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2011年7月7日(木)

予算委員会

  • 集中審議で総理に対し原発からの撤退をきっぱり決断してこそ自然エネルギーの本格開発・普及もできると迫った

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 東電の福島第一原発の事故は、一たび事故が起きれば他に類を見ない危険を人間社会にもたらす現在の原発の技術を社会は許容できるのかと、こういう根本問題を突き付けました。(資料提示)先日各紙が報道した世論調査では、直ちに全て廃炉、定期検査に入ったものから廃炉、電力供給に応じて廃炉を進める、合わせますと八二%、国民の声は明確であります。

 総理にお聞きいたしますが、総理はこの原発事故の後に、昨年閣議決定をした原発の新増設十四を含むエネルギー基本計画について、白紙から見直すというふうに明言をされました。ところが、四か月たちましたけれども、手付かずであります。先ほどの答弁で議論を始めたと言われておりますけれども、それでは原発推進の計画が生きているということになるんですか。私はまず、そうであるならば、閣議決定で廃止をするということから始めるべきじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

内閣総理大臣(菅直人君)

 私自身、今回の東電の福島原発事故をまさに体験といいましょうか、それに遭遇して、これまで原子力発電所に持っていた私自身の一つの考え方も大きく揺らぎ、またある意味で考え直しを迫られている状況であります。

 今御指摘のエネルギー基本計画については、白紙で見直すと申し上げたのは、まさに白紙で今後見直していこうということでありまして、必ずしもそれを法律的に廃止をしなければ既存のものが残っているということではありません。つまりは、今の計画で予定している、例えば二〇三〇年までに原子力の依存を五三%にするといった、そういう中身そのものを白紙に一旦戻して今後のエネルギー計画を立てていこうということであります。

 そういった意味では、今どういう場で議論をするのか、これまでだとエネ庁が中心になった法体系になっております。しかし、私は、従来のエネ庁だけに任せるということで決して十分だとは思いません。また、この事故に関する事故調・検証委員会も動いております。また、改めて原子力行政の在り方そのものを根本から私は検討する必要があるであろう、そのことも含めて担当大臣を任命をいたしました。

 そうした根本からの見直しに向けて、まだどの場でどの時期というところまで申し上げるのは少し早いと思いますけれども、まさに根本から見直していく必要があると、こう考えております。

井上哲士君

 そうであるならば、今の計画を私はまず廃止をするということを明確にするべきだと思うんですね。総理は自然エネルギーの重視を言われますけれども、今後も原子力が柱だということは言われ、撤退ということは口にされません。それではこの国民の声に私はこたえることはできないと思うんですね。

 ドイツは、チェルノブイリの事故の以降、二〇二二年までに原発を廃止をするということを決めて、自然エネルギーへの転換を強めてきました。一旦廃止方針の延期ということはありましたけれども、福島の事故を受けて、改めて二〇二二年までに全廃をするということを決め、そして同時に、自然エネルギーの割合を現在の一六%から二〇二〇年までに三五%、二〇五〇年までに八〇%にするという基本計画を閣議決定しているわけですね。

 つまり、撤退という問題と、撤退の決断と自然エネルギーへの転換というのはやっぱり表裏一体なんですよ。撤退を決断してこそ自然エネルギーへの本格的な開発と普及できるということじゃないでしょうか。まず、総理、撤退を決断すべきじゃないですか。

内閣総理大臣(菅直人君)

 私は、これまでのエネルギーが大きく化石燃料そして原子力エネルギーに依存してきたこの計画をまず白紙にし、そして、再生可能な自然エネルギーとそして省エネルギーというものを大きな柱にしていくということを提起をいたしております。

 今、私は、物事の考え方として、最終的にエネルギーをどのようなものを選ぶかというのは、ある意味、社会の在り方を選択することにもなりますので、最終的には国民の意思で決めるべき極めて大きな課題だと思っております。ただ、そのときに、例えば選択できる、例えばAというエネルギーをBに代えることが可能なのか可能でないのかということについても、きちっとした方向性を示さなければなりません。残念ながら、現在、再生可能エネルギーは電力の中では水力を除けば一%前後でありまして、なかなかまだ代替エネルギーの柱となるところまでは行っておりません。そういった意味では、代替エネルギーの柱として成長させていく、そしてある時期に国民の選択に委ねていくと、そういう考え方が必要だろうと、このように考えております。

井上哲士君

 私は、危険な原発からの撤退を決断してこそ代替エネルギーの柱としての本格的な促進ができると、それがしかも国民の声でありまして、この世論調査のときの調査でも、八三・六%が自然エネルギーへの転換を求めているわけですね。しかも、その条件もあります。

 環境大臣にお聞きいたしますが、平成二十二年度、再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査の報告書が今年三月に出されておりますが、この報告で、電源ごとの導入ポテンシャル、可能性についてはどのように書かれているでしょうか。

環境大臣(江田五月君)

 これは委員が御提出の資料かと思いますが、その資料のとおりでございまして、環境省で試算し、本年四月に公表した結果によりますと、住宅以外に設置する太陽光発電、これが一億五千万キロワット、それから風力が、陸上が二億八千万、洋上が十六億、中小水力発電一千四百万、地熱一千四百万、これは導入ポテンシャルでございます。

 例えば今の洋上は十六億ですが、実際にこの洋上の風力というものを取り入れるためには相当の、どういいますか、経済性の面からの困難がありますから、そのとおりの数字というわけじゃありませんが、しかし再生可能エネルギーに大きな可能性があるということは確かだと思っております。

