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2010年5月18日(火)

外交防衛委員会

  • 日本・カザフスタン原子力協定に関連して、14年ぶりに運転再開した高速増殖炉もんじゅの問題を取り上げた。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 日本・バミューダ租税協定は賛成であります。

 日本・クウェートの租税条約についてお聞きしますが、使用料の源泉地国課税の限度税率が一〇%となっております。過去、国会に承認を求めてきた他国との租税条約ないし協定の使用料の源泉課税率を見ますと、免税から一〇%までの範囲になっております。

 まずお聞きしますけれども、この限度税率が高くても一〇%になっている理由はどういうことでしょうか。

外務副大臣(福山哲郎君)

 まず、今委員御指摘のように、限度税率を設けることが一般的になっておりまして、それで投資促進効果を有することを我々は締結に当たっては考えているところでございます。

 この租税条約の具体的な規定内容については、両国の法制度や国内事情に応じて、交渉により合意されるものでございます。我が国においては、条約相手国と投資交流を促進する観点から、御指摘の使用料については免税としている条約もありますが、クウェート側が投資受入れ国であるとの事情等を考慮し交渉を行った結果、この条約では一〇%の限度税率を規定することとなりました。

 御案内のように、アメリカ、イギリス、フランスでは使用料は免税でございますが、ドイツ、イタリア、カナダでは一〇%、オーストラリアでは五%というふうに規定をしているところでございます。

井上哲士君

 使用料の源泉地国課税というのは海外に進出できる企業が負担するものですから、担税力がある税目だという指摘も国際課税の学説ではあるわけですね。

 グローバルに活躍する日本の多国籍企業の税負担は、一方では使用料の源泉地国課税が一〇%の限度税率で、他方では居住地国課税が大企業優遇課税となっております。日本の多国籍企業の実効税率は四〇・六九%ですが、引当金を含む様々な優遇税制、それから試験研究費税額控除、それから外国税額控除、それから受取配当の益金不算入などで、実際は一〇%以上下がっているという試算もあるわけですね。したがって、これらの優遇税制を見直して、大企業に対する適切な課税を目指すことが必要だということを指摘しておきたいと思います。

 次に国税庁にお聞きいたしますが、今年の二月に、百人に上るクレディ・スイス証券日本法人の社員が、親会社から与えられたストックオプションで得た所得約二十億円の申告漏れが指摘をされました。やり方は、日本法人社員の多くが、クレディ・スイス証券が上場されているスイスやアメリカにある証券会社の海外口座でストックオプションを行使をして株を取得するものの、給与所得としては申告をしなかったという事案でありますが、この百人という数と金額の多さは非常に驚きました。

 一般論としてお聞きしますけれども、この点については申告漏れを指摘したわけでありますが、国税庁としては現在、日本の居住者が海外の証券会社に設定している口座の利用状況というものは把握をできているんでしょうか。

国税庁長官官房審議官(杉江潤君)

 一般論として申し上げますと、日本の居住者が海外に開設しております銀行口座の利用状況については、そのすべてを把握することは困難な面があるということも事実でございます。しかしながら、私ども国税当局といたしましては、従来から、国外送金等調書や租税条約に基づく情報交換制度などを効果的に活用いたしまして、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなどにより適正な課税の実現に努めているところでございます。

井上哲士君

 そこで、この間、課税状況と海外口座の情報交換を目的として租税条約や議定書が結ばれてきたわけでありますが、こういう日本の居住者が海外証券会社に設定する口座の利用状況について有効な情報を手に入れるということが可能になるということでよろしいんでしょうか。

外務副大臣(福山哲郎君)

 日本の居住者による海外銀行口座の利用状況についても、条約の実施や国内法令の運用、執行等に必要な情報として相手国の税務当局から情報の提供を受けることは可能だと考えております。

井上哲士君

 それに基づいてしっかりやっていただきたいわけでありますが、近年は様々な国際取引が個人の富裕層や金融関係まで広がっておりまして、加えて、タックス・プロモーターと呼ばれる税の専門家が関与して、高度で地道な調査が要求される事案が増えていると言われております。

 今、国税庁では、国際課税を専門的に調査する専門官の定数は平成二十二年度が総数で三百四十六人、前年度比の増員も二名のみとなっております。

 OECDの調査によりますと、税務にかかわる正規職員一人当たりが担当する国民の数は、日本が二千二百七十人、フランスは七百九十人、ドイツは六百九十九人、イギリスは八百十人ということでありまして、日本は三倍ぐらいの負担になっているわけで、国際比較で見ても日本の税務職員は明らかに過重労働にさらされていると思います。

 特にこういう国際課税という場合は非常に今大事だと思うわけですが、こういう国際課税の専門官の定数を増やしていくということについて、国税庁としてはどういうお考えをお持ちでしょうか。

