2007年2月21日(水)
経済・産業・雇用に関する調査会
「我が国におけるワーク・ライフ・バランスへの対応と課題」について
- 企業の利益とワーク・ライフ・バランスの制度化、また、ホワイトカラーエグゼンプションがワーク・ライフ・バランスに及ぼす影響について。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。今日は本当にありがとうございます。
まず、家本参考人にお聞きしますが、先ほど来、なぜ中小企業でこういうことができるのかというのが関心の正に中心なんですが、これまでこういう努力をされてこられて、それを更に進めるという点で、そしてこういう中小企業、取り組むところを増やしていくという点で、具体的な支援としてはどういうことを求められているか、それをちょっとお聞かせいただきたいと思いますのと、それから、松田参考人から男性仕様の支援策というお話があったんですが、そういう角度から見たときに御社ではどういうことがあるのかということをお聞きしたいと思います。
それから、川口参考人にお聞きするんですが、先ほど家本参考人のお話の中で、金融機関とか投資家に非常に説明するのにかなり努力をされたお話が出ておりました。この間の一連の会社法の改正などでも、どちらかというと、そういう利益を株主等に還元をするとか、それから早めのやっぱり投資の回収をするという傾向が非常に強いという中でありますと、やはり短期的な利益を求めるということは、今日のお話なんかを見ていても、やはりワーク・ライフ・バランスの取組とはいささか矛盾をする傾向があると思うんですね。
そうしますと、企業のインセンティブを上げていくということと同時に、やはり一定の制度的縛りというものを掛けないとうまくいかないんではないかと思いますし、ワーク・ライフ・バランスも希望する労働者は希望し、そうでない者はというよりも、国全体としてやっぱりこれを高めていくというのが政治にとっては必要だと思うんですね。
そういう点で、制度的にやるとすれば、優先順位としてどういうものが必要とお考えかということをお聞きしたいと思います。
それから、最後、松田参考人にお聞きしますが、事前にいただいたものをいろいろ読んでおりますと、結局、労働時間の関係で、特に男性の労働時間で、フレックスタイムなどがあっても実際には時間管理の融通が利きにくい就労環境が非常に多いんだということが繰り返し書かれております。
それで、この間の、先週の参考人でも議論になったんですが、今国会でいわゆるホワイトカラーエグゼンプションというものが出される話もありました。むしろ、これをやれば家庭で過ごす時間が増えるんだというような説明もするやにもあったわけですが、実際上、やはり今のこういうフレックスタイム制度などの現状を見ますと、我々はそうはならないとは思っておるんですが、その辺いろいろ実戦に出ておられて、今言われているああいうホワイトカラーエグゼンプションというような制度がワーク・ライフ・バランスにとってどういう作用を及ぼすとお考えか、それをお聞きしたいと思います。
- 会長(広中和歌子君)
それではまず、家本参考人、お願いします。
- 参考人(家本賢太郎君)
井上先生、ありがとうございます。
まず、私ども、仕事の前提で申しますと、実は二十四時間体制で動く仕事なものですから、だれか一人抜ける、二人休むとかというようなことはある程度想定をしながらやっておるところなんですけれども。
やはり、従業員に去年ちょうど十二月にアンケートを取ったもので、どういうワーク・ライフ・バランスに対して取組を会社に期待するかというときに出てきたものの二つが、一つはワークシェアリングを、今は概念的に会社で適用して運用しているだけで、ルール化はしていないんですね。もう一つは、ドミノ人事制度と。これはワーク・ライフ・バランスを取り組むアメリカの企業、ヨーロッパの企業なんかでよくあるんですけれども、ポストが空いたときに、下のポストの人間にその上のポストの人間が休んでいる間チャレンジさせて、できるだけ上にどんどんどんどん引き上げてそのチャンスをつくっていこうというような取組がございますけれども、そういうものについて、会社としてワーク・ライフ・バランスを取り組むと同時にその制度化をしてほしいという意見がございました。
まず、ワークシェアリングについては、単純に人数を増やせばいいという話よりも、仕事を共有するためにいろんなやっぱりシステムを導入したりとか、会社の中でルール決めをしなきゃいけないところがありますので、その辺りをもう少し、中小企業でできる範囲で私たちも必死に頑張っているつもりではいるんですけれども、経営に対してはやっぱりもう少しその辺を早く制度化してほしいというような要望が上がってきております。
