本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2007年2月14日(水)

経済・産業・雇用に関する調査会
「ワーク・ライフ・バランスに関する国際的な動向」について

  • スウェーデンにおけるワーク・ライフ・バランスと日本の財界がホワイトカラーエグゼンプションの導入の理屈づけにしているワーク・ライフ・バランスの違いについて。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日はどうもお三方、ありがとうございます。

 ワーク・ライフ・バランスについては、これは仕事と家庭の両立支援で国民の大きな要求であるし、去年の男女雇用機会均等法の改正の際に、仕事、家庭の両立支援ということを盛り込むべきだという議論が随分あったんですが、最終的には政府は盛り込みませんで、そこにはかなり経済界からの強い意見があったということが言われているんですね。

 ところが、去年の暮れの日本経団連の経営労働政策委員会報告などでは、このワーク・ライフ・バランスというのが非常に強調をされ始めておりまして、同じ言葉でも随分使う人によって中身が違うのかなということを思っていたんですが、今日の御報告を聞きまして、それぞれの国の状況を見ましても、随分中身が違うなということを改めて思ったんです。

 それで、やっぱり日本の経済界なんかが使うときには、むしろこれが企業の新しい成長、発展に寄与するんだということが非常に強調されているという印象なんですね。イギリスなどは両方言われているというお話があったんですが、そこでまず永井先生にお聞きするんですが、スウェーデンのお話を聞いたときに、そういう言わば経済成長云々とか、そういうような文脈でのお話は全くなかったなという思いがあるんですが、その辺の議論はどういうふうにスウェーデンではされていて、今、日本で言われている経済界なんかが言っているものとはどこが違うとお考えかということが一つです。

 それから、ちょっと具体的なお話なんですが、先生の資料の二ページ目で女性の働き方のところなんですけれども、育児休業を利用してパートタイムで働くという人と、育児休業を利用せず正規雇用のパートタイムで働くという二種類あることが、フルタイム以外にですね、言われているんですが、正規のまま時間を制限をして育児休業を使えるということであれば、あえて②を選ぶ必要があるのかなという感じがしたんですが、この辺の事情が、どこに違いがあり、どういう事情があるのかということをちょっと教えていただきたいと思います。

 それから、藤森先生にお聞きをしますけれども、日本でもいわゆる多様な働き方ということを経済界からはこの問題にかかわって言うわけですけれども、結局この間、そういう言い方で派遣とか請負とか非正規雇用が増え、日本の場合は非常にそこに差がありますから、近年言われているワーキングプアというような問題も起きているわけですね。

 ですから、非正規雇用の人の労働条件、非常に大事だと思うんですが、いただいた先ほどの資料でいいますと、二〇〇〇年にパートタイムの労働規制が行われて、フルタイム労働者にも不利な扱いを受けないということが言われておりますが、さらに同じ資料の十ページを見ますと、イギリスにおけるパートタイム労働者の処遇見ますと、時間当たり賃金など、日本より随分ましですけれども、それでもかなりまだ差があるわけですが、この労働規制法のそこの点でのどういう仕組みになっていて、更にまだ改善すべきことがあるとお考えか、その辺をお聞きしたいと思います。

 最後に、四方参考人にお聞きするわけですけれども、日本でも裁量労働制というのが取り入れられてきましたけれども、実際上さっき言われたような職場風土的な話もあるでしょうし、実際上は例えば過労死とかサービス残業とか単身赴任とか、なかなか諸外国には通用しないような言葉が日本にはあるという状況がありまして、実際は裁量がないのに裁量労働制が取り入れられて、むしろ成果に追い立てられてオーバーワークをするというような実態は相当あると思います。

 そこで、その御社の様々な労働形態、先ほど具体的にお話があったわけですけれども、そういう、日本などの場合、実際は、例えば年休なども取らないことを前提にした生産計画なんかが作られていて、自分が休んだらもうたちまちみんなに迷惑掛かるとかいうことから、取れないという状況もあるわけですね。その辺、例えばいろんな人が在宅勤務などを要求しても職場の体制上難しいとかいうことも矛盾としてはあると思うんですが、その辺はどういう解決のされ方がされているのか。

 それからさらに、在宅などの人と実際に来る人との関係でいいますと、やはりこの評価というのが大変難しいんだと思うんですね。そこがうまくいかないと厳しいと思うんですが、その辺はどういうふうなやり方をされているのか。

 以上、お願いいたします。

会長(広中和歌子君)

 じゃ、永井参考人、お願いいたします。

参考人(永井暁子君)

 二点御質問あったかと思いますが、一点目のワーク・ライフ・バランスというのはどういう視点から促進されてきているのか、あるいは望まれてきているのかといったことについてお答えしたいと思います。

