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2004 年 6 月 10 日

法務委員会
判事補・検事の弁護士職務経験法案
(質疑・採決)


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、最高裁にお聞きをいたします。

 司法制度改革審議会の意見書では、「原則としてすべての判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませることを制度的に担保する仕組みを整備すべき」としております。今回の法案はこれに基づくものでありますが、これで弁護士職務に就く法的整備が整って仕組みが整備されたということでありますから、先ほどの答弁の確認ということになるわけですが、今、半分程度ということを聞きましたが、この制度を土台にして、原則としてすべての判事補が他職経験をするという方向に踏み出していく、それを目指していくんだと、こういうことでよろしいわけですね。

最高裁判所長官代理者(山崎敏充君)

 ただいま委員のおっしゃられました司法制度改革審議会の意見等を踏まえまして、最高裁判所といたしましては、原則としてすべての判事補が裁判官の職務以外の多様な経験を積む機会を得られるようにしていきたいという具合に考えております。

 そのためには、現在、今委員おっしゃられた、様々なメニューがございまして、そういったものを一層充実していかなきゃいけないと思っておりますが、それとともに、今回新たに設けられます弁護士職務経験制度を十分に活用していきまして、その環境条件の整備等積極的に推進して実施していきたいと思っております。

井上哲士君

 一方で、今回の法案でも本人の同意というものが必要でありますし、身分の保障というものがあります。それはそれで尊重しつつ、一方で、すべての判事補に他職経験をしてもらうという、そこの担保といいましょうか、それはどのようにお考えでしょうか。

最高裁判所長官代理者(山崎敏充君)

 ただいま申し上げました判事補の経験の多様化というもの、我々は、これは多様で豊かな知識経験を備えた視野の広い裁判官を確保するための制度として、判事補の人材育成のシステムの一環として位置付けておりまして、先ほど申し上げましたとおり、原則としてすべての判事補にその経験を積む機会を与えるということを考えておりまして、そのことを最高裁判所の裁判官会議で議決いたします。そういう措置を講じるなどいたしまして、この制度の創設、運営を言わば制度的に確立するということを考えております。

 それからもう一つ、下級裁判所裁判官指名諮問委員会というものが設けられましたわけですが、その委員会におかれまして、判事補の経験の多様化というこの制度が言わば制度的に完備された後は、その制度による多様な経験を積んだことが判事指名の検討の上で重要な考慮要素とすると、そういうお考えを示されておりますので、こういった点も制度的担保の柱になるものと考えております。

井上哲士君

 法案の第二条では、その他事情を勘案して、相当と認めるときはと、こうなっているわけですが、この相当と認めるときというのは具体的にはどういうことなんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 この二条のその意味でございますけれども、この点につきましては、例えば職務経験を行うかどうかにつきましては、他の経験をしている者もいるわけでございますので、そういう者について更にその弁護士の職務を経験させるかどうかと、そういう必要性、まず判断をするということでございます。

 それから、これに伴う事務の支障の問題もございます。余りたくさん出てしまっては裁判の方が十分にいかないという場合もあり得ますので、そういう点も考慮をするということになります。それから、その他の事情といたしましては、例えば判事補あるいは検察官、検事の、本人の希望等もございます。こういうものを総合的に認めて、その上で相当と認めるときということを言っているわけでございますので、あらゆる事情をよく総合的に考えて判断をすると、こういうことでございます。

井上哲士君

 今も他の職務を既に経験をしている場合というお話がありましたが、いただいた資料を見ますと、例えば判事補の民間企業派遣などは、これまでの例でいいますと四か月というのもありますし、それから判事の場合でしょうか、数週間というのもあるわけですね。この程度のものも含めていわゆる他職経験というふうにお考えになるのか、それとも、この二年という今回枠を決めたわけですが、この程度を必須とするのか、その点はいかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(山崎敏充君)

 ただいま委員のおっしゃられました民間企業研修のうちのごく短期の部分、これは判事ということでやっておりますものですから、これは少し別のものとお考えいただいた方がいいかと思います。

 四か月というのを判事補についてやっておりましたが、実はこれも最近のことでありますけれども、一年コースの方がいいのではないかということで切り替えておりますので、現在ございますのは一年ないし二年というのが中心的なものという具合にお考えいただければと思います。

 ところで、先ほど申し上げましたすべての判事補にこういった経験をさせるというのは、実は第一ステップと位置付けておりまして、第二ステップといたしましては二年程度そういった経験をさせたいということを考えておるわけでございまして、その方向で努力したいと思っております。

 現実の個々の派遣先の派遣期間どうするかということになりますと、これは受入先の事情等もお伺いしなければいけないわけでして、これから検討していかなきゃいけないということでございます。ただ、場合によっては、一人の判事補について複数のプログラムをこなしてもらって、二年程度経験してもらうというパターンもあり得るだろうという具合に思っております。そういったことで、いずれにせよできるだけそういう派遣先を多数確保しなければいけないという具合に考えておりまして、その方向で努力したいと思います。

