2008年10月28日(火)
外交防衛委員会
- 午後は総理質疑:衆院での質疑を受け、軍事的対応が事態の悪化を招いていることへの認識、日本の給油と空爆は無関係という説明のごまかしなどを追及。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
アフガン戦争が始まって七年、テロをなくすと言うならば、この七年間、とりわけこの一年間の状況を検証してアフガンが何を求めているかということをしっかり議論をする必要があります。参考人質疑も含めて十分な質疑を強く求めるものであります。
そこで総理、衆議院の質疑でアフガニスタンの治安情勢について激化していると答弁されました。国連も、本年一月から八月にかけて国際部隊やアフガン政府の活動に伴って五百七十七人の民間人が死亡し、そのうち三百九十五人は空爆によるものだ、民間人全体の犠牲者は去年と比べますと四割増えていると明らかにしております。
なぜ、テロをなくすといって戦争を始めて七年たって、今日、むしろ最悪の治安状況へと激化しているのか、その理由は何かとお考えでしょうか。
- 内閣総理大臣(麻生太郎君)
これは、井上先生、一概にこれっていう答えが、これが答えだというのがあれば、直ちにその対応をすればいいだけのことですから、一概にこれが答えというものがあるわけではないと、私自身はそう思っております。
したがって、見通しというか、予断を許さない状況が続いているんだと思いますが、今の状況を見ましたときに、アフガニスタンの中におけるテロというものが、少なくとも、テロの温床かのごとき雰囲気、よく言われて、ニュースなんか見ているとそういうことになるんですが、テロの温床にしないためには、やっぱり、今、先ほどどなたかの資料にありました麻薬の話、世界の麻薬の、麻薬というのは特にあへんですけれども、麻薬いろいろありますが、あへんの部分の約九割近くをここから製造されて、それがいわゆる武器の調達の金の元になっているとかいろいろ話がありますが、その背景には貧困があろうと思います。
そういった意味では、アフガニスタンのまだ能力がいま一つとかいろんな状況があると思いますので、それで、これが答えだというものがあるわけではない。それが話を難しくしておると思いますが、少なくとも、これはみんなで力を合わせて、テロの温床というような状況からいかに早く脱却させるかというところが一番頭を使わにゃいかぬ大事なところだと存じます。
- 井上哲士君
麻薬、貧困ということを言われました。空爆で家族や家を失った人がタリバンを支持をしたり合流をするという事態もあります。自爆テロの実行者の六割が身体障害者だったという驚くべき調査がこの間出ておりました。障害者の多くは、地雷とか不発弾で手足を失った住民と見られるわけですね。まさに暴力が暴力を呼ぶと、こういう悪循環になっております。
八月にヘラートで米軍の空爆が民間人九十人の命を奪いました。その後にアフガン政府が人道物資を持っていったら、地域の住民から投石を受けたという話があるんですね。つまり、今軍事的に解決をするというやり方が、軍事作戦とテロの連鎖に一層拍車を掛ける、民間人の更に犠牲を強いることになる、それが反政府感情をあおって人道支援にも支障を来すと、軍事的対応が事態を悪化させていると、こういう認識は、総理、ないんでしょうか。
- 内閣総理大臣(麻生太郎君)
先ほどもお話があっておりましたけれども、少なくとも、これはテロの温床としないために人道支援、復興支援、すごく大事だというのは分かりますけれども、同時に治安・テロ対策にも取り組む必要があるということに関しては、これは国際的な合意だと、私自身はそう思っております。
そこで、今、じゃ、どんなことがといえば、少なくともこの数年間で見ますと、今五百万人以上の難民というのは、アフガンから出ていた難民が帰国しております。それから、学校に行くという人が、二〇〇一年、今から八年前は百万人以下と言われておりましたけれども、今は、二〇〇七年には五百七十万まで戻ってきている、増加しているというのは、一つの成果として人道復興支援等々で当たっているんだと思います。
