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2004年11月9日(火)

法務委員会 参考人質疑
「民法の一部改正案」と「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部改正案」

  • 保証人に無限定の返済責任を負わせる「包括根補償」を禁止する民法の改正で、貸し手側の銀行の説明責任について質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、三人の参考人の方、ありがとうございます。

 最初に、民法改正案にかかわって保証制度の見直しの具体的な問題について、石井参考人と池田参考人にお伺いをいたします。

 先ほど来これは議論になっておるわけですけれども、民法でやるのか、それともそれぞれの特別法等でやるのか、方法は別といたしまして、課題としてどうなのかという点をお聞きしたいんです。

 清水参考人から幾つかの点がございまして、私も多くは基本的に同感なんですが、一つは根保証人に対して契約書を交付しなければ無効にすべきだということ、それから保証人の方からの元本確定請求権を認めるべきではないかということ、それから、保証人に対して、主たる債務者に例えば追加融資などが行われた際にそういうことを通知をすることを義務化すべきじゃないかというような具体的なことがございましたけれども、方法は別として、この三つの課題についてはその必要性等はどのように認識をされているか、池田参考人、石井参考人それぞれからお願いをいたします。

参考人(池田眞朗君)

 まず、第一点の契約書を徴求するというところですが、これはこのように変えたこと自体がかなりの大きな進歩でありまして、その契約書の中に更にこういう要件を必ず書いておかなければいけないとか、そこまでになりますと、ちょっとこれは実際の取引実務上円滑にいかなくなる可能性があるのではないかという認識を私は持っております。

 それから、保証人の元本確定請求権ですが、これも審議会では議論があったところと伺っております。つまり、元本確定請求権の制度を置いたときに当事者の力関係で確定請求をすぐ出せるかとかですね、そういう意味では法が一律にその元本確定の要件を定めておく方がよろしいんではないかという考えがおありだったようでございます。

 それから、通知義務の点については、これは委任等のほかの民法の規定等から対比しますと、今後、状況によってはそういう義務を条文に付加していくことはあり得る話であろうと思います。ただ、先ほどもちょっと申し上げましたように、これ保証は全部悪いわけではございませんで、その金融担保としてこれまで非常に有用に使われてきたことも事実でございますんで、そちらのプラス面も維持しつつ、最終的にどこが落としどころか、一番適切なところかというのをこれからも探求していくべきではないかと思っております。

 ありがとうございます。

参考人(石井卓爾君)

 契約書でございますけれども、今までの慣例で金融機関から口頭で保証条件の合意を取ったりするというケースが間々あると聞いております。そういう面で、契約書をちゃんと、その金額とか期間について記入して契約書を結んでいくということになれば、書面でそういう契約書を取っていくということになればかなりの前進になるのではないかと思いますし、特に第三者、経営者以外の第三者に対してのことにつきましても、そういう書面でやるということになれば、十分内容を理解して契約を結んでいくということになりますので、これからいろいろなそういうトラブル、ケースが減少していくんではないかと思っております。

 それから、元本確定の件でございますが、先ほどちょっと触れさせてもらいましたが、経営者が交代したときに、その退任後の、その退任した前代表者の元本確定が、保証契約、金融機関がですね、在任中どれだけその保証したかという元本確定がしていただければよろしいわけですが、なかなかその辺がされないままに経営者が交代して、ずるずるその保証契約が継続されたり、元本も確定されないために、されないままにその根保証契約が継続されてしまうと、こういうことがありますので、是非その辺、元本確定をしていただくような形に持っていただけることを強く望んでおります。

 以上でございます。

井上哲士君

 次に、債権譲渡登記の問題でお三方にお聞きをいたします。

 特例法ができまして、これが使われてきているわけでありますが、これまでの使い方を見ておりますと、必ずしも新たな融資のみではなくて、いわゆる既存債務の回収に使われてきたのではないかということがありまして、その下で今後更に広げるという点での懸念があるわけですが、例えば今年のこれは三月ごろのある新聞ですけれども、某都市銀行の審査担当者ということでコメントが出ていましたが、融資先に債権譲渡登記を設定することは、設定した理由はどうあれ、その企業に大きな信用不安をもたらすことは周知の事実、あらゆる手段を尽くし、最後の最後で行うのが債権譲渡登記だと、こういうコメントがされたりしておりまして、幾つかの実例でもそういう使われ方をしたこともいろいろ聞いておるわけですが、実際上、そういう言わば乱用ということがどのようにどの程度行われてきたか、そこの御認識をそれぞれからお聞きをしたいと思います。

参考人(池田眞朗君)

