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2008年5月20日(火)

外交防衛委員会

  • パシフィク・コンサルタント・インターナシヲナル社(PCI)のODAや中国での遺棄化学兵器処理事業における不正について取り上げる

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 三つの案件については賛成であります。案件のうち二つは海外での投資の促進にかかわるものでありますが、今日は、海外での政府の事業が食い物にされていたということに関連して、PCI、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの件を質問をいたします。

 同社は、一つはODA、一つは中国での遺棄化学兵器の処理事業で不正を働いておりました。これは発注者として、やはり国民の税金を預かる者としての責任も問われております。

 まず法務省にお聞きいたしますが、五月の十三日に、東京地検の特捜部に逮捕中のPCIの元社長らが特別背任で起訴をされておりますが、この容疑の事実についてお述べいただきたいと思います。

法務大臣官房審議官(三浦守君)

 御指摘のとおり、東京地検は、平成二十年五月十三日、いわゆるPCIの元代表取締役外一名を起訴しているところでございます。

 その公訴事実の概要でありますが、PCI代表取締役外一名におきまして、同社が株式会社遺棄化学兵器処理機構から受託した旧日本軍遺棄化学兵器処理事業に関するコンサルティング業務の一部を設計会社等四社に再委託するに際しまして、直接四社に再委託せず、パシフィックプログラムマネージメント株式会社、PPMというところでございますが、これを介在させる契約関係を仮装することによりまして、平成十六年九月十日から平成十七年九月十二日までの間、数回にわたりPPMに対する業務委託料名下に、PPMの差益金額を含む合計約二億七千万円をPPM名義の銀行口座に入金をし、PCIに対し、PPMの差益金額合計、約一億二千万円相当の財産上の損害を与えたというものでございます。

井上哲士君

 架空契約で流用したということでありますが、これに加えて五月十三日には、人件費を国に過大請求をしたと、詐欺の疑いでPCIの前社長らが再逮捕されているわけでありまして、極めて悪質なわけですね。同社は、コスタリカなどのODAに関して約一億四千万円の不正経理を行っていたということも摘発をされました。

 これ、会計検査院に来ていただいておりますけれども、このPCIに対する検査の概要について御報告いただきたいと思います。

会計検査院事務総局第一局長(諸澤治郎君)

 検査結果の概要についての御説明を申し上げます。

 会計検査院は、十七年の六月に参議院から、政府開発援助、ODAにおける外務省、国際協力機構、JICA、国際協力銀行、JBICの開発コンサルタント、NPO等への委託契約の状況につきまして検査要請を受けました。これについて検査いたしました結果を十八年九月及び十九年九月に参議院議長に対して報告しているところでございます。

 この報告の中で、JICAが株式会社パシフィックコンサルタンツインターナショナル、PCIでございますが、これに発注いたしました委託契約において、PCIが再委託契約書や領収書を偽造するなどをしておりまして、経理処理や精算手続が事実と異なる事態があります。これによるPCIのJICAに対する不正請求額が合計約一億二千万円であったことなどを報告したものでございます。

井上哲士君

 これも偽造を働いて、極めて悪質なわけですね。

 そこで外務省にお聞きいたしますが、このODAの不正を行ったPCIに対して、外務省としてはどういう処分、そしてまた二度とこういうことを許さないための指導や改善はどのように行われたのでしょうか。

外務大臣政務官(小池正勝君)

 御答弁申し上げます。

 外務省といたしましては、このPCIの件につきましては極めて遺憾であるというふうに考えておりまして、具体的には次のような処分を行いました。

 まず一つ目、PCI社に対しまして、同種の事案に対するものとしては上限の措置でございます十八か月間という、具体的に言いますと、平成十六年九月から平成十八年三月までの指名停止を行いまして、新規のODAからの排除ということを講じました。

 二つ目には、当然のことですけれども、経理処理が適切でなかった金額についてはPCIから返還ということをさしております。

 三つ目には、これらの事案で問題となった現地再委託契約手続に関して、JICAが、書類による事前審査は簡略化する一方で、再委託先、契約現場、成果品を直接確認するなどを定めた再発防止策を講じております。

 このほか、コンサルタント各社との定期的な協議の機会を通じて、関係者の注意を喚起して再発防止に努めているところでございます。

井上哲士君

 十八か月間の指名停止ということでありますが、十七年度に関しますと年間通して指名停止になっているわけですね。

 ところが、いただいた資料を見ますと、PCIは十七年度に、JICAとは十七件、二十四億五千六百六十五万円、それからJBICとは六件、四十三億六千八百二十五万円の契約をしております。これでは処分がしり抜けだと言われても仕方ないと思うんですが、どうしてこういうことになるんでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 JICAにおきましては、複数年度を要する調査については全体を一本の契約とみなして、初年度に企画競争を行い、形式的には契約は年度ごとに行っているわけであります。平成十七年度の契約、御指摘の十七件でありますが、すべて複数年度の二年目以降の契約に該当しているわけであります。

