2004 年 4 月 1 日
法務委員会
破産法案及びその整備法案
- 破産手続きにおける労働債権の保護強化・賃借人の保護強化。また、債権者集会の重要性。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
法案に入る前に、大臣に二点お尋ねをいたします。
一つは、昨年の大臣就任時にもお聞きをいたしました閣僚の憲法尊重擁護義務についてであります。
大臣は、三月の三十日に開かれました憲法調査推進議員連盟の総会で副会長に就任されたとお聞きをしております。法務省設置法は、基本法制の維持及び整備、法秩序の維持ということをその任務と明記をしております。その組織の長である法務大臣が、九十九条で、憲法の九十九条で憲法尊重擁護義務を負う閣僚の中でもとりわけ責任は重いと思います。その法務大臣が在任中にこういう改憲論議を進める組織の役職に就くということは、私は、法秩序への信頼を揺るがす重大な問題だと思いますし、これは辞任をされるべきだと思います。
事実関係と認識についてお伺いをします。
- 国務大臣(野沢太三君)
私は、国務大臣を拝命する前には参議院におきます憲法調査会の会長を務めておりました。そのときに、議員連盟の方からの御要望もありまして、御推薦をいただき、ただいま委員御指摘の議員連盟の副会長を拝命しておりまして、これは大臣発令と同時に実は辞めたと思っておったんですが、そのまま実は残っておったようでございますので、これは早急に手続を取りまして辞任をいたしております。
憲法擁護義務は、委員御指摘のとおり、極めて重要な私の任務でもございますが、あわせまして、現行憲法につきましては、九十六条におきまする改正の手続等の課題もございまして、これからも各政党の御意見、それから衆参両院におきます憲法調査会の議論の成り行き、さらには国民世論の動向等を踏まえまして、法務省としては真摯に取り組んでまいるつもりでございます。
- 井上哲士君
辞任をされたということでありました。
司法制度改革の推進本部の顧問でもあります佐藤幸治名誉教授は、「憲法」という本の中で九十九条に関連してこういうふうに書かれております。「憲法およびその下における法令に従って行なわれるべきその職務の公正性に対する信頼性を損なうような言動があるとすれば、本条の義務に反する可能性があろう。その意味で、閣僚の憲法改正に関する発言には、国会議員の場合と違った慎重さが求められるということになろう。」と、こういうふうに指摘をされております。
法務大臣としてこの点を改めて肝に銘じていただきたいと思いますが、改めていかがでしょうか。
- 国務大臣(野沢太三君)
御指摘のとおり、私も憲法擁護の第一番目のやっぱり仕事をしなければならない立場にあることは重々わきまえておりまして、今後ともそのような取組をしっかりしてまいるつもりでございます。
- 井上哲士君
もう一点、無年金障害者に関する訴訟についてお尋ねをいたします。
三月二十四日に東京地裁が、いわゆる学生無年金障害者について救済措置が講じられてこなかったことは憲法違反だという判決を下しました。私たち立法にも、そして行政に対しても、司法から厳しい指摘がなされたわけであります。
昨日、超党派の無年金障害者問題を考える議員連盟の総会がありまして、緊急決議を行いました。そして、今国会での法的な措置を講じて障害者年金を支給できるようにしようじゃないかということ、もう一つは、政府に対して控訴の断念を強く希望するということを決議をいたしました。
ところが、昨日の新聞の朝刊などでは政府がもう控訴をするということを決めたというような報道もされておりまして、大変私は憂慮をしております。無年金障害者の方は障害を抱え、生活苦もある、その上訴訟を闘うということで、三重の困難があるわけでありまして、これ以上引き延ばすということは私は人道問題にもなると思います。
国の訟務を担当する法務大臣として、これはやはり控訴しないということでイニシアチブを私は発揮をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
- 国務大臣(野沢太三君)
控訴をするか否か、これは関係機関と十分協議して進めるべきことということで、その報道があったことは私も承知しておりますが、まだこの問題、これからの取組でございます。
- 井上哲士君
ハンセンの訴訟では控訴をしませんでしたし、ヤコブの訴訟では国が和解に応じました。やはり、政府が反省すべきことは反省をするということは、むしろ行政に対する信頼を高めることに現実に私はなっていると思います。そういう点で、人道問題でもありますし、是非御決断を政府に強く求めておきます。
その上で、法案についてお伺いをいたします。
今、二極化とも言われる経済状況があります。午前中の答弁の中でも、この間の破産の原因で収入減少型が多いという答弁もありました。それから、破産の裁判を担当されている裁判官の感触として、景気が良くなったという実感はないと、こういう御答弁もありました。
中小企業を中心に依然として倒産が多発をしているという下でありますが、そういうときだからこそ、労働者、中小零細業者、そして様々な個人、やはり経済的に弱い立場の人への保護というのを強める必要があると思いますが、この改正案の中にはそういう配慮がどのように全体として貫かれているのか、大臣にお聞きをいたします。
- 国務大臣(野沢太三君)