また、昔は二割以下と言われておりましたいわゆる初等教育の就学率というものも、これは八六%に達しているということなど、教育分野でもいろいろ確実に出ておりますし、私ども、これどうしても経済がある程度成長しないとやっぱりと思っておりましたが、二〇〇七年の経済成長率は一三%。そういったところはいろいろな面で、人道復興支援の部分で少しずつではありますけれども効果が出つつあるのかなという感じがしますので、こういった点は引き続き、治安の悪い中にあっていろいろな方々がこの分野でも活躍をしておられますけれども、そういった部分の支援は引き続きやっていかなければならぬ大事なところだと思っております。
- 井上哲士君
質問に全く答えていないんですよ。
私が聞いていますのは、テロを根絶するといって軍事的対応をしているけれども、そのことが結果としては逆行しているんじゃないかと。
例えば、ヒューマン・ライツ・ウオッチというNGOがありますけれども、こう報告しています。最近行われた複数の空爆で犠牲者が出たことで更に状況が悪化していると。国民の反発を激化させていると。その結果、アフガン内に治安と安全をもたらそうとする国際軍の努力に対する現地の支持は大幅に低下していると。こういうふうに書いているんですね。軍事的対応が今の情勢悪化の原因になっていると、こういう指摘は受け止めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
- 内閣総理大臣(麻生太郎君)
アフガニスタンにおける現状に関しましてのあれなんだと思いますが、反政府勢力、まあこれ一概に言えないんですけれども、どれが反政府勢力の主力かというのはいろいろありますので、まとめて申し上げます。
反政府勢力というものが意図的に民間人を巻き込むという戦術を取るというのが最近の傾向であるのはもう御存じのとおりだと思いますが、民間人が多数犠牲になっておる、一方、テロとの戦いを続けるアフガニスタン政府及び国際部隊の活動によっても市民に犠牲が発生しているというものに関しては、双方にそういうものがあるということを認識しております。その中でテロの掃討作戦におきまして一般市民の被害者を最大限に回避すべきであるというのは当然のことであって、各国ともこの点を最大限に考慮して活動しておられるものだと、私自身はそう認識をしております。
- 井上哲士君
まともに答えないんですね。
今言われましたけれども、ヒューマン・ライツ・ウオッチは、非はタリバンにあるとするそういう米国の対応がまた怒りを生んでいるんだと、こういうことを指摘をしているんです。
今、国連のアフガン代表も軍事的勝利はあり得ない、政治的手段で勝たなくてはならないと述べるなど、やっぱり今までの戦争ではテロはなくならないというのが大きな流れになっているのに、全くそれに対する認識がなく、その支援を続けるというのでは、これはまさに逆行の道でしかないと、こう申し上げなくちゃなりません。
それで、あの海域、インド洋を含む海域で活動している、じゃ、米軍の実態はどうなっているのかということでありますが、米軍は航空母艦と巡洋艦や駆逐艦数隻で空母打撃群などの編成をつくって、この編成が幾つかローテーションを組んであの地域に行って活動しています。これは一つの任務では行かないんですね。海上活動、それからアフガニスタン、そしてイラク、この三つの任務を持ってあの地域に行っております。
自衛隊が給油した相手の艦船をやっと政府が発表いたしましたので、海軍のニュースと照らし合わせてみました。(資料提示)駆逐艦カーニーに給油しておりますけれども、このカーニーが所属するトルーマン空母打撃群は、昨年十二月初めから今年の四月末までで攻撃飛行は九千五百回、攻撃・爆撃は二千四百五十九回、使用した爆弾は三十五トンです。それから、やはり自衛隊が給油した駆逐艦シャウプ、これはリンカーン空母打撃群に所属しておりますが、今年の四月末から九月初めまでに攻撃飛行は七千百回、攻撃・爆撃は二千三百七回、使用した爆弾は百十六トンと、こういうふうになっているんですね。
こういう打撃群からの空爆がたくさんの民間人の命を奪っております。今総理も、そしてこの間外務大臣も、民間人の犠牲者を極力減らすようにアフガンと米軍やNATOが協議しているというふうに言われました。これ、実はもう去年の質疑のときから、当時の高村大臣も同じことをずうっと言われているんですね。ところが、今年は先ほど言いましたように民間人犠牲者は四割も増えていると。ナンガハルでは結婚式が空爆をされ、新婦や女性、子供を含む二十三人が殺されたわけですね。
