大学院の特色に従って、先ほど来問題の焦点、多様性ということで私は言っておりますけれども、法科大学院はたくさん出てくるというのは、それが多様な法科大学院でなければいけないんですね。一つ一つが特色を持ったものでなければいけない。その点が司法研修所とは違うということを言っているところなんです。
それぞれ自分の特色でこういう法律家を育てますよというのを出していく、これはもう正に大学人の気概で出さなければいけません。それで生み出せるような法曹養成システムでなければいけない。その辺がちょっと懸念されるということで書きましたけれども、新司法試験があるために画一的になってしまうんじゃないかというのを懸念するんですが、何とかそうしないような形で我々自身の努力と制度作りをしていかなければならないというように思っておりますけれども、正に教材はそういった性格のものなんですね。画一的な教科書を使ってやるというようなものでは、到底いい法曹養成はできません。
- 参考人(宮澤節生君)
これは私のアメリカのロースクールにおける経験から申し上げたいわけでありますけれども、ロースクール教員が皆同じ教材を使っているなんというそんなばかなことはないのであります。それぞれのロースクールにおいて、またロースクールの中でも、それぞれの教員が自分が考える理想的な教材はいかなるものかということを常に考え続けて毎年毎年更新を続けているわけですね。それがケースブックその他の形で出版されるという形になります。
日本においてもやはり同じことが考えられなければならないわけでありまして、法科大学院教員は、それぞれが自分の教材を開発する能力を持っていなければなりません。現にないというのであれば、先ほど村井参考人がおっしゃいましたけれども、ファカルティーディベロプメント、つまり教員の能力開発というプログラムを各法科大学院においてはやらなければいけません。
そのように考えますので、例えば私の立場からすると万が一ということになるわけですけれども、現職判検事が専任教員となってどこかの法科大学院に来たという場合にも、その方自身が自分の教材を、自分が現に奉職しているその法科大学院の理念あるいは教育目的に沿って開発する能力がなければならないわけであります。そうであるにもかかわらず、どこか中央集権的に作られた教材を持ってくるなんというのは、これは法科大学院教員の能力がそもそもないということを意味するわけですね。
私はそのように考えますので、一見、最高裁や法務省が教材を開発してくれるというのは、親切なように見えて、実は法科大学院においてはあってはならないことなのであると、それは正に私が繰り返し申し上げている研修所型教育の発想なのだということを申し上げたいわけです。
同じことは弁護士会の関係についても言うことができます。二弁は確かに大宮に対して非常に大きな支援をしてくださっているわけです。支援委員会ができているわけですね。しかしながら、大宮法科大学院において教えるのは、二弁会員あるいは埼玉弁護士会会員の中の特定の人であります。最終的には、その方が自分の教材を開発しなければならないわけですね。ですから、背後に支援委員会があって、そこの今までの研究成果を参照するということはあっても、最終的には個々の教員が教材開発をしなければならないと。その意味で、例えば大宮の民法でしたら、四名の学者、弁護士のチームが今教材開発に取り組んでいるわけであります。
教材開発というのはそのようなものであろうというふうに私は考えております。
- 参考人(尾崎純理君)
いろいろなところがいろいろな教材を作成するのはそれなりの意味があるのかとも思いますが、私どもは現在、五十年あるいは百年に一度の司法制度改革に取り組んでいるわけでございます。したがって、その教える内容、教え方というものは、やっぱり現状に対する反省が原点になければならないというふうに私は思います。最初の陳述でも申し述べたとおりでございます。そういったものがなくて、現状をただ紹介するだけ、現状を肯定するだけ、そのような教育内容になってしまったならば、これは全く改革の名にも値しないし、ロースクールも全く魅力のないものになってしまうだろうというふうに思っております。
そういう意味で、やはり教える人間が熱意を持って改革に向かって後継者を養成する、そういう心構え、教え方が必要なんじゃないかというふうに私は考えております。
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
午前中の参考人質疑を受けまして、まず現職裁判官、検察官の派遣の在り方について質問をいたします。
ちょっと通告してないんですが、法務省からまずお聞きをいたしますが、今日の午前中の参考人からも、大学の自治の根幹である人事権ということの観点からも、いわゆる大学が要請する人材が派遣をされる仕組みが必要だということが口々に言われまして、いわゆる法務省、最高裁側からのリストではなくて、大学がやはり個別交渉、いわゆる一本釣りをしてこの人の派遣をしてほしいと言うことができることが必要だということが口々に言われました。
