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2003年5月27 日

法務委員会
心神喪失者に関する医療・観察法案
質疑

  • 起訴前簡易精神鑑定の問題点を指摘し、鑑定システムの改善・充実を求めた。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、昨日の連合審査でも問題になりました二十二日付けの毎日新聞の報道に関連してお聞きをいたします。

 この報道では、本法案の対象となる六つの重大事件に関して、二〇〇一年度の警察官通報三百七件のうち、措置入院が二百八十件だと、その大半が検察に送致されていないとしております。本法案の審議の土台にかかわる問題でありまして、昨日の連合審査では、警察、厚生労働大臣、調査をすると明言をされました。私からも強く求めておきます。

 その上で聞くんですが、精神障害を持った当事者の方が重大な他害行為を行って警察官通報で措置入院をされていると。その場合、報道ではこの法案の対象外というふうになっているわけですが、こういう措置入院、警察官通報で措置入院になっている人に対して、この法案はどのように適用をされていくんでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 本制度は、対象者につきましては、特に国の責任において手厚い専門的な医療を行う必要があると考えられること等から、裁判所の決定により精神保健福祉法による一般の精神医療に優先して本制度による処遇を行うこととしたものでございまして、警察官による二十四条通報が出された者につきましても、検察官が事件送致を受け、心神喪失等の状態で対象行為を行ったと認めて不起訴処分とした場合、又は対象行為について心神喪失等を理由に無罪等の裁判が確定した場合は検察官により申立てがされ、本制度による処遇の要否、内容が裁判所によって決定されることになります。また、現に措置入院がなされている者の場合も、検察官による申立てが出されれば第三十四条に基づく鑑定入院命令により鑑定入院に付されることとなります。

井上哲士君

 そうしますと、措置入院をされている、言わば治療を受けている人が途中から鑑定入院に変わるわけですね、医療機関が変わるという場合もあるでしょうが。言わば、治療の対象であった人が鑑定の対象になっていく、この経過で医療の中断であるとか医療の後退であるとか、こういうことが大変心配をされるんですが、その点はどうでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 鑑定入院をされる場合にも、どの先に鑑定入院させるかというようなことは法の規定する範囲内で裁判所が判断することだろうと思いますので、いろいろなことがしんしゃくされるものと思います。

井上哲士君

 少なくとも、措置入院中に行われていたような医療が中断をしたり、その水準から下がる、鑑定入院に回ることによって、それは絶対にないということは断言できますか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 そういうような、何といいますか、対象者の今後の治療に甚大な影響を及ぼすようなことはされないだろうというふうに思います。

井上哲士君

 されないだろうということでは困ると思うんですね。その治療が現実に措置入院でされていて、鑑定入院に回ったら医療の水準が下がるということになりますと、正にこの当事者は大変な不利益を被ることには結果としてなるわけですね。こういうことが絶対ないような仕組みにするべきだと思うんですが、厚生労働省、どうでしょうか。

政府参考人(上田茂君)

 ただいま議員お話ございました鑑定入院の期間中にも、鑑定その他医療的観察という鑑定入院の目的を踏まえつつ、病状の悪化を防ぐための投薬ですとか、治療の効用を確かめるための精神療法等を行うなどの必要な医療を行うということになるわけでございます。

 ただいま先生が、それぞれの施設における医療が断絶といいますか、そういった御指摘がございましたが、こういった点については、医療機関を移動する際、その関係医療機関の間で連携が、十分確保し、適切に情報の伝達を行うことによりまして継続的な治療、継続的な必要な医療が確保できるということが、確保されるというふうに考えております。

井上哲士君

 今、悪化をしないための治療という答弁だったわけですね。しかし、措置入院のときには症状を良くするための治療がされているわけですよ。鑑定入院に回ったら、少なくとも悪化を抑える程度の治療と。治療の水準がやっぱり下がるんじゃないですか。

政府参考人(上田茂君)

 ですから、悪化を防ぐ、症状の悪化を防ぐという、そういう投薬、治療を行うわけでございます。したがいまして、当然、患者の生命ですとか、そういった病状の悪化、その維持するという、そういう視点での必要な医療は行われるわけでございます。

