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2004年10月27日(水)

憲法調査会
「地方自治・住民投票制について」

  • 消費税増税問題について発言。

井上哲士君

 先ほど来、地方自治の規定についての様々な御発言がありました。先駆的であるという評価、良くできているという評価もございました。一方で、規定があいまいであるとか、幾つかの課題を明確にするべきだという御意見もありましたけれども、先ほどの指摘もありましたように、その基本は行政権限の拡大に属することかと思います。

 いずれにしましても、こうした評価にかかわらず、現状の地方自治に対する問題点も共通して出されたと思います。私は、そこには、三割自治とか一割自治とかということも言われる言葉にありますように、権限や財源も十分でなく、国の下請のようなことをさせられているという現状がある。そうであるならば、憲法の規定を変えるのではなく、この憲法の示された地方自治の本旨をどう充実をさせていくのか、このことが今求められていると思います。

 政治の在り方と同時に、地域から今地方自治の充実ということで営々として営まれてきた努力にも非常に注目をするべきではないかと思います。市民オンブズマン活動というのが非常に地方自治体でも活発になりまして、税金の使い道の住民によるチェックということが広がってまいりました。また、自治体を揺るがすような大問題は自分たちで決めるんだという住民投票の動き、住民が主人公の地方自治体における住民参加の様々な仕組みなどなど、注目されるべき動きが今大きく広がっております。

 こうした住民の側から地方自治を充実させていく努力、これに注目をし、更に援助もしていく、このことが必要ではないでしょうか。その一つとして、私は、地方自治における平和事務、平和行政、このことに着目をしたいと思います。

 地方自治体による平和事務遂行の言わば憲法上の源泉は、前文に定めております住民の「平和のうちに生存する権利」、これに求められると思います。その下で、一つは、自主的な法令解釈権に基づく国に対する見解の表明というのが自治体によって行われてまいりました。また、国の計画、立法手続への参加ということも行われてまいりました。

 さらには、地方自治体による宣言、条例などの制定ということが私は大変重要だと思います。

 一九五四年のアメリカによるビキニの水爆実験をきっかけに、全国の地方自治体で、原水爆禁止の決議運動の進展を背景にしまして、八〇年代以降、いわゆる非核自治体の宣言の運動が急速に進行をいたしました。これは、私は、我が国の自治体が新たなこの非核平和に関する行政施策を編み出して、それを現代の自治体行政の一形態として位置付けてきたというふうに思います。

 さらに、一歩進んで、いわゆるこの平和行政条例というものを作る自治体も出てまいりました。東京都の中野区であるとか沖縄県の読谷村などでこの条例が作られましたけれども、その基本原則を、「世界の平和を求める区民の意志を表明した憲法擁護・非核都市の宣言の精神に基づき、日本国憲法の基本理念である恒久平和の実現に努めるとともに、区民が平和で安全な環境のもとに、人間としての基本的な権利と豊かな生活を追求できるよう、平和行政を推進する」と、中野区の条例でありますけれども、このようにうたわれてやられております。

 さらに、こうした事務が、基本的には非権力的な事務にとどまっておりますけれども、権力的な平和行政といいましょうか、これを可能にする在り方として、一九七五年に神戸市議会で全会一致で行われた核兵器の搭載艦艇の神戸入港拒否に関する決議、いわゆる神戸方式というものがございます。港湾管理者たる神戸市が内規を設けて、外国艦船が神戸港に入港を希望するときには当該国の在日公館から非核証明を提出することを求めるというものでありますけれども、これ以降、アメリカ軍艦は神戸港に一隻も入港していないという状況がございます。

 こういう地方自治体の平和事務というのは、憲法の平和主義及び地方自治の原理に根拠を持つ総合的な、多様な事務として現憲法の下で新しい発展をしてきたわけで、こうした様々な地方自治体側、また住民側からの地方自治を充実をする努力、このことに今大きな着目をして発展をさせていくべきだと申し述べまして、意見を終わります。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。財政民主主義と予算修正についてまず意見を述べます。

 明治憲法でも、財政民主主義の原則、一応は認めておりましたけれども、多くの例外規定が設けられて著しく制限をされておりました。その最も大きな一つが、いわゆる統帥権による議決権の制限でありました。陸海軍省の経費は、形式上は予算に計上され議会に提出されましたけれども、その内容を議論するというのは、天皇の大権に触れるという理由で詳しいことは事実上は審議されなかったと。これがあの太平洋戦争での膨大な臨時軍事費特別会計の内容が国民にほとんど知らされないままに使われたという背景にあります。

 こういう教訓から、新しい憲法の下での財政民主主義が確立をされたわけでありますが、現状でいいますと、今の国家財政の決定過程にはいろいろ問題ありますし、現実の運営は予算の国会審議が十分に反映をされるとは言い難いと思います。

 先ほども国会の予算修正権のことが出ておりましたけれども、憲法が国会が国権の最高機関だということを一方で定め、財政民主主義の規定があります。ところが、実際には政府は、国会の予算修正は内閣の予算編成権を損なわない範囲において可能だということを主張して、非常に予算修正に高いハードルを設けているというのが実態でありますけれども、やはり財政民主主義の原則から、この点は大きな改善が必要だと思います。

 もう一点、税制の民主的原則について発言をいたします。

 先ほど同僚議員からも、消費税の導入がこの点を非常にゆがめているということがございました。消費税導入とその後の引上げによりまして、間接税の収入は導入前の二六・八%から現在は四四・一%になっております。累進課税も税率のフラット化という下で弱められまして、所得税の最高税率が、消費税導入時の六〇%が現在は三七%まで引き下げられております。法人税の税率も四〇から三〇%へと引き下げられまして、その結果、この十年、この間で消費税収の増額分が高所得者の所得税減税や法人税の減収の穴埋めに結果としてなっているということがあります。諸外国と比べましても、日本のこうした所得の再配分機能が非常に弱まっているというのが実態であります。

 今、年金財政に充てるということで定率減税の廃止、縮減、その先の消費税の更なる引上げという議論がありますけれども、こういう本来の憲法の財政民主主義、そして税制の民主的原則ということからいったときに、私たちは、これはこれに反するものだと思いますし、むしろ今こそこうした憲法の税の在り方の原則に立ち返るということが重要になっていると思います。

 以上です。


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