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2007年5月9日(水)

経済・産業・雇用に関する調査会
「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」について

  • 長時間労働の是正、物扱いの働きかたをやめさせる、最低賃金の引き上げに関する雇用・労働問題について意見表明。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 本調査会では、三年間の締めくくり的にワーク・ライフ・バランスについても調査しましたが、人間らしく生きられる労働時間、その中で生活費が保障される賃金の両面が重要だと考えます。そこで、日本共産党を代表して、雇用労働問題に絞って意見を表明をいたします。

 低賃金で不安定な非正規雇用の増大が貧困と格差の広がりをもたらしています。正社員でも、異常な長時間労働が働く人たちの命と健康を脅かし、家庭も地域社会も壊しています。安定した雇用は国民の生活と安定した社会の基盤です。それが大きく崩れているのです。これは自然現象ではありません。財界や大企業の目先の利潤追求のためのコスト削減と、政府が行ってきた労働法制の規制緩和がもたらした雇用破壊と言えます。今求められているのは、これ以上の雇用と労働のルールの破壊、格差の拡大を許さず、是正のための実効ある措置をとることです。

 以下、大きく三つの柱から提案を行います。

 第一に、異常な長時間労働を是正をすることです。政府は、ホワイトカラーエグゼンプション法案は今国会の提出を断念をしました。この制度は、過労死など深刻さを増している長時間労働を更に激化させるとともに、残業代横取りでホワイトカラー労働者の所得を数兆円規模で奪うことになり、日本経済にも深刻な打撃となります。こんな法案は今後も提出すべきではないと考えます。

 また、長時間労働を是正するためには、違法なサービス残業の根絶が急務です。

 我が党はこの間、国会でも繰り返し追及し、職場からの告発もあり、この五年間で八百五十一億円の未払残業代が支払われました。しかし、これは氷山の一角です。監督や告発を強化するとともに、違法を繰り返したり隠ぺい工作をするなどの悪質な企業は、企業名を公表するとともに不払残業代を二倍にして支給させるなどのペナルティーを強化すべきと考えます。

 残業時間の上限の法定や連続の休息時間の確保も必要です。

 日本の労働基準法には、残業時間の上限を規定しないという他の先進国にはない異常な問題があります。これを是正し、長時間労働そのものの法的規制をすべきです。政府は、残業は年間三百六十時間以内とするという大臣告示を出しており、まずこれを直ちに法定化すべきです。残業代の割増しは、人を増やした方が経営面でもメリットがある水準を目指すべきであり、現行の二五%増を五〇%増にすべきです。過労死や過労自殺を始め、長時間労働による体と心の病をなくすためにも、EUのように連続休息時間を最低十一時間は確保することなどをルール化するよう提案をいたします。

 第二に、使い捨ての働かせ方をなくす、すなわち非正規で働く人たちの権利を守り、均等待遇と正社員化を進めることです。

 まず、労働者派遣事業法や職業安定法に違反をする偽装請負の根絶が必要です。

 請負業者は、労働者の賃金をピンはねして利益を得ます。受け入れた企業は、正社員の半分以下の時給で働かせた上に、労災事故が起きても、社会保険に未加入でも、一切責任を負おうとせず、契約解除の一言で好き勝手に解雇もしています。我が党は国会でも繰り返し告発をしてまいりました。社会的な批判が高まる中で厚生労働省も、昨年九月には偽装請負の是正を求める通達、今年三月には、偽装請負を是正する際に、派遣可能期間の制限を超えている労働者は派遣への転換は認めず直接雇用などにするという通達を出しました。この厳格な実施を強く求めます。

 違法な偽装請負を根絶し、安定した雇用に切り替えるためには、行政指導にとどまらず、派遣法などを改正し、直接雇用や労働条件の保障など、受入れ企業の責任を厳しく問えるようにすべきです。

 次に、派遣労働者の地位向上と正社員への登用を進めるための新しいルールが必要です。

 労働者派遣は、臨時的、一時的な場合に限定し、正規雇用の代替にしないという原則に立って、派遣労働者に正社員への道を開くべきです。派遣先企業は一年以上経過したら直接雇用を申し出る義務を負うように派遣法を改正することが必要です。

 複数の派遣会社に登録し、携帯にメールで仕事を紹介されて短期間の就労を繰り返すという新しい日雇労働も増えています。労働者派遣の規制緩和によって、登録型派遣が低賃金で短期就労を繰り返す事実上の日雇労働を供給する仕組みになっているからです。しかも、日雇健康保険、雇用保険の対象にもなりません。健康保険や雇用保険などをこうした労働実態に合わせて整備することは緊急の課題です。そして、登録型派遣による日雇型雇用をなくしていくべきです。