井上哲士君

 全然答弁になっていないですよね。

 やっぱり、何度お聞きしても、措置入院からこの鑑定入院に回ることによって、それまでは病状を良くするための治療が行われていたのが、少なくとも悪化を抑えるための治療にとどまってしまうと、こういうことしか幾らお聞きしても聞くことができないんですね。やっぱり、この二つの制度をきちっとした、このことをせずにやってきていることにおけるやっぱり大きな矛盾だと思うんですね。これは絶対にそういうことが起きないということを改めて強く求めておきたいと思います。

 その上で、簡易鑑定の問題についてお聞きをいたします。

 医療と司法がそれぞれの役割を果たして連携をすることが必要であります。責任能力がある人にはしっかり司法を提供する、そして治療を必要な人には迅速的確な医療を施していく、その分かれ目になるのがこの起訴前鑑定なわけですが、起訴前鑑定で責任能力なしとされた場合に起訴となる割合というのはどうなっているでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 お尋ねは、起訴前の簡易鑑定における鑑定医の診断結果と検察官による事件処理の関連を問われるものでありますところ、そのような観点からの統計的な把握はしていないため、お答えいたしかねることをまず御理解いただきたいと思うのでありますが。

 一般論として申し上げますと、検察官は、事件処理に当たり、被疑者に責任能力があるか否かを判断することになり、その判断のために必要があると考えられる場合は精神医学者等の専門家の意見を徴し、これを参考に判断することになるが、最終的には、有罪判決を確定する見込みがあるかという観点から所要の捜査を遂げ、他の関係証拠をも十分に考慮した上で、この点について判断した上、被疑者に責任能力がないと判断した場合には心神喪失による不起訴処分をし、被疑者に責任能力があると判断した場合には、限定責任能力の場合も含め、犯罪の軽重や情状等、諸般の事情に照らして適切な処分を行うものと承知しておりまして、委員の御質問に理屈の面で答えればあり得るということでございますけれども、これ、実務的な感覚から申し上げますと、そういう場合はほとんどあり得ない。といいますのは、やはり精神科医が責任能力がないというふうに傾くような鑑定結果を出しております場合に検察官があえてこれを起訴をしようとすれば、恐らく本鑑定をした上で結論を出すだろうというふうに考えるからであります。

井上哲士君

 ほとんど起訴はないという答弁でありました。

 ある全国データを見ましても、責任能力なしとされた者のうち九八・一%が公判請求に至らなかったというデータがあります。ですから、この鑑定結果は起訴か不起訴かという非常に大きな分かれ道になるわけですね。にもかかわらず、様々な問題が指摘をされてまいりました。起訴便宜主義の下で、起訴したら一〇〇%有罪にしなくちゃならないということが優先されてきたんじゃないか、裁判で責任能力が問われて無罪になるのを恐れて、検察の意向に近い鑑定医に依頼をして安易に不起訴にしてきたんではないかとか、さらに、いったん起訴をすればもう絶対にこの責任能力なしを認めない、こういうダブルスタンダードがあったんではないかとか、また医療の側からは、本来、司法に回るべき人が医療に回されてきているという批判もありますし、精神障害の当事者の皆さんからは、裁判を受ける権利が奪われていると、こういう声もありました。

 昨日も連合審査で、「厚生科学研究の責任能力鑑定における精神医学的評価に関する研究」が紹介をされておりましたが、この中でも、簡易鑑定の実施状況には鑑定の精度や人権擁護の観点から無視できない地域差、病院差、個人差があることが判明をした、こういう指摘もされております。

 こういう簡易鑑定の現状についてどのようにお考えか、まずお聞かせください。

政府参考人(樋渡利秋君)

