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2003 年 5 月 15 日 午後

法務委員会
心神喪失者に関する医療・観察法案
質疑

  • この法案での入退院の要件について、具体的な判断基準が必要だと追及。
  • 社会復帰調整官は、保護観察所に置かず、充分な体制をとるよう要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 前回の質問に続きまして、修正案提案者に、この法律による入院命令、退院命令の要件の問題についてまず質問をいたします。

 提案者は衆議院の答弁で、自傷他害のおそれも認められないような者については社会復帰の観点からの配慮を要するとは認められませんので、この要件には該当しない、したがって、入院ないし通院の決定は行われることはないと、こういう答弁をされております。自傷他害のおそれのない者は除かれると。つまり、自傷他害のおそれがあるという人が一つの基準ということになります。

 前回質問したときに、この法律では自傷他害のおそれは判断をしないんだという答弁だったわけでありますが、では、この自傷他害のおそれがない者はこの要件に該当しないというのは一体どこで絞られることになるんでしょうか。

衆議院議員(塩崎恭久君)

 ただいま御指摘がございましたとおり、精神保健福祉法による措置入院制度におけるいわゆる自傷他害のおそれがあると認められない者については本制度による処遇の対象となることはないと考えまして、先日、そのようなお答えを申し上げたわけでございます。

 しかし、この答弁は、自傷他害のおそれがないと判断される者がいると仮定して、そのような者は修正後の要件に当てはめれば本制度による処遇の対象となるのかどうかという観点からお答えをしたわけであって、本制度による処遇の要否あるいは内容を判断するに当たって、裁判所がまずその者に自傷他害のおそれが認められるか否かということを判断するという趣旨のことを申し上げたわけではないわけでございます。

 すなわち、仮に自傷他害のおそれがあるとは認められないような者がいた場合に、そのような者が本制度による処遇の対象となるか否かを問われたとすれば、そのような者は、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるよう配慮することが必要な者ではないわけでありますので、修正後の処遇の要件の一つであります精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律により医療を受けさせる必要があると認められる場合には当たらないことから、本制度による処遇の対象とはならないと考えたことを述べたわけでございます。

井上哲士君

 そうしますと、この配慮すべき中身の一つの要素だと、こういうような理解でよろしいんでしょうか。

衆議院議員(塩崎恭久君)

 自傷他害のおそれがあるなしを今回の要件として判断をするということではございません。

井上哲士君

 いずれにしても、この自傷他害のおそれがない者は、この要件には、この入院命令や通院命令の対象にならないということのわけですが、では、そういう自傷他害のおそれがある人の中で、この法律による手厚い医療を必要とする場合と、一般医療で十分だというその判断基準、その要素というのは何になるんでしょうか。

衆議院議員(塩崎恭久君)

 これは衆議院の委員会でもかなり議論が出たところでございますが、本制度で裁判所が判断する事柄は、本制度による処遇の要件でございます、また繰り返して恐縮でございますが、対象行為を行った際の精神障害が改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためこの法律による医療を受けさせる必要があると認められるか否かということでありまして、まず自傷他害のおそれがあると認められるか否かを判断した上で、さらに本制度による処遇の要件に該当するか否かを判断するわけではないというのは今申し上げたとおりでございます。

 確かに、仮に自傷他害のおそれがあると認められるような者がいた場合に、そのような者であっても、そのようなおそれが本人の社会復帰の大きな妨げになるとまでは認められないような場合、こういう場合には、本制度による処遇の対象とはならないこととなりますけれども、このような、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるよう配慮するまでの必要がない者については、一般の精神医療が行われることは別といたしまして、本制度による処遇の対象とするまでの必要はないと、このように考えるべきと思われます。

井上哲士君

 ずっと衆議院からこういう議論が行われておるわけですが、何度お聞きをいたしましても、医療が必要な者には医療を行うんだという同義反復にしか私には聞こえないんですね。こういうあいまいもことした規定で実施をされますと、合議体の裁判も非常に困難なのではないのかと。明確なやはりものを、具体的なものを示すということが私は立法府としても必要だと思うんですね。

