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2004 年 3 月 23 日

法務委員会
弁護士法一部改正案(質疑終局まで)

  • 弁護士となる資格取得の特例において、日弁連が行う研修制度について質問。法務省が、各行政機関に対して作成した裁判迅速化のためのパンフレットについて。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 本改正案の目的や趣旨については先ほど来答弁がございましたので、それを踏まえた上で、研修の具体的な中身についてまずお尋ねをいたします。

 この研修は日弁連が行うことになるということでありましたけれども、その場所、それから、百九十時間ということでありましたけれども、実際にはどのぐらいの期間になるのか、それからそのうちのいわゆる実務研修はどれぐらいの期間になるのか、お答えください。

政府参考人(寺田逸郎君)

 あくまで検討中という前提でお話し申し上げますが、場所は基本的には集合研修を東京でするということでございまして、実務研修は今年度は少なくとも東京と大阪という二か所で行うという方向で現在検討中でございます。

 それから、全体の時間数でございますけれども、先ほどの、百九十時間程度と申し上げましたが、それを実際には一か月の期間に割り振って行う予定でございまして、そのうち実務研修と言われるものは約四分の三ということで御理解いただきたいと思います。

井上哲士君

 実務研修も東京、大阪二か所ということでありますが、今後の課題としては、もう少し全国どこでも参加できるようなことも考える必要があるんではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは今年初めてできる制度でございまして、やっぱり受入れ側の体制というものも考えなければなりません。そういったことで日弁連と御相談申し上げて、現在のところは東京、大阪ということで考えてございますが、将来の動向は、これによってどの程度の方がこの研修を受けられるかというようなことにも関連いたしますが、今後の実際の運用と受講生の動向というものを見てまた考えたいと、このように考えております。

井上哲士君

 せめて高裁がある全国八か所とか、それぐらいまで広げることは視野に入れていただきたいと思います。

 先ほど研修を受講しているときの身分の御議論がありましたけれども、具体的には日弁連と研修受講契約を結ぶということになるんだと思うんですが、具体的な身分としては結局どういうことになるんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 先ほども御説明申し上げましたとおり、公務員に準じた司法修習生と異なりまして、特に法律上の決められた身分というものはございません。おっしゃるとおり、受講生ということで日弁連の方で研修を行う、その研修機関との約束で研修をさせてもらう、こういう立場になるわけでございます。

井上哲士君

 研修中の身分がそういうことになりますと、先ほども少しありましたけれども、弁護士の実務としての秘密交通権に基づく接見であるとか、それから公開法廷でない和解の現場に立ち会うとか、こういう現場の実務ができない者が出てくるかと思うんですが、それは具体的にはどういうことになるんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 おっしゃるとおり、一定の立場、法律上の立場がありませんで、また守秘義務等もございません。そういった関係で、今御指摘ありましたような閉ざされた場所での活動、例として挙げれば、接見のときに同行して一緒に接見する、あるいは非公開の和解手続等に加わる、こういうことはできない、こういう理解でございます。

井上哲士君

 この研修を受けられる方は正にそういう一番の現場での経験がないという方なわけで、そういう人たちが弁護士になるそのための研修ということになりますと、そういう現場での研修を受けることができないというのは不都合ではないんでしょうか。

政府参考人(寺田逸郎君)

 これは立案上の問題で、昨年の法改正でそういう形になりましたので私からお答え申し上げるのが適当かどうか分かりませんが、私どもの理解では、この制度というのは、あくまで、本来は相当の実務経験等を経ておられる方々に最終的に、実務の現場に入っていかれる最終段階として必要最小限の枠組みとしての研修を行うと、こういうことでございまして、また研修をお受けになる方々の便宜として、当然のことながらその職を離れずに一定の期間だけ研修に専念していただけると。その期間も極力御不便のないように取り計らって、先ほど申し上げましたように約一か月程度で何とか終わるように考えたわけでございます。

 そういう性格の研修でございますので、先ほど申し上げましたように、できるだけ実務のエッセンスというものは習得していただきたいとは思いますけれども、本来司法修習生でなければできないような接見への立会いでございますとか、あるいは和解期日への立会いというようなものはなくても何とかなるんではないかという御判断でこういうふうにされたというふうに理解をいたしております。