外務大臣にお聞きしますけれども、これでも政府が期待したとおり犠牲者が出ることが極力回避されていると、こうお思いでしょうか。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
委員御承知のとおり、米軍またNATO等の軍隊におきましても空爆による一般民間人の犠牲者を出さないようにということについては大変な配慮を払っているわけであります。しかしながら、先ほど総理からもお話がありましたけれども、空爆だけじゃなくて、いわゆるこの反政府勢力の活動の在り方が随分変わってきておりまして、非常に、何といいますか、民間人が巻き込まれやすいような地域での活動を行うとか、そういうようなこともありまして民間人の犠牲者の数が減らないと、私はそういうふうに思っております。
- 井上哲士君
一年間同じ答弁繰り返している間に無辜の市民の命がどんどん奪われているんです。
日本政府は、米軍が行っている空爆等の根拠について、アフガン政府の同意に基づくものだと、今日も何度も答弁がありました。ところが、そのアフガン政府が昨年五月の時点で上院は掃討作戦の中止求めていますし、カルザイ大統領自身が民間人が殺され続けることは我慢の限界だと、こういうふうに述べているわけですね。この食い違いが何で起こっているのかと。
アメリカ軍とアフガンの国内での活動に何らかの規制というものはあるんでしょうか。何か規制があるんですか。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
ちょっと質問もう一回、済みません。
- 井上哲士君
アメリカ軍のアフガン国内における活動に何らかの規制があるのかということです。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
規制がどういうようなものになっているかは私はちょっと承知しておりませんけれども、暫定政権が成立した後、同国の領域内で行われております米軍の活動というものは、これはもう国際法上は、基本的にはアフガニスタン、領域国であるアフガニスタンの同意に基づいて、再三申し上げておりますけれども、同国の警察当局の機関が本来はその任務として行うべき、そういう治安の回復、維持のための活動の一部を補完的に行っているわけでございます。
- 井上哲士君
明確な根拠を今までも政府は示してこないんですが、アメリカとアフガン政府との間には二〇〇二年に覚書が交わされております。その覚書には、アメリカの活動に必要な便宜や権利を提供することは書いてありますが、米軍の行動に制約を課す規定はないんですね。
八月の二十八日付けのアメリカのワシントン・ポストにこの問題が出ておりますが、この覚書について、米軍の軍事作戦に事実上の白紙委任を与えるものだと書きました。アフガン政府は今年八月に再度空爆中止を求める声明を出しています。そして、アメリカに対して、一般市民への空爆、それから不法な拘束、一方的な家宅捜索を規制できるように地位協定を結ぶための交渉を求めているわけなんですね。
つまり、合意がある、合意があると言われてきましたけれども、実際にはアフガン政府に白紙委任をさせて、中止要求も無視をして何の規制も受けずにこの間の軍事行動をやってきたと、こういうのが実態なんじゃないですか。いかがですか。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
アメリカとアフガニスタンの間のやり取り、これの詳細については承知はしておりませんけれども、カルザイ大統領が、米国等がアフガニスタンの領域内で実施しております活動に関しまして一般市民に被害が及ばないよう要請していると、そういうことを踏まえまして、アフガニスタンと関係国の間で被害を回避するための方策について随時議論が行われてきているということは承知をしております。
しかし、こうしたカルザイ大統領の要請というものは、米国等に対しましてアフガニスタンにおける治安の維持回復活動、回復活動そのものの中止を求めていると、そういうものとは理解をいたしておりません。
- 井上哲士君
そらさないでほしいんですけれども、現地に起きているこの空爆の問題についてどうするんだということを聞いておるんです。