衆議院の議論を見ておりますと、直接交渉、大学側が直接交渉をやっている人が、例えば A 大学に希望していると、その人が派遣リストに載っているけれども実は B 大学に派遣しようとしていると、こういう場合にどうなのかといいますと、これは同意が必要なので B 大学には行けないということになると。こういう答弁はあるんですが、こういう個別交渉で合意をした場合に、法務省側が用意したところに行けないだけじゃなくて、そういう希望もちゃんと入れられた運用がされると、こういうことでいいでしょうか。
- 政府参考人(寺田逸郎君)
これは個別具体的なケースになりますと様々でありますので、なかなか一概には申し上げられないんですが、基本的には各大学それぞれ要望がおありになって、その要望の中にはもちろん非常に、カテゴリーからいえば非常に狭い範囲の御要望というのも中にはあろうかと思います。そういうものをしかし全部お聞きした上で、こちらの方としては、じゃこの方でどうでしょうかと。しかし、もちろん大学側は、それはそんな人じゃない方がいいということをおっしゃっていただく自由はおありになるわけで、すべて見た上で、これはもちろんパートタイムもフルタイムもいろいろの組合せもございますので、見た上で、ではこれはどうでしょうかと、最終的には大学側と合意をした、こういう方が派遣ができる、こういうことになるわけでございます。
その上で取決めをするわけでございますので、まあ言ってみれば、完全に御納得いただくのもなかなか難しいですけれども、できるだけその要望に沿うような形で派遣をしたいと考えておりまして、むしろ全く意に沿わないような方が派遣されてどうにもこうにもうまくいかないというようなことはこれはもう避けたい、このように考えております。
- 井上哲士君
やはり、衆議院の答弁を見ておりますと、直接交渉の場合には、もちろん一時的に休職なり退職されて法科大学院の教授になっていかれる方もおいでになるかもしれません。しかし、少なくともこの法律に基づく派遣の一環としてなされる場合には、任命権者の決定によってその者を派遣すると、こういう答弁なんですね。これを見ますと、要するに事前に直接交渉をしていた者は、もうこの法律に基づく派遣の一環としては除外をする、一時的に休職なり退職をして行きなさい、勝手にと、こういうふうにも聞こえるわけですね。
ですから、運用として、個別に直接交渉をしていて本人も同意をしている、あそこに行きたいという場合に、入口からこの法律の枠外だということでは、そういうかたくなな運用ではないんだ、そういうことでいいでしょうか。
- 政府参考人(寺田逸郎君)
それはそのとおりだというふうに理解をいたしております。
私どもとしては、そういう例えば非常に狭い地域で、もうこの人しかいない、その人とも交渉できている、しかし事前に交渉があるからといってその人は送らないというようなかたくなな姿勢を取ることは全くございません。すべて勘案した上で、やはりその人が適切だという納得が得られれば、それはもうそういうふうにするわけでございます。
- 井上哲士君
じゃ、次に、第三者評価にかかわってお聞きをいたします。
これも午前中の参考人の中で、今の一本釣りともかかわっていろんな議論がありました。法科大学院の認証評価機関の評価基準の細目の中で、大学評価基準の評価項目というのはどのように検討をされているのか。そして、その中でこの教員についてはどういうふうに定められようとしているのか。いかがでしょうか。
- 政府参考人(清水潔君)
法科大学院の第三者評価についてでございますけれども、今、私ども、評価機関を認証するための基準という、いわゆる認証基準でございますが、認証基準について今原案を検討中でございまして、早急に策定するというふうな予定になっております。
認証基準におきましては、例えばカリキュラムとか教員組織でありますとか、その具体の項目について評価を行う、きちんとそれぞれの認証を受けた評価機関が評価を行ってくださいという形で示そうかというふうに考えておるところでございます。
- 井上哲士君
今も教員組織というのがその項目の一つだという御答弁だったわけですが、今朝の参考人の中でも、現役の裁判官や検察官などが教授陣にいるかいないかが第三者評価の対象になるんではないか、そのことが非常に大学陣の中で懸念があって、カリキュラム上必要がないのに検察官を要請しようかというようなこともあるんだというお話がありました。
これは衆議院の答弁では、そういう第三者評価の基準の対象に現役がいるかどうかはならない、その懸念はないという御答弁で、それはミクロな評価はしないという答弁がありましたけれども、具体的にはこの懸念がないという、ミクロな評価はしないというのはどういうことなんでしょうか。
- 政府参考人(清水潔君)
お答え申し上げます。
評価基準自体は認証を受けた評価機関自体が定めるということでございまして、それぞれ今、評価機関の候補として、大学評価機構でありますとか、大学基準協会でありますとか、あるいは法務財団でありますとか、それぞれその認証を受ける準備を整えておる、こういうふうな状況であるというふうなことでございます。
お尋ねの現職の裁判官又は検察官がいない場合ということでございますけれども、第三者評価機関はそれぞれ法科大学院についてそれぞれがお定めになることでありますけれども、法科大学院がどれだけ創意工夫ある、特色ある取組を、またその教育の内容あるいは法科大学院の趣旨、理念の実現のためということでそれを評価するという観点から、教員組織についても見るということであろうというふうに思っております。