正に、今回の破産法の正に全面これ改正といいますか、新しく提案していると言ってもいいわけでございますが、破産手続におきます経済的弱者に対する配慮という観点からどうなっているかということでございますが、まず労働者が有する労働債権のうち、第一に、未払給料債権につきましては破産手続開始前三か月間に生じたものを、また第二番目に、退職手当の請求権につきましては退職前三か月間の給料の総額に相当する額を、それぞれ財団債権として破産債権に先立ち随時弁済を受けることができるようにしております。
次に、労働債権のうち財団債権とならない部分につきまして、その返済を受けなければ労働者の生活の維持を図るのに困難を生ずるおそれのある場合には、裁判所の許可を得て配当手続の前に弁済を受けることができるようにしております。
また、破産法案では、中小企業の経営者を含め経済的に破綻した個人の再起を容易にするため、破産者が破産手続開始後も手元に残すことのできる自由財産の範囲を拡大するとともに、個別の事情に応じまして裁判所が自由財産の範囲を拡張することができる制度を創設しておるところでございまして、弱者配慮の点でも十分に御期待にこたえられるものと確信をいたしております。
- 井上哲士君
弱者配慮の一番に労働債権の確保のことが挙げられました。私も、何度となくこの委員会で取り上げてきた問題でありまして、大変大きな前進だとは思っております。
今回、労働債権の一部を財団債権に格上げをし、租税債権の一部を格下げをしたわけですが、その立法趣旨についてまずお伺いします。
- 政府参考人(房村精一君)
まず、労働債権の格上げの点でございます。
これは、労働債権は言うまでもなく労働者の生活の基盤となるものでありまして、破産手続におきましてもその保護の必要性は高いということでございます。実体法上、一般の先取特権を与えて他の債権に先立つようにしておりますが、破産法におきましても、現行法の下では優先破産債権としてできるだけの弁済を受けられるような配慮はしているところでございます。
ただ、現実に租税債権の全額が財団債権とされていることもありまして、労働債権まで配当が行かないという事態が相当数あるという御指摘も受けていたわけでございます。そういうことから、今回、破産法を見直すに当たりまして、このような労働債権の保護を破産法の範囲内でできる限り充実をさせるということを考えたわけでございます。
破産法の債権の順位というのは、やはり実体法の債権の順位、これを全く無視するわけにはいかない。やはり、実体法で債権について弁済の順位が定まっておりますのは、これはすべての債権が弁済を受けられるのであれば順位を問題にする必要はないわけでありますので、実体法で債権の順位を定めているということは、全額の弁済が受けられない場合にどちらを優先するかということを定めているわけでございます。正にその典型例が破産の場合でございますので、そういう実体法上の債権の順位というものを全く無視した破産手続の在り方というのはあり得ないだろうと思っております。
ただ、そうはいいましても、やはり破産法独自の判断が可能な部分もございますので、そういった実体法の債権の優先順位を前提としつつ、破産法の範囲内でどこまで労働債権の保護が図れるかという観点から検討した結果、今回のように、未払給料債権については破産手続開始前三か月間に生じたもの、それから退職手当の請求権については退職前三か月の給料の総額に相当する額、これを財団債権に格上げをして最優先で弁済を受けられる、しかも財団債権としての順位は租税債権と同順位ということにしております。
一方、租税債権につきましては、何といっても国あるいは公共団体の財源として最も重要なものでございますので、これを適正に徴収するということは最大の関心事あるいは重要な事項でございます。
そういう観点から、現在、その総額が財団債権とされているわけでございますが、先ほども申し上げましたように、租税債権には自力執行権が与えられております。したがいまして、これを適切に行使して自ら租税債権の満足を得る道が用意されている。この自力執行権の行使をある程度怠っていて、そして破産が生じたときにその全額を財団債権として破産財団から持っていくということはやや相当性に欠ける面があるのではないかと、こういうことから、法定納期限一年を経過したものについては財団債権から外しまして破産債権に順位を下げると、こういう改正をしたわけでございます。この両者が相まって、従来に比べますと相当労働債権の保護が図られるということになろうかと思っています。
- 井上哲士君
労働債権の保護が拡大をしていくわけですが、じゃ、どれが労働債権になるかという問題があります。
先ほども議論がありましたし、民法の一部改正のときにも随分細かく議論をいたしましたので繰り返す気はないんですが、民法で言う使用人と同じなんだという先ほどの御答弁もありました。いわゆる手間請労働などの中には、例えば屋号でやっているけれども実際には労務提供の場合、それから法人を名乗っているけれども実際にはもう家族みんなで労務提供をしているとか、こういう場合もこういう労働債権になり得るんだなということで前回もお聞きしたわけですが、そういうことで確認してよろしいわけですね。
- 政府参考人(房村精一君)
御答弁の前に、先ほどの答弁で一か所言い間違えましたので、租税債権の範囲につきまして、法定納期限と申し上げたんですが、これは具体的納期限の誤りですので、お許し願います。
それから、使用人、あるいは破産法で給与債権として保護されるかどうかという点でございますが、これは御指摘のように、法的な契約形態ではなくて実態に着目して判断をするということになりますので、実態がそうであれば入るということでございます。
- 井上哲士君
