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2003年5月8 日

法務委員会
心神喪失者に関する医療・観察法案
第1回目質疑

  • 地域精神医療・福祉などの底上げなしに、社会復帰は進まないことを指摘し、新障害者プランの目標の低さを批判。
  • 刑務所内での精神医療の貧困さを指摘し、向上を要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 治療が中断をしたり適切な治療が受けられないというなどの事情で精神障害が悪化した場合に時として起こる不幸な事件というのは、本人にとっても被害者にとっても重大な問題であります。

 日本共産党は、昨年の五月にこの問題で見解と提案を発表をいたしました。日本の精神医療が先進諸国と比べて極端に後れていることにやはり根本問題がある、地域ケアを本格的に進めて他害行為を行った精神障害者の医療や社会復帰を推進をする、そういう司法精神医療を前進させていかなくてはならないという指摘をいたしました。

 その観点から、一つは、逮捕、捜査段階での精神鑑定と治療を充実させること。二つは、入院治療を含む処遇の決定というのは、裁判官や医師に加え、福祉関係者なども関与する審判によって行うこと。三つ目は、医療処分の内容とその要件を適切に判定できるようにすること。四つ目は、医療や生活支援、社会復帰促進のための地域ケアの体制を確立すること。五つ目、遅れている我が国の精神保健医療福祉を抜本的に拡充すると、こういう政策を発表いたしました。

 そこで、今日はまず、修正案の附則三条にも書き込まれました精神医療全体の底上げの問題から御質問をいたします。

 重大な他害行為を行った精神障害者について、そもそもの地域医療、そして鑑定、更には戻っていく場合の地域医療の向上と、言わば入口から出口までの全体が改善をされませんと、結局どこかが隘路になって社会復帰に向けて機能しないと思います。重厚な医療を受けて症状が改善をしたとしても、結局、地域に受皿がなければ入院を続けざるを得ないという事態も起きるでしょうし、本法案は圧倒的多数と言われる初犯を防ぐということの中身もないという問題があります。全体の課題を明らかにしながら、何をいつまでにやるのか、明確にする必要があります。

 そこで、昨年の衆議院の議論の中でも、社会的入院患者約七万二千人の退院、社会復帰を遅くとも十年以内に行うと、こういうことも繰り返し答弁をされました。その中で、それについては新しい障害者プランに盛り込むんだということも答弁をされております。

 この新障害者プランについて聞きますが、まず精神施策の充実の中で、保健・医療という項目があります。精神救急、精神科の救急医療システムを全都道府県に整備をする、またうつ病対策などが挙げられているわけですけれども、いわゆる肝心の、非常に要望も強い例えば訪問看護を始めとした在宅医療サービスなどの地域医療の拡充ということがこの中には示されていないわけでありますが、この点はどういうふうに考えておられるんでしょうか、厚生労働省、お願いします。

政府参考人(上田茂君)

 精神障害者が地域で安心して生活するためには、在宅福祉サービスや施設サービスのみならず、病状の急激な悪化に対し迅速に適切な医療を受けられるような精神科救急医療の体制整備ですとか、あるいは休日、夜間等いつでも救急相談に適切に対応できる相談体制の整備、こういう体制を整備することによりまして地域医療の充実を図ることが重要だというふうに考えております。

 昨年十二月に取りまとめられました社会保障審議会障害部会の精神障害分会報告におきましても、地域医療の確保や精神科救急システムの確立の重要性について指摘がなされているところでございます。そして、これを受けまして、新しい障害者プランにおきましても、精神科救急医療システムを全都道府県に整備することを目標としているところでございまして、そういう意味で、地域医療の充実の方向性を明確にしているところでございます。

 現在、先ほど来御説明申し上げておりますが、精神保健福祉本部におきましても、このような地域ケアの充実について検討を進めているところでございます。

井上哲士君

 衆議院の参考人質疑でも、例えば訪問看護の充実ということなどが強調もされているわけですが、そういうことは考えておられないんですか。

政府参考人(上田茂君)

