2007年4月12日(木)
文教科学委員会
「日本原子力研究開発機構法の改正案」について
- 日本原子力研究開発機構による原子力の安全研究の予算が減少していることや、東電の元副社長が福島第二原発の所長だったことが中立性透明性の確保の点で問題があると指摘。また、能登半島地震の教訓も踏まえ、活断層の科学的再調査と原発の耐震指針の見直しを求める。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
今回の法改正の対象になっています日本原子力研究開発機構が行う原子力安全規制行政に対する技術的支援に関してお聞きをいたします。
この間、原子力発電所で制御棒が抜ける、また臨界事故隠し、データの改ざんなど様々起きておりまして、国民の中に今不安、不信が広がっております。そういう中だからこそ、この原子力の安全確保のためにも基礎的な研究が非常に重要だと思うんですが、この機構の原子力安全にかかわる予算、十年前、五年前と比べてどうなっているのか、まず御答弁いただきたいと思います。
- 政府参考人(藤田明博君)
御説明申し上げます。
日本原子力研究開発機構におきます安全研究の平成十九年度、それから五年前の平成十四年度、十年前の平成九年度の予算額でございますが、過去のものは日本原子力研究所と核燃料サイクル機構の安全研究の合計額でございますが、平成十九年度は、一般会計が二十九億円、特別会計が百三十億円、合計で百五十九億円でございます。五年前の平成十四年度は、一般会計が六十五億円、特別会計百二十二億円、合わせて百八十七億円でございます。それから、十年前の平成九年度は、一般会計が百九十七億円、特別会計三十四億円、合計で二百三十一億円となっております。
さらに、平成十三年度から原子力安全・保安院の方からの受託によります安全研究も行っておりまして、平成十八年度の受託研究額につきましては二十一億円程度というふうになっております。
- 井上哲士君
一般と特別トータルで、十年前と比べますと三分の二程度ということになっております。特に特別会計の方がぐっと膨らみまして、核燃料サイクルや高速増殖炉などの安全確保にかかわる研究予算が非常に多いというふうにお聞きをしておるわけですね。
一般会計の十八年度と十九年度の項目なども見ましても、例えば安全研究費、これは構造、機器の高経年化評価に関する研究なども行っているようですが、それから原子力基礎工学研究費など、こういう部分が軒並み減額となっておりますし、機構自身が研究費用も外部資金の獲得が中期目標や計画で求められているということで、これで今本当に必要な研究ができるんだろうかと心配になってくるわけでありますが、やはり一般会計のところでしっかり基礎的な研究の予算を確保していくということが重要かと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
- 政府参考人(藤田明博君)
御説明申し上げます。
原子力研究開発機構の安全研究につきましては、原子力安全委員会が決定をいたしました原子力の重点安全研究計画、平成十六年のものでございますが、これに基づいて着実に進められてきているものでございます。
先生御指摘のように、機構の一般会計により実施する安全研究については確かに減少してきているわけでございますけれども、原子力安全委員会からは、軽水炉分野や放射線影響分野といった一般会計で対応すべき分野のみならず、核燃料サイクル施設分野、それから放射性廃棄物や廃止措置の分野、それから新型炉の分野、こういった分野におきます原子力機構が行う安全研究への期待も強く示されているところでございます。こういった分野につきましては、一般会計ではなくて、それ以外の例えば特別会計などの資金を充当して進めていくことといたしております。
いずれにいたしましても、安全研究自体が中期目標に定められております柱の一項目でもございます。それから、原子力安全委員会からの期待にもこたえていくということが必要でございますので、一般会計はもとより、特別会計や外部資金をも用いまして、原子力機構におきます安全研究活動が少しでも促進されることが重要ではないかというふうに考えているところでございます。
- 井上哲士君
様々、重点分野で行っているというお話もありました。私はやっぱり、様々、今、既存原発のいろんな問題もある中で、基礎的な研究ということにしっかりとした予算も確保してやっていくことが必要だということも改めて申し上げておきます。