そうやって格上げがされるわけですが、ただ、これの範囲で十分なんだろうかという議論もあります。会社更生法並みに六か月分を上げるべきではないかと、こういう議論もありますが、この点いかがでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
御指摘のように、会社更生法では給与債権のうち六か月分、また退職金についても六か月分あるいは三分の一の多いものというものを共益債権としております。この今回の破産法案を議論したときにも、法制審議会におきましても、会社更生法並みに六か月分を財団債権とすべきではないかという御意見もございました。
ただ、これは会社更生法と破産法との性質の違いがまずございます。会社更生法の場合には、これは何といっても会社をこれから再建していくと、そういう意味で労働者に働き続けて再建に協力をしていただく必要がある、そういうことから、できるだけ労働者に労働意欲を持って協力をしていただくために労働債権を優遇すると、こういうことが考えられたわけでありますし、そういった労働債権を優遇することによって労働者が協力し、会社が再建されれば、他の更生債権者にとっても結局自分の債権の満足を得られると、こういう意味で労働債権を優遇することに共益性があると、こういう判断がされております。そういったことから六か月分を共益債権としているわけでございます。
ところが、破産法におきましては、基本的に会社を清算する、労働者の雇用関係もすべて終了するというのが原則でございます。そうなりますと、特に退職金等について考えますと、これをすべて財団債権に繰り入れていくということになりますと財団債権が非常に増えてしまう。財団債権が増えるとどういうことになりますかというと、先ほども申し上げましたが、財団債権が非常に増えておよそ財団で手続費用すら賄えないということになりますと、そこで破産を廃止せざるを得なくなる。そうなってしまいますと、結局は財団債権になっても十分な満足が得られない、ましてや破産債権者の方は一切の満足を得られないということになります。
ところが、破産手続を進めまして、破産管財人が適切な努力をして、例えば否認によって財産を取り戻すとか、あるいは債権の回収に努めて相当の債権の回収をすると、あるいは財産を任意処分することによってより多くの資金を獲得すると、こういうようなことが現実に破産手続の中では行われているわけでございますが、廃止になってしまいますとそういうことが一切できなくなってしまう。そういうことを考えますと、やはり余り破産廃止が増えてしまうということは結局は債権者にとってもマイナスになる。そういうことを考えますと、破産手続において会社更生並みに労働債権を財団債権にするとかえって廃止が増えて、債権者にとってもマイナスではないかと、こういう議論がされたわけでございます。
そういった会社更生と破産の手続の違い、あるいはまた実態の違い、こういうことを踏まえますと、やはり余り労働債権を財団債権に持っていくということも難しいという、その中でぎりぎり労働債権の未払分については三か月分、かつ退職金についてはやはり三か月分と、そういうものを財団債権に繰り上げるということで、可能な範囲でできるだけの労働債権の保護を図ろうと、またこのことによって破産廃止がそれほど増えることはないのではないか、こういうような観点で今回の判断をしたわけでございます。
- 井上哲士君
他の債権者との関係などの御議論の中で三か月になったということでありました。ただ、財団債権に三か月、上がったと。しかし、これ自身が不十分なときには、その中で労働債権と租税債権が競合するということが十分に起こります。そうしますと、単純に案分をするということになりますと、結局、労働債権についても三か月分は確保できないということが起こるわけで、今回の改正の趣旨である労働債権の一層の確保ということに必ずしもつながらない場合が出てまいります。
先ほどの議論の中で、フランスのように、いわゆるスーパー先取特権のようにはなかなか現状ではすぐにいかないということでありましたけれども、しかし少なくとも ILO の百七十三号条約は、労働者債権については、国内法令により、特権を与えられた大部分の債権、特に国及び社会保障制度の債権よりも高い順位を与えると、こういうふうになっているわけですね。
今回は同列に並べたわけでありますが、この財団債権の中でそういう競合をした場合に労働債権をこの租税債権よりも優先をすると、こういうやり方も必要だと思うんですけれども、この点はどうでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
租税債権の扱いということでございますが、現行法では、何度も申し上げますが、やはり国あるいは地方自治体の財源として租税が非常に重要な意味を持っているということから、その租税債権については一般の私人間の債権、私債権に比べて優先する地位が与えられているわけでございます。
先ほども申し上げましたように、倒産手続の中で債権の順位を考える場合には、そういった実体法上の優先順位を無視してこれを決めるというわけにはまいりません。ただ、倒産手続の特殊性から、ぎりぎりの範囲で一定の債権を優遇するということは可能なわけでありまして、更生債権あるいは今回の破産法案においては、そういう意味で一定範囲の労働債権を共益債権あるいは財団債権といたしまして、租税債権に並ぶ地位にまで引き上げているわけでございますが、これはやはり更生手続あるいは破産手続を円滑に進めるということと労働債権の保護を図るという、そういう政策的判断に基づいてぎりぎり優遇をした結果でございます。
