2010年4月12日(月)
決算委員会
- 防衛省が行った05年以降の一般入札において、過去の実績や天下りOBの在籍状況を考慮して各社のシェア率をきめて官製談合をしていたことと、公取の調査前に隠蔽工作までしていたことも追及した。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
防衛省の官製談合の問題についてお聞きいたします。
公正取引委員会は、三月三十日に、航空自衛隊が発注するオフィス家具などの事務用品の納入にかかわって、製造業者ら六社による官製談合を認定をし、五業者に対して排除措置命令及び三億七千五百十六万円の課徴金の納付命令を出し、さらに、談合への職員の関与について防衛大臣に改善措置要求を行いました。極めて重大であります。
まず、防衛省にお聞きいたします。
今回の談合の発覚は、防衛監察本部による定期防衛監察が端緒になりました。この防衛監察の結果、昨年の三月三十日に、防衛監察本部の統括監察官から航空自衛隊第一補給処長あてに検討依頼文書というのを出しております。
この中で、談合が疑われる不自然な入札案件についてどういう結論だったんでしょうか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
お答えをさせていただきます。
今回のその調査結果の検討についてのことがございましたが、そもそも、平成二十年度に防衛監察本部が航空自衛隊第一補給処に対して行った定期防衛監察の結果、新規業者の参入が比較的容易な事務用品等の市販品であるにもかかわらず、落札率の平均値が約九九%という高落札率であったこと、また、シェア率の固定化及び入札行動のパターン化など入札結果に不自然さが見られたことから、御指摘ありましたイトーキ、ライオン事務器、内田洋行、プラス及び文祥堂により談合が行われている疑いがあるという結果を見たところであります。
- 井上哲士君
お手元の資料の一の二にあるとおりであります。
この依頼文書では、第一補給処で検討を加え、不自然な入札状況が見られる場合には、談合情報マニュアルにのっとり公正取引委員会への通報等を検討すべきであるとしておりますが、これを受けて、昨年の五月二十八日に、航空自衛隊の第一補給処東京支処長から公取に対して談合情報に関する通知がなされております。
その報告書、資料の二の二でありますが、今後の措置等についてはどのように述べているでしょうか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
平成二十一年五月二十八日付けで、第一補給処東京支処から北関東防衛局を通じて公正取引委員会に通知をした際、入札状況に疑義があるために公正取引委員会へ通知するが、第一補給処東京支処としては、事情聴取等具体的な措置を行わず、入札方法等の改善を図り、当面は状況を観察するとしていたところであります。
これは、談合の疑いがある場合には公正取引委員会に通知をして、調査権限を有する公正取引委員会にゆだねるという談合情報対応マニュアルに沿った対応でございます。
- 井上哲士君
不自然な入札が指摘をされ、こういう実態が示されながらも、今の東京支処長からの報告文書では、具体的な措置はとらないと、観察すると、こういう中身だったわけですね。何でこんなことになっているのかと。
公正取引委員会来ていただいておりますが、今回の談合に関する自衛隊側の組織的関与ということについてはどのように認めているんでしょうか。
- 公正取引委員会事務総局審査局長(中島秀夫君)
お答え申し上げます。
本件の私どもの調査において認められました入札談合等関与行為は、航空自衛隊が発注、調達いたしますオフィス家具、いわゆる什器類につきまして、航空自衛隊第一補給処の職員、具体的には資材計画部資材計画課長が、処長、副処長又は資材計画部長の了解の下、調達に係る事業者別の目標を定め、資材計画課の各班長に対しまして当該目標を達成するよう指示をいたしました。
さらに、この指示を受けまして、資材計画課におきまして什器類の調達を担当する需品班及び基地器材班が当該目標を達成できるよう、オフィス家具メーカーに対しまして第一補給処が調達を希望するメーカーについての意向を示し、これにより入札談合を行わせていたことであります。
- 井上哲士君
資料三の二の下にあるとおりなわけですが。
今ありましたように、この第一補給処の処長、それから副処長、資材計画部長、資材計画課長、各班長、そして現場と、もうトップから現場まで全部これ関与しているわけですね。恐るべき組織ぐるみのやり方が行われていたということなわけですね。そして、先ほど示しました東京支処長から公取に出された文書というのは、まさにこの官製談合の当事者が報告を出しているわけでありますから、具体的な措置はとらないと、そして観察をすると、こういう内容になるのも当然といえば当然なわけであります。しかも、それだけではありませんで、自衛隊側は隠ぺい工作までしておりました。