井上哲士君

 相当な実務の経験を積んできておられる方だということでありますが、しかし最も行われていないのがそういう接見であるとか和解の場面に立ち会うというその現場のことだと思うんですね。

 私は、こういうものを例えば実際に身に付けていただくために、例えばみなし公務員のような身分保障をして、当然守秘義務も課すという形でそういう現場での研修もできるようにするということも考えられてもよいと思うんですが、そういうことは議論にならなかったんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 ただいま寺田部長の方から答弁があったと思いますけれども、私どもの検討会におきましても、やはり一定の地位を与えて、それで守秘義務を掛けたり、それから今言いましたような接見等を可能にするとか、そういう議論はされておりませんでした。やはりこれは、本来は司法修習生にちゃんとなって、それで行かれるのが原則でございまして、そちらの選択をするか、あるいはこちらの短期の研修ですね、所定の研修、これを選択するかという問題でございます。

 したがいまして、短期の研修は、実務に触れていただきますけれども、そのエッセンスですね、これについて触れるということになるわけでございますが、それ以上具体的に本当に身に付けたければ研修所の方に行っていただくと、こういうような考え方でやったわけでございます。

井上哲士君

 本人が身に付けたいかどうかというよりも、そういうことを身に付けた人を弁護士として送り出していくことが必要かどうかということの議論かと思います。これはまあ今後も実際を見て是非御検討いただきたいと思うんですが。

 併せてお聞きしますけれども、このプロセス重視という大きな法曹養成の流れが出ていく中で、今後はどんどんロースクール卒業した人たちが弁護士にもなっていくわけでありますが、これ、既に五年の資格のある人については特例としてずっと残すということになりますと相当長期にわたってそういう方が出てくるわけですね。そうしますと、一方でプロセス重視の教育を受けた法曹がどんどん養成されると、一方で特例はかなり残るということになるわけでありますが、一定の段階でやはりその研修を課すというようなことも検討があったかと思うんですが、その点はいかがだったんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 この点につきましては、やはりもう現実に生じてしまっている権利について、それに新たなものを加えるという考え方は、法律の通常の考え方からいくと、それは取らないということでございまして、今後、新しい制度の下あるいは経過措置の下で入ってこられる方ですね、こういう方については当然受けていただきますけれども、もう既に生じて、権利が生じてしまった方については新たなものを遡及的に付加をしないと、こういう考え方でございまして、それについても研修を加えろという意見は余りなかったように私は記憶しております。

井上哲士君

 今回の法案は、司法の人的基盤を整備をしていく大きな一環かと思います。それによって、充実した審理を通じて公正で迅速な裁判を受ける国民の権利、保障していくということになろうかと思います。

 その点で、昨年成立しました裁判迅速化法にかかわって若干質問をいたしますが、私たちは、裁判長期化の原因の具体的な問題の改善なしに二年の期限を定めるということは、これは拙速化につながるということで反対をいたしました。

 重大事件の中で長期化をしているものの一つが国賠訴訟であるとか行政訴訟でありますが、それが長期化している原因は証拠の偏在、国や自治体の応訴態度にあるんだということを指摘をいたしました。

 当時の質疑で、この迅速化法によって国の応訴態度がどう変わるのかと質問いたしますと、審理の充実を損なうことなく、二年以内の判決という目標の実現に向かって誠実に対応してまいりたいと、こういう御答弁でありました。

 その後、法務省としてはどのような対応をしてこられたんでしょうか。

政府参考人(都築弘君)

 裁判の迅速化に関する法律が公布、施行されました昨年の七月十六日付けで法務事務次官から各府省事務次官あてに「裁判の迅速化に関する法律の施行に伴う訴訟遂行への協力について」と題する通知を発出し、協力方を求めております。また、その後、「民事訴訟法の改正等とその対応について」と題するパンフレットを作成いたしまして、関係省庁の担当者に迅速な対応の必要性について説明したところでございます。

井上哲士君

 そのパンフレット、私もいただきましたけれども、これ地方での訴訟もかなりあるわけでありますが、地方での徹底というのはどういうふうにされているのか。

 それから、これ自体どれだけ作られておられて、そしていろんな地方の弁護士の方とか地方自治体の方なども参考にされたいということがあろうかと思うんですが、部数の限りがあるとはいえ、そういうことにもこたえていただけるんですね。