とにかく、この一年以上繰り返し協議中だというふうに答弁をされてきたんですが、アフガニスタンの内閣が今年の八月に民間人犠牲が相次ぐ中で声明を出しております。こう言っているんですね。アフガン政府は、国際部隊との間で一般市民の犠牲の問題を繰り返し協議している。とりわけ、村落での民間の標的に対するすべての空爆を中止するよう繰り返し求めてきた。残念なことに、今日に至るまで我々の要求は取り組まれてこなかった。それどころか、女性や子供を含め、より多くの一般市民の生命が空爆の結果失われていると。繰り返し要求してきたけれども取り組まれてこなかったというのがアフガンの政府が出している声明なんですよ。
ですから、協議、協議と言いますけれども、繰り返し中止を求めてもより多くの犠牲者を出してきたと、これが実態だと思うんですね。これは本当に許されないことでありまして、こういう空爆が今、民間人の命を奪って、情勢悪化をもたらして、そしてテロ根絶に逆行する、こういう事態になっておるんじゃないでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
- 外務大臣(中曽根弘文君)
アフガニスタンの外務大臣とそれからアメリカのネグロポンテ・アメリカ国務副長官によります共同声明がございますけれども、これによりますと、米国の代表団は治安活動において失われました多くの文民の命についてまず遺憾の意を表明したと。そして、米国及びアフガニスタンは、文民の死傷者を最小限にし、テロとの戦いにおいてアフガニスタン国民からの強い支持を維持するために双方の承認を得た枠組み及び仕組みを創設する必要性を認識したと。こういうことで、両者の間での共同声明において、やはり文民の命が、少しでも犠牲者が増えないようにということで配慮をしているということでございます。
- 井上哲士君
そうやって配慮をする、配慮をすると言ってきたけれども、ちっとも良くならないどころか悪くなっていると。そして、アフガン政府自身が、先ほど言いましたように、繰り返し要求したけれども取り組まれてこなかったと、こういうことを言っているんですね。
総理、やはりこういう事態が事態悪化をもたらして、そして国民の政府に対する信頼感も著しく低下をさせている。これが治安悪化にもなっているわけですね。私は、事態逆行するようなこういう空爆は中止をすると、そのことこそが求められると思いますが、アメリカにそういうことを言う気持ちはないですか。
- 内閣総理大臣(麻生太郎君)
これは、井上先生、今、アメリカとアフガンというところの当事者同士の話で、アフガンの政府側の方も度々、いわゆる民間人を巻き込む自爆テロ等々の被害というものが双方に出ております状況の中において、一方的にアメリカの空爆をやめたらすべてのほかが止まるかというと、なかなかそういうようなわけにはいかないのではないかという感じが率直なところです。したがって、私どもとして、第三者の立場として、空爆はやめたらというような話を今私どもの立場から申し上げる立場にはないと、基本的にはそう思っております。
- 井上哲士君
この戦争でテロがなくせなかったというのは、もう七年間が示しているわけですね。
先ほどもちょっとありましたが、隣の国のパキスタンも、掃討作戦を指揮する軍の中将が議会に対して、武力だけでは永遠に勝てないとして、対話による政治的解決の必要性を伝えて、パキスタン国会は今月の二十二日に、アフガン政府が和解を探っているのに我が国が戦闘に固執する必要はないということで、対テロ戦争の見直しを求める決議をパキスタンの国会自身が行っているわけですね。だから、武力からもう対話、和平という流れは一層大きくなっているんです。
総理は、和平の流れを歓迎するというふうに衆議院でも言われました。では、この流れを確かにするために今何が求められているのかと。とりわけ、日本に何が求められているのか。片方の手で握手をしながら片方の手でぶん殴るというやり方では、これ和平はできないと思うんですね。
私は、憲法九条を持つ日本はこういう和平の妨げになっているような空爆などの掃討作戦を中止を求める、そのことこそがこの和平の外交的な後押しになる、それこそやるべきでありますし、こういう声が広がっておるにもかかわらず戦争支援と一体のインド洋の給油支援活動は延長するべきでないと、中止すべきだと申し上げまして、質問を終わります。
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