公正取引委員会は、この談合に関する通報情報の業者への漏えいについてはどのように認定をされたんでしょうか。
- 公正取引委員会事務総局審査局長(中島秀夫君)
本件の私どもの調査におきまして、防衛省が、航空自衛隊第一補給処が実施する什器類の入札を対象として行いました防衛監察本部によります防衛監察の結果を私ども公正取引委員会に通報する前に、第一補給処の職員が関係事業者に対しまして防衛監察本部による防衛監察の内容及び公取への通報の予定を漏らしていた事実などが認められております。
- 井上哲士君
まさに極めて悪質なわけですね。
さらに、防衛省にお聞きいたしますけれども、防衛省はこの第一補給処及び東京支処に関して部内の監査部署が内部監査を行っていると思いますけれども、過去十年間で何回監査をやったか明らかにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
航空自衛隊第一補給処の過去十年間における会計監査実施状況でありますが、本処、木更津を対象としたものが計十回ございまして、各年度一回、五から九名の監査官にて四日から五日間の間実施をしております。東京支処、十条にありますが、これを対象としたものが計十三回ございまして、平成十二年、十七年、二十年度は各年度二回、三から七名の監査官にて二日から五日間実施をされております。それ以外の年度は、各年度一回、五から七名の監査官にて四日から六日間の間実施をいたしております。
- 井上哲士君
合わせて十年間で二十三回も外部監査を行っているんですね。にもかかわらず、こういう明瞭な談合が発見できなかったと。そして、防衛監察が確かにこの談合の疑いを指摘したわけでありますけれども、身内が関与していた官製談合だと、身内の関与については見抜くことができなかったわけですね。そして、先ほど公取からありましたように、第一補給処は具体的な措置を行わずに、逆に業者に情報漏えいをして隠ぺい工作をしていたと。本当に私は極めて悪質だと思うんです。
そこで、大臣に見解を伺いたいんですが、こういう事態であるにもかかわらず航空幕僚長は、公取が官製談合を認定したことを受けた今年三月五日の記者会見でこの事件について述べております。こう言っているんですね。随意契約から一般競争入札になって事務処理も相当増えてこのような状況になったのが大きな原因だとした上で、それほど悪意がないということかと言ったら、そのとおりですと、こういう会見をしているわけですね。
私、先ほどから、政治が防衛省の中に甘えの構造をつくってきたんじゃないかということを大臣が何度か言われました。ですから、監査で十年間で二十三回やっても見付けられなかった。防衛監察は、談合は確かに指摘しましたけれども、身内の関与は指摘できなかった。
身内に甘い構造があるんじゃないか、そして組織全体にそれほどの悪意がないと、こういう認識があったんではないかと、こういうふうに思うんですが、大臣の御認識を伺いたいと思います。
- 防衛大臣(北澤俊美君)
先ほど来、甘えの構造のことを申し上げておりますが、間違いなくそういうことは私も強く感ずるわけでありますが、しかし、先ほど来、何件かの御指摘を受けていく中で、防衛省としては極めて深刻に受け止めて、襟を正すべく今鋭意検討をいたしております。
なお、空幕長につきましては、空幕長から私にその会見の後に陳謝がありまして、忙しい中で細かく経緯を承知をしないうちに会見に入ってしまったということで、大変軽率な会見、発言をしたということで、自後しっかり対応を取るために気を付けてまいりたいと、このような釈明がありました。
- 井上哲士君
空幕長はマスコミにも若干釈明をしているんですが、要するに私腹を肥やすものではなかったと、こういうことも言われているんですね。しかし、これは国民の税金が談合によって浪費されている、無駄遣いされていると、そのことに対する問題意識の余りにも欠如ではないかと思うんです。昨年、既に立入調査も行われていた中ですから、突然の話ではないんですね。こういうのはしかも、最初に言ったことに大体本音が現れるものでありまして、私はやっぱりここに大きな問題があるということを言わざるを得ません。
公取が防衛省に対して要請文書を出しておりますけれども、こう言っております。公正取引委員会は、これまでも防衛省に対し、同省の職員が行っていた入札業務に係る問題点を指摘し、再発防止のための改善措置を講じるよう繰り返し求めるなどしてきたと、こういうふうに言っているんですね。
このいわゆる談合に係る指摘というのは、中央省庁の中でも防衛省はある種突出して行われているわけですね。繰り返し指摘を受けてまいりました。ここにはやはり天下り、再就職とかかわった根深い問題が私はあると思うんです。