 ですから、最後に申し上げました、現在、精神保健福祉本部におきまして地域ケアの充実ということにつきまして検討し、様々な地域での生活支援ですとかあるいは医療的なケアですとか、ことを含めまして現在検討を行っているところでございます。

井上哲士君

 その中の一つだと確認をしておきますが、しかし、いずれにしてもこれからということになってしまいます。

 もう一つ、それでは、福祉について五年後の数値目標がこの新障害者プランで挙げられておりますが、まず在宅サービスについて四項目挙げられております。それぞれについて、現在の到達と五年後の整備目標はどういうふうになっているでしょうか。

政府参考人(上田茂君)

 新しい新障害者プランにおきましては、重点施策の一つとして精神障害者の施策の充実が掲げられております。

 ただいま議員御質問の点につきまして御説明申し上げますと、まず精神障害者地域生活支援センターにつきましては、これは十四年度末の整備状況、見込みの数でございますが、これを、プランは五か年の整備目標でございますから十九年度の整備目標数を申し上げますと、四百か所を四百七十か所に、また精神障害者ホームヘルパーにつきましては千五百人を三千三百人に、また精神障害者グループホームにつきましては約五千二百人分を約一万二千人分に、また障害者福祉ホームにつきましては約二千九百人分を四千人分に、また精神障害者生活訓練施設につきましては約五千四百人分を六千七百人分に、また精神障害者通所授産施設につきましては約五千百人分を七千二百人分に目標を掲げているところでございます。

井上哲士君

 関係者からはこのプランについて失望の声が上がっております。共同作業所全国連絡会の最近のものを見ておりますと、期待を大きく裏切るものだ、最大の問題点は新プランの数値目標が余りにも低く、実態を好転させるにはほど遠いと、こういう批判をされております。例えば、今も挙げられました施設から地域への移行の具体的手はずとなるグループホームですが、五千二百を一万二千ということですけれども、社会的入院者七万二千から見て焼け石に水だと、こういう批判もされております。

 十年間で七万二千人の社会的入院を解消するといいますと、五年でいいますとおおむね半分ということになるわけですが、こうした数値目標でこの十年間で解消ということの半ばが達成されると、こういうふうにお考えでしょうか。

政府参考人(上田茂君)

 約七万二千人のいわゆる社会的入院者の退院、社会復帰を図るためには、住まいの確保ですとかあるいは生活訓練の実施あるいは居宅生活支援など、様々のニーズに応じましたサービスを提供する、提供がされる必要があるというふうに考えております。

 したがいまして、新障害者プランの目標値につきましては、こうした様々な社会的入院のニーズに十分対応することによりまして、地域生活への移行を実現することを見込んで設定したものでございます。

井上哲士君

 で、その結果、この十年間で七万二千人の半ばが達成できると、こういう数値だと、こういうことでお考えですか。

政府参考人(上田茂君)

 退院先といたしまして、地域にグループホームですとか生活訓練施設、先ほど申し上げましたが、それぞれ整備目標を掲げて地域に受皿として整備するわけでございますが、一つその退院先として今申し上げましたような各種の施設と同時に言わば退院先として持ち家のある方もいらっしゃるわけでございます。したがいまして、施設の病院の方からグループホームへの退院あるいは自宅ですとかあるいは民間のアパートですとか、そういうようないろいろな流れが、受皿があるというふうに考えております。

 また、グループホームあるいは生活訓練施設、福祉ホーム等につきましては、これまでも退所実績を踏まえて、退所後にその施設からまた自宅ですとかアパートですとか、退所されるわけでございます。そうしますと、退所後に新たな入所が可能と見込まれるところでもございます。したがいまして、こういった受皿、もちろんこういった施設と同時にホームヘルプですとか各種の福祉サービス、また在宅ケア等々を総合的に取り組むことによりまして社会復帰あるいは退院を進めていきたいというふうに考えております。

 また、今後の退院の状況ですとか、あるいは現在、精神障害者ニーズ調査を行っているところでございますが、こういった結果を踏まえ、必要なサービスの充実に今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 目標に見合うかという御答弁はないわけですが、きょうされんの調査でも、一か所もグループホームが設置されていない市町村というのが依然として二千三百六十五自治体、七三%あると、ですから基準どおり、目標どおり整備をされていったとしても有効値からほど遠いというのが関係者の指摘なわけですね。