井上哲士君

 今の数字をパネルにしておりますが、合計で約二十一億キロワット、現在の電力供給能力に比べますと約十倍、そして現在ある原発の供給能力からいいますと約四十倍に当たるわけですね。

 昨年五月にOECDが報告書を出していますけど、その中でも、日本は豊富な自然エネルギーの潜在能力を持ちながらその導入が遅れているというふうに指摘をしております。ですから、潜在能力はあるんです。それを生かす世界でも最先端の技術もあるんです。国民も求めているんです。何が問題かといえば、それを生かしてこなかったやはり政治の問題なわけですね。原子力に依存し続けて自然エネルギーの転換に本格的に取り組んでこなかったということだと思います。

 総理、自然エネルギー重視と言われますけれども、その政治自身を転換することが必要なんですね。今年の予算を見ましても、例えば電源開発促進税として電気代に上乗せして約年間三千五百億円も徴収しますけれども、これ原発推進に使うことと同じですね。この五年間で見ますと、原子力対策は二兆円以上税金使っていますけれども、自然エネルギー対策は六千五百億に満たないんです。こういう在り方を転換をして、まさに自然エネルギーこそ予算の主役にする、これが必要じゃないでしょうか。

内閣総理大臣(菅直人君)

 この点については、全くおっしゃるとおりだと思います。これまで私も長年いろいろな時代を見てまいりましたが、かつて科学技術庁という役所もあり、いろいろな政策が取られていましたが、どちらかといえば再生可能エネルギーは抑えていくという、そういう傾向が大変強いまま今日まで至っております。一方で、原子力に対しては極めて豊富な資金が投入されてまいりました。

 そういう点で、その資金配分を大きく変えて、過去に原子力開発に使った費用に相当するぐらいの費用を再生可能エネルギーの開発に向けていけば、このポテンシャル、潜在的な能力を大きく開花させることが可能になると私も考えております。

井上哲士君

 それじゃ、具体的に聞きましょう。

 全量買取り制度の法案が出ております。遅過ぎたわけでありますが、これは一歩前進だと思っておりますが、しかし、この法案自体はあの原発事故の前に決まった法案ですね。ですから、原発優先のエネルギー計画の下での法案になっております。ですから、この買取り費用の国の補助はありませんから、全部電力料金に上乗せができるということになっています。そして逆に、全量買取りするからといって、逆に太陽光発電などへの導入補助は削られていくと。今年度予算では二百三十一億円も大幅に削られて、逆に予算削られているんですね。ですから、原発の場合はいろんな名目でお金をつぎ込んできたのとこれと全く違うんです。

 総理、今の立場からいえば、例えば年間三千五百億円の電源開発促進税をもう原発推進のためでなく自然エネルギーに使うと、この全量買取り制度の国民負担を抑えるとか、そして太陽光パネルなどの導入補助金に使っていくと、こういう方向に切り替えてこそ今の答弁になるんじゃないですか。

内閣総理大臣(菅直人君)

 私は、これから本格的な震災復興に向けて物事を進めるときに、例えば東北地方も風力あるいは太陽エネルギーの潜在能力の大変高いところだと指摘をされております。例えばそういうところにそうした設備を置くときに、特に特区的といいましょうか、地域を決めて、その地域がそういうものの設置にとって有利に働くような仕組みなどといったこともいよいよ本格的な復興の中で検討に値すると。既に復興構想会議でもそういった趣旨のことが出ておりますので、そういう中に盛り込んでいくことが私は必要だろうと。

 もちろん、一般的に今、井上議員から言われたような考え方も併せてこの分野に財政的にももっと力を入れるべきだと考えております。

井上哲士君

 自然エネルギーに力を入れるのは当然なんです。

 私が言っているのは、まさに撤退を決断することと併せて、原発につぎ込まれてきたこういう電源開発促進税などを自然エネルギーへの転換をすると、そこに踏み込むべきじゃないかと、こう申し上げているが、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(菅直人君)

 検討に値する御意見だと思います。

井上哲士君

 これ、真剣にやっていただきたいと思うんですね。

 もう一つ、原発立地自治体への交付金の問題があります。

 これまでもこれが地方自治体を財政上の理由から原発にしがみつかせてきたと批判がされてきたわけですが、この交付金も民主党政権になって変わっております。これまでは、つまり原発の規模、出力と稼働実績の二つに応じて算定していたのを稼働実績に応じて算定するように変えました。ですから、今回のようにいろんな問題が起きて、住民の声が広がって定期点検中の原発の再稼働を遅らせますと、たちまち交付金が減っていくと、こういう仕組みになっているわけですね。一方で、定期検査の間隔を空けると年間二千万円、交付金の上乗せがあると。いわゆるあめとむちのようなやり方をやっているわけです。私は、自治体の財政困難に付け込んで、金でこういう危険なものを押し付けるような交付金制度は改めるべきだと思うんです。

 同時に、廃炉にしたらもう金がなくなるということで次の新しい新増設を求めざるを得ないという仕組みにもなっているわけですから、地方自治体がもう原発は廃炉にして、そして自然エネルギーなどの先端的な開発を進める、新しい仕事をつくると、こういうところに踏み出したときにもしっかり交付金で応援をすると、こういう方向に切り替えるべきじゃないでしょうか。この点、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(菅直人君)

 そういった、これまで原子力というものをどんどん増やしていくということが前提として組み立てられてきたいろいろな政策についても根本的に再検討する必要があるだろうと、こう思っております。

井上哲士君

 その鍵はやはり原発からの撤退を決断すると、そしてその下で自然エネルギーの開発促進に本格的に取り組むと、このことが必要だということを強く主張いたしまして、質問を終わります。


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