ただ、これを更に進めまして、実体上優先する地位にあるものを逆転して劣位に置くというのは、やはり法体系を考えますとこれは難しいだろうと思います。そういうことから、今回もぎりぎりのところまで努力をするということで、このような財団債権化をしたわけでございます。
- 井上哲士君
労働者にとってはこの労働債権というのは事実上唯一の生活の糧でありますけれども、租税、社会保障の重要性はもちろんでありますが、しかしいろんなまだあるわけですね。そういう点で、私は更に踏み込むことが必要だと思うんです。今ぎりぎり、ぎりぎりというお話がありましたけれども、多分国税庁との関係でのぎりぎりの折衝があったのかなというようなことも聞いて感じました。
そこで、国税庁に来ていただいておりますのでお聞きをするわけですが、朝の議論でも、今度の法案が通ったことによって、逆に一年を超えた滞納についてむしろどんどん差押えをしたりするんじゃないかと。朝の議論では国税庁というのは何をするか分からぬぞなんという発言もありました。そういう懸念の声も私ども聞くわけなんです。
そこでまず、こういう租税債権滞納処分の今の考え方、そして手順というのはどのようにされているのか、いかがでしょうか。
- 政府参考人(徳井豊君)
国税が納期限までに完納されず滞納となった場合には、五十日以内に督促状による督促を行いまして、その督促状を発した日から十日を経過してもなお完納されない場合には徴収職員は差押えをしなければならないと定められております。
もっとも、実際の滞納整理に当たりましては、納税者の生計の維持や事業の継続等に配慮することも必要でございます。このため、滞納発生時点におきまして明らかに納税に対する誠意が認められないといった場合を除きまして、通常は、督促後、生計の状況や事業の状況を聞くなどいたしまして納税者の実情をよく把握した上で、分割納付などの自主的な納付を慫慂しております。
そして、自主的な納付が見込まれない場合や、分割納付の約束が履行されないような、そういった場合には、差押えが必要かどうか判断をした上で、法令に沿った適切な処理に努めているところでございます。
- 井上哲士君
事業の継続を勘案してということがありました。先ほどの懸念のように、一年を超えているというものがどんどん差押えをされるということになりますと、正に事業の継続が困難になりまして、本改正の意味が全くなくなるということになるわけですね。
そこで、今そういう配慮をするということがありましたけれども、こういう改正がされたからといって、そういう今の差押えなどについての運用上を変えると、こういうことはないわけですね。
- 政府参考人(徳井豊君)
今回の改正案が施行された場合、破産手続における租税債権の地位が一部引き下げられまして国税の徴収確保という点で影響があると考えられますが、滞納整理に当たりましては納税者の生活の維持や事業の継続等に配慮することは今後とも必要であり、滞納が発生したからといって早期に一律に差押えをするというのではなく、引き続き納税者の実情に即した適切な処理に努めていきたいと考えております。
- 井上哲士君
本法の改正の趣旨にのっとった運用を強く求めておきます。
どうもありがとうございました。
その上で、更にお聞きをしますが、法案では、優先的破産債権となるべき租税債権について、滞納処分の続行を認めているということになっております。そうしますと、結果的には財団債権と事実上異ならないことになってしまうではないかと、こういう指摘もされております。そうしますと、租税債権を一般優先債権に格下げをする意味が大きく減殺されることになるのではないか、滞納処分については失効ないし中止をするべきじゃないかと、こういう指摘もされておりますが、この点いかがでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
御指摘のように、破産手続開始前に滞納処分による差押えがされている場合、この法案ではその続行を認めることとしております。
これは実体上、実体法上、差押えまで進んでおりますと、その後そのものが処分をされましても、差押えに基づく換価処分によりまして最終的に優先的にその租税債権の満足が得られると、こういう仕組みになっております。
したがいまして、これは他の権利と比較いたしますと、抵当権等の権利が付けられておりまして、それに基づいて優先的な弁済を受けられる、言わば物的担保権者と同等の地位に立っていると評価することができるわけでございます。
御承知のように、担保権等の抵当権、失礼、抵当権等の担保権を持っている者につきましては別除権者として別途権利を行使するということが破産法上認められているわけでございますので、法律的にそれと同等の地位にあります差押えまで進んだ租税債権について、これを異なる扱いをするということは法律的にはなかなか理屈が通らない、やはりその続行を認めて優先的地位を認めるということがその結論とならざるを得ないのではないかと、こう思っております。
- 井上哲士君
別除権については先ほども議論もありました。今回はこの八十年ぶりの改正ということでありますけれども、そういう大きな体系も含めて、今後ともこれは議論、検討をしていただきたいと思います。
さて次に、債権者集会の問題についてお聞きをいたします。
午前中も債権者集会について立法者の方について御質問がありましたけれども、私はむしろ運用についてお聞きをいたします。
改正案では、裁判所の判断で債権者集会を開かないことができるということになっております。しかし、この債権者集会というのは非常に大きな意味を持っていると思うんですね。