 一方、お聞きしますけれども、保健所の数というのはどういうふうなんでしょうか。平成七年、十四年、そして五年後、十九年、どうなるでしょうか。

政府参考人(高原亮治君)

 保健所の数でございますが、平成七年及び平成十四年におきます保健所数でございますが、平成七年が八百四十五か所、平成、失礼いたしました、平成七年が八百四十五か所、平成十四年が五百八十二か所ということで二百六十三か所減となっております。平成六年に施行されました地域保健法におきまして、保健所は地域保健の専門的、広域的、技術的拠点として位置付けられる一方、市町村は住民の身近な保健サービスを実施する主体として位置付けられたところでございます。

 こうした役割分担の下で、市町村保健センターの設置など体制整備を通じまして着実に地域保健対策の基盤整備が図られておりまして、例えば市町村保健センターは平成七年から平成十四年の八年間で四百十一か所増加しております。平成十九年におきます保健所数の推移につきましてでございますが、この保健所の設置につきましては設置主体である地方自治体の御判断ということになっておりまして、国の方で予測することは困難でございます。

 いずれにいたしましても、地域保健を充実させるために保健所及び市町村保健センター、そしてマンパワーを充実させるということが極めて重要なことでございまして、地方自治体の御理解をいただきましてなお一層の充実に努めてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 衆議院での例えば保護局長の答弁を見ておりますと、地域社会で精神障害者に対する援助業務を担っている保健所等の関係機関とも連携しつつと、この保健所の役割というのは非常に言われておりますし、先ほど来ありましたこの社会保障審議会の障害者部会の分会報告書の中でも名前を挙げてこの保健所のことも言われているわけです。今、広域化とかいろいろな分業化ということが言われましたけれども、やはり身近なところにこれがあるということは大変、とりわけ障害者の方にとっては大きいわけですね。

 ですから、障害者プランで五年後の整備の数値目標が出されておりますけれども、これは関係者から大変不十分だという批判が強い。そして、一方でこの地域保健医療の中で大きな役割を果たしてきた保健所は三割減らされてきている。結局、やはりこの計画ではこの十年後七万二千人の復帰ということの姿というのは見えてきません。結局、今の制度で、仮に新しく作られた制度で指定入院機関での医療効果が上がったとしても、結局、地域における現在も七万二千人の人が社会的入院をせざるを得ないというこの困難な状況というのが解決されない限り、そこでやっぱり隘路になってしまって入院が解除できない、閉じ込めになってしまうんじゃないかという多くの皆さんのこの懸念が払拭をされないわけです。この問題はやはり抜本的な改善を同時に進めるということが非常に必要だということであります。

 もう一点、社会復帰という点で重要なのが刑務所内での精神医療でありますが、現在の受刑者の中でいわゆる精神に障害があるという方は何人ということになっていますでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 精神障害を有する受刑者、これは収容分類で M 級というふうに言っておりますけれども、その M 級の受刑者の中で医療を主として行う施設に収容する必要がある者、言わば入院患者というふうに考えてよろしいかと思いますが、そういう収容分類に基づいて収容されている者は、平成十四年十二月末日現在の数字でございますけれども、合計四百二十二名ございます。で、同じ日の受刑者総数は五万六千九百五十九名でございますので、これに占める今申し上げた意味での M 級受刑者の割合は〇・七%に当たります。

 以上です。

井上哲士君

 そういう精神障害などを持たれた受刑者が出所後再び入所してくる、こういう割合はどういうふうになっているでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答え申し上げます。

 法務省が発行しております矯正統計年報というものがございますが、これによりますと平成九年に出所した、先ほど申し上げた M 級受刑者の百八十人ですね、出所した百八十人のうち平成十三年までの五年の間、出所してから五年たつ間に再び行刑施設に入所した者は百一人で、その比率は再入率という言葉を使いますと約五六%になっております。これは今、出てから五年の間に再入所した者の比率でございますけれども、同様に四年、出てから四年の統計を見ますと、この者の比率が平成十三年までのが五八%、それから次は三年で見たものが三八%、二年で見たものが三八%、それから一年で見たもの、これが一三%になっております。