 さらに、労働者派遣事業法を派遣労働者保護法に抜本的に改正し、派遣労働を臨時的、一時的な場合に限定することを法律に明記するとともに、派遣先業種の制限、派遣先の正社員との均等待遇、登録型派遣の解消などを進めるべきと考えます。

 均等待遇を法制化し、パート労働者の権利を保障し、待遇を改善することも必要です。

 政府のパート労働法改正案が差別禁止の対象とするのはごく一部の範囲であり、同一労働同一賃金の原則、不当な差別や格差の禁止、均等待遇を法律に明記すべきです。

 さらに、合理的理由のない短期雇用は不公正な契約として規制し、正規常用雇用に移行させること、会社による違法、脱法行為を厳しく監視し、非正規で働く人たちの権利を保障すること、そのためにも労働基準監督官を二倍にすることが必要です。

 ワーキングプアやフリーターを支援をする国や自治体の取組の強化も重要であり、職業訓練の機会を抜本的に増やすことや、蓄えがない人には訓練期間中の生活資金の援助も必要です。アパートも借りられず、一泊一千数百円のネットカフェで寝泊まりしながら働いている若者もいます。若い世代向けの公共公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度などの生活支援も強めることが必要です。

 第三に、最低賃金を引き上げ、全国一律最低賃金制を確立することです。

 一生懸命働いても貧困から抜け出せないワーキングプアが四百万世帯を超えると言われています。その背景には、最低賃金が時給六百七十三円というとても生計費を賄えない低さに抑え込まれていることがあります。日本の最低賃金は労働者の平均的給与の三二%と、世界でも最低水準です。EUでは、最低賃金を労働者の平均賃金の半分まで引き上げることを目標にしています。今、全労連も連合も労働団体の違いを超えて時給千円以上への引上げを要求しており、政府はこれにこたえるべきです。同時に、すべての労働者にひとしく適用される全国一律最低賃金制を確立すべきです。

 最低賃金の引上げは地域経済にも大きな波及効果があります。中小企業への支援と併せて最低賃金の引上げを進めてこそ、経済全体の底上げを図ることができます。同時に、最低賃金さえも無視した大企業による下請単価の買いたたきなどの下請中小企業いじめを厳しく監視することを始め、低賃金の過当競争を抑制するなどの対策を取る必要があります。

 以上、大きく三点の提案を述べまして、意見の表明といたします。

会長(広中和歌子君)

 ボランティアが、ボランティアというんですか、NPOが正規の職場を奪うんではないかといったような考え方をお持ちの方もあるんではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。

 井上先生とか渕上先生、今までいわゆる労働組合の運動というのはどちらかというときっちりとした労働に対してきっちりとした給料という、そういう非常にはっきりとした考え方が強かったんじゃないかと思いますけれども、多様化する労働というものに対してどういうようなお考えをお持ちでいらっしゃるのか、伺えたらと思うんですが。

井上哲士君

 僕もそういうNPOなどのボランティア的なところが労働法制の中でどういう位置付けになるのか余り知識ないままに発言をするんですが、おっしゃるような、無料奉仕では長続きしないけれども、しかしある程度生活はできる年金などがあってという人たちの力を活用するということは大変大事だと思います。

 それで、それが普通の労働を圧迫するんではないかという今の懸念との関係でいいますと、結局、そういう部分を、何というんでしょうか、悪用するというんでしょうか、それを、むしろそういう本来は正規の人たちがやるようなものと取って代わって安上がりに使おうというような人たちがやっぱり出てくるわけで、そことの問題だと思うんですね。ですから、本来、北岡先生などが提起をされたような精神に沿った形で行われるようにしっかりこう網をかぶせていくというんでしょうか、そういうことがうまく行われれば、それぞれが両立をしていくんじゃないか。

 例えば今児童公園なんかも、例えば私が住んでいる京都なんかでいいますと、すごく、昔はいわゆる日雇労働の皆さん、失対事業の皆さんが掃除をされていたんですが、あれが打切りになっていますから非常に児童公園が荒れていますよね。なかなか地域で面倒を見ようと思っても、今共働きも多いという中でできない。一方、子供たちを遊ばせるのに不潔だとか危ないとかということもあるわけで、そういう部分を賄っていただけるような、ボランティアだけでも一定の報酬があるようなことというのは、それぞれ喜び合えるわけですから、そんなことはいろんな知恵が今後考えていく分野としてあるのかなということを、議論を聞きながら私も思っておりました。

 以上です。


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