井上哲士君

 先ほど、法曹一元化への一里塚だという話もございました。

 司法制度改革審議会の意見書では、裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験は、判事補が裁判官の身分を離れて弁護士、検察官等の法律専門職の職務経験を積むことが基本になるべきであると、そしてそれに加えて、こうした職務経験と同視できる程度に、裁判官の資質向上のために有益であると認められる経験も含まれ得ると、こういうふうにしているわけですね。ですから、ここで言っているのは、やはり弁護士、検察官で職務経験を積むことが基本だということでありますから、先ほど、あれ、いろいろなメニューがあって、それも充実させながらということもありましたけれども、やはりこういう制度が作られた以上、この弁護士職務経験というのを、あれこれの柱の一つということじゃなくて、やはり最も中心的な柱、大きな柱として位置付けていくべきだと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(山崎敏充君)

 委員のおっしゃられるとおり、審議会意見書ではそのように書いてございますので、私ども、その趣旨を受け止めてやっていかなければならないと思っておりますが、裁判官の資質向上のために有益であると認められる経験というものにどういうものがあるのかということについては、更に検討が必要であるという具合な意見になっておったと理解しております。

 この点につきましては、司法制度改革推進本部の法曹制度検討会において検討がなされたようでございまして、海外留学、あるいは行政機関等への出向、民間企業等への派遣といったものはそういうものに含まれるんだという取りまとめがなされたという具合に伺っておるわけでございます。

 そういうこともございますので、私どもといたしましては、多様な経験ということで、弁護士の職務経験以外の経験もこれは当然想定されているということでございますので、現に先ほど来出ておりますように既に相当の派遣を行っておりますので、そういったものももちろん活用しつつ、今回新たな制度として弁護士職務経験制度ができました。これは非常に重要なものだという具合に私は思っておりますので、その点につきましてもできるだけ多くの判事補がその経験ができるようにしていきたいというふうに考えております。

井上哲士君

 法曹一元という流れから考えましても、やはり弁護士を基本にというこの審議会意見書の方向で取り組んでいただきたいと思います。

 もう一つ、公務員としての身分が残ることの関係で幾つかお尋ねをしますが、先ほど、弁護士の守秘義務と刑事訴訟法上の公務員の告発義務の関係についてもお尋ねがありました。

 こういう場合はどうでしょうか。弁護士を終えて判事補として復帰をした、その際に、弁護士当時に知ったことにかかわる事件が発覚して、ああ、あのときに、なるほど、こういう違法行為があったんだと後になって例えば分かる、元に戻ってから分かったと、こういう場合の告発義務というのはどういう取扱いになるんでしょうか。

政府参考人(山崎潮君)

 先ほど、弁護士になっている間の告発義務について申し上げましたけれども、これは公務に従事しておりませんので、ないと申し上げました。

 ただいまの御指摘の点でございますけれども、終了した後ということでございますけれども、これは、裁判官、検察官に復帰した後においても、公務員としての職務に従事していないときに知った犯罪事実につきましてはやはり告発義務が生ずることはないというふうに考えております。それから、当然、弁護士法二十三条でも、その職務上知り得た守秘義務というものもあるわけでございますので、そういう関係からも告発義務はないというふうに考えております。

井上哲士君

 公務員としてのいわゆる服務規律と弁護士会などの様々な活動との関係についてお聞きをするんですが、例えば日弁連や各地の弁護士会にいろんな委員会があります。例えば、今も敗訴者負担制度反対の委員会というのがあるわけですね。言わば、政府の方針とは違うような課題を掲げた委員会もあるわけですが、そういうところの委員会に参加をしたり、またそういうところが主催をする集会に参加をしたりすること、このことは構わないと、こういうことでよろしいでしょうか、検察官の場合に行かれるとか。

政府参考人(大林宏君)

 弁護士会の委員会の委員としての活動内容や委員会の実態につきましては具体的に承知しておりませんが、政治的行為の制限に関する国家公務員法第百二条やこれに基づく人事院規則等を見る限りにおきましては、お尋ねの委員会の委員になることや委員会に参加すること自体が政治的行為に該当するとされることは通常はないんじゃないかというふうに思われます。

 ただし、委員としての活動や委員会の活動には様々な形態があり得ますので、具体的にはその事案に応じ、種々の要素を考慮して政治的行為に該当するかどうかの判断がされることになるのではないかと、こういうふうに思います。

井上哲士君

 弁護士業務をした場合に、国を相手にした国家賠償請求にかかわることもあると思います。また、そういう国家賠償請求のいろんな原告団の交流会等に参加することもあると思いますが、この点ではどうでしょうか。

政府参考人(大林宏君)

 これは、今も申し上げましたけれども、様々なやっぱり形態が予想されますので、それは具体的にその事案に応じ判断されるということになろうかと思います。

井上哲士君

 弁護士職務を経験をするということの趣旨には、個々の事件と同時に、そういうような活動を通じて様々な経験、見識を身に付けるということは私、必要だと思うわけで、日弁連や地方弁護士会の様々な、この会内の業務などに参加することがちゅうちょされるというようなことでは趣旨に反すると思うんですね。

 ここはやはり柔軟に広く解釈をして、そうした派遣をされた方がそういう活動にやっぱり自由に参加をできるということが必要だというふうに思いますし、そういうことを強く求めまして、終わります。

委員長(山本保君)

 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。

 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。

 判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。

〔賛成者挙手〕


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