 以上です。

井上哲士君

 五年で六割近い方が再入所という数であります。一年目は措置入院されている方もいらっしゃるかと思うんですが、やはりこの数字から見えますのは、地域に帰りますと本当にいろんな困難がある、仕事の場合、問題、住まいの問題、医療の問題、こういう中で不幸にもまた事件を犯して入所されるという方のその姿が、非常に困難な姿が見えてくるわけですね。重大な他害行為を行った精神障害者で、責任能力ありということで刑務所に入りますとまともな今精神医療というのが受けられないわけですね。受けられないどころか、この間、刑務所問題で明らかになっていますように、逆に保護房に収容をされたり虐待を受けるという中で、むしろ病状が悪化をするという場合が様々浮かび上がっております。精神科の治療を受けている受刑者を保護房に収容する際は診察を受けるということになっておりますが、それでも保護房に収容されて死亡したというあの府中の事件もあるわけです。

 ですから、同じような重大な他害行為を行っても、責任能力ありと、こうなった人たちにはおよそまともな精神医療が行われない、ないと判断をされた場合には手厚い医療を施すということは、一体どうなんだろうかと。医療関係者からは、ほとんど受刑している意味のない、刑罰の意味すら理解していない人も刑務所、医療刑務所にいると、こういうような発言も行われております。

 今回の修正で、社会に復帰できるよう配慮することが必要な人に医療を、手厚い医療を施すんだということが言われたことからいいますと、それは、やっぱり社会復帰への配慮という点でいいますと、刑務所に入っていらっしゃる精神障害を持っていらっしゃる人々の医療ということも同じようにされるべきだと思うんですね。こういう差が付けられる、刑務所内のやはり精神医療の抜本的向上というものを併せて出すべきだと思うんですが、その点、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 刑務所におきましては刑の執行機関という枠組みがございますので、その中で受刑者の健康を回復させ、心身ともに健全な状態での社会復帰を図るということを目的といたしまして、医療体制を整え、近隣の医療機関等の御協力を得ながら、できる限りその充実に努めるということが重要であると考えております。そのようなことから、医療刑務所などを中心に精神科医を配置いたしまして、精神疾患者に対する適切な医療の実施に努めているところでございますが、刑務所の医療体制の充実につきましては、医師の確保を始めとして難しい問題が多うございます。

 先生御指摘のようにいろんな問題がございますので、行刑改革会議の御論議等を踏まえまして、これまでにも増して精神科医療を向上させることによりまして精神障害を有する受刑者の社会復帰につなげるよう鋭意努めてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 本当に重大な問題ですので、早急にこの向上を図っていくことを改めて強く要望をいたします。

 最後に、審判の在り方と合議体について修正案提案者にお聞きをいたし──あっ、その前に法務省にお聞きをします。

 合議体で意見の一致を見なかったという場合は一致した範囲で裁判をするということでありますが、この衆議院の答弁でも、また調査室の参考資料でも、いわゆる入院決定の際の例が出されております。片方が入院決定、片方が例えば通院であれば通院に合わすんだと、こういうことなんですが、この退院とか医療終了の申立ての決定の場合は一致した方に合わすというのは、一致した中身でやるというのは、要するに現状維持になるんではないか、こういう懸念が出されているわけですが、退院の許可、医療の申立ての決定の場合、一致を見なかった場合にはどういう動き方をするんでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 お答えいたします。

 裁判官と精神保健審判員の意見の一致したところによるということは、合議体としての意思決定は裁判官と精神保健審判員との一致した意見に従ってなされるという意味でございまして、仮に意見が一致しない場合には意見の一致する範囲で裁判をすることということになります。

 したがいまして、例えば退院の許可の申立てがなされた場合におきまして、最終的に一人が入院継続の意見、もう一人がこの法律による医療を終了させるのが相当であるとの意見となった場合には、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があることについての意見が一致せず、第五十一条第一項第三号の「前二号の場合に当たらない」ということになりますので、この法律による医療を終了する旨の決定をすることとなります。

