私は、日本共産党を代表して、反対の討論を行います。
本法律案では、著作権侵害に対する個人罰則を強化しています。しかし、本来、著作権侵害に対しては、侵害者に対する差止め請求など民事上の請求権を行使することで、その侵害行為の停止、予防と被害回復を図ることができる性格のものです。著作権侵害に重罰を科すことは、創作行為者に心理的な萎縮効果を及ぼし、自由な創作活動を阻害することにもなりかねません。
政府は、産業財産権との調和を図るとしていますが、そもそも著作権は登録を必要とする特許権などの産業財産権とは異なり、著作物の創作によって著作権が成立するものであり、著作権の対象も思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものを言うと、内容も表現方法も様々なものが含まれることから、産業財産権と同一に扱うべきでなく、罰則の在り方もより慎重であるべきと考えます。
さらに、実態として著作権侵害の検挙例は、レコード、CD等の海賊版の輸入など、デッドコピー事案が大部分であり、それ以外の著作権侵害罪の適用は極めて少数であり、現行法が定める懲役刑の上限、それに近い刑が適用された事例も少なく、〇四年に行われた法改正で上限を三年以下から五年以下に引き上げたばかりで、その効果が十分に検証されてないことからも、直ちに懲役刑を引き上げる必要性も乏しいものであります。
視覚障害者に対する録音図書のインターネット送信など、必要な権利制限は賛同できる面もありますが、罰則の強化による懸念を払拭することはできず、全体として反対をいたします。