例えば、先ほどありました請負的就労者の場合、自分は請負なので自分の債権が労働債権だと思っていらっしゃらない方というのは随分現実にはいます。そういう方が債権者集会に来る、そして、例えばそういう関係の労働組合の方などが発言をされるのを聞いて、ああ、自分の働き方というのは実は労働債権なんだということを分かって、そういう回収の取組に参加をされるということも随分あるわけですね。債権者集会がなくなりますと、こういう機会が奪われることになりかねないということがあります。
そこでまず、その現場で運用にかかわってこられた立場から、この債権者集会の重要性についてはどのように認識をされているのか、お伺いをします。
- 最高裁判所長官代理者(園尾隆司君)
債権者集会というのは、その事件の債権者全員が出席可能な情報交換の場でございますので、破産手続の中で最も重要な位置を占める手続であると認識しております。管財人が情報を提供する場合に書面を作成して配付するということも考えられるわけでございますが、債権者集会にはそれだけでは賄い切れない重要性があると私も考えております。
私が破産事件の担当者として債権者集会を主宰してまいりました感想を述べますと、債権者集会というのは、債権者にとって管財人からどのような情報と説明を受けるかということのほかに、その事件に関して自分以外の他の債権者がどのような態度で集会に臨むのか。例えば、出席者が多数で関心が高い事件なのか、余り出席者がない事件なのか、それから多くの債権者が破産者のこれまでのやり方に怒りを感じておるという事件なのか、そうでもないのかというような、破産事件の全体の状況を言わば瞬時に的確につかむことができるというような場であるというように感じるところでございます。
したがいまして、債権者集会における情報伝達は書面で個別に情報を提供するのとは違った重要な意味があると考えておりまして、債権者集会は破産手続のかなめであるというように認識しております。
- 井上哲士君
そうしますと、今回の改正で開催しなくてもいい場合があるということになるわけですが、そういう開催しないのはあくまで例外的だと、こういう運用がされるべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。
- 最高裁判所長官代理者(園尾隆司君)
そのような運用がされるであろうというように考えておるところでございます。
これは、債権者集会の重要性というところから私がそのように考えるということのほかに、先日、高等裁判所所在地の八つの地方裁判所を含む十三の地方裁判所の破産事件の担当者に集まっていただいて意見交換をいたしましたが、どの裁判所も、債権者集会を開くということを手続運営の原則に据えたいという意見を述べております。
したがいまして、全国的に債権者集会を開くということが原則になるであろうというように考えております。
- 井上哲士君
その上で、法案では債権の十分の一以上の要求があれば開かなくてはならないということも付いております。ただ、現行でも非常に巨額の債権を持つ金融機関などがありまして、集会に行って、何十人という集会でこの計画について採決したら一人だけが賛成したけれども、その人が金融機関の代表で、ほか全部反対しても決まってしまったとか、こういうこともお聞きするわけですね。
ですから、債権額、労働債権の場合に、債権額が十分の一に満たない場合でも債権者としては非常に多いというような場合は、やはり十分の一に満たなくても債権者集会の要求にこたえていくと、こういう運用がされるべきだと思いますが、この点もどうでしょうか。
- 最高裁判所長官代理者(園尾隆司君)
ただいまお尋ねのような、多数の労働者が債権者集会の開催を希望するという事件と申しますのは、破産宣告の直前まで営業を継続している会社ということで、しかも賃金の不払が相当額あるというような中小企業の破産事件の場合が通例であろうというように思います。
そのような破産事件について言いますと、賃金全額を支払うだけの財産を発見することができるかどうかということがまず最も重要な破産管財事務の課題となってまいる事件でございます。そのような事件につきましては、債権者からの情報というのが最も必要である事件だというように分類されると思います。したがいまして、そのような事件ではそもそも一般的に債権者集会が開かれるということになるものと考えております。破産法が改正されましても、そのような事案では、労働者からの要望があるかどうかにかかわらず、一般的に債権者集会を開かないということは考えにくいというように思っております。
- 井上哲士君
はい、よく分かりました。
次に、賃借人の保護の強化の問題についてお伺いをいたします。
この問題は非常に私も感慨深いものがありまして、実はスーパー長崎屋が破綻をした際に、当時、管財人が、全国三十一店舗、二〇〇二年一月十五日付けで閉鎖をするという発表がされました。私、ちょうど閉鎖の直前に、新潟のこの長崎屋のある店舗に調査に入りました。廃止される店舗のテナントの店主の皆さんが、自分たちはまだ営業したいんだということで、そのお店の前で店主、支配人の方と激しいやり取りをされておられたわけであります。
こういう破綻に伴ってテナントの皆さんが営業ができなくなるということが長崎屋だけでなくてマイカルでも発生をいたしましたし、営業もできないと、そして敷金、保証金も返ってこないということが大きな問題になりました。倒産時に、長崎屋はグループで千を超えるテナントから百五十億円を敷金、保証金で預かっていたと、それからマイカルの場合は、これは四千七百のテナントがありまして、四百億円を預かっていたというふうに報道がされております。