 措置入院の場合は昭和六十三年の厚生省の告示第百二十五号というので、自傷他害のおそれの判定基準というのを示しております。自傷行為又は他害行為のおそれの認定に当たっては、当該者の既往症、現病歴及びこれらに関する事実行為等を考慮するものとすることとしまして、病状ごとにその認定に関する事項というのが大変細かく出されております。これが出されていても、今の、現行の措置入院における判断のばらつきが大変都道府県によってあると、これは改善しなくちゃならないということを衆議院でも答弁、当局からもありました。

 衆議院の答弁の中で厚生労働大臣が、やはり判断基準が必要だという答弁もされているわけですね。では、どういう人を選ぶかということ、それは具体的にはその判断基準というものをやはり作っていかなくてはならない、措置入院につきましてはそれは作られているわけでありますから、突き詰めていけば、自ら行った行為についての認識ができているかどうか、自らを制御する能力が生まれてきているかどうかといったことが入院の一つの判断になるだろうと、こういう厚生労働大臣の答弁もあるわけですね。

 やはり、こうした具体的な判断の基準ということを示すことが必要かと思うんですけれども、この点、提案者、いかがでしょうか。

衆議院議員(塩崎恭久君)

 ただいま井上先生御指摘の告示百二十五号というのを私も見てみました。主に医療的な観点から基準が書かれているかと思うわけでございますけれども、今回の新たな処遇制度におきましては、処遇の要否、内容の決定は精神保健判定医による鑑定を基礎として行うこととされているところ、その際、考慮すべき事項が法律に具体的に規定をされております、三十七条二項ということで。

 精神保健判定医は、一定の研修を受けるなど精神医療の分野における高い知見と、特に今回、司法医学等々、全般的にこういった知見は高めていこうということでありますが、その高い知見と豊かな経験を有する医師が任命されると考えられると思います。さらに、修正案においては、指定医療機関における医療が最新の司法精神医学の知見を踏まえた専門的なものになるようこの水準の向上に努めることや、一般の精神医療の水準向上を図ることを政府に義務付けて附則などを付けているわけでありまして、精神保健判定医の水準の確保がそういったものによってなされるということだと思います。

 したがいまして、御指摘のような判断基準がこの法律以外にまた定められるということがなくとも、十分に客観的で適正な鑑定が行われることになるというふうに考えておるところでございます。

井上哲士君

 いや、鑑定に基づいて合議体が判断をするわけですから、そこのやはり判断の基準というものは要ると思うんですね。私、この厚生労働大臣の御答弁もこういう趣旨だと思うんですね。その判断基準というものをやはり作っていかなくてはならないと、こう述べられているわけですが、厚生労働省としてはどういう基準が必要で、どういう手順が必要とお考えでしょうか。

政府参考人(上田茂君)

 精神保健福祉法第二十八条の二の規定に基づく措置入院の必要があるか否かの判定を行う場合の基準につきましては、措置入院をさせる都道府県知事の判断基準ではなく、措置診察に当たる精神保健指定医が行う診察の判定の基準でありまして、判定に当たっての考慮事項等が記載されているところでございます。

 他方、本制度におきましては、精神保健判定医等が鑑定入院命令を受けた者の精神状態等について鑑定を行い、その鑑定結果を基礎とし、生活環境をも考慮して裁判所が対象者の処遇の要否、内容を決定することとしております。この鑑定を行う精神保健判定医に関しましては、司法精神医学に関する研修を受講していただくことを検討しておりますが、鑑定に際して必要と想定される検査や調査、あるいは考慮すべき事項等についても資料を作成した上で教授することを予定しているものであります。昨年十二月六日の衆議院法務委員会における坂口大臣の答弁はこのような趣旨であったと理解しているところでございます。

 この法律による医療を受けさせる必要があるか否かの鑑定に際して必要と想定される検査や調査、考慮すべき具体的事項等の内容につきましては現段階において検討中でありますが、いずれにいたしましても、裁判所から鑑定を命じられました医師が対象者の症状や行動を注意深く観察し、必要な身体及び心理検査を行い、そして対象行為を行った当時の精神症状と対象行為の関係、その際の心理・社会的状況、あるいは病歴と過去の他害行為の有無等を調査し、また諸外国の司法精神医療機関で用いられている評価尺度等も参考にしながら、さらに入院中の種々の治療に対する反応性も考慮することにより、この法律による医療を受けさせる必要があるか否かを総合的に判断していくことが可能となるようなものとしていきたいというふうに考えているところでございます。