 精神鑑定、特に簡易鑑定につきましては様々な御意見や御批判があることは承知しておりまして、それにかんがみますと、鑑定事例の集積と分析、司法精神医学に関する理解の徹底、鑑定人への情報提供の在り方等につき検討すべき点はあると考えておりまして、今後このような点について理解を深め、一層適正な精神鑑定の運用を図るとの観点から、専門家の意見等をも踏まえつつ、一つには、捜査段階において精神鑑定が行われた事例を集積し、精神科医等も加えた研究会等においてこれを活用すること、二つには、検察官に対し、いわゆる司法精神医学に関する研修を充実させること、三つには、鑑定人に被疑者に関する正確かつ必要十分な資料が提供されるような運用を検討すること等の方策を講ずることを検討したいと考えているところでございます。

井上哲士君

 批判があることは承知しているという答弁はされるんですが、現状が問題あるということは一貫して認めになりません。

 そこで、お配りをしている資料を見ながら質問をいたしますが、法務省に出していただいた資料ですが、平成十二年度の地検別の簡易鑑定の実施状況でありますが、まずどういう場合に検察官が鑑定に回しているのか。この資料の(A)が検察庁で受理をした人数全体、(B)がそのうち簡易診断に回された数でありますが、全体の平均は三十八万三千四百二十一に対して二千四十二でありますから、〇・五三%です。しかし、例えば最高の那覇地検は三千四百二十六に対して六十四、一・八七%。最低の福島地検は六千百四十五人に対して四で、〇・〇七%。実に二十倍以上の開きがあります。

 どういう場合に鑑定に回すかというのが非常にばらばらなのではないか、何らかのガイドラインを作るべきだという指摘がありますけれども、その点どうでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 お尋ねは、精神科医による精神鑑定の具体的手法にもかかわりますところ、精神鑑定は個々の精神科医がその専門的知見に基づき行うものでありますことから、その性質上、これを嘱託する立場にある検察当局において簡易鑑定の実施方法を一律に決め得るものではないと考えております。

 もっとも、検察官においても鑑定医に対する資料提供等を行う上で鑑定が適正になされるように配慮をすべきことは当然であり、お尋ねの点につきましては、今後とも精神科医を加えた研究会等での御議論も踏まえ、簡易鑑定の更に適正な実施を図る上でどのような方策が有益かについて検討してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 それは、簡易鑑定を受けた人のうち、この精神障害者と鑑定している率が非常にばらついているというお話の答弁だと思うんですね。

 今、私が聞きましたのは、そうではなくて、どういう場合に鑑定に回すかという点、検察の側の基準がばらばらではないかということなんです。もう一回、答弁お願いします。

政府参考人(樋渡利秋君)

 質問の意味を取り違えたようでございまして、失礼いたしました。

 検察官は、各事件について所要の捜査を行った上、犯行に至る経緯、動機や犯行態様、犯行後の状況、被疑者の病歴等の諸般の事情に照らし、責任能力の有無を判定するために専門家による精神状態の診断を得る必要があると判断する場合に精神鑑定を嘱託するものと承知しておりまして、その場合、簡易鑑定を行うか、本鑑定を行って鑑定留置により詳細な検査を行うかにつきましては、事案の内容や被疑者の状況等に応じ判断しているところでございまして、このような判断は正に個々の事案における検察官の事実認定にかかわる問題でありますから、ガイドライン化になじみにくいことを御理解いただきたいと思うのであります。

 もっとも、検察官におきましては、専門家に十分な資料提供等を行った上、その意見を十分に踏まえた上で適切に処分を決するべきは当然でございまして、このような観点から、今後、検察官に対するいわゆる司法精神医学に関する研修を充実させることを検討するほか、精神科医を加えた研究会等の議論を踏まえ、鑑定の更に適正な実施を図る上でどのような方策が有益かについて検討してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 それぞれの検察官の判断ということでありますが、それにしても、最高一・八七、最低で〇・〇七、この二十倍の開きというのは余りにも大きいと思うんですね。

 今、答弁がありましたけれども、こうやってかなりばらばらの基準で検察から鑑定に回って、そのうち精神障害者と鑑定されている率というのは、全国平均でいいますと七二・六%ですけれども、この資料でいいますと、(C)ですね、精神障害と診断された人の数、大体八割を超える地検は十六、五割未満が十一、こういう非常にばらつきがあります。なぜこういうことになるんだろうかと。私は、やはり体制の問題が一つ大きいと思うんですね。