これは大問題だということで、二〇〇一年の七月にこの経済産業省にテナント保証金問題研究会というのが立ち上がりまして、そして二〇〇二年の十一月には、この破産法等の見直しに関する中間試案に対する意見というのが経済産業省からも出ておりまして、こういう賃借人の地位とか、そして保証金の法的地位について明確にするべきだという要望が出されている。そういうテナントの皆さんのいろんな運動などがこういう形で出てきているという点では、大変私は感慨深いものがあるんです。
その上で、この改正によりまして、そういうショッピングセンターなどが破綻をした場合のテナントの地位というのはどうなるのか、破産の場合と会社更生の場合と、まず分けて御答弁願います。
- 政府参考人(房村精一君)
まず、破産に関して御説明いたしますが、現行法では賃貸人が破産した場合、その賃貸人の破産管財人は賃貸借契約を解除することができると、こういう規定がございます。これは、賃借人としては何の落ち度もないわけでございますので、破産法は基本的にその解除をして債権者に対する弁済を充実させるということを考えたものとは思われますが、賃借人にとっては非常に酷な結果になると、こういうことがかねてから指摘されておりました。
今回の法案では、賃借人の保護を図る観点から、そういう場合に賃借権を第三者に対抗をすることができるとき、すなわち土地賃貸借の場合には地上建物の登記がされている、あるいは建物賃貸借であれば引渡しがされていると、こういう場合には破産管財人に破産法上の特別の解除権を認めない、賃借人を保護すると、こういうことといたしました。この点は一番大きな違いかと思います。
それから次に、敷金の関係になります。
これは、現行の破産法の下におきましては、敷金の返還請求権も通常の破産債権でございますので、停止条件付債権として扱われます。したがって、仮に払戻しを受けるという場合にはその弁済、配当率に従った弁済しか受けられないと、こういうことになっているわけでございます。
今回の破産法に、破産法案におきましては、まず破産後賃料を支払う、こういう場合に、言わば敷金の額に満つるまではその支払う賃料を寄託することができる。通常支払った賃料は管財人が受け取りまして、そのまま破産債権者に対する配当原資として用いられるわけでございますが、これを配当に回さずに別に保管をしておいてほしいと、こういう寄託の請求ができます。そうしますと、破産管財人はその敷金の額までは受け取った賃料を寄託しておく、その破産手続の最中に例えば賃貸借契約が解除されまして敷金の返還請求権が現実に発生すると、そういう場合に、賃借人の方は既に払った賃料でその寄託がされておりますので、その額から支払を受けられる。したがって、支払った賃料によって敷金返還請求権を確実に回収することができる、こういう仕組みにいたしております。
それから次に、例えば更生手続について、この場合、更生手続においては、支払った賃料、仮に賃料を支払いますと、その賃料の六か月分までの範囲で敷金の返還請求権を共益債権にする、こういう扱いにしております。したがいまして、この六か月の範囲では敷金返還請求権が確実に返していただけると、こういう形になります。
仮に、その敷金以外に他の債権を持っているという場合には、その賃料とその債権とを六か月分の範囲で相殺をすることができると、こういう扱いも更生法では定めております。そういう形にしておりますが、概要でございますが、以上のとおりでございます。
- 井上哲士君
今、引渡しということが出てまいりましたけれども、これについてもう少しお聞きするんですが、例えば私が行ったその長崎屋の場合も、大きなフロアのスーパーですが、全体に入る入口とは別に全く区切られた店舗になっておりまして、そこに飲食店やパーマなどがありました。そこも含めて入れなくしてしまったということで、自分たちは営業させろということで言われていたわけですが、そういう方と同時に、このフロアの中で一定の場所を区切って営業されているというテナントの方もいらっしゃるわけですね。
こういう場合に、今の引渡しという要件との関係でいいますと、どういう仕分になるんでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
建物の一部分を賃借してその引渡しを受けているというときにその対抗力が認められるためには、その引渡しを受けた区画が障壁その他によって他の部分と区画され、独占的、排他的支配が可能な構造、規模になっているということが要求されると思います。
ただ、これは、具体例ではベニヤ板で周囲を仕切って床板を敷いたというような事案のようでございますので、この独占的、排他的といってもそんな厚い壁ということではなくて、障壁その他、そういった区画がされているということに力点があろうかと思います。また、使用の実態として人と一緒ではなくて自分が独占的に使っていると、それがあれば引渡しを受けたと言えるのではないかと思います。
- 井上哲士君
はい、分かりました。
今、敷金のことについてお聞きしたんですが、実はこのテナントの場合は保証金ということで問題になったわけですね。保証金とか建設協力金とか、いろんな名前が付いているわけですけれども、まあ多い、四十か月から五十か月間分ぐらいを差し入れているということで、金額でいいますと一千万以上というところもあったようであります。