井上哲士君

 措置入院における医師の判定というのに基づいて都道府県知事が決定するわけですが、そこで単なる診察ではなくてやはり判断が行われているわけですね。そのための基準としてこういうものが出されているわけでありますし、大臣の答弁はどういう人を選ぶかという判断基準が必要だと言われているわけでありまして、鑑定の問題を言われているんではないんです。やはり、こういうあいまいな一般的な要件のままでこれが実施をされるというのは、きちっとした判定ということからいっても非常にやっぱり問題が大きいと思います。この審議の中で具体的にこれは出していただきたいことを強く要望をしておきます。

 次に、いわゆる社会復帰調整官の問題についてお聞きをいたします。

 法案では、社会復帰調整官を保護観察所に置きまして、保護観察所に社会復帰の役割を担わせると、こういう仕組みになっております。しかしこれ、衆議院の答弁などを見ましても、今度の制度がかつての保安処分とは違うんだという理由として、処遇の決定を刑事手続と切り離していること、それから入院施設は法務省で設置せずに厚生労働大臣が所管あるいは指定する病院をしていること、こういう説明しているわけですね。ですから、処遇の決定、入院、ここは言わば刑事司法と切り離したから保安処分と違うんだという説明をしながら、最後の社会復帰の役割を担う主体を刑事司法の一環を担う保護観察所に行わせるというのは、これはやはり保安処分的な発想に基づくものだと私は言わざるを得ないと。その点いかがでしょうか。

政府参考人(津田賛平君)

 お答え申し上げます。

 本制度の地域社会における処遇につきまして保護観察所が関与するということにいたしました理由の一つは、本制度による処遇は国の機関がまず中心となって行うことが適当であるということ、二番目に、保護観察所は全国に五十か所設置されておりまして、そのネットワークによりまして対象者の退院や転居による遠隔地への移動等にも的確に対応いたしまして、統一的かつ円滑な処遇の実施が可能であることなどを総合的に考慮をしたものでございます。

 その上で、本制度におきましては、保護観察所に精神障害者の保健、福祉等に関する専門的な知識を有する者を社会復帰調整官として新たに相当数を配置いたしまして適切な処遇を行うようにしておりますことから、本制度による処遇を担う機関といたしましては保護観察所が最もふさわしい、このように考えております。

井上哲士君

 幾ら聞いてもふさわしいという説得力が見えてまいりません。従来の保護観察所の仕事と今回の精神保健観察というのは本質的に違うと、こういう答弁も衆議院では法務省自身からありました。実際、社会復帰調整官の仕事の中心が医療の確保だということ。それから、この社会復帰調整官になる人が、精神保健福祉士、看護師、保健師、いずれも厚生労働省の管轄だということ。そして、コーディネートするその相手も医療機関、保健所、いずれも厚生労働省の管轄。

 先ほど全国的組織だとか国の責任だということを言われましたけれども、実際のやる中身からいいましても、これはやはり厚生労働省が担うべき仕事だと思いますけれども、その点どうでしょうか。

政府参考人(上田茂君)

 本制度において対象者の地域社会における処遇に保護観察所が関与することとなっていますのは、本制度による処遇については国の機関が中心となって統一的に行うことが適当であると考えられること。二点目としまして、その対象となる者、目的、職務を遂行する上で必要となる専門的知識等は異なりますが、裁判所への申立て手続など保護観察所の従来の業務と類似する点もあると思われること。また、保護観察所は各都道府県に少なくとも一か所は置かれておりまして、その全国的なネットワークにより対象者の退院や転居による遠隔地への移動等にも的確に対処し、対応し、精神保健観察等の事務を円滑に実施できること。

 こういった点を総合的に考慮したものでありまして、地域社会における処遇においては、保護観察所が一定の役割を担うことが適当であるというふうに考えているところでございます。

井上哲士君

 今の答弁でも、専門的知識は違うけれども裁判所との関係などは類似をしていると、こういうことでありました。

 ですから、本来やるべき仕事である対象者の社会復帰ということの大半は、やはり保護観察所が今まで担ってきた専門的知識などとは違うということなわけですね。唯一、裁判所の関係がある、それでは私は全くこの理由にならないということを指摘します。

 刑事政策、司法の一環であるこういう保護観察所に属している人が社会復帰調整官になるということで、対象者の方も何か自分たちが監視をされているようなことになる、それで良好な治療ができるのかと、こういう懸念もいろんなところから指摘もされているわけでありまして、本当にやはり社会復帰、患者の立場に立ったことからいえば、やはり厚生労働省がしっかり担うべきだと思うんですね。

