2004 年 4 月 7 日
憲法調査会
「平和主義と安全保障」の締めくくり自由討議での発言
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
いわゆる冷戦後の国際情勢から、九条を変えるべきだという議論が今日もありました。私は逆だと思います。冷戦後、アメリカの軍事力中心の一国支配主義というものがむき出しになり、そのことが国連憲章との対立を浮き彫りにしているというのが現状だと思います。今日の改憲論はこのアメリカの戦略と密接に結び付き、九条を変えて集団的自衛権の行使を可能にすることにその中心的なねらいがあります。そのことは、二〇〇〇年十月のいわゆるアーミテージ報告で、日本が集団的自衛権を禁じていることが日米両国間の同盟協力を制約していると述べられ、これを受けて、翌年の四月に小泉首相が今後集団的自衛権を行使できるというなら憲法改正をした方が望ましいと述べ、その後、改憲論議が拍車を掛けられてきた、この事実を見ても明らかだと思います。
アーミテージ・アメリカの国務副長官は、最近は一層そのねらいをあけすけに述べております。今年の三月に発行されたある月刊雑誌では、アーミテージ氏は、憲法九条が日米同盟の邪魔者であるとした上で、連合軍が共同作戦を取る段階で引っ掛からざるを得ないということです、それが偽らざる所懐です、ここまで発言をしておりまして、正に日米が軍として共同作戦を取るために九条を変えることが必要だということを述べております。
今日、先制攻撃戦略を打ち出して、国連事務総長からも国連憲章への挑戦だと批判を受けているアメリカと海外での軍事行動を可能にすることがどんな事態をもたらすかは、イラクの事態が明確に示しております。イラク戦争から一年がたちました。その大義なき戦争と占領の破綻は、ここ数日のイラクでの泥沼とも言える事態でも明らかでありますし、世界でも大きな批判の声が広がっております。
スペインでは、次期首相のサパテロ氏が状況が変化しなければ六月末までに軍隊を撤退させると明言をいたしました。ホンジュラスも派兵を継続する条件がなくなったと撤兵を表明し、既にニカラグアも撤退をしております。さらに、ポーランドの大統領が我々は作り話にだまされたと語ったと報道をされました。そして、元イタリアの首相であり、現在欧州委員会の委員長のプローディ氏も先日、新聞に書簡を出して、イタリア軍のイラク撤兵を要求をし、国際紛争の解決手段として戦争を放棄するとしたイタリア憲法について、五十年以上たってもその価値を全く失っておらず、むしろ時がたつにつれてますます強い現代性を帯びてきたと述べ、憲法遵守を呼び掛けております。
ポーランドとイタリアという、多くの兵を派遣をしている国の有力な政治家がこう述べていることは大変大きなことでありますが、それに比較をして、テロに屈するなと述べた小泉総理は、イラク戦争に向かう過程でもいち早く支持をいたしまして、その姿勢が際立っております。むしろ、日本はこうした無法への参加を可能にする道を歩むべきではなく、憲法九条を持つ国にふさわしい、国際的な、外交的な貢献をする道こそ歩むべきだと思います。
最後に、集団的自衛権の行使は可能にして、その中身についてはその時々の政府の政策判断にすべきだという議論もあります。しかし、イラクへの自衛隊派兵が、当時国民の多くの反対の声を無視して強行されたことを見ても、時の政権のあれこれに任されない、やはり国民の意思として九条を堅持をし、それを生かしていく。このことが今必要だと思います。
以上です。
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