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井上哲士ONLINE
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2011年10月27日(金)

法務委員会

  1. 検察官の証拠隠し問題でいっそうの是正を求める
  2. 「公務中」に罪を犯した在日米軍の軍属(軍に雇用された民間人)は、誰からも裁かれない問題をただす

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 私もまず検察基本規程の問題でお聞きいたします。

 一定の前向きの表現もあるんですが、行為規範でなく訓示的規程にとどまっているということや、幾つかの重大な問題が欠落をしていると思います。

 その一つが証拠の開示の問題です。私も当委員会で、イギリスやアメリカの例も引きながら、検察官が被告に有利な証拠を隠したら処分の対象になるような、そういう規程が必要だということを提起をしてまいりました。また、在り方検討会議の提言でも、検察官は、被告人の利益に十分配慮し、法令の定め、判例とそれらの趣旨に従い、誠実に証拠を開示するべきであると盛り込むことが考えられるとしていたわけでありますが、この基本規程には証拠の開示について何も言及をしておりません。どうしてこういうことになったんでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 実は、私も最初にこの「検察の理念」と提言とを見比べながら説明を受けたときに、この部分が明示的に書かれていないということについて私なりに疑問を呈させていただきました。

 その上に立って御説明申し上げますと、証拠開示につきましては、刑訴法によりまして検察官請求証拠、類型証拠、主張関連証拠についての開示要件が法律で定められているということで、弁護人に不服があれば裁判所に裁定請求を行うことも可能な制度となっています。また、実務上でありますけれども、検察官は法律の要件に該当しない場合でも柔軟に開示に応じているというような制度になっております。

 そして、その上に立って基本理念について申し上げれば、一般的な基本理念そのものは一般的な検察の精神及び基本姿勢を示すもので、検察官の個別の訴訟行為について具体的な行為規範を定めるという性格のものではないということでございますけれども、「検察の理念」では、被疑者と弁護人との関係に配慮し、法令の定めに従って証拠開示を行うことを含む趣旨で法令を遵守しという文言や、公正誠実に職務を行うという文言、あるいは裁判官及び弁護人の果たすべき役割を十分理解しつつ職責を果たす等の文言の中に、証拠開示を含む弁護人への対応等が適切なものとなるようにする趣旨を盛り込んでいるというふうに理解をしているところでございます。

 さらに、適切な証拠開示への対応の前提となる消極証拠を含む十分な証拠の収集、把握という事柄もこの「検察の理念」には盛り込まさせていただいているというふうに考えております。

井上哲士君

 いろいろ言われましたけれども、開示ということはどこにも書かれていないんですね。わざわざ提言で書かれているのにそれが書かれていないと。私は、今弁護人が請求すれば出るようになっていると言われましたけれども、現実には全くいろんなやっぱり問題が起きているわけですね。

 例えば、昨年の十二月に鹿児島地裁で無罪判決が出た老夫婦殺害事件というのがあります。この判決を見ますと、こう言っているんですね。正しい認定を行うには被告人に有利、不利な情況証拠を漏らさず確認しなければならず、そのためには公益の代表者である検察官は、被告人と犯人を結び付ける方向に働くだけでなく、被告人の犯罪性を否定する方向に働く証拠であっても自ら提出するのが相当であるとした上で、重要な証拠が弁護人に開示されなかったということを指摘をして、被告人以外の不審な第三者の痕跡がなかったという検察官の主張自体が採用できないと、こう言って無罪にしたわけですね。つまり、やっぱり検察側が隠していたということを言っているわけですよ。だから、こういう事態は続いています。

 そもそも民主党が野党時代に提案した取調べの可視化法案では、検察官の手持ち証拠の開示に向けての標目の一覧を出すということを盛り込まれていたわけですから、やはり現状、適切にやられていないと、こういう認識ではないんですか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 今、個別的な御指摘がございましたけれども、「検察の理念」というものは、先ほど言いましたように、検察の精神及び基本姿勢を示すというものでございます。その中で、我々としては提言で示されている誠実に証拠を開示すべきであるということについては盛り込んでいるという認識でおりますので、また個別的に「検察の理念」に沿っていないんではないかというような話があれば、また御指摘をいただきたいというふうに思います。

井上哲士君

 盛り込んでいるとおっしゃいましたが、書かれていないんです。あえて書いていないことに、私はこれはやはり本当の反省があるんだろうかということを思わざるを得ないし、証拠をきちんと開示をするということを理念として位置付けるということを是非強く求めたいと思います。

 もう一点、先ほどあった検察長官の会同での検事総長の訓示は、供述調書至上主義的な捜査を一掃する必要性が痛感をされたと言っていますが、この土