防衛省にお聞きしますけれども、今回、措置命令を受けた各社及び提携している販売業者への防衛省からの天下りの人数は幾らになっているでしょうか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
この度の天下りの実態でありますが、排除措置命令の対象となりました五社へ、これまで自衛隊法第六十二条の規定に基づき防衛大臣等の承認を得て十名の隊員が再就職していると承知しております。
- 井上哲士君
三月二十日の第二回調査・検討委員会に出された資料も十人というふうになっておりますが、そこには、今後の調査によっては新たな再就職者が判明する場合もあるというふうに述べられておりますけれども、今の十人というのは調査をした結果なのか、今後更に増える可能性があるのか、どちらでしょうか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
この十人という数字は調査をした結果でありますので、この数字は五社についてはこのままでございます。
- 井上哲士君
そうしますと、いわゆる防衛大臣等の承認を得て再就職した者以外にはないと、こういうことですか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
大変失礼をいたしました。先ほどこの数字変わらないと申しましたが、済みません、調査中でございまして、この数字が増える可能性もございます。失礼をいたしました。
- 井上哲士君
公取は、時効との関係で二〇〇五年以降の入札についての官製談合を認定をいたしました。私は、この第一補給処が行った二〇〇四年の契約について資料をいただきまして調べてみました。
資料の五を見ていただきたいのでありますが、驚くことに、処分を受けた五社の契約を調べますと、二〇〇四年は五百五件のうち四百九十五件が随意契約になっております。しかも、そのうち四百九十七件が予定価格に対して契約金額が一〇〇%と、こうなっているわけですね。
一つ一つの契約書類を見ました。随契の見積りを全部出していただきまして、これを見て、そして実際の契約金額とも照らし合わせてみました。そうしますと、予定価格と業者の見積価格、随契の場合でも多少差がありますから、大体値引き交渉とかあるものですよ。ところが、書類を見ますと、業者の見積価格がそのまま予定価格になってその価格で契約が行われておりまして、文字どおり、業者の言いなりの価格での契約ということになっております。
調査・検討委員会、開かれているようでありますが、この〇四年以前の契約について、こういう事実は防衛省として把握をされているでしょうか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
航空自衛隊第一補給処における平成十六年度までのオフィス家具等の調達についてはほとんどが随意契約であったと、そのように認識をしております。
- 井上哲士君
随契だというだけでなくて、そのほとんどが契約金額が予定価格に一〇〇%になっていると。それだけじゃないんですね。手元の資料の六も見ていただきたいんですが、〇四年にライオン事務器が、これ一般入札で契約したのは三件あるんですが、これ全部応札は一社だけなんですね。そして、二件は入札といっても落札率は一〇〇%、一件は九九・八%なんですね。
こういうのは大体談合の疑いということがあるわけでありますけれども、やはり〇四年にも極めて不自然な契約が行われていたと私は思うんですが、大臣、今の事態を聞いてどういう御感想をお持ちでしょうか。
- 防衛大臣(北澤俊美君)
余り不用意なことは慎まなきゃいけませんが、私の感覚からすれば、絵にかいたような官製談合だという印象を持っております。
- 井上哲士君
官製談合は〇五年以降ということを公取は言ったわけでありますが、防衛監察が指摘した不自然な入札の状況として、各業者のシェア率の固定化というのがあるんですね。〇五年から〇七年にかけてのシェア率は資料四にあるとおりでありまして、プラスが一五・九一%、イトーキが二五・一六%、ライオン事務器が二三・二一%、内田洋行が二一・〇%、文祥堂が一四・六八%となっております。これを私は〇四年で調べてみました。それが資料五に載っております。プラスが一九・三九%、イトーキが二六・六五%、ライオン事務器が二八・二九%、内田洋行が一九・五二%、文祥堂が六・一六%と。ですから、各社のシェア率それから順番は基本的に同じなんです。
公取は、〇五年以降の契約について、先ほどありましたように、退職者の在籍状況等を考慮してあらかじめ調達目標を定めているという、こういう事実も認められたと文書でしておるわけですが、大半が随意契約だった〇四年からそういうことが行われていた。つまり、メーカー言いなりの価格で、天下りOBの在籍状況を考慮して、各業者への契約率を固定化して割り振っていたという疑いが強いんですね。