 御質問のお言葉ではありますが、まず数字を見ていただきたいと思うんですね。この白表紙の後ろに付いている数字で見ていただければと思いますが、既存債務の回収のために債権譲渡特例法登記を使うというお話でしたけれども、恐らくこのデータで言うと、平成十年に、一番最初に施行されたときに、債権者が自分の権利を強化しようということでやった数字は少しこれに含まれているんだと思います。質権の設定なんかは、ですからこの年にちょっと多いんですが。

 その後見ていただきますと、この推移は、既存の担保を強化したいという数字ではございませんで、非常に多く使われている。しかも、具体的に私のかかわったものでも、この新規融資のための制度として、例えば十三年十二月に作られた売掛債権担保融資保証制度という、これは売掛債権担保融資、金融機関の担保融資に信用保証協会が保証を加えると、そこまでやれば大丈夫ですよということで作った制度ですが、こういう形で、その新規融資のために債権譲渡特例法登記を使う制度もいろいろできてきているわけでございまして、今回の動産登記の場合も出だしの、その当初のところは、申し上げましたように、今あるものを担保強化したいということで既存債務について使われるケースがないわけではないと私は思いますけれども、その後の数字ということはひとつこの債権譲渡登記の使われ方のデータを御参考にしていただければと思います。

 以上です。

参考人(清水規廣君)

 私の個人的な経験の中だけでお話しさせていただきますけれども、池田先生言われるように、債権譲渡の登記が商社だとか大企業等がお互いに使っているとか、あるいはまあ取引先との間でそういう登記しているとかというのを私も見たことはございます。

 ただ、旧来の考え方ですと、債権譲渡をしたと、売掛金をほかの人に譲渡しているというのは、一つは、信用不安の一つということでありますので、私が逆に債権譲渡についての相談を受けた場合、これはやはりそういう効果があるよと、ですからそれは慎重にしなさいと。逆に取引先の方から相談を受けた場合には、じゃその債権譲渡は内実はどうなのかということをやっぱりきちっと見て、倒産の一つの兆候としての債権譲渡なのか、きちっとした通常の商業取引の中で行われているものか見極めなさいと、こういうアドバイスをするようになると思いますけれども。

 以上です。

参考人(石井卓爾君)

 既存の資金の回収のためにこの動産譲渡が行われるということでございますが、これは一つに金融機関のサイドの考え方によるところが大きいと思いますので、金融機関が、今の会社の状況では担保が不足しているよと、だから更にそういう動産を担保にして資金をお貸しをすると、こういう形にならないように、新規事業に使われる方向に何らかの形で持っていくことが必要ではないかなと。

 御質問の趣旨はそういうことではないかと思いますので、どういうふうにしたらそういうふうな形になるのか分かりませんけれども、やはり金融機関サイドでそういう態度に、考え方になっていただくことが有り難いなと思っております。

 以上です。

井上哲士君

 清水参考人にお伺いをしますが、労働債権の確保が非常に困難になるんではないかと、こういう御懸念がありまして、この法案にはそのための、それを回避するための具体的な措置が盛り込まれていないと、こういう御指摘でありましたが、参考人としてはどういう措置が盛り込まれることが必要だとお考えでしょうか。

参考人(清水規廣君)

 法制審議会の中でその点について議論がなされたということは聞き及んでおります。労働組合の同意を得ることだとか、あるいは労働債権の方が何割優先するとか、そういう議論があったかもしれませんけれども、一つは、担保権に対して労働組合が承諾をしなければ担保権は設定されないということになりますと、ちょっと法体系としてどうだろうかというふうに私は考えておりました。

 結論から申しますと、今はその手段というのは思い浮かべません。

井上哲士君

 最後に、池田参考人に今のに関連してお聞きするんですが、まあ法制審でも今後の施行状況を見てこの労働債権の確保についての措置を取っていくということが出されたわけですが、いろんな不安からいいますとむしろセットして出すべきではなかったと、こういう議論もあるわけですが、この点についていかがでしょうか。

参考人(池田眞朗君)

 確かに、私自身はこの労働債権の確保ということをやはりないがしろにしてはいけないと思っておりますけれども、ただいま清水参考人の御回答にもありましたように、具体的にどういう形でこの法体系の中で労働者の権利、労働債権の確保を図っていくかというのはなかなか難しいように思っております。

 したがって、今後の状況、推移を見ながらいろいろ英知を絞っていかなければいけないんだろうと思うんですが、破産法の方ではそれなりの手当てをしたと伺っておりますが、この法律の性質上、この資金調達のための法律の側でどういう、その内部でどういう処理、対応ができるかというのは、現時点では私自身も思い浮かんでおりませんので、今後研究課題としたいと思っております。

 ありがとうございました。

井上哲士君

 ありがとうございました。


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