国税庁長官官房審議官(杉江潤君)

 先生御指摘のとおり、国際取引の量的な拡大や複雑化によりまして海外取引調査等の実務が急増しております。そういうことで税務を取り巻く環境は厳しさを増しているわけでございます。

 これに対しまして、国税庁といたしましては、従来より、国際取引事案を専門的に担当いたします国際税務専門官、あるいは国際的な租税回避事案に関する情報収集、実態解明、調査の企画立案等を専担いたします統括国税実査官を設置するなどいたしまして、国際課税事案の調査体制の充実を図っているところでございます。

 今後とも税務行政をめぐる環境は厳しさを増すものと考えられることでございますので、現下の厳しい行財政事情も踏まえつつ、所要の定員、機構の確保について関係各方面の理解が得られるよう一層の努力をしてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 いわゆる問答無用の強権的税務調査というのは私ども反対ですが、国際課税の脱税行為というのは一件の額が非常に巨大でありますし、税の社会的信頼性や正当性は揺らぐことにもなります。国際取引の増加に伴う監視強化は国際的な要請でもありますし、しかも高度な専門性に基づくマンパワーに支えられていることも事実でありますから、ここはしっかり強化をしていくべきだということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、日本・カザフスタン原子力協定についてお聞きいたします。

 この協定の日本側の戦略の一つに、国内で立地が難しい高速増殖炉安全性実証研究の実施というものが挙げられております。この高速増殖炉である「もんじゅ」については、先日、十四年ぶりに再開をしたわけでありますけれども、安全性という面、それから巨額の費用が掛かっているというような問題も含めて様々な問題が指摘をされてきたわけでありますが、あえてこういう戦略がこういう協定の方向として盛り込まれたということは一体どういうことなのか、まず外務省にお聞きいたします。

外務副大臣(福山哲郎君)

 井上委員に事実関係としてお伺いしますが、高速炉について、本協定上、協力の対象として掲げているという認識でいらっしゃいますか、私が聞いてはいけないのかもしれませんが。もう一度御質問いただけますか。

井上哲士君

 経済産業省などが出しているものの中に、日本側の戦略として六つ掲げておられますけれども、この中に、国内で立地が難しい高速増殖炉の安全性実証研究の実施というものが、これは経済産業省の資料にも明記をされていると、このことをお尋ねをしております。

外務副大臣(福山哲郎君)

 この協定上の話で申し上げますと、今回の日・カザフスタン原子力協定は、原子力の平和的利用にかかわる協力を促進するため、軽水炉の設計、建設、運転等、同協定に掲げる分野において協力を行うことができる旨を規定していますが、高速炉については本協定上は協力の対象としては掲げられておりません。協力の分野が実は協定上に七つ表記をされていますが、その場にも実は高速炉については表記をされていません。

 高速炉の分野で協力を行う場合には、いかなる協力を実施するかについて個別に検討、判断した上で、カザフスタン側との間で協定における協力の対象分野の追加等の必要な調整を行うこととしているところでございます。

井上哲士君

 先ほど申し上げましたように、経済産業省が本協定が想定する両国間での今後の協力というポンチ絵を出しておりますけれども、この中で日本側の戦略としてこういうことを挙げているということであります。具体的に、やっていく上でどういうことが必要なのかということは今御答弁もあったわけでありますけれども、戦略としてこういうことを目指しているということ自体を私は問題視をしているんですね。

 「もんじゅ」の運転が十四年ぶりに再開をされました。その直後の六日と七日に原子炉の燃料漏れの検出装置の警報が六回鳴ったということが起きました。ところが、この公表がまた遅れたわけですね。これについて、敦賀の河瀬市長は、電話をしてきてもよいと思う、これまで何度も言っているけれども、何かあればすぐに報告してほしいという不快感のコメントも出されておりますし、福井県庁への連絡も、たまたま現場に県の職員がいたということで事実を知って連絡をしたということであります。

 過去、旧動燃時代にこの「もんじゅ」の異常公表の対応の遅れということで再三批判を浴びてきたわけで、経済産業省は原子力の関係部門の組織変更まで行いました。ところが、再開しても冒頭からまた同じような対応ぶりになっているわけで、過去の教訓が生かされていないんじゃないかということが関係自治体からも厳しい批判がされておりますけれども、この点、保安院はどう受け止めていらっしゃるでしょうか。

資源エネルギー庁原子力安全・保安院長(寺坂信昭君)

