11月10日(水)
経済・産業・雇用に関する調査会
「構造改革と経済財政の中期展望」と「新産業創造戦略」について
- 構造改革と経済財政の中期展望について(内閣府)、及び新産業創造戦略について(経済産業省)
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- 井上哲士君
まず、「改革と展望」について一点お聞きしますが、最近、いわゆる定率減税の廃止が一つの柱だと、方向だという答弁を受けまして、経済界なども含めまして、これが非常に景気回復の足かせになるというような、需要の低下などを招くという声が上がっているわけですが、今回のこの「改革と展望」の先ほど説明あった試算に盛り込んでいる主な前提のところでは、税制改正については各年度の税制改正措置を想定と、こうしか書いてないわけですが、この「改革と展望」ではそのいわゆる定率減税の廃止ということは想定しているのかいないのか。想定しているとすればどういう影響を及ぼすと試算をしているのか、していないとすればどういう影響があるとお考えなのか、お聞かせいただきたいというのが一点です。
それから、新産業創造戦略なんですが、先ほども人材が非常に大事だという御質問もありましたし、御説明でもかなりありました。それで、大変興味深く聞いたわけですが、特に日本の、逆に今、本来的なこの物づくりの強みとして幾つか言われたわけですが、例えば濃密なコミュニケーションでチームワークに優れ知恵と工夫でやっていくというようなことがあったわけですが、現状の物づくりの現場に行きますと、いわゆる派遣、それから請負というのが非常に増えてきておりまして、いつ首切られるか分からない使い捨てのような状況の中で、なかなかそういう物づくりのスキルを身に付けることができないということもありますし、いついなくなるか分からぬわけですから、そういうこれまでの強みだった濃厚なチームワーク、なかなか形成されないという問題があると思うんですね。
ですから、現状に合わせていろんな施策を先ほど、打たれているのは分かるんですが、そういう派遣や請負が非常に増えているというような雇用の状況ないしは雇用政策というものも、この物づくりの強さを生かすという、現場からはもっと見直す必要があるんではないかと思うんです。その点、現場に行かれた思いとしていかがか。
この二点、お願いします。
- 会長(広中和歌子君)
まず、内閣府大守分析室長。
- 政府参考人(大守隆君)
参考試算において定率減税の廃止を見込んでいたかどうかというお尋ねをいただきました。
まず、明示的に見込んだ試算をしてはおりません。ただし、基礎年金の国庫負担割合を二〇〇九年度までに段階的に二分の一に引き上げるという想定は入れておりまして、その財源として家計の負担において引き上げるというふうな想定を置いております。
具体的には、ちょっと細かくなりますけれども、平成十六年度税制改正における財源の充当ということで、平年度ベースで千六百億円の年金課税の適正化に加えまして、その後、六千億円ずつ毎年国庫負担を増額していくものに伴って直接税及び間接税の税負担を家計に求めるというような姿になっております。これは二〇〇九年度の仕上がりの姿で申し上げますと三兆円ちょっとの負担増ということですので、仮に定率減税を廃止するとなりますと、もちろんタイミングとか微妙に違いますけれども、マクロ的な効果としては似たようなインパクトがあるかというふうに思っております。
以上です。
- 会長(広中和歌子君)
経産省は。北畑経済産業政策局長。
- 政府参考人(北畑隆生君)
私ども研究したその物づくりの強さのところでは、派遣では物づくりの強さは出ない、そういう結果でございます。産業界の方でもようやくそういう認識になってきたと思います。リストラの時代にコストだけで派遣を増やしたというのは、やっぱりこれからの国際競争に生きていく強い製造業を作るという意味ではマイナスだということであります。むしろ、強い競争力を持つためには終身雇用に戻した方がいい、あるいは少なくとも、企業にとって重要な中核人材は少なくとも終身雇用にする。もっと、退職後、韓国の企業に引き抜かれないために、退職後もですね、中核となる人間は育てなきゃいけないという意識がようやく出てきたと思います。
それから、そうはいっても、最初申し上げましたようにリストラの時代に断層ができておりますんで、どうしてもその五十年代のベテランの技術を若い人たちに伝えるための工夫をしなきゃいけないということで、お手元の三十二ページでございますけれども、大学を活用したいということなんでございます。
大学の独立行政法人化が大変いい刺激になりまして、私立大学も含めて産業界との連携というのが進んでおりますが、今進んでいるのは研究開発なんでございます。
もう一つは教育機能でございます。大学の持っている教育機能を生かして、製造現場にいる技術者をあるいは若手を、オン・ザ・ジョブ・トレーニングではなくて、大学に一年国内留学をさせて技能を磨こうということなんでございます。そのために予算要求をしておるんでございますけれども、お手元の例は、これは岩手大学の例なんですけれども、地元の金型・鋳物業界が協力をして岩手大学のものづくりセンターに人を出すと。そこで教えてくれる人は大学の先生ではありません。外から人を持ってこようと、例えばトヨタから技術者を教授として迎えようと。大学の先生は教えるカリキュラム作成とかそういう分野で活躍をしていただくということでございまして、このものづくりセンターはいずれ専門職大学院に模様替えをしたいというような意欲を持っておられますから、典型的に言いますと、中小企業のベテランの技術者が大学に行っているうちにマスターになって帰ってくると、こういう世界を作りたいということでございまして、これは是非実現をしたいと思っております。
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