そういう意味で、正に理論と実務の架橋という観点、あるいはそのためのカリキュラムの在り方という観点から評価を行うということで考えますと、現職の方がいるかいないかということのみに着目した評価を行うというのは正直申し上げて考えにくい、こういう意味で申し上げております。
- 井上哲士君
設置審査の段階では、実務の経験を要する者と、こういう定めになっているわけで、それ以上に、要するに現職であるかどうかというようなことをその設置審査を超えて、しかも教育内容とかかわりなくやることはないと、こういうことで確認をしてよろしいね。
- 政府参考人(清水潔君)
設置認可に当たりまして、私どもは参照するのは設置基準でございます。設置基準は、御案内のように、実務家教員の具体的な範囲については特に規定してはおらないわけでございます。実務家教員は、基本的に開設される授業科目との関係において判断されるべきであって、それはあらかじめ、例えば職種でありますとか、実務を離れてからの期間など、そういうものを一律的に規定するというのは、かえって難しいばかりではなくて多様性という観点からも問題があろう、こういうふうな考え方で、少なくともそういう個別的な、当面とにかくそういう判断の積み重ねというのが必要なんだろうということであろうと思っております。
したがいまして、現職の裁判官、検察官を教員として置くことを設置基準が求めているものではありません。そういう意味で、設置認可審査もそれを踏まえながら、法科大学院の目的あるいは授業科目、教育の内容等に照らして適切な実務経験を有する教員であるかどうかという観点から審査する、こういうことになろうと思っております。
- 井上哲士君
連携法では、法務大臣は設置基準の制定、改廃、認証評価機関に関する認証基準の制定、改廃について文部科学大臣に意見を述べ、あるいは必要な措置を求めることができる、こういうふうになっておるわけですが、今後、法務大臣として、この現役の裁判官や検察官等をやはり法科大学院の教員として採用するということを要求するような、そういう基準を設けるようなことを求めるということはないということで確認してよろしいですね。
- 国務大臣(森山眞弓君)
現職の裁判官又は検察官等を安定的かつ継続的に派遣することはこの法案によって初めて可能となるわけでございまして、この法案による教員の派遣は、法科大学院設置者の要請によりまして、当該法科大学院の設置者と最高裁判所又は任命権者が協議の上、締結した取決めに基づいて行われるものでございます。
現職の検察官等の派遣を要請するか否かは、専ら法科大学院側が決定するべき事項でございます。このような法案の趣旨に照らしますと、現職の検察官又は裁判官の教員がいることを評価基準の項目としている第三者評価機関を認証すべきであるとの意見を申し上げることは適当ではございませんし、そのようなことを言う考えは全くございません。
- 井上哲士君
では、この第三者評価機関が非常に大きな役割を果たしていきます。その上で、複数の評価機関があって、大いに公正な、切磋琢磨をすることが重要だということは先日の答弁でもありました。
問題は、複数の評価機関が本当に公正な競争条件の下でできるのかどうかということでありますが、日弁連の試算ですと、アメリカと同水準の徹底した評価を行いますと、現地調査なども行かなくちゃいけない、非常に多額の費用が掛かりまして、四十校評価をしますと約一億八千万円、これを大学の評価料だけで賄いますと、年会費が一校当たり二百万円以上、大学からの評価料は七百万円以上に設定する必要があると、こういうような試算も行われております。一方、学位授与機構の方は独立法人化されるといいまして現在約四億円の評価予算を持っていると、こういうことになるわけですね。先ほどの答弁で、公正な競争条件になるような、民間へもこの評価機関への援助をしていくということがありましたけれども、この評価料についてやはり大きな差ができないような、それが一番競争としては大きいと思うんですが、そのことを念頭に置いたそういう援助なのかということが一つ。
それから、これも答弁にありましたが、大学評価のための基準や体制等々の調査研究のための経費が今年度予算で三千百万円組まれておりますが、これを維持しつつ別途そういう援助の枠組みを検討していると、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
- 政府参考人(清水潔君)
初めのお尋ねでございますが、ちょっと一点だけ付け加えさせていただければと思いますが、大学評価機構が現在行っている国立大学に対する評価は、国立大学が法人化され、法人化以降は正に設置者として、いわゆる法人評価委員会の下に要請に基づいて行われる評価ということでございまして、そういう意味で認証評価とは性格が異なるものでございます。
認証評価につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、評価機構もあるいは基準協会も法務財団も今、正に認証評価ということを、そのための体制、評価基準等々検討に入っている、こんなふうな状況でございます。したがいまして、認証評価に当たりまして、例えば評価機構でございますとか基準協会でございますとか、様々な活動、事業を行っている場合には、基本的に経理を明確に認証評価と区別するということは重要なことであろうと思っておりますし、そこは認証基準の中にも明らかにするというふうなこととしております。また、それと同時に、評価料が著しく低いなど、他の認証評価機関に比べて有利な条件で認証評価を行うというようなことはやはり避けていただくというようなことを考えたいというふうに思っております。
