2011年3月23日(水)
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
まず、今回の震災の犠牲者の方、また被災者の方々に哀悼の意とそしてお見舞いを申し上げたいと思います。
まず孫崎公述人にお聞きいたしますが、今後の日中関係の問題です。
両国政府は戦略的互恵関係ということを言ってきたわけでありますが、一方で中国脅威論というのが常に議論があります。このいわゆる中国脅威論についてどのようにお考えかということが一つ。
それと関連しまして、先ほどの公述の中でも、中国との経済一体化が日本にとっていい選択なんだということを述べられました。今政府が進めようとしていますTPPについて言いますと、中国は慎重にしておりますし、むしろアメリカは東アジア中心の経済統合にくさびを打つような思惑もこれにあるわけですね。例えば、外務省の元事務次官の方の論文を読みますと、このTPPというのは強い安保をつくるんだと、東アジアに大きな経済体ができるというのは幻想であって、むしろアメリカとの一体化を選ぶというその安保の問題なんだということも含めて言われているわけですが、こういう議論についてどのようなお考えをお持ちか、お願いいたします。
- 公述人(孫崎享君・元外務省国際情報局長・元防衛大学校教授)
中国の軍事的な脅威が増えるということは事実だと思います。私は、多分、これから二十年、三十年の時限を考えれば、中国の軍事予算は日本の十倍、このような状況になっております。
その中で、中国の中にも、軍事的に物事を解決しようという人たちと、それから、緊密な関係を持ち、平和的な関係で世界情勢をコントロールしようとする両派がいると思います。流れは私は多分後者だと思います。したがって、中国の中の基本的に世界の安定と自国の経済を発展させるというグループとできるだけ連携を持っていく、これが日本の生きる道ではないかと思います。
先ほどから私の説明でも申し上げましたように、日本の経済は、これからは中国市場と韓国、こういう東アジアであることがもう間違いないんですね。米国のGEの会長ですら、これからの世界は中国の経済力とどう関係を持つかということですから、この枠組みをつくるということが一番重要であると。それに対して、TPPのように、もしもこれに対抗するというような形で経済システムをつくろうとしても、それは日本にとって必ずしも望ましいことではない。どうやって東アジアの国々と経済的な連携を増やせるか、これが枠組みづくりの一番重要なことだと思います。
- 井上哲士君
もう一点、日本と中国、そして中米関係についてお聞きするんですが、非常に今これらの相互依存関係は深まっておりまして、アメリカの国債の最大の保有国も日本ではなくてもう中国になっております。こういう経済関係の変化がアメリカの北東アジア政策にどんな影響を与えているのか。例えば、台湾関係法ができた当時とは随分経済関係が違っているわけですが、これはどのようにお考えでしょうか。
- 公述人(孫崎享君)
私は、アメリカの対中国政策は二つの大きなグループの綱引きだと思っております。一つは、金融を中心としてあるいは産業界を中心として中国との連携を図っていかざるを得ないというグループ。もう一つは、俗に言われる産軍共同体、軍需産業とそれから国防総省とこのグループ。これは各々方向性が違うと思います。前者はできるだけ連携を深める、後者はある意味では中国の包囲網をつくっていく。両者のグループともアメリカの世界では非常に力が強い。どちらかがやっつけられるということはないと思います。
したがって、米国の対中政策は、仲よくしようというグループとそれから対決姿勢というものと、これの相互のものが時々変わっていくと、こういうようになっていると思いますが、先ほど申し上げましたように、私は、ここ直近の二か月ぐらいの米国の内政を見ますと、産業界のグループ、財政の方が産軍共同体よりは少し力が強いような気がしますが、これがそのまま続くということではない、常に闘いが続くと思います。
- 井上哲士君
次に、酒井公述人にお聞きいたしますが、やはり中東問題を考える上でアメリカの中東政策を抜きに考えられないと思うんですが、これまでのパレスチナ問題の推移やこのアメリカの中東政策が今回の中東各国の様々な国民の意識や行動にどういう影響を与えたとお考えかということが一つ。
それから、エジプトに余り介入しなかったということで、アラブ諸国のこれまでのアメリカのイメージが払拭をされたというお話があったんですが、これは、そういうふうに政策をアメリカが転換したと考えるのか、それともなかなか手が出せない中でうまく振る舞ったと考えるべきなのか、その辺はいかがお考えでしょうか。
- 公述人(酒井啓子君・東京外国語大学大学院総合国際学教授)
御質問ありがとうございます。
アメリカのこれまでの中東政策が今回の革命といいますか、民衆の動きにどういう影響を与えたかという御質問だと思いますけれども、これは先ほど申し上げましたように、中東の各国は民主化運動を進める際に、民主化運動を進めて、その結果、アメリカが介入して逆に抑え付けられるという経験をむしろしてきたわけですね。ですので、その経験が逆に、いかにアメリカの介入をもたらさない形で、アメリカの同意を得るような非イデオロギー的な革命といいましょうか、政権転覆を行うかということをかなり模索した結果ということになろうかと思います。ですから、そういう意味では、最初から極めてアメリカを強く意識したやり方を取っております。
アメリカもそうしたメッセージはよく伝わったと思いますので、政策転換というよりは、そのメッセージを受け取って、自力の政権交代をむしろバックアップするという形を今回は取ったということになるだろうと思います。
よろしいでしょうか。
- 井上哲士君
森本公述人に一点だけ。
今回の原発問題が安全保障上大事だということがあったんですが、アメリカの場合、アメリカ軍も被曝した地域に入らないというふうになったぐらい、非常に独立した第三者委員会、安全委員会の権限が強いわけですが、日本はそういうものがありません。こういう点についてどのようにお考えでしょうか。
- 公述人(森本敏君・拓殖大学海外事情研究所長・同大学院教授)
今回、自衛隊が、皆様御案内のとおり、原発の事故に直接大変な犠牲を払って活動しているということは、もうよくよく御承知のとおりだと思います。
〔理事森ゆうこ君退席、委員長着席〕
従来、自衛隊にはその種の特殊な技術と装備を開発する化学学校みたいな学校があって、生物化学兵器及びその種の放射能等にどうやって対応するかという部隊と研究のシステムがきちっとあるわけで、そこで必要な訓練等をやっているわけですけれども、今回は十分に、今回の活動に従事した隊員が使わなければならない装備がその置かれている環境には必ずしもヒットせず、かなりアメリカから必要な機材とか装備だとか服装を借りたり供与したという状態です。
これは、日本の自衛隊が例えばどこかの国と核戦争をするとかということを本来は余り想定しておらず、しかも深刻な核の攻撃を受けることに対して日本の防衛力が作用するということを、もちろん限定的ですけれども、今まで研究もあり装備もありましたけれども、まだそこはアメリカほど十分に整っていないということは、今回相当深刻に受け止めたのではないかと思います。
したがって、今回、どのような教訓が出てくるかまだ分かりませんけれども、私が昨日の段階で聞いた限りでは、そのような準備を今まで陸海空自衛隊が全て持っているということではなかったので、かなりアメリカ側に依存をして協力を得たということではなかったのかと思います。
- 井上哲士君
ありがとうございました。
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