- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
浜谷公述人にお聞きをいたします。
今日、イラクへの攻撃が開始をされる、そのさなかで今日の公聴会開かれております。私どもはこの攻撃は即時中止を求めております。第一に、国際憲章の平和のルールを真っ向から踏みにじるものだからであります。今回、国連安保理は戦争の根拠になるいかなる決議も行っておりませんし、だからこそ米英が新しい決議を求めまして、そのたくらみ自身が失敗をしたわけですから、正にこの戦争が国際法上の根拠を持たない道理のないものだと思います。二つ目に、イラクの大量破壊兵器問題を平和的に解決をするその道を力ずくで打ち切ったと言わざるを得ないと思います。査察団は大量破壊兵器の破壊のために数か月の査察延長が必要だという報告を安保理に行いまして、かつ具体的な作業計画まで提出をしていたわけで、言わば本格的軌道に乗ろうとしたものを断ち切ったというものだと思います。そして三つ目、正に罪なき人々の命を多数を奪い傷付ける、これを言わば自由の名の下に行うということは許されないものだと思います。
特に、最初の国連憲章の平和のルールとの関係で浜谷公述人に質問をするわけですが、先ほどもありましたように、国連憲章のルールは二つの世界大戦の大きな犠牲の上に、紛争は平和的な解決をしていくと、そういう点で武力行使にいろんな厳しいルールを付けました。今回、武力攻撃も受けていないのに各国が勝手に武力行使をしちゃいけないというこの国際憲章のルールを破るようなことがやられたわけであります。
特に重要なのは、昨年の九月にいわゆるブッシュ・ドクトリンというものが作られました。アメリカの国家安全保障戦略でありますが、この中でいわゆる先制攻撃というものがうたわれたわけであります。いろんな報道でも今回の行動がこの国家安全保障戦略の適用第一号になるじゃないか、このことが言わば世界の平和のルールを書き換えるものになるじゃないかと、こういう厳しい指摘もあるわけであります。
このいわゆる国家安全保障戦略、ブッシュ・ドクトリンと今回の武力行使の言わば関係、そしてこれが今後の国際の平和のルール、秩序に対してどういうことをもたらしていくのかと、この点、浜谷公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
- 公述人(浜谷英博君)
よく、今回の攻撃は国連憲章違反だという理屈がありますけれども、国連憲章違反ということについては必ずしもそうではないという意見もあって、これは見解の相違ということになると思うんですね、いわゆる決議があると。国連憲章については、国連憲章に違反するかどうかは、その国連の決議を守るかどうかということに具体的にはなるわけですから、そうすると、その決議をどう解釈するかという見解の相違によって、あれでいいんだという人もいれば、あれじゃ駄目なんだという人もいる。だから二つに分かれると。これはもうどうしようもないことなんですね。それだけあいまいな決議であったということも間違いないということです。
確かに、ブッシュ・ドクトリンのこともおっしゃられましたからそれに触れてみたいと思いますが、ブッシュ・ドクトリン自体がまだ国際的に認知されているとは当然言えないと思うんですね。アメリカの今回の攻撃そのものが、いわゆるブッシュ・ドクトリンには基づいたものであったとしても、国際慣習からいえば、これは明らかに現在までの国際慣習には反するということは言えるだろうと思います。
これは正に手続ですよね。要するに、武力行使については、いわゆる自衛のためということと国連の決議による承認というもの以外には武力行使をしない、認められないということが長年の言わば慣行として、私は先ほどから知恵、知恵と言っていますが、知恵としてそれをみんなが守って今まで来たわけですから、その原則を破るということについてはこれから相当な議論をした上で対応していかないと、それはまずいと思うんですね。したがって、日本の政府が果たしてそこまで考えた上で今回の支持ということを表明したかということについて、僕は説明が足りないということを先ほど申し上げたということであります。
今後の影響については、これは分からないというのが正直なところでありまして、それで国際社会が納得するとは思いませんので、結果的にまたアメリカは多国間主義に戻ってこざるを得ないのではないかと、期待も込めてですね、戻ってこざるを得ないのではないかと思います。要するに、単独行動主義でやることについては今現在の国際社会ではもうどこまで行っても限界があるというふうに考えております。
- 井上哲士君
今回の攻撃の一つの理由にテロ対策ということが言われるわけでありますが、テロ組織というのがいわゆる国家ではなくていろんなところにいろんな形で存在をしている。だからこそ、国際社会が一致をしていろんな形でのテロ根絶のための協力が必要だということで、この間、国連でも議論がありましたし、我が国でもいろんな法整備もしてきたわけであります。
今回のこの攻撃が、一方で暴力の連鎖という形でのテロの新たな原因になるという問題と、それからそうした国際協調におけるテロ対策というものを、今回の国連の安保理に基づかない行動ということで、これを壊してしまう、逆にテロ対策に逆行するんじゃないかという、こういう議論がありますが、その点、浜谷公述人の御意見をお願いいたします。
- 公述人(浜谷英博君)
テロ対策というのは、これはもう御承知のとおり、一国だけではどうしようもないわけですね。いわゆる国際協力の中でしか対応措置はできないということであります。したがって、いわゆる国際社会の合意と国連の決議というのが最も望ましいわけですが、そういうものがあった場合には、私は武力行使そのものを否定するものではありません。
先ほど、フクロウ派の立場を堅持した方がいいんじゃないかと言ったのもそういう意味を込めて言ったわけであって、要するに、今おっしゃられました罪なき人々が確かに犠牲になるということは、これは事実でありましょう。しかし、現在の体制が、じゃその罪なき人々をすべて救っているかというと、必ずしもそれも言えないということですから、先ほど志方先生が触れられた、いわゆる人道的なものを守るためにどの程度までだったら非人道的なことが許されるかというような、非常にシビアな疑問を我々に今突き付けられているんだというふうに思います。
- 井上哲士君
いわゆる査察の有効性ということも先ほど来議論があったわけでありますが、確かに十二年間行われていますが、先ほど来日したリッター氏などは、九五%程度はかつてこれを除去したということを言われました。そして、逆に言えば、十二年といいますけれども、再開をしてからはまだ数か月しかたっていないということがあるわけであります。
先ほど申し上げましたように、作業計画まで提出をしているという状況の下で、これはもう廃棄できないと断定をしたわけですが、ブッシュは。これについてはいかがお考えでしょうか。
- 公述人(浜谷英博君)
査察については、これはやらないよりもやった方がいいわけですから、確かに有効な部分はあると思います。しかし、その査察が有効になったという現実は、正にその武力を背景にして、その担保があったからこそ査察が有効になったというふうにも言えるでありましょうし、それからイラクの対応を、査察の対応を見ておりますと、いわゆる査察に行ってから小出しの報告書が出てくるわけですね。
ということは、これは誠実に査察をやっているというよりは、これだけ脅されたからこれだけのものの対応をするというような非常に不誠実な対応に見えて仕方がないわけですね。したがって、これはイラクがまだ何か持っているに違いないという疑惑、疑念ばかりをいわゆる増やしていくわけであって、これは誠実な態度だと思えない。
ですから、査察の有効性そのものが軍事的背景によってなっているという事実も考えますと、これはいつまでたっても査察だけをやっているということでは何の解決にもならないということは思います。
- 井上哲士君
どうもありがとうございました。
元自衛官をされていたような方から先制攻撃をどうやるべきかとか、多国籍軍に参加しなければ自衛隊は何のためにあるのかと、こういう発言が出たことは、私は今の憲法とは全く相入れないことだと思います。このことを指摘をいたしまして、質問を終わります。