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井上哲士ONLINE
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2006年12月14日(木)

教育基本法に関する特別委員会(午前)
「教育基本法案」について(対総理)

  • 「教育は子どもの個性に応じて行われるべきで、自由で自主的でなければならない」と指摘し、「国家の介入はできるだけ抑制的でなければならないという原則は認めるのか」と総理の見解をただす。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 政府案が国会に提出されてから七か月半がたち、審議を重ねてまいりました。しかし、最近の世論調査を見ましても、今国会での成立にこだわるべきでないと、徹底審議をしろというのがやはり圧倒的多数であります。しかも、昨日、この特別委員会で参考人や公述人に立った方々が二十人、連名でアピールを出されました。我々の提起した問題が審議をされていないと、慎重審議をしろと、こういうアピールでありまして、大変異例なことだと私は思います。

 なぜ世論は一層の審議を求めているのか。その一つに、今の政府に、文科省に教育の根本法を国会に提出する資格があるんだろうかということを国民が疑問を持っているからだと思うんですね。

 昨日、タウンミーティングの問題の最終報告書が出ましたけれども、恐るべきやらせ、サクラが明らかに一層なりました。私は、昨日、この場の質問で、文部科学省主催の教育改革フォーラムでも言わば集団だましといいましょうか集団やらせと言うべきものも行われていたし、この事業に文部科学省のOBなどが群がっていたということも提起をいたしました。正に法案提出としての資格が問われているんです。ですから、私、総理、責任を取ると言うならば、正にこの法案を撤回をするということが一番ちゃんとした責任の取り方だと思います。

 今、私の部屋にもたくさんの手紙やメールが来ておりますけれども、今朝来ましたメールにこういうのがありました。あるお母さんのメールです。子供たちはずるを最も嫌いますと。やらせ質問には子供たちもあきれ、怒っています。改悪案が採決されると、子供たちは何も信じなくなるでしょう。深く傷付き、希望を奪われるでしょうと。日本の将来は真っ暗です。こういうお母さんのメールでありました。

 ずるはいけないと思っている子供たちにこの法案を今強行することがどういう影響を与えるのか。総理、このメールへの感想を是非まずお聞かせいただきたいと思います。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 タウンミーティングの問題についてはタウンミーティングの問題として、昨日、調査結果を発表させていただきました。そして、責任者の処分を行うと、けじめを付けるということもはっきりと申し上げているわけでございます。こうしたことが行われたことは極めて遺憾でありますし、また言わば事なかれ主義の上にこうした出来事が起こったのではないかと、このように思います。そういう精神を基本的に変えていかなければならないと思います。そしてまた、このタウンミーティングについては、国民との大切な対話の場として再びゼロからスタートさせていきたいと考えているところでございます。

 他方、この法案につきましては、もうこの国会で何回も申し上げておりますように、長い間議論をしてまいったわけであります。また、中教審においての議論、そこにはたくさんの関係の団体の方々も来て意見を述べておられます。また、専門家の方々の意見も聴取をしている。あるいは、何といっても国民の代表によって構成をされているこの国会におきまして、衆議院においては百時間を超える審議がなされました。そして、公聴会が行われてきたわけであるのはもう御承知のとおりでございます。この参議院におきましても、八十時間を超える議論をしたわけでございまして、法律案としては基本法としても大変長い時間を掛けて慎重に広く深い議論を行ってきたものと、私はそう考えているところでございます。

 是非とも私は、教育再生のために第一歩となるこの教育基本法の成立を是非目指していただきたいと、このように思います。

井上哲士君

 法案の提出者としての前提が問われていると言ったんです。私は、今の答弁を聞いて子供たちは、ああ、ずるをやっても数と力で押し切ったら許されるんだなと思うに違いないと、本当に残念に思いました。

 法案をめぐる国民の疑問というのは、国家権力や教育行政が教育への介入を強めるのではないかと、こういう不安があるわけですね。

 この点について、まず総理の教育観について聞きますが、教育というのはだれのためにあるのかと。私は子供のためにあると思います。総理もそう思われますか、それとも教育を施す側のためにあると、そうお考えでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 それは当然子供のために教育はある。子供たちの健やかな成長、そして人格の完成を目指して、我々は子供たちにより良い教育を保障していきたいと、行っていきたいと、このように考えています。