 しかも、今の保護観察所の状況を見ますと、新しい仕事を担うような状況なのかと。この間の保護観察の事件、環境調整事件の増加、今後の見込みというのはどうなっているでしょうか。

政府参考人(津田賛平君)

 お答え申し上げます。

 保護観察事件を年末の係属事件の推移で見ますと、平成十年末は六万五千八百八十三件でございましたが、その後、毎年増加をしておりまして、平成十四年末では六万九千六百二件となっておりまして、この五年間で四千件の増となっております。中でも、刑務所や少年院を仮釈放となって保護観察を受けている者の件数が近年著しく増加しておるところでございます。また、この間の件数の増加率を基に加重平均して推計いたしますと、平成十五年末の全体の件数が七万件を超えるものと予測されるところでございます。

 一方、環境調整事件をやはり年末係属件数の推移で見ますと、平成十年末には四万三千四百四十五件でございましたが、平成十四年末は五万六千三百八件と年々増加しておりまして、この五年で約一万三千件の増となっております。この間の件数の増加率をやはり同様に推計いたしますと、平成十五年末の件数は更に増加いたしましてほぼ六万件になるものと予想されます。

井上哲士君

 合計をいたしますと、今の数でいいますと平成十年で十一万弱、十五年の見込みでいいますと十三万を超えるという数になるわけですね。しかも、例えば覚せい剤事犯者とか高齢者が大変増えている、処遇困難が増えているということもあります。

 じゃ、一方、これを担う保護観察官の人数というのはどうなっているでしょうか。

政府参考人(津田賛平君)

 保護観察所の定員の推移について申し上げます。

 平成十年度は千百二名でございましたけれども、平成十四年度には千八十一名となっておりまして、平成十五年度につきましては社会復帰調整官の五十六名の定員増がございましたので、その分を差し引きまして、従来の保護観察部門だけで申し上げますと千七十四人となっております。

井上哲士君

 その中で、実際に事件担当の保護観察官というのは六百人ぐらいだとお聞きをしております。ですから、一人の保護観察官が担当する平均事件数は、保護観察と環境調整を合わせますと大体二百件ぐらいに、先ほどの数でいいますとなるわけですね。しかも、この数は今後更に増える。しかも、処遇困難者が増えまして、業務の複雑、困難さを増している。その一方で保護観察官が減らされているということでありますから、一人当たりの負担は非常に加重的に重くなっているというのが現状なわけですね。保護司の皆さんも高齢化もし定足も、充足をしていないわけですが、そういう皆さんの献身的な共同体制でようやく維持をされているというのが現状だと思うんです。

 今の刑務所の過剰収容の問題やいろんな犯罪情勢の悪化ということを考えますと、単に刑務所の収容を増やすというような形ではなくて、社会復帰を担う更生保護の分野をむしろしっかり促進をする、そういう点での役割は非常に高まっていると思うんですね。その点での大臣の認識、そして、むしろこういうところに今までと全く違う新しい仕事を担わせるのではなくて、しっかりした増員も含めて業務を充実させることこそが私は必要だと思いますが、その点いかがでしょうか。

国務大臣(森山眞弓君)

 おっしゃるとおり、保護観察所の任務というのは非常に大きくなりつつありまして、これからも更に一層責任が重くなってくると思います。

 そこへ新たな制度を入れていくわけでございますので、よほどそのつもりで準備をしなければいけないと私どもも考えておりまして、今度必要となる社会復帰調整官というものは是非とも確保しなければいけないというふうに考えておりまして、できる限り努力してまいりたいと思います。

 差し当たって、平成十五年度は、この法律がもしできればということで要求してございますが、それに、今年度は年度途中からでございますが、五十六人を要求しておりまして、来年度以降は更に増やしていかなければいけないというふうに考えています。

井上哲士君

 この制度で、社会復帰調整官は、まず裁判所における裁判時の生活環境調査、次に入院治療中の生活環境の調整、さらに通院治療中の実施計画を定め、それに基づく精神保健観察をやるという、こういう三つの大きな仕事になりますが、大体五年後、この生活環境調査、生活環境の調整、精神保健観察、それぞれ何件程度になると想定をされているでしょうか。