したがいまして、お尋ねは財政支援の問題でございますけれども、財政支援につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、今後、評価機関のこの当院の附帯決議を踏まえまして、私どもとしてどういう形の支援が可能なのかということを検討してまいりたいと思っております。
そして、二点目のお尋ねでございますけれども、十五年度予算でいわゆる調査、第三者評価に関する調査研究経費ということで三千万円ほど、三千万を上回りますけれども、それを措置しております。これは、言わば我が国におけるいわゆる第三者評価については、正直なところ申し上げて、なかなか十分な経験と蓄積というものがまだないというふうな状況に、そういうものを踏まえまして認証評価を実施する、そういう準備を進められている機関に対して、そういう体制、評価基準でありますとか評価体制でありますとか様々な御検討を具体的に詰めていただかねばならないわけでございますので、その体制整備を支援するための調査研究の経費を支援しようというものでございます。
したがいまして、この調査研究というものを踏まえながら、正に十六年四月、先般、連携法、学校教育法等の一部改正、十六年四月が施行でございます。したがいまして、認証評価が恐らくその時点で申請、認証の申請がなされてくるということでスタートをいよいよ切っていくということになるわけでございますので、そういう意味で、今後、認証評価機関に対する支援については、先ほども申し上げましたように、更に今後検討したい、こういうことでございまして、調査研究という場面につきましては、今そのようなスケジュールの中で考えれば、役目をある程度終えることになるのかなと、こういうふうに考えておるところでございます。
- 井上哲士君
では、次に、学生を中心とした財政の援助なんですが、先日の質疑でも日弁連のアンケートが紹介をされました。これは今年一月に法律家志望者に実施したもので、五千四百九十六人の回答ですので大変重要でありますし、興味深い内容で、入学に当たって考慮する要素のトップが学費を負担できるかどうかで六九・三%、そして実に五〇%が、学費が年間百万円を超える場合は進学をあきらめると、こう答えておるわけで、今予想されています学費からいいますと、相当の人々が奨学金の状況によっては進学をあきらめざるを得ないということになりますが、これ、文科省としてはこの調査結果をどのように受け止めておられるのか、そして文科省としても独自にこういう調査をしているのか、この点どうでしょうか。
- 政府参考人(清水潔君)
日弁連のアンケート調査につきましては、私ども非常に関心を持って読ませていただきました。先生御指摘のように、奨学金の貸与等がない場合に百万円を超えると進学を断念するという回答が五〇%。ただ、同じ調査でも、学費が年間二百万円と仮定した場合に、例えば奨学金がどれくらいであればという、進学を希望するかということについては、二百万円まで得られれば六一%、三百万円まで得られれば八二%、こういうふうな状況であるということでございます。
これ、各法科大学院の授業料設定がまだ明らかでないという中での回答でもありますし、また奨学金が貸与がないという場合には、学生にとって授業料はできるだけ低廉であってもらいたい、これは自然でございます。私ども、そういう意味で、進学の動機、動向に授業料の設定、奨学金の充実は大きな要因としてあるということであるというふうに受け止めております。
その調査についてでございますが、現在、私どもは、法科大学院について奨学金の希望等についての調査を行っておりません。奨学金の貸与水準の検討に当たっては、具体的な授業料の動向等を踏まえながら、様々な、いろんな調査結果を参考にしながら検討は進めてまいりたい、このように考えております。
- 井上哲士君
文科省として調査をされていないということですから、現状でいいますと、学生の生活実態とか要求を反映をした調査はこれしかないということでありますし、大変重大な中身であります。
ですから、今後、おっしゃったような学費の設定などがされた上での様々な財政支援の検討に当たっては、ここで示されている調査結果をやはり重要な参考資料の一つとして取り組んでいただきたいし、その上で奨学金や私学助成についての実施を、必要な実施をしていく上での検討状況と決意を最後、お聞きをいたします。
- 政府参考人(清水潔君)
今御指摘がございましたように、私どもは、例えば奨学金とかそういう場合には、学生生活実態調査というようなものを実施しております。これ、各分野ごとではありますが、特に法科大学院に特化したというようなものではありません。私どもは、例えばそういう調査でありますとか、日弁連が行われたこのアンケート調査でありますとか、いろんな資料を参考にさせていただきながら、今後、奨学金の枠組みあるいはその支援策の充実ということについて取り組んでいきたいと、このように思っております。