 資料の一番右側になりますけれども、鑑定医が一人当たりでどれだけ担当しているか、これは非常に極端な開きがあります。全国平均では鑑定医一人当たりの年間診断者数が四・九人ということになっておりますが、見ていただきますと、大阪は一人で百二十八・五人、神戸は百六・〇、京都は三人で百五件を診て一人頭三十五・〇になっていますが、実際はほとんどを一人がやっておりまして、大体ここも百件ぐらいを年間やっているというふうにお聞きをいたしました。

 一人で年間百件以上も鑑定をする、こういう状況が適切だとお考えでしょうか。どうでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 地域により鑑定医数や鑑定医一人当たりの鑑定件数に差異が見られることは承知しておりますが、これは簡易鑑定を適時に依頼することができるよう、各庁の事件数や依頼可能な医師数等の実情に応じて、一部の庁においては例えば精神診断室を設けて特定の医師に定期的に依頼をするなど、各庁において工夫を行っている結果、比較的少数の医師に集中的に簡易鑑定を依頼している庁とそうでない庁が存在していると考えられます。

 このように、委員御指摘の地域差等について、鑑定制度の在り方との観点や人権擁護の観点から問題があるとは一概には言えないものと考えますが、各検察庁においては鑑定医の確保について今後とも努力していくものと承知しており、また法務当局におきましても、委員御指摘の点を含め、様々な御批判や御意見を踏まえつつ、さらにこれらの点について検討を進めてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 地域の実情と言われましたけれども、大阪、京都、神戸なんというのは精神科医はたくさんいらっしゃるんです。ですから、やはりきちっとした組織化をしてこなかった。

 この中には、十数年間にわたって一人で全部鑑定をしてきた方という方もいらっしゃるんですね。毎週、決まった曜日を鑑定に空けてくださっているということで、敬遠をする医師が多い中では大変貴重な方だと思います。その方に問題があると私は言うつもりはありません。しかし、幾ら優秀な鑑定医であっても、特定の人だけがずっと十数年間もやっていると、最新の医学的知見を生かしているのかどうか、鑑定書の内容が本当に適切なのかどうか、専門家同士での検証もないということになりますとやはり判断基準が偏るおそれがあります。

 私も、関西のある公立病院の院長さんにこの間お会いする機会がありましたけれども、とても心神喪失とは思えないような患者が責任能力なしと鑑定をされて措置入院している例が百件に数件の割合であると、こういうふうに言われておりました。先ほど紹介した厚生科学研究の中でも、少数の鑑定医が多数の鑑定を実施する寡占型の地域で判定基準の偏りが懸念をされたと、こうしております。

 やはり、一人で百件以上持つというのはかなり問題が私はあると思うんですけれども、改めて答弁をお願いします。

政府参考人(樋渡利秋君)

 委員御指摘の懸念はよく理解できるところでありますが、そこで先ほど申し上げましたように、各庁の実情に応じて現在やっておりますことはこれまた事実でございまして、委員も御指摘のように、その医師に必ずしも問題があるというわけではないわけでございます。しかしながら、委員の御指摘をも踏まえまして、さらにこれらの点について当局としましても検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 先ほど紹介した研究では、多数の鑑定医が鑑定業務を分担する分散型の地域では判定基準の不統一が懸念をされたと、こういう指摘もあります。そういう中で、例えば千葉では、三十人ほどの精神科医のグループが交代で簡易鑑定を行って、年に一度、検察官との協議会も開いているとお聞きをいたしました。その結果、起訴率が一〇%上がったという報告がされております。起訴率が上がればいいということを言うつもりはありませんけれども、やはり集団的にやって、検証もしたことによって鑑定の精度が高まったというふうに思われるんですね。

 少なくとも、こういうふうに集団的に研修をする場を作る、そして集団的な鑑定医の体制を作る、これはやはり地検ごとに努力をすべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 御指摘のように、千葉地方検察庁におきましては、千葉県精神医療審査会が推薦する精神科医を県内五ブロックに分け、これらの医師に順番に依頼するという方法により精神科医が責任能力鑑定を行っているものと承知しております。