政府参考人(津田賛平君)

 お答え申し上げます。

 本制度におきまして、まず前提となりますが、検察官による申立ての対象となる者の数でございますけれども、年間約四百人程度であると考えられております。この数字を基に類推いたしますと、生活環境の調査につきましては年間これとほぼ同程度の数が予想されるところでございます。

 本制度の施行後でございますが、まずどの程度の人員に対して入院決定や通院決定がなされるのか、それから入院決定された者がどの程度の期間、入院することになるのか、それから退院した後にはどの程度の期間を経て本制度の処遇を終えることになるのか、これらのことにつきましては、処遇事件を取り扱う裁判所の合議体におきまして個々の事件に応じて決定される事柄でございますので、生活環境の調整と精神保健観察の事件数の予測につきましては確定的なことを申し述べることは困難でございます。

 なお、精神保健観察につきましては、先ほど申し上げましたとおり、検察官の申立ての対象となる人員が年間約四百人程度見込まれるところでございますので、当初から通院決定を受けた者、あるいは指定入院医療機関から退院した者につきましては数年にわたって精神保健観察を実施することを考えますと、本年施行後数年のうちに千数百名程度にはなることが予想されるところでございます。

井上哲士君

 精神保健観察が千数百名、生活環境調査がですから約四百、それに加えて生活環境調整ということが入りますと、私もいろんな試算などを見せていただいていますが、ある程度の年、時限がたちますと、大体合計すると三千件ぐらいになるのではないかというような試算も見せていただいております。

 衆議院の答弁では、この社会復帰調整官の対象者は五名から十名程度ということも言われておりますが、この五名から十名というのは精神保健観察の数だけを想定されているのか、それとも生活環境調査なども含めた数を想定されているのか、これはどちらでしょうか。

政府参考人(津田賛平君)

 先ほどおっしゃいました五名ないし十名という数字でございますけれども、これは一般の保護観察官の行っております保護観察と比べまして大体倍程度の時間が掛かるのではないかということから五名ないし十名という数字が出ておるものでございますけれども、この数字は、今御指摘ございましたように、専ら精神保健観察に従事するとした場合に、社会復帰調整官が専ら精神保健観察に従事するとした場合に一人の社会復帰調整官が担当できる対象者が五名ないし十名となるということでございます。

井上哲士君

 ですから、精神保健観察で五名ないし十名ということでありますけれども、環境調査、生活環境調整も加えますと十数名というような規模にもなっていくわけですね。私、これは大変な数だと思うんです。

 現在の保護観察でも、東京や大阪に、保護観察所に直接処遇班ありますけれども、大体十数名の担当だとお聞きをしておりますが、今度の場合は格段に負担も大きいわけですね。審判が行われる地域と指定入院医療機関の所在地、それから地域に戻る場所が必ずしも同じ県とは限らないわけでありまして、いろんな調査、調整についても他府県まで行くということも必要になるでしょう。それから、最初は一県に一名ぐらいしか配置をされないわけでありますから、対象者に訪問をするという点でも大変な負担になるということを考えますと、本当に言われているような機能を、それだけのことを担当してできるのかということを私は非常に疑問に思います。この点は本当にしっかりとした人的体制の確保ということを、我々は法務省保護観察所に置くのではなくて、厚生労働省に置いた上でしっかりした人的な確保をしていただきたいと思います。

 かつ、その関係機関をコーディネートしようと思いますと、研修ということもありました。しかし、相当現場の状況を知って人的なつながりもある、人的な、そして状況も知っているという人がやらなければなかなかコーディネートということにならないと思うんですね。この辺の人の確保ということは大変重要だと思うんですが、これはそういう点からいっても私は厚生労働省が担うことが必要だと思うんですが、現実のやっぱり十分な経験を積んだ人を確保するという点で厚生労働省はどういう責務を担おうとされているんでしょうか。

副大臣(木村義雄君)

 井上先生の御質問にお答えいたします。

 社会復帰調整官につきましては、まず法務省においてその確保及び質の向上が図られるものと承知しているところでございますが、厚生労働省といたしましても、社会復帰調整官に対する研修等が行われる際、必要に応じまして医療機関、精神保健福祉センター、保健所等の関係機関の協力を得られるよう努力してまいりたいと、このように思っておるような次第でございます。

井上哲士君

 終わります。


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