この機構がこういう安全行政に対する技術的支援を果たす上で、中立性、透明性というのは非常に大事だと思うんですけれども、その点いかがお考えでしょうか。
- 政府参考人(藤田明博君)
御説明申し上げます。
国の原子力安全行政の推進におきまして、中立性、透明性の確保は重要なことだというふうに認識をいたしております。原子力機構におきましては、先ほど来申し上げておりますような形で原子力の安全研究を行いまして、原子力安全委員会や規制当局が定めます安全基準でございますとか指針の整備に必要となります、基礎となります科学的、客観データを提供をするということを通じて、そういった活動を通じまして原子力安全行政の中立性、透明性の確保に寄与しているというふうなことではないかと思っております。
文部科学省といたしましては、今後とも、原子力機構が引き続き今申し上げましたような役割をきちんと果たしていくことを期待しているところでございます。
- 井上哲士君
この中立性、透明性確保の上で非常に人事は大事だと思うんですが、現在の機構の副理事長は東京電力の出身の方でありますし、その前の理事長も中部電力出身ということなわけですね。ですから、言わば安全規制の対象になる電力会社出身の方がこの行政の技術的支援をする機構の経営の責任ある地位にいらっしゃるというのは、やはりちょっと中立性、透明性の確保という点で私は問題があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
- 政府参考人(藤田明博君)
先ほども御説明を申し上げましたけれども、原子力機構の安全研究は、調査研究、実験などに基づきまして科学的、客観的なデータを収集をいたしまして、このデータを原子力安全委員会等が定めていきます安全基準や指針等の整備のための基礎となりますデータとして提供する、そういった形で原子力安全行政に貢献をするということでございますが、これらのデータは純粋に科学的事実にもちろん基づくものでございます。
また、原子力機構におきましては、役職員は、行動基準、就業規則においてデータ改ざん等の不正防止を求められておりまして、これらは役職員が過去どういう職業にいたか、そういったことによって左右をされるものではございません。
他方、原子力機構は、安全研究のみならず、原子力に関します基礎研究から応用開発まで原子力の研究開発を総合的に実施する研究機関といたしまして、産学官の総力を結集する形で事業を進めていくことが求められているわけでございます。
そういった観点から、今御指摘のございました副理事長につきましては、電力会社の経営者といたしまして豊かな経営能力を持っていることや原子力にかかわる現場の管理運営経験が豊富である、そういったことから原子力機構の法人運営に不可欠であるということで理事長が任命をしたというふうに承知をしております。
そういうことでございますが、以上、先ほど申し上げましたようなことでございますので、出身母体が原因で機構の研究開発の客観性が失われるというふうには私ども考えてございません。
- 井上哲士君
この副理事長は東電の副社長をされていたわけですが、九八年六月からは福島第二原発の所長もされていたんですね。今回明るみになりました福島第二原発でのデータ改ざんというのは一九七七年十月から二〇〇二年八月末まででありますから、正にその間に所長をされていたということになります。
その機構の中立性、透明性という点でデータの、確実なデータの提供ということを繰り返し強調されたわけですが、この方が所長時代にこういうデータ改ざんが行われていたということを考えますと、私はやっぱり適切と言い難いんではないかと思うんですが、そことのかかわりなどについては調査などされているんでしょうか。
- 政府参考人(藤田明博君)
原子力機構におきましては、東京電力の一連の不祥事に関しまして東京電力から原子力安全・保安院に提出されました報告書、これ二件ございまして、三月一日付けのもの、それから大規模のものとして三月三十日付けのものございますが、これら二つの報告書を調査をいたしました結果、不正に関与した者の中に副理事長が東京電力在職中、当時に就いておりました役職名が含まれていないということを確認をしたというふうに私ども聞いているところでございます。
- 井上哲士君