 このような方法は、必要な鑑定医の確保のための一つの手段であると考えられまして、何度も繰り返すようでございますが、各検察庁におきましては、各庁の事件数や医師数などの実情に応じ鑑定医の確保について今後とも努力していくものと承知しており、また法務当局におきましても、御指摘の点を含め、様々な御意見を踏まえつつ、更に検討を進めてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 措置入院の場合は二人の医者の診断ということを必要としているわけですから、私は、この起訴、不起訴にかかわる大きな問題ということでいいますと、集団化をしつつ、かつ複数の鑑定ということも必要ではないかと、このことも提起をいたします。

 その上で、その鑑定の中身、特に鑑定書の問題です。

 関西のある地検で行われている簡易鑑定の診断書を私、名前を伏せて見せていただきました。非常に簡単なんですね。驚きました。例えば、現在症についてはわずか七行書いてあるだけで、診断は、精神分裂症の急性の発病が最も疑わしい、いずれにしろ法家の言う心神喪失に該当すると言うべきである、したがって法律による処遇よりも医療による保護が適切であろうと。現在症が、この上で、その決め手になる犯行時の精神状態がどうだったのか。これは、犯行時の精神状態は現在と同様であると一行書いてあるだけなんですね。なぜそういう判断をしたのか、こういう説明はもう全くありません。一行だけ。

 こういう、この程度の鑑定書で事実上の起訴、不起訴が決まる、これではちょっといい加減過ぎるんじゃないかという、私も率直に思いましたし、多くの批判があります。一方、一件につき三十枚から五十枚ぐらいの鑑定書を書く方もいらっしゃいます。

 可能な限り、そういうことも必要でありましょうけれども、迅速さとか医師の確保ということを考えますと、様々な判定基準のばらつきをなくす、しかし最低限の中身は保証していくという点でいいますと、最低限の項目などを示した統一的な書式などを示して鑑定内容の水準を担保すべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 先ほども少しお答えいたしましたが、精神鑑定は個々の精神科医がその専門的知見に基づいて行うものでありますから、その性質上、簡易鑑定の実施法を一律に決め得るものではないというふうに考えております。

 もっとも、検察官におきましても、鑑定医に対する資料提供等を行う上で鑑定が適正になされるように配慮することは当然でございますから、お尋ねの点につきましては、御議論も踏まえまして、簡易鑑定の更に適正な実施を図る上でどのような方策が有益かについて今後とも検討してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 最高裁の事務総局の家庭局が出している「新しい成年後見制度における鑑定書作成の手引」というのを私、先日いただきました。

 この中では、この成年後見制度の精神鑑定に当たりまして、必要かつ十分と考えられる記載の一般的な基準を示すことにより、簡にして要を得た鑑定書の作成に役立てることを目指したということで、鑑定書の書式、そしてそのガイドラインが、ちゃんと最高裁は出しているんです。そして、これはあくまでもその例であって、事案に即した適切な鑑定書が作成されることが望ましいと、こうなっているわけですから、なぜこの民事鑑定でできて刑事ではできないのか、こういうものぐらいは提示すべきじゃないでしょうか。

政府参考人(樋渡利秋君)

 要は、この精神鑑定によりましてその責任能力の有無について検察官が判断した上で刑事上の処理をするわけでございまして、慎重に検察官は独任制の官庁として執務をこなしていく上で、そのお医者さんの個々の鑑定を重要視しているというところがございます。

 したがいまして、そのサンプルを作るということをこれは決して否定するわけではございませんけれども、今後検討してまいりたいとは思いますが、そのことによってのみ適正な鑑定ができるというものではなく、あくまでも精神科医の方のその鑑定を一つの頼りにしながら検察官が判断していくということでございます。

委員長(魚住裕一郎君)

 時間です。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、先ほど紹介しましたように、犯行時の精神状態は現在と同様であると、こういう一行をもって責任能力なしということが判断をされるような鑑定書のままでいいのか、こういう簡易鑑定でいいのかということを問うているわけでありまして、こういう問題が結局、後回しにされたまま入院処遇だけを進めていくと、こういう法案では大問題だということを改めて指摘をして、終わります。


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