その〇四年の状況をそのまま〇五年以降も続けるために官製談合をやっていたんじゃないかと私は疑うわけでありますが、この点もう一度、大臣、認識いかがでしょうか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
事実関係も含まれますので私から答えさせていただきます。
今回の件におきましては、委員も御指摘のとおり、その二〇〇四年の一般競争になる前の時点からそのようなシェアがあって、その後、今調査中でありますけれども、一般競争入札に移行した後もシェアなり順位が変わっていないと。この点についてまさに防衛監察本部の中でおかしいんではないかという、そのような見方があり、通報したところでありますので、まさしく我々としましても、平成十六年度から平成十七年度にかけて、二〇〇四年度から二〇〇五年度にかけての調達方式の変更の経緯や背景についてより十分に調べていくことが重要だと考えております。
委員御指摘がありました点について今断言することできないわけでありますが、そうした見方を十分頭に置きながら更に調査を続けていきたいと考えております。
- 井上哲士君
是非しっかり調査をしていただきたいんですが、その際、天下りと結び付いた職員の談合への関与ということについてもさかのぼって調べる必要があると思うんですね。
今回の官製談合について公取は、第一補給処の副処長の関与を、先ほどもありましたように、認めているわけでありますが、例えば、今回、排除措置命令を受けた内田洋行には第一補給処の副処長だった職員が天下っております。同じくプラスには第一補給処の立川支処長、ライオンには同保管部長が天下っているわけですね。ですから、長期にわたって天下りポストがずっと引き継がれて、それに応じてこの契約の振り分けが随契のときから行われ、それを競争入札になってからも維持をしたと、こういう可能性があると思います。
第二回の調査・検討委員会の報告も見せていただきましたけれども、そこでは、〇五年から〇八年の調達に関与した職員の聴き取りしかされておりませんが、それより更にさかのぼっていろんな調査をする必要が職員についてもあると思いますが、いかがでしょうか。
- 防衛大臣政務官(楠田大蔵君)
委員御指摘のとおり、そうした五社に自衛官OBが再就職していることは事実でありますので、この点がどのように関連していくかということは更に調査をしてまいらなければならないと考えております。
その上で、まさに御指摘のように、今聴き取りをした、時間の限りもありまして、聴き取りをしたメンバーはやはり限られておりますので、更にその範囲を広げて調査をしていくということはお約束させていただきたいと思います。
- 井上哲士君
これは今回の問題だけではないんですね。
公正取引委員会にお聞きしますけれども、防衛省の入札業務全体について指摘をされておりますけれども、どういう問題点を指摘されているでしょうか。
- 公正取引委員会事務総局審査局長(中島秀夫君)
先ほど井上委員より御指摘ありましたように、これまで平成十九年、十六年、十一年、既に三回にかけまして私ども公正取引委員会の方から防衛省に対しまして、入札の改善その他関与行為等が行われないような措置を行われるよう求めてきたところでございます。それにもかかわらず今回このような事件、談合行為の事件が行われ、私どもとして防衛省に初めて改善措置要求及び要請をさせていただいたことは誠に残念なことでございますと考えておりますけれども、今後、防衛省におきまして、改善措置要求等を受けまして徹底的な調査が行われ、今後二度とこのような談合に対する関与行為が行われないよう強く期待しているところでございます。
- 外交防衛委員会委員長(神本美恵子君)
井上哲士さん、時間が参っております。
- 井上哲士君
はい。そういう厳しい指摘があったわけですね。これまでいろんな防衛庁で問題ありましたけれども、結局、組織だけいじって、この天下りと結び付いた問題ということにメスが入ってこなかったと私は思います。そこにも深いメスを入れた抜本的な措置が必要かと思います。
最後に大臣、そういう言わば天下りと結び付いた問題も含めて抜本的な対応を行っていくと決意をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
- 外交防衛委員会委員長(神本美恵子君)
答弁、簡潔にお願いします。
- 防衛大臣(北澤俊美君)
御指摘でもありますので、場合によれば陳腐な表現になるかもしれませんが、新政権として再発防止に全力を傾注してまいりたいと、このように思っています。
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