東電は、データ改ざんで信頼を損ね迷惑を掛けたということで、現職の経営管理責任の観点から、取締役や執行役員以下二十一名処分をされているわけですし、個々の事案についても、現在在職している管理職四十三人についても処分をされているということでありまして、私は、やっぱり当時そういう責任ある立場にいらっしゃった方が今そういう安全行政にかかわるということで国民的信頼が得られるんだろうかということは疑問を呈しておきたいと思います。やはり、安全行政とこの推進する側というのは、やっぱり厳格に峻別をし、国民から信頼を得るような在り方が必要ではないかと思います。
さらに、原子力安全規制にかかわりまして、原発の耐震基準についてお聞きをいたします。
今回、能登半島地震の震源は北陸電力の志賀原発から約二十キロの距離ということで、原発の近くで起きた地震では過去最大級でありました。両原発とも停止中で事なきを得たわけですが、原発での加速度の最大値は何ガルだったのか、それぞれの緊急停止基準との関係でどうだったのか、お答えください。
- 政府参考人(佐藤均君)
お答えいたします。
能登半島地震の発生時には、志賀原子力発電所では一号機及び二号機とも停止中でありましたが、一号機の原子炉建屋の基礎盤上で水平方向に約二百二十ガルの最大加速が観測されております。原子炉が地震により自動停止する設定値は、一号機で水平方向百九十ガル、二号機で水平方向百八十五ガルであったことから、仮に志賀原子力発電所一号機及び二号機が運転中であった場合には原子炉は自動停止したものと考えております。
- 井上哲士君
稼働中であれば緊急停止していたほどの揺れだったということでありますが、今朝の報道を見ておりますと、国の地震調査委員会は昨日、この能登半島地震の震源について、北陸電力が志賀原発の周辺調査で見付けていた断層二十本のうち二本が一連の断層として同時に動いた可能性が高いという見解をまとめておられます。
北陸電力は、この志賀原発一号機の設置認可申請に際して、この二本のうち一本は活動のおそれが少ないとして評価対象から外していたというふうに報道されております。そうなりますと、地震規模の過小評価につながるものであるし、今回正にそうだったわけで、やはりこういう評価方法が非常に不適切だったんではないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
- 政府参考人(佐藤均君)
志賀原子力発電所の原子炉設置許可申請時に、敷地周辺の海域について海上音波探査が実施されております。活断層の調査がこのとき行われているわけでございますが、その結果、今回の能登半島地震の震源付近の海域におきまして複数の活断層が確認されており、それらの活断層によります地震の規模はマグニチュード六・一から六・六という評価を行ってございます。
この志賀原子力発電所の耐震設計に当たりましては、能登半島沖の活断層だけでなく、発電所周辺の海域及び陸域の活断層や過去の地震など、詳細な調査を実施いたしまして、幅広く様々な地震を考慮して余裕のある基準地震動を設定しているところでございます。今回の地震によります志賀原子力発電所への影響の観点から見れば、十分余裕のある耐震設計がなされていることや、地震後の点検結果などから、耐震設計の範囲内のものであったと認識いたしております。
なお、今回の能登半島地震の震源となった活断層の特定につきましては、地震調査研究推進本部などの研究機関において調査がなされているという段階だと承知いたしてございます。
- 井上哲士君
今回は、確かにその余裕の範囲内だったのかもしれません。しかし、その基礎となるこの活断層の調査、そしてその評価に過小評価があったのではないかと、こういう指摘されているわけですね。ですから、今後、これで収まるのかということになるわけです。
その地震調査委員会の島崎東大地震研究所の教授は、位置関係や地質構造の特徴から、普通なら一本につながる活断層として評価をすると、こういうコメントを出されておりまして、少し、要するに普通と違う評価をしたんじゃないかと、こういうことですね。
しかも、この志賀原発の訴訟では、裁判所がこの北陸電力の設置許可申請に当たって、マグニチュード七・六の地震が起こり得る邑知潟断層帯における地震を想定していないということで二号機の運転の差止めを命じるという、こういう判決も下しているわけで、私はやはりこの地震規模の過小評価というものが繰り返されているんではないかということを思うわけです。
