2008年3月24日(月)
- 予算委員長(鴻池祥肇君)
次に、井上哲士君の質疑を行います。井上哲士君。
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
横須賀でのタクシー運転手の刺殺事件について、関与の可能性の強い米兵が、今、米海軍が拘束中であります。県警による事情聴取や身柄の問題など、速やかな捜査の協力が行われるようにまず強く求めておきます。
今、一件でもあってはならないという答弁のあった米兵による凶悪犯罪が後を絶ちません。今日は特に性犯罪についてお聞きをいたします。
お手元の資料を見ていただきたいんですが、平成七年の少女暴行事件以来、文字どおり毎年米兵による性犯罪の事件が起きております。そして、今年二月に少女への暴行事件がまた起きました。
事件が起きるたびに綱紀の粛正と再犯防止を申し入れたにもかかわらず後を絶たないと。この実態について、まず、総理、どうお考えか、答弁をお願いします。──総理。
>>配布資料(PDF:約1.4MB)
- 外務大臣(高村正彦君)
これまでも米側に対し累次にわたり綱紀粛正、再発防止を求めてきたにもかかわらず、米軍関係者による事件が繰り返されていることは極めて遺憾であると、これは委員と全く同じ感じ方でございます。
先月二十七日に訪日したライス国務長官に対して私から、今般の一連の事件は甚だ遺憾と言わざるを得ず、米側の再発防止に向けた最大限の努力が必要である旨述べたところでございます。その他いろいろのルートを通じてこういうことを申し入れているところでございます。
- 井上哲士君
この間もずっと言われたけれども、それがなくなっておりません。綱紀粛正や教育で果たして解消されるのかという問題なんですね。実効ある措置をとろうと思ったら、実際に米兵の性犯罪の実態を知る必要があります。
アメリカの国防総省は、二〇〇四年以降、軍隊における性的暴行についてという年次報告を出しておりますが、最近の数をお手元の二ページ目に書いております。一年間でこの米軍における性的暴行事件は報告のあった数で二千六百八十八件です。この数も氷山の一角と言われておりますが、内訳を見ますと、そのうち、立件のための申告を行ったもので数を見ますと、約六割がレイプです。民間人への暴行が五百七十四件六百二十三名、こういうことになります。
そして、私、重大だと思いますのは、FBIの報告によりますと、アメリカ国内の強姦事件というのは人口一万人当たり三・〇九件です。しかし、この年次報告でいいますと、米兵一万人当たりの性的暴行の発生率は何と十八件なんですね。そして、日本の犯罪統計によりますと、二〇〇六年の強姦と強制わいせつの認知件数は合わせて一万二百七十四件です。人口一万人当たりの発生率は合わせて〇・八件ということになるわけですね。そのままこの数を比較いたしますと、実に米兵の性的暴行発生率一万人当たり十八件というのは日本の二十二倍以上になるという数になるんです。
総理、こういう実態を持つ米兵が日本に多数駐留をし、現実に性的犯罪事件を起こしているというこの実態について、総理のその認識をお伺いをしたいと思います。お答えください、総理。
- 外務大臣(高村正彦君)
米軍人が関係した性犯罪は、二〇〇六年は二千九百四十七件であり、また二〇〇七年は二千六百八十八件であったと承知をしております。
これらの統計は、国防省が性犯罪の防止のための取組の一環として性犯罪の透明性をできるだけ高めるために行われているものと承知しており、その多寡を一概に論ずることは困難であるというふうに考えております。
- 井上哲士君
いや、驚きましたね。多いからアメリカは対策を取っているんです。それを、一概に論ずるを得ない、それでどうして私は日本国民の安全を守ることができるのか。
今、本当に米軍内の性的暴行というのは深刻なんです。あの湾岸戦争後に起きましたテールフック事件というのがありました。ラスベガスで行われた海軍と海兵隊員の親睦会で男性士官百十七人が八十三人の女性を暴行した。これは海軍長官が辞任をいたしました。
特に、この間のイラクの戦争以降、深刻化もしているわけですね。二〇〇四年に開かれました下院の女性問題の特別会では、例えば湾岸戦争でスカッドミサイル攻撃中にレイプをされたけれども、軍は大量のピルを被害者に与えただけだったと、こういう証言も行われております。
かつて、軍隊における性的暴行というのは不適切な問題という規定しかなかったんですね。しかし、こういうイラクの帰還兵などのいろんな世論の中で性的犯罪とやっと認めるようになりました。そして、二〇〇五年には性的暴行予防対応局というのが国防総省の中につくられております。