この保証金の性格が非常にあいまいだというのがこの研究会でも議論がされておりまして、名前は保証金だけれども実際には敷金の場合もある、それから全く金銭消費貸借としての性格しか持たないものもある、両方が混じったものもあるというようなことになっているわけですが、この辺の手当てというのは今度の法案ではどうなっているんでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
保証金の性格にはいろいろなものがあると一般的に言われておりますが、大きく分ければ、敷金の性格を持っている部分とそれ以外ということになろうかと思います。
その保証金、メーカーに交付された金銭のうち、いわゆる敷金の性格を持っている部分、これについては、先ほど申し上げた敷金として扱われますので寄託の対象であり、あるいは賃料を支払うことによって共益債権になると、こういう性質になります。
そういう敷金以外のものにつきましては、基本的に将来返還を受けるということが予定されているだろうと思いますので、将来の債権ということになりますので、破産であればこの将来の請求権は現在化されますので、現在債権として破産債権になりますし、更生手続においては更生債権になると。それぞれ他の債権と平等に扱われるということになろうかと思います。
- 井上哲士君
六か月、先ほど更生の場合に確保されるという話がありましたが、全体として非常に賃貸借人の保護は前進をしたと思うんですが、先ほど言いましたように、保証金の実態というのは四十か月とか五十か月というのが随分あるわけでして、会社更生法や民事再生法の場合でもやはり相殺できる範囲は破産並みにすべきではなかったのかと思うんです。
この経済産業省から出されて法制審に出される意見でも、賃金の十二か月分程度は敷金としての性格が強いと考えられるというようなこともあるわけですが、やはり保護の範囲をこの辺まで広げるべきではなかったかと思うんですが、この点はどうでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
確かに、更生手続等で六か月分と、こうしております点につきましては、もっと広げられないのかという議論がございました。ただ、これもまた破産手続といわゆる再建型の更生手続との違いになるわけでございますが、更生手続の場合には何といってもその会社を再建していくということになります。
ところで、そういう多くの店舗を抱えてその賃料で事業を営んでいるというところにとっては、その賃料収入が事業等の再建のための原資になるわけでありまして、それを余り長期間にわたって相殺をされてしまいますと、運転資金にも事欠く状態になって再建そのものが不可能になってしまう。で、そういう事態になりますと、逆に言うと、その店舗を使っている方にとっても決してプラスではない。やはりその会社が再建をされて順調にいけば、逆に言いますと、そういう保証金等についても大丈夫になってくるわけでございます。ところが、原資不十分で会社がおかしくなって、しかも資産そのものが目減りしてしまいますと、結局は配当も受けられないということになりかねない。そこのバランスをどう取るかということであります。
そういうことで、やはりそういった賃料収入に依存して再建をせざるを得ない会社が相当あるということを考えますと、やはり六か月分程度、一年分丸々されてしまいますと、これはいかにも再建が厳しくなると、こういう御指摘があったということを踏まえましてこの六か月という月数を決めさせていただきました。
- 井上哲士君
次に、担保権の消滅についてお聞きをいたします。
午前中も議論があったんですが、現行法では管財人が担保権の設定された財団資産をほかに売却して破産財団に組み入れようとしますと、担保権を消滅させて売却することについて担保権者の承認を得なくちゃいけないと、同意が必要だということですが、このことの不都合というのはどういうことがあったんでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
その一番大きな不都合は、担保権がたくさん設定されている、どう考えても競売したら配当が回ってこないような高順位の担保権がたくさん付いている。ところが、任意売却をしてそれをスムーズに移転登記をするためには、そういう高順位の担保権も抹消しないと買受人としては困るわけです。ところが、その抵当権抹消のためには抵当権者に一緒に登記申請をしていただかなければいけませんので、そうなると勢い、いわゆる判こ代と言われるようなある程度の金額をそういう人に払わなければいけない。
通常は、通常はといいますか、競売手続を取られれば配当ゼロでそういう抵当権は抹消されるわけでございますが、任意売却のときにはそんな形で費用が掛かってしまう。そのことは、結局のところ、その配当に回る金額が減るということになるわけでございます。
- 井上哲士君
そうしますと、今回の改正で、裁判所の許可をもって担保権者の同意なしに担保権を消滅させてから任意売却ができるということになると、どういう効果が出てくるということになるんでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
管財人といたしましては、実際上配当にあずかる可能性のある担保権者と十分協議をいたしまして、かつ売却先を見付けて売却金額を決め、そして売却金額のうちから破産財団に繰り入れる額、これについて事実上そういう配当にあずかる可能性のある担保権者の同意を得ると。こういうところまで進めれば、あとこれを裁判所に届け出てその許可を得ますと、配当の可能性のない担保権者等の同意等は全く問題なく、許可が出ればその任意売却ができますので、従来に比べますと、いわゆる判こ代等の不要な費用の負担がなくなる、またそのための手間暇というものも軽減されます。結局、その部分は担保権者の配当若しくは財団の繰入れによりまして、破産債権者にメリットが還元されるということになります。