それで、原子力安全委員会は、昨年の九月に原発の耐震安全基準となる指針を改訂をいたしました。五万年前の活断層だった指針を今度は十三万年前にするなど前進はあるわけでありますが、しかしその経過の中でも、これまでの活断層調査が現在の活断層研究の常識から見て余りにも不合理じゃないかということで専門委員の方が辞任をされるというようなこともあったわけでありまして、私は今回の能登半島地震の、こういうどこでも地震のおそれがあるにもかかわらず必ずしも活断層の把握が十分でないということを考えますと、こういう新指針についても見直しをするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
- 政府参考人(片山正一郎君)
御説明を申し上げます。
原子力安全委員会におきましては、地震学、地震工学の最新の知見を反映して、原子力施設の耐震安全性の一層の向上、信頼性を向上させることを目的として、耐震指針を、先生御指摘のとおり、昨年九月に改訂をしたところでございます。
今回の能登地震につきましては今後の詳細な分析結果を待つ必要がある面もございますが、新指針におきましては、基準地震動の策定方法を高度化するなど、具体的に言いますと、指針本文におきまして、活断層の位置、構造、活動性等、形状、こういうものを明らかにするために、敷地からの距離に応じて、地形学あるいは地質学、地球物理学的手法を総合的に活用した十分な活断層調査を行うこと、こういうことを求めるということを明確にしたところでございますし、また、指針の解説の中におきましては、距離に応じて、文献調査のみならず、変動地形学的調査あるいは地表地質調査、地球物理学的調査等を適切に組み合わせて十分な調査を実施することを求めております。さらに、特に敷地近傍においては精度の高い詳細な調査を行う必要があるというふうにしておるところでございます。
したがいまして、より厳しい地震動を想定することを求めていることから、今回の能登地震の発生をもって直ちに新指針を改訂するということではないものと考えておりますが、現在、原子力事業者において新指針に照らした耐震安全性の確認作業が進められておるところであって、今後、今回の地震を詳細に分析し、これを踏まえた確認作業が行われることになるというふうに理解をしているところでございます。
原子力安全委員会としては、今後とも常に最新の知見、こういうものの蓄積に努め、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
- 井上哲士君
先ほど、志賀原発訴訟で七・六の地震が起こり得る断層帯の地震を想定しないという判決も下っていることや、今回も過小評価があったんじゃないかという指摘があるように、やはり会社の方は、耐震対策のコストというのは相当掛かりますので、やはり負担を下げたいと、活断層の存在を値切ろうとする、こういう思いが働くことは私はあると思うんですね。そういう点で、やはり電力会社任せにせずに、この活断層の科学的な再調査を含めた既設原発の総点検が必要だと思いますし、今、新指針に基づいて各会社が安全性の再評価をしている最中ということでありますが、新しい基準での新たな活断層の調査も行われているようですけど、しかし、やっぱり今回の事態を受けて、より厳格、慎重に会社も調査をするべきであるし、上がってきたものについては保安院としても厳格な審査が求められると思いますけれども、その点、対応をお聞きをしたいと思います。
- 政府参考人(佐藤均君)
志賀原子力発電所につきましては、北陸電力が昨年九月に改訂されました耐震設計審査指針に照らしまして耐震安全性の評価を実施しているところでございます。
活断層につきましても、敷地周辺の海域及び陸域におけます海上音波探査、地球物理学調査、変動地形学的調査など、こういった調査の結果に基づき慎重な評価を行っているというふうに承知いたしてございます。
原子力安全・保安院といたしましては、今後、北陸電力の評価結果の報告を受け、活断層の評価など、その内容について慎重に確認してまいりたいと考えているところでございます。
- 委員長(狩野安君)
井上哲士君、時間です。
- 井上哲士君
今回の教訓を受けて、しっかりとした安全対策を求めて、質問を終わります。
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