 正直申しまして、スウェーデンの中でワーク・ライフ・バランスという言葉が普及しているとは思えない。本日御紹介したような政策というのは、基本的にはこの家族政策の中で行われている、労働政策の中で行われているわけですけれども、理念としてございますのは、特定のライフスタイルに特化したような、あるいは優遇されるような政策を取ってはならない。個人がどのようなライフスタイルを選択したとしても格差が出ないような制度をつくっていくというのが基本的にあるわけです。

 ですので、それが現在、日本、アメリカやイギリスなどで問題となっているワーク・ライフ・バランスという視点から見た場合に、そういった視点から行われている政策がスウェーデンではそれに該当するのだというふうな理解の方が正しいかなというふうに思います。基本的には、格差の是正というようなこともありますけれども、とりわけ北欧、スウェーデンを始めとした北欧諸国の中では男女平等政策といったものが強いポリシーとしてあるということです。

 二点目の、女性の働き方についてのレジュメの二ページ目にございます三つの働き方について、②と③の違いですけれども、②の場合というのは、育児休業を利用して時間短縮をしてパートタイムにして働くという意味です。③の場合は、育児休業を利用しないと言っているのは育児休業をすべて使い果たしたような方がという意味です。

 育児休業が使える間は育児休業を使って時間短縮した分を補てんしておりますけれども、育児休業はもう使い終わってしまったような場合でも、やはり子供と一緒にいる時間を長く取りたいという女性もインタビューした中では結構いらっしゃいます。とりわけスウェーデンの郊外に住むような、戸建てといいますか、に住むような女性の方は、小学校の教諭をしながら時間を短縮して自分の子供とも時間を過ごしたいというような女性の方が、育児休業はもう終わって子供は十歳ぐらいになっているんだけれども、パートタイムというか、時間を短くした働き方を望んでいるという、その三種類の働き方がある。ただ、専業主婦という選択は基本的にないので、この三つのうちから選択して女性が働いているということです。

 説明不足で失礼いたしました。

会長(広中和歌子君)

 どうもありがとうございました。

 では、藤森参考人。

参考人(藤森克彦君)

 私の方への質問は、パートタイム労働規制に関してその実効性あるいは課題といった点だと思います。

 御指摘いただきましたとおり、図表の十六を見ますと、この時間当たり賃金のところが、パートタイム、フルタイムで、時給が十一ポンドと六・九九ポンドとやっぱり違いがあるということですね。

 同一労働同一賃金でありながらこれは一体どういうことなのかという点ですが、まず一つ、この図表のフルタイム、パートタイムは純粋にそれぞれの時給を取ったものですから、それぞれが同一労働なのかどうかということは分からないですから、その点において、この差が果たしてどうかというものはあろうかと思います。そういう、同一労働の下でのものじゃないという点が一点あります。

 ただ、そうは言っても、実態としてこの辺のフルタイム、パートタイムのその時給の差というのがまだあるんじゃないかということは言われておりますし、私もあるんじゃないかというふうに考えております。

 イギリスの方で、この同一労働同一賃金の方の担保の仕方の一つの大きなものというのは、パートタイムは不平等な扱いを受けた場合にそれを労働裁判所の方に不服申立てができるという、こういう形になっております。その場合、パートタイム労働者側で、同一雇用者の下でほぼ同一の業務を行っているフルタイム労働者との間でパートタイム労働者が劣位な扱いを受けていないということを証明しなきゃいけないわけですね。労働者側で、同一労働しているフルタイム労働者の資格の下で劣位な扱いを受けることを証明しなきゃいけないと。二つの問題があって、一つは労働者側でそれを証明しなきゃいけないということ。

 それからもう一つの問題は、果たしてフルタイム労働者の中でパートタイム労働者と同じ人というのがどのぐらいいるのかということが問題になってもおりまして、この労働規制、パートタイム労働規制が導入されたときから、イギリスの労働組合の方では、これはもう少しその下層となるフルタイム労働者って一体何なのかと、もっときっちりと示すべきだということが議論されておりまして、指摘されておりまして、その問題というのはいまだに課題として残されているんじゃないだろうかというふうに思います。

 ただ、イギリスの場合、裁判所へ訴えた場合、賠償金が払われるときにはかなり大きな額になりますから、一つのインセンティブには、そういう、同一にしなきゃいけないというインセンティブにはなっているのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

参考人(四方ゆかり君)