また、さらに、担保権者の配当が増えるということになりますと、いわゆる不足額が減少しますので、担保権者が担保権から満足を得られなかった部分について、その破産債権者として配当を受ける額も減りますので、そういう意味では他の破産債権者にとってのメリットは相当あるということになろうかと思います。
- 井上哲士君
ただ、実際には担保権者が競売に掛けるということもできるわけですね。そちらが選択することが多くなりまして、この財団債権の組入れの拡大に必ずしもつながらないのではないかということもあるんですが、その点はどうお考えでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
これは誠に残念なことですが、競売手続を利用した場合には、通常の任意売却に比べますとどうしても競落価格が安くなる、大体二割ないし三割程度安くなると、こう言われております。したがいまして、破産管財人が努力をして任意に売却をするという場合は、競売手続に掛ける場合よりは二、三割は高くなると一般に理解されております。
担保権者といたしますと、そのまま売却した場合に比べて二、三割は高くなると。したがって、その高くなった分のうちの相当部分はその破産管財人の努力に免じて繰り入れてもいいと、それでも競売するよりはずっと自分の受ける利益は増えると、普通はこういうことで話がまとまるわけでございます。
ですから、破産管財人が探し出した相手に売却する価格がそういった相当な額であれば、あえて競売でそれより低い額で売却することを望む担保権者はそういないだろうと思います。もちろん、担保権者の方で独自に探してもっと高く売れるということであれば、それはその五%以上の買受けという制度を用意してはございますが、そのためにはやはり相当の手間暇を掛けて買っていただける方を探さなければなりませんので、そういう点では、管財人の方が相当の努力をして合理的な案を示せば、担保権者もそれに同意をしていただけるのではないかということを考えております。
- 井上哲士君
労働債権などの確保につながるであろうことを強く期待をしておきます。
もう一つ、免責不許可の問題についてお聞きをします。
この二百五十二条で免責不許可事由に加わる項目ができました。その中で、給与所得者等再生における再生計画が遂行された場合に、当該再生計画にかかわる再生計画認可の決定の確定の日から七年以内の免責の申立てというのがあります。破産手続を選択せずにこの給与所得者再生手続を選択をし、かつその再生計画を遂行した債務者が、その後、リストラとか病気とかで再び多重債務に陥るということは、今の経済情勢の下では十分にあり得ることだと思うんですね。こういう人の場合も一律に免責不許可とすることはやはり問題ではないかと。
この免責不許可事由を拡大した趣旨と、そして、こういう計画を遂行した債務者がその後のリストラ、病気などでもう一回多重債務に陥ったと、こういう場合はやっぱり柔軟な対応が必要だと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
- 政府参考人(房村精一君)
御指摘、免責不許可事由の場合に、例えばいったん破産免責を受けて、その後十年を経過しないで再び破産をしたと、こういうような場合に安易に免責を認めるとモラルハザードを招くと、そういうことから現行法では破産免責を得てから十年内の場合には免責を与えないということとしております。
これが長過ぎるのではないかということで今回七年ということにしたわけでございますが、そういう改正の一環として、おっしゃるように、給与所得再生の再生計画を実行した者、これについても決定の日から七年を経過するまで免責を与えないということとしておりますが、これは、やはり債権者の同意なく一部の債権の免除を受けているという点においては給与所得者再生についても同様の性質がございます。再生法自身、その給与再生者、再生を認めるために、前に認めてから七年内のときにはこれを認めていないということがございます。
そういう意味ではやはり共通する面があって、今回、再生法のその考え方を破産法で変えるということもにわかにし難いということからやはり免責不許可事由に取り入れたものではございますが、ただ、確かに破産免責の場合とは違って、免責は受けておりますが、ちゃんと、ちゃんとと言いますとおかしいですが、残る部分については債務を履行しているわけでございますし、また再びそういう窮境に陥ったことについて同情すべき場合も十分あろうかと思います。
そういう場合に備えまして、今回の破産免責の見直しに当たりましては、免責不許可事由がある場合にもなお裁量的に免責を許可するということができるということを明文で定めております。これは、従来の解釈でもそういうことができるという具合に言われておりましたが、明文の規定がございませんでしたので、今回そういったものを置いておりますので、御指摘のような場合には正にそういうものの対象として裁判所において審理をした上で裁量的に与えることもあり得るのではないかと、こう思っております。
- 井上哲士君
終わります。
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