 また、JBICにおける平成十七年度の契約は、いずれも指名停止措置がとられる前から調達手続が開始されていたものであります。指名停止期間前から入札手続が開始されていた案件について指名停止をすることは、事業の遅延を招き、契約当事者である被援助国政府との関係でも問題を生じかねないことから、指名停止の対象外としたものであります。

 これら進行中の案件については、指名停止措置の対象とすることはODA事業の安定性を損ないかねないことから、慎重な検討が必要だと考えるわけであります。

 ちなみに、外務省自らがやる無償資金協力については、十七年度ゼロ件、それから十六年度も指名停止後はもちろんゼロ件と、無償においては確実にやめていると、こういうことでございます。

井上哲士君

 防衛調達にかかわる水増し請求の際も、入札参加禁止が実効性を上げていないじゃないかということを指摘をしたわけでありますが、その後のPCIが中国で様々な不正を行っていることを見ますと、もっと厳しい実効ある処分が私は必要ではないか、こういう複数年次とか、先ほど言われたようなことについても更に踏み込むことが必要なのではないかなと、そうしないと国民の理解が得られないのではないかと思います。

 それで、この指名停止処分中に起きたのが今回の遺棄化学兵器処理事業にかかわる不正なわけですね。

 この事業はそれまではPCIの共同企業体が直接受注をしておりましたが、このODAの問題が問題になって指名停止処分が行われる前にPCIグループ一〇〇%出資で遺棄化学兵器処理機構がつくられて、そして国からの同事業を随意契約で一括して委託を受ける、その上でこの機構が一部業務をPCIの共同企業体に随意契約で再委託をすると、こういう仕組みが取られました。ですから、形の上ではPCIは直接指名を受けなくても、グループ会社をトンネルにして引き続き従来どおり事業に参加をすると、事実上おとがめなしのような形になっているわけですね。

 私は、こういうやり方は国民の理解を得られないし、その後の不正を招いたと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。

内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長(西正典君)

 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘ございました関係、内閣府は株式会社遺棄化学兵器処理機構との委託契約、これを平成十六年四月に締結をいたしました。先生御指摘のとおり、PCIがODAの不正経理事案を受けまして外務省の方で指名停止措置をとりましたのが平成十六年九月、内閣府の方は平成十七年に処分を行っておりますが、その際、機構に対しても、PMCとの管理監督を徹底するようにという指示を出しております。

 他方、本事業が新たな知見、技術を蓄積しながら進めていくという特殊な事業でありました関係で、機構が有する知見、ノウハウが事業を進めていく上で必要であるということから、内閣府が株式会社遺棄化学兵器処理機構と平成十九年度までの間、契約関係を継続してまいりました。

 他方、こうした業務の進め方が特定の民間企業に依存する体質を生んで不透明であるという御批判をちょうだいいたしましたことから、現在は一般競争による業者の選定、内閣府による体制の強化、有識者会議の開催を柱とする執行体制の見直しを行っております。

 事業執行の透明性を高めて事業の適切な執行に努めているところでございます。

井上哲士君

 透明性という問題はあるんです。しかし、指摘しているのは、元々これだけの様々な不正を行っていた企業を、非常に便宜を与えるような形でグループで一括、事実上丸投げを受けるという形を言わばおぜん立てをしてしまったと、これがやっぱり今日の事態をつくっているわけですね。

 これがどうやって税金を食い物にしたかと。容疑や被疑事実にありますように、一つは、PCIから下請四社に発注する際に、もう一つのグループ会社のPPMに再委託した上で下請をするという形を取って事実上の架空契約でお金を捻出したと。それからもう一つ、逮捕容疑になっていますように、下請会社に外注した分も自社が行ったように偽装した書類を提出をして国から人件費を水増し請求をしたと、こういうものなわけですね。

 内閣府はやはり発注者として国民の税金を預かるわけでありますから、本当に一円の不正、無駄もないような執行が求められるわけですね。こういう架空契約、それから水増し請求、こういう実態についてどのように調査をして事実を把握をされているんでしょうか。

内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長(西正典君)

 私ども、昨年十月の段階で報道が出ました段階からこれまで、契約者、相手方との間の経費執行に関する書類、機構及び再委託先から提出されます各種書類がございますが、そういったものの再精査などを行ってまいりました。

 しかしながら、現時点、御指摘のとおり各種報道出ております。そうしたものも踏まえ私ども、本件注意を持って見ておりますが、いずれにしましても捜査中の事案に関することでございますので、今の時点での答弁は差し控えさせていただきたいと思っておりますが、今後とも捜査の推移を慎重に見守り、しかるべき措置をとっていきたいと思っております。

井上哲士君

 水増し請求については、いろんな請求書類があるわけですね。そういう水増し請求がやられていた、言わば下請の人も含めて自社が行ったように偽装していたと。こういう書類の確認など、要するにそういう事実関係について発注者として把握しているのかどうかと。いかがなんでしょうか。

内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長(西正典君)