 いただいた御質問、かなり多岐にわたっていたと思うんですけれども、一つ目の、裁量を採用している中で、社員によっては働き過ぎてしまったり、もしかしたら職場によっては裁量と言いつつ裁量を許されなかったりというケースの部分はないでしょうかという御質問だったかと思いますが、確かに私どもももちろんパーフェクトではなくてまだまだ改善の余地はあると思っています。ただ、この裁量権を持たせる社員は社内である一定レベル以上の社員に限っておりまして、もちろん、例えば新卒であるとしたらそういった裁量は許していませんし、ある程度本人の自己管理ができる、それから仕事そのものがいつもいつも上司が監督しなくてもその人ができる、裁量権を持っている仕事であるかどうかというところを見て渡していくようにしております。

 それから、二つ目の年休の、いわゆる有給の部分と実際に働いているところでどういうふうにやりくりをしているのかという御質問だったと思いますが、実際に現実問題としては、ある社員を見たときにいつも土日以外は働いている状況にあるということを前提には実際には仕事は動いていないと思います。

 つまり、どういうことかと申しますと、もちろん有休を取る、夏休みを取るという部分もそうなんですが、それ以外にも、やはりITのテクノロジーの業界ですので、次々といろんな新しい技術なり製品が出てきますので、そのためにその社員がトレーニングに行って一日通常の業務をしないというケースもございます。そういったときも、お客様とか、社内のお客様も含めてですけれども、そういう場合は、やはりその人が不在であるという状況はトレーニングであっても休暇であっても同じだと思います。

 それから、これはちょっとマイクロソフトの特徴かもしれないんですが、社内のオフサイトのミーティングというのも結構しょっちゅうあるんですね。これはトレーニングと違って、ある部署そのもの全部が東京を離れて、一泊二日でいろんなコミュニケーションとか情報シェアとかチームビルディングのためにいなくなるんですけれども、そういう部分も含めると、実際にお客様から見ると本日はおりませんという部分が出てまいります。

 ただ、そういったときには、じゃその人の仕事が派遣社員を代わりに来てもらうことでできるかというと、やはり現実的には、そういう仕事の、事務処理のようなたぐいではないので無理なのが現実です。ですから、その人はいませんということで、翌日まで待ってもらう、若しくは緊急であればどうすればいいのかということを連絡しておくことで、その人が休暇であれトレーニングであれ、社内の何か外部のミーティングなり海外出張であり、いなくても動けるような体制にしておくという、つまり年の何日かはいないということを前提にしているのが現実的にはあるかなと思います。

 ただ、そうはいっても、カスタマーサービスのような二十四時間掛ける七日間で稼働しているところもございますので、こういったところはシフトを組むことでお客様に対してお約束しているサービスを落とさないようにするというところは仕組みとしては心掛けているところです。

 在宅のところは、在宅は、これは家で働くということですので、勤務中ですから何時から何時までという部分は必ず勤務しなければいけないんですね。ですから、電話であれメールであれ、どんなことでも、あたかもオフィスにいるように答えなければいけないという義務とセットになっておりますので、そういう形でのきちんと連絡をやることでやりくりしております。

 ちなみに、私の上司、直属上司はドイツ人で、ヨーロッパの人間ですので、夏休みは本当に一か月、四週間いないんですね。丸々いないです。彼に連絡も付きません。メールは持っていきませんと言っている、PC持って歩いていませんので。ですから、ただそういうときに、じゃそのレベルに何か私が緊急で承認が必要であるとか、何かの相談が必要であるときはどうするんだということがあらかじめ決まっているというところです。日本はまだそこまで行っていないですけれども、それがもう少し短い時間の、一日ですとか三日ですという中でどうやりくりしていくかというところが、もちろんまだ改善の余地はあるかなというふうに思っております。

 ただ、こういう働き方をもっともっと日本でも促進していかないと、それは社員の健康のためとかというのももちろんあるんですが、会社にとっても、やっぱりある仕事をマスターしていただいた方が何かの理由で仕事を続けられないということは、会社にとって物すごく高く付くコストなんですね。それは、採用に払うコストもそうですし、その間を埋めるコストもそうですし、新しい方が来てもフルレベルになるまでには時間が掛かりますので、そこの教育コストも考えると、経済的に見ても全く損失が大きいということですので、会社にとっても、こういう方たちが例えば子供を持つとか、介護が必要であるとか、ある程度学校に行きたいんですとかという部分を社員が満足してもらうために、何というんでしょうね、社員の御機嫌を取るために上げているというものではなくて、経済的に見ても、会社にとってやっぱりそれをこたえるシステムにしないと会社もいい人材をつなぎ止めることができないというふうに考えていますので、実際の現実問題、企業にとっての死活問題として進めていかなければいけない問題かなというふうに思っています。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.