非常に重要な御指摘だと思います。この点は、検討会でも裁判手続との連携の在り方というのは非常に時間を掛けて議論したところだと思います。
この裁判手続からの回付というのは、これは諸外国において、アメリカのみならず、ドイツあるいはフランス等においてもADR振興の中核的な施策として取られているところなわけですけれども、ただ、日本においては、一つは既に司法型ADRとの連携でいわゆる付調停という制度が存在すると。それに加えて、民間型ADRに回付する必要性ということが問題になりますし、それから当然その当事者は訴えで判決を求めて訴えを提起しているのにADRに回されるということになりますと、これは裁判を受ける権利の問題が出てきますので、その当事者の同意が必要ではないか。しかし、逆に当事者の同意が必要だとすれば、それはどの程度の意味があるのだろうかというような疑問もあったということで、今回は法律の中には取り込まれなかったということだと思います。
それから、証拠調べの援助につきましては、仲裁については御承知のように既に仲裁法の中に規定があるわけです。それに対して、調停、あっせんというのは最終的に合意によって解決するわけですので、その証拠調べまでやって合意で解決するというのはどうなのかと。そこまで裁判所の協力が必要なものというのは、逆に言えばそういう話合いになじまないものが多いのではないかというような批判もありました。私自身はこれを設けてよいのではないかという意見を申し上げましたけれども、今後の検討課題ということだろうと思います。