 私どもの方では、四半期ごとに業務月報それから請求書、領収書などの詳細な信憑書類が添付された支出状況報告書を受けております。また、採択に関する各種の確認資料も出ております。こういったものについて私どもの方できちんとチェックをしておるのでございますが、御指摘のような形での偽造そのほかに関しましては、今捜査中の事案でございますので答弁を差し控えさせていただきたいと思っております。

井上哲士君

 国民の税金を預かる発注者なんですから、捜査当局は捜査当局としてやるでしょう、しかし、今現にこの事業は進行しています。それ以外にも様々な事業があるわけですね。そういうことで同じことが起きないように、一体どういう事実関係があるかということを把握するって私は当然だと思うんですね。それが、今のような答弁は極めて遺憾であります。衆議院での議論でも、大臣も、実態をしっかり把握した上で対応しなければならないと、こういうふうに言われているわけですね。一体何を把握をされているのかと。

 これ荒木容疑者は周辺に、受注額の半分以上がもうけだとか、この事業は金のなる木だということを繰り返し吹聴をしているわけですね。ですから、向こうの言い値の契約になっていたんじゃないか、ですからこういう架空とか虚偽をやってももうけが出る仕組みになっていたんじゃないかと思うわけですね。

 様々な不正をチェックできなかったその理由、そして今後どういう改善をお考えでしょうか。

内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長(西正典君)

 その件に関しましては、昨年十二月、担当の岸田国務大臣の方から記者会見などで御報告をさせていただきましたとおり、やはり事業の進め方の透明性に関しての御批判、いろいろちょうだいいたしております。そうした点から、現時点では一般競争による業者の選定、それから内閣府が直接各種契約に当たるという形での事業の管理の強化、あるいはまた知見のある先生方による有識者会議によって執行体制を逐次チェックしていただくという形での透明性を高めるということを考えております。

 このような形で事業の透明性を高めることで、今後不正というものが起こることのないよう私ども進めていきたいと思っております。

井上哲士君

 どうも不正をチェックできなかったことに対する反省というものが私には伝わってまいりません。

 会計検査院に聞くんですが、この問題も国民の税金が不正に使われている重要な問題でありますが、今後その実態について検査をすべきだと思うんですが、いかがお考えでしょうか。

会計検査院事務総局第一局長(諸澤治郎君)

 お答え申し上げます。

 会計検査院は、内閣府に対して毎年会計実地検査を実施しておりまして、お尋ねの本件事業につきましては、これまでも国会等における御議論を十分念頭に置きながら会計実地検査を行ってきたところでございますが、今後の検査に当たりましては、ただいまの委員の御指摘にも十分留意いたしまして検査してまいりたいと考えているところでございます。

井上哲士君

 さらに、この事業で得た不正な利益がODAで東南アジアの公務員に渡すリベートとして使われたという疑いが浮上をしております。報道では、そのためにPCIが〇三年以降、香港の現地法人などに年間一億円以上送金していたということも言われているわけでありますが、外務省としてこの問題、このODAのリベートに使われていたんじゃないかということについては、どういう調査をし事実関係を把握されているでしょうか。

外務大臣官房審議官(小田克起君)

 外務省といたしましては、JICAを通じてPCIからの事情聴取などを行っておりますが、報道にあるような事柄については確認はできておりません。

 PCI社につきましては、捜査当局による捜査が行われておりますので、その進展を注視していきたいと、このように考えております。

井上哲士君

 年間一億円以上送金していたという事実であるとか、それからエージェントに対する調査費という名目で拠出をしているとか、そこから先の使い道はともかく、こういう事実については確認されているんでしょうか。

外務大臣官房審議官(小田克起君)

 確認はしておりません。

井上哲士君

 私は、PCIはこの問題だけにとどまらず、国後島のディーゼル発電所建設工事の入札をめぐる偽計業務妨害事件を始め、この間、家宅捜索も繰り返して行われているわけですね。そして、ODAについて今回の遺棄化学兵器処理事業でも不正を行ったということであります。

 極めて会社ぐるみで悪質なことが続いているわけですから、私は、同社の受注してきたこのODA事業ですね、こういう不正がないか、総点検をするべきだと思います。その点、外務省としての御決意をお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

外務大臣(高村正彦君)

 JICA及びJBICは、特にPCI社の不正行為が判明した再委託契約について、これまでもPCI社以外のコンサルタントとの契約についても、受注実績上位の業者等が受注した案件から抽出調査を行っており、適正を欠く事例は見付かっていないと承知をしております。

 さらに、再発防止策として、JICAは平成十七年十二月に再委託に係るガイドラインを作成し、平成十八年一月から書類による事前調査は簡略化する一方、再委託先、契約現場、成果品を直接確認することとしました。これらの取組は適正に履行されていると報告されております。

 現在までのところ、ODAに関するすべての契約について調査を行うことは困難でありますが、外務省としては、今後ともODA事業における不正防止のための不断の努力を行っていく決意でございます。

井上哲士君

 終わります。


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