  〔理事保坂三蔵君退席、委員長着席〕

井上哲士君

 子供の成長のためにあると言われました。当然だと思うんですね。そうであれば、どういう教育が求められるのかと。私は、教育者と子供の人格的接触を通じて行われるのが教育だと思います。

 ですから、子供の個性に応じて行われるべきものであって、やはりそこは自由や自主性がなくちゃいけません。国家などの行政権力がこれをやれと、あれをやれと指図して介入するのは最もふさわしくないやり方でありますし、戦前の教育というものはそのことが若者や子供たちを戦争に駆り立てた。そのことへの反省から、国家への、教育内容に対する介入はできるだけ抑制的でなくてはならないと、こういうことを定めてきたわけですね。

 総理は、この政府案で管理教育が強まることはないと答弁をされていますが、国家の教育への介入はできるだけ抑制的でなくてはならないと、この立場も確認できますね。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 先ほどの答弁でも申し上げましたように、教育は正に人なりでございまして、教師、先生方が専門的な知識、能力を持って、あるいはまた人格を持って子供たちに教育を実施をしていくことが大切だろうと、このように思います。その中で、もちろん先生方の自由な創意工夫が認められるということは当然ではないかと、このように思います。

 一方、国が法律に基づいて社会公共的な観点から教育の内容と方法について一定の関与を行う権限を有することは、これは最高裁の判決によっても認められているところでありますし、また教育行政において教育がより良い方向に向かうべく様々な施策を行うことも、これは当然あり得るということでありますが、しかしいわゆる国が管理を強めていくということには、この改正によってですね、私はならないと思います。

井上哲士君

 国の管理統制にはならないと言われました。しかし、政府案を通せばどうなるかと。

 総理の答弁でいいますと、この法案によって、基本法を変えることによって、法律にのっとって行われる教育行政においては、これは不当な支配にならないんだと、こういうふうに答弁をされました。しかし、今、大問題になっているタウンミーティングも教育行政の中で行われました。やらせ発言が最初に発覚した青森では、その発言をさせられたPTAの会長さんは、非教育的なことをしてしまったと目を赤くして言われているんですね。あるいは、この世間の評判の悪いいわゆるゆとり教育の学習指導要領も、法律に基づく行政だった、教育行政だったわけです。

 ですから、教育行政もやはり誤りを犯し得る、教育行政も不当な支配に当たる場合があると私は思いますけれども、総理は教育行政というのは誤りを犯すことがないと、こういうふうに断言をされるんでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 基本的には、法律にのっとって行うこの教育行政ということは、これは不当な支配ではないであろうと私は考えております。

井上哲士君

 教育行政が誤りを犯すことはないのかと聞いているんですから、答えてください。総理、総理、総理、総理に。

国務大臣(伊吹文明君)

 いや、ルールにのっとって委員長が指名しておられますから。

井上哲士君

 総理に聞いてんだから。

国務大臣(伊吹文明君)

 何度も申し上げているように、行政の立場からすれば、法律に基づいて行われるものは不当な支配だと考えて行えば、それこそ憲法違反になります。しかし、行ったものが不当な支配だと考える人がいることは抑えられませんし、それはその方の自由なんです。その場合に、それが不当な支配かどうかは司法で争われて最終的な結論が出るというのが日本国の憲法下の統治のシステムです。

井上哲士君

 子供たちには学ぶ時間というのは一回しかないんです。それを行政が誤ったからそれは司法だ司法だといって、その間に受けた教育は一体どうなるのかと、これが問われているんですよ。結局、私は、行政が我が物顔で教育に指図するような、そういうものになるというおそれをやはり抱かざるを得ません。

 実際、今そういうことで様々な問題が起きているんです。国民の大多数が、今決めるな、慎重審議と考えているわけですから、教育の根本原理と憲法に反するような法案は、私は廃案にする以外ないと申し上げまして、質問を終わります。


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