 お答え申し上げます。

 安全の確保ということを担当しております原子力安全・保安院といたしましては、起こりました事象、そういったことに関しましては、まず現地の検査官が安全が確保されているかどうかということを確認をするということでございますけれども、ただいま御指摘ございましたように、試運転の再開の当初、日本原子力研究開発機構の公表に対する取組、これは起こりました事象の内容とか、あるいはそれに対してどのような対応をしていったかというようなその取組、それから、何よりも安全上の問題があるのかないのか、そういったことも含めました公表に対する取組が十分ではない、そういう点があったのは事実というふうに認識をしてございます。

 そのため、私ども原子力安全・保安院といたしましては、日本原子力研究開発機構に対しまして、機構の広報あるいは情報公開、そういったものの体制につきまして改めて注意を行ったところでございます。

井上哲士君

 改めて注意ということでありますが、本当に地元住民、自治体からの厳しいまなざしがあるわけですね。

 保安院が今年二月の十日に、高速増殖炉「もんじゅ」試運転再開に当たっての安全性評価についてというのを出しておりますが、これを見ますと、運転手順書、それから運転管理体制等を見直したとしております。しかし、この運転開始直前もナトリウムの漏えい検出器の故障がありました。いまだに原因も分かっていないという指摘もありますし、十日には運転員による初歩的な操作ミスで制御棒の挿入作業の中断ということがありました。

 なぜこの「もんじゅ」の故障が過去から現在までしばしば起こり、しかも今こういう初歩的なミスが発生をしているのか、この原因は何とお考えでしょうか。

資源エネルギー庁原子力安全・保安院長(寺坂信昭君)

 先ほども申し上げましたとおり、試運転の再開以降、今の検出器の不具合の警報、そういったものの事象が発生しているわけでございますけれども、いずれもプラントの安全に影響を与える事象ではないということを現地で検査官が確認をしてございます。

 一つ一つのその起こりました事象に対しましては、原因究明あるいはその再発防止対策、そういったものを行ってきているわけでございまして、「もんじゅ」は原型炉といいますか研究開発段階の炉でございまして、こうした経験も踏まえまして、プラントの安全安定運転に反映し改善を継続していくということが重要と考えてございます。

 いずれにいたしましても、起こりました一つ一つの事象に関しまして原因究明と再発防止対策が着実に実施されるということを確認し、引き続き安全の確保に努めてまいりたいと考えてございます。

井上哲士君

 こういう初歩的なミスが続いているということに大変危惧を持っております。

 この「もんじゅ」は、昨年十一月に与党の事業仕分の対象にもなっております。その理由は何なのかということと、昨年までの総投資額、それからナトリウム漏れ事故後の改造工事の総費用、それから停止後の維持管理の費用はどういうふうになっているでしょうか。

文部科学大臣政務官(後藤斎君)

 お答え申し上げます。

 昨年、いわゆる事業仕分の中で「もんじゅ」が対象になったことは事実であります。

 対象決定は行政刷新会議で決定をしておりますが、そこの事務局からもヒアリングをし、「もんじゅ」については、先生が先ほど御指摘をされているように、十四年間運転停止をしている中でも約二千三百億円の経費が掛かっていた中で、運転再開を控え、今後の経費をどのように投入すべきか、必要性を検証すべきではないかという意見と、関連研究開発について、先ほど保安院からもお話がありましたように、「もんじゅ」は原型炉という形でありますが、大幅に遅れているということで、実証炉、商業炉に向けて本格的な研究についても後ろ倒しをすべきでないかと、そういうような御意見の中で事業対象になったというふうにお聞きをしています。

 あわせて、先生から御指摘があったように、「もんじゅ」が昭和五十五年から昨年までにトータルとして約九千三十二億円掛かっております。そのうち、政府支出が七千六百五十億円ということでございます。ナトリウム漏えい事故が平成七年に起こっています。そのとき、改造工事の経費ということで約百七十九億円、そしてこの十四年間運転停止中の維持管理経費の総額が一千三百七十七億円ということであります。

 いずれにしましても、先ほど先生がお話しありましたように、文科省は原子力研究機構を指導監督する立場にもございますが、やはり地元の皆さんが、いわゆる情報の開示の部分で不安を与えていることも事実であります。できるだけこれからも安全性確保と情報公開ということに万全を期しながら、文科省としても原子力機構をきちっと指導監督してまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 与党の中からも問題点が指摘をされてきたわけですね。専門家によりますと、今後「もんじゅ」の使用済みの燃料の処理方法は「もんじゅ」以上に困難な技術開発が必要であるし、莫大な費用とともに長期にわたり強いられるという指摘もあるわけであります。

 欧州八か国の環境大臣が〇七年に発表した共同声明で、原発というのは持続可能な発展と両立しないし、気候変動との闘いにおいても有効な選択肢とならないという指摘があるわけで、私たちは、国民の安全確保という点からも、原発のほかの多様なエネルギー技術確立にこそ政策の視野を広げるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。


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