ドミノ人事制度については、私どもは二回だけそれに近いことをやったことがあって、あるマネジャー職の人間が育休を取るというときに、その下の人間をそのマネジャーの代行として職務権限をそのまま与えて、更にそこにポストが空いたものですからその下を上げて、このポストが空いたものですから、ここだけは派遣社員でカバーをするというので、三段階のドミノをするというのをやりました。これも制度化されていると、一つは下の人間がチャレンジをしやすくなると。上の人間が休むことがネガティブな話じゃなくて、逆にチャンスが与えられるという話で、ポジティブな話になるというようなことにも考えられるのかなというふうに思っておりまして、そういう制度が欲しいという話が出ております。
有休の消化率等々で大分、何というんでしょうか、非常に高い消化率を、私ども、外国人の社員ですとほぼすべて使い切るような感じなんですね。日本人の社員では数日残すか残さないかというぐらいのレベルなものですから、そういう細かい問題というのは大分つぶされていて、むしろ人事の制度とかそちらの方で要望が上がってきているというような現状です。
- 会長(広中和歌子君)
ありがとうございました。
- 参考人(川口章君)
井上先生、どうも御質問ありがとうございました。
ワーク・ライフ・バランスの制度の、制度的な優先順位を考えてほしいということですが、今日御報告いたしましたのは、いろんなワーク・ライフ・バランスの施策の中で、ワーク・ライフ・バランスに関連する政策の中で一つだけ申し上げたんですけれども、こういう情報公開によってワーク・ライフ・バランスを進めようというのは、これは経済学的に言いますと労働市場の効率性を高めると。情報をみんなが安く手に入るようにして労働市場のミスマッチを少なくして、企業は欲しい人材をより安く手に入れる、労働者は行きたい企業に入りやすくなるというふうに労働市場のミスマッチを少なくするという政策でございます。
そういう市場機能重視の政策というのは、いい面もあるんですけれども、悪い面としては格差が発生する可能性があるということでございます。これは現在、育児休業制度とかワーク・ライフ・バランス制度を利用している人を調査しますと、大卒の比較的優秀な女性に偏っているわけですね。そうすると、こういう市場機能だけに頼った政策では女性内の格差、学歴格差でありますとか、同じ学歴でも優秀な人とそうでない人の格差が広がる可能性があります。
それを補完する制度として、やはり国がすべての人が利用できるような保育所をもっと充実させると。今現在では非常に多くの待機児童なんかがあって、なかなかこれが解消されない状態でございますけれども、例えば北欧のフィンランドなんかは法律で、働きたい親が保育所を利用する権利というのを認めているわけですね。だから、自治体はもし自分の自治体にそういう親がいれば、保育所を必要としている親がいれば、これはもう絶対にそういうのを提供しなければいけないという義務があります。そこまで強く義務化はしなくても、やはりそれに近いぐらいの、保育所を必要としている人には保育所を提供できるような、そういう国の保育所政策というのも必要ではないかというふうに考えます。
以上です。
- 参考人(松田茂樹君)
御質問ありがとうございました。
男性のやはり労働時間が長いという環境では、フレックスタイム制度などもあっても使えませんので、ワーク・ライフ・バランスという面ではそうした様々な施策が余り利かないということは御指摘のとおりだと思います。
ホワイトカラーエグゼンプションの議論がありまして、そしてそれがワーク・ライフ・バランスにどういう影響をもたらすかという御質問であったかと思います。
理論的には二つ考えられます。一つは、ワーク・ライフ・バランスを高めるだろうと。二つ目は、ワーク・ライフ・バランスを低くするだろうということですね。
どこが、何が分けるかということですが、恐らく私は二つあると思います。
一つ目は労働時間の長さです。労働時間がある程度の範囲に収まっていれば、ホワイトカラーエグゼンプションを入れたときにやはり柔軟に働くことが多分できると思います。そして、労働時間が余りに長ければ、そもそも自由裁量は利きませんので、それは不可能だろうと。
二つ目が、ホワイトカラーに対する成果ですか、仕事に対する成果を明確に測る人事評価、これができていることが必要だと思います。
現状について申し上げますと、少なくとも育児期の世代は少し労働時間が今長うございます。そして、ホワイトカラーに対する処遇はまだまだという、評価が確立されていない、むしろホワイトカラーでも労働時間がやはり長い人が良く評価されるという、成果主義という時代であってもですね、という状況がありますので、今の現状を見ますと、ワーク・ライフ・バランスへの影響はマイナスになる可能性があると思います。
しかし、中長期的に見ますと、これは家本先生の特にお仕事であるITですとか、あるいは当研究所の業務などもこのホワイトカラーに入るわけですが、働いた時間とそして成果はマッチしなくなってきていることは確かだと思います。ですから、中長期的には恐らくそうした自由な働き方ということが選択されてしかるべきだと思います。
お答えになっているかどうか分かりませんが。
ありがとうございました。
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