政府参考人(都築弘君)

 まず、パンフレットの作成部数でございますけれども、一万五千部と承知しております。

 次に、地方への周知徹底の問題でございますけれども、私ども、地方支分部局であります法務局あるいは地方法務局というところがございますので、そこに対応方をゆだねておるというところでございます。

井上哲士君

 だれでももらえます、もらえますか。

政府参考人(都築弘君)

 今余部がどの程度あるのか定かではございませんので、その辺り確認した上で、例えば公的な形で弁護士会等からもしそのようなお申出がございましたら、検討してみたいと思っております。

井上哲士君

 これ読ましていただきましたけれども、この中で、訟務担当者の心構えということが書いてございますが、ここではどのように強調されているんでしょうか。

政府参考人(都築弘君)

 御指摘のところでございますので、ちょっと御説明申し上げます。

 「訟務担当者は、国又は所管行政庁等の指定代理人として訴訟を追行しているわけですから、その訴訟を適正に処理しなければならないことは当然ですが、その結果、国民から裁判の迅速化に反するとの批判を受けるような行為は絶対に避けなければなりません。充実した訴訟対応の水準を維持するための努力とともに、積極的に裁判の迅速化に協力することが求められます。」と、このような記載をしております。

井上哲士君

 国民から裁判の迅速化に反するとの批判を受けるような行為は絶対に避けなければならないと。大変重要かと思うんですが、具体的には各行政庁に何を求めて、どういうような効果を期待をされているんでしょうか。

政府参考人(都築弘君)

 訴訟の迅速化に国として協力できるように、所管行政庁等に対しまして訴訟の準備活動の適正迅速化を求めておるわけでございます。

 具体的に申しますと、準備の前倒しをする、さらには、審理計画を想定した計画的な準備の必要でございます。このような迅速な準備活動をしていただくという体制を充実強化させることによって迅速化の努力をしてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 訴訟の準備活動の迅速化など重要なことでありますけれども、やはり一番問題になっておりますのは、やはり国側が持っている証拠が裁判に出されないということでありまして、このことも我々問題にしてまいりました。

 例えば迅速化法成立前の例ですけれども、昨年の三月に新三種混合ワクチンの副作用を訴えた訴訟の判決がありました。これは、一昨年の五月にいったん結審をしたんですが、その後の七月にある衆議院議員が質問主意書を出しまして、それへの答弁で、この予防接種が開始された直後の三か月の間に児童三人が死亡又は重症となっているという新事実が判明をいたしました。これは、裁判所も審理に重要な影響を及ぼす事実だというふうになりまして、再審理がされて、その結果、原告側は勝訴したと、こういう裁判でありました。

 ですから、国会で質問をされたら出されるような資料が法廷には出されなかったと、こういうことがありまして、こういう応訴態度こそ問題があるし、改善をされなくちゃいけないと思うんです。

 これ、大臣に是非御決意をお伺いしたいんですが、先ほどのパンフにありました国民から裁判の迅速化に反するとの批判を受けるような行為は絶対に避けると、こういうことを打ち出されたことは大変重要でありますけれども、そうであれば、こういう応訴態度等についても一層踏み込んだ改善をしていくことが必要かと思いますが、その点での御所見をお願いいたします。

国務大臣(野沢太三君)

 裁判の迅速化に関する法律ということで、昨年七月、これが公布されまして、大変これ画期的な、私、法律であると理解をいたしております。

 ただいま委員御指摘のような個々の具体的な事案について私から申し上げることは差し控えたいと思うわけでございますけれども、この司法制度改革の一連の仕事の中で、裁判の迅速化、それにまた必要な措置をそれぞれ手当てをするということは大変大事なことでございますので、国民の期待にこたえられるように、所管の行政庁の協力体制を確立しまして一層これから迅速な対応に努めてまいるつもりでおります。

井上哲士君

 今後、行政訴訟法の改正案等についての議論もあろうかと思いますけれども、やはり国が持っている、非常にやはりこれが偏在しているということが問題なわけでありますから、こうした証拠の全面開示ということに踏み出していくということを改めて強く求めまして、質問を終わります。


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