そこがどんなポスターを作っているのか。お手元の三枚目の資料を見ていただきたいんでありますが、これは国防総省が作っているんですよ。性的暴行を食い止めようと。尋ねよう、友人に助けが必要か、行動しよう、彼らが求めているなら、やめさせよう、事件を目にしたらと、こういうものなんです。事件を目にしたらやめさせようということをポスターを張ってやらなければいけないということまで、これは本当深刻だと思うんですね。こんなポスターが張ってある職場が日本の国内にあったらどうなるんでしょうかね。そういう事態に今あるんです。
しかも、二〇〇四年以降、報告書も出されておりますけれども、最近の年次報告でもその数は最高水準だと、こういうふうに言われているんです。一体なぜこういう事態になっているのか。こういう部隊が現に日本にいるわけですから、私はきちっとした認識を持つ必要があると思いますが、いかがでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
いや、米軍人が米軍内あるいは外であるにもかかわらずこういう性的犯罪をするということは、それは当然のことながら大変残念なことであります。それは、外国の軍隊のことであってもそれは大変残念なことであるわけであります。ただ一方で、米軍は、今御紹介あったようなポスターを張ったり、あるいは偉い人がそのことによって辞任をしたり、そして透明性を明らかにして必死に取り組んでいる最中であると、こういうふうな認識をしているところでございます。非常に多いということが残念でないはずがないということでございます。
- 井上哲士君
そういう取組をやってもなぜ減らないのかと。今も最高水準にあるというのが国防総省の年次報告なんです。
私、先ほども少し議論ありましたけれども、これは一般社会における性的衝動を抑えられないことによる様々な性的犯罪とは違うと思うんです。やっぱり軍が持っている、とりわけ、この間、海外で軍事行動を続けてきたアメリカの軍が持っているやっぱり本質的な問題があると思うんですね。
この間、話聞きましたけれども、普通の人間が軍に入って、相手に照準を当てて引き金を引くと、なかなかできないと言うんですね。できるようになるためには、もう相手は自分とは違う人間だと思わせる、そして強い者が弱い者を押さえ付けるのも当たり前だと、こういうものを身に付けないと言わば戦場に行って役に立たない、そういう教育が行われているんです。
元沖縄の海兵隊員の方の証言を聞きましたけれども、海兵隊に入りますと、十八歳、十九歳という少年に毎日教官が、おまえは何をしたいかと、こう聞くと。キルと答えさすんですね、殺す。声が小さいと。キル、大声でずっと叫ばせると。こういうことをやっていましたということが元海兵隊員の証言でありました。
ですから、相手を殺しても、そして強い者が弱い者を押さえ付けても当たり前だということを身に付ける、そういうことが行われる中で、私は、一般社会とは違う、まさに非常に大きな発生率が起きているということになっていると思うんですね。特に、沖縄の海兵隊というのは常時前方展開遠征軍です。戦争のただ中から帰ってきた人、今から行く人が混在している非常に世界でも例のない異常な状況なんですね。
ですから、これは管理強化や教育では解消しないと思います。こういう軍や海兵隊の撤去以外に解消の道ないと思いますけれども、これは総理、しっかり答えていただきたい。総理、いかがでしょうか。総理、答えてください。総理、総理、答えてくださいよ。
- 外務大臣(高村正彦君)
私たちは、日米安全保障条約によって日本の平和と安全を守っていく、独立を守っていくという選択をしたわけでありますから、そういう中でどうやって犯罪を減らしていくかと、そういうことに全力を尽くしてまいります。
- 井上哲士君
昨日の沖縄の県民大会でも、これは基地あるからこその被害なんだと、基地の被害によって人権が侵害され続けている、もう我慢の限界を既に超えていると、こういう決議も上げられました。
私は、今の答弁は到底県民の皆さんの納得は得られないと思います。本当に国民の安全を守るためには、基地の撤去、米兵の撤退しかないと繰り返し申し上げまして、質問を終わります。
- 予算委員長(鴻池祥肇君)
以上で井上哲士君の質疑は終了いたしました。(拍手)
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