 また、この法律による医療の終了の申立てがなされた場合におきまして、最終的に一人が通院継続の意見、もう一人がこの法律による医療を終了させるのが相当であるとの意見となった場合にも、この法律による医療を受けさせる必要があることについての意見が一致せず、第五十六条第一項第二号の「前号の場合に当たらない」ということになりますので、この法律による医療を終了する旨の決定をするということになります。

井上哲士君

 はい、分かりました。

 次に、修正案提案者にお聞きをいたしますが、衆議院での答弁では、この対象にならない場合として自傷他害のおそれもないような場合というのを挙げまして、さらに政府案として狭まったとして、対象者の精神障害の治療可能性がない場合、それからこの法律による手厚い医療まで特に必要としない場合、漠然とした危険性、再犯のおそれにすぎない場合、対象者に十分な看護者がいるなど、その生活環境にかんがみて社会復帰の妨げとならないと認められる場合と、大体この四つのことを挙げられておりますが、ちょっと午前中との議論の関係ですが、自傷他害のおそれということは、がない場合は対象にならないということは、自傷他害のおそれがあるということは言わば判断、その前提になると、こういうことになるわけですね。合議体はこれを判断をするということですね、自傷他害のおそれを。

衆議院議員(塩崎恭久君)

 この法律に基づいて自傷他害のおそれがある、ないという話は、判断はいたしません。

井上哲士君

 そうすると、自傷他害のおそれもないような場合は対象にならないという答弁が衆議院でありましたが、このないという判断はどこでだれがするんですか。

衆議院議員(塩崎恭久君)

 そもそもこの修正案の要件は、今朝から繰り返し申し上げておりますけれども、対象行為を行った際の精神障害を改善するためにこの法律による医療が必要と認められるものに限ること、そして二つ目に、このような医療の必要性が認められるものの中でも精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるよう配慮することが必要なものだけが対象になることを明確にすることによって、本制度の目的に即した限定的なものとしたわけでございます。

 したがって、修正案では、御指摘のように、例えば治療可能性のないもの、先ほどお話ありましたが、衆議院でも答弁したとおり、単に漠然とした危険性のようなものが感じられるにすぎないような場合であっても対象行為を行った際と同様の症状が再発する具体的、現実的な可能性のないようなものには本制度による処遇は行われないこととなると。しかしながら、御指摘の事例は、のような修正案の要件に該当しないものを例示的に四つ向こうで挙げたわけでありまして、入院等の決定は処遇事件を取り扱う裁判所の合議体が個々の事件に応じて判断するわけであります。

 修正案の要件に該当しないものを具体的かつ網羅的に挙げることは非常に困難でありますが、先ほどお尋ねの自傷他害のおそれのあるものという範疇の中に当然、今回のこの法律の医療を、手厚い医療を施す必要が社会復帰を促すためにあるという人たちがその中には入っている。しかし、それは、重なり方はかなり違うというふうに考えるべきだと思います。

井上哲士君

 その自傷他害のおそれがある、ないような人は、しかしこの医療を受ける必要がないという判断をどこかで、だからこの対象者が自傷他害のおそれがあるんだという判断はどこかでしなければそもそも審判の対象にならないんじゃないですか。

衆議院議員(塩崎恭久君)

 先ほど申し上げたように、元々今回の修正をするに当たって一番問題になったのが、再び対象行為を行うおそれがあるかどうかということを判断をするというところが最大の争点になって、いわゆる再犯のおそれというように疑いを掛けられたというところでございまして、そこのところを先ほど申し上げたような要件に変えたということであって、その要件を判断をするということで自傷他害のおそれがあるかないかということを判断するというのはこの法律の枠組みでの要件には当たらないというふうに思います。

委員長(魚住裕一郎君)

 時間が超過しておりますから。

井上哲士君

 時間が来ましたので。大変、疑問がかえって膨らみました。この問題は次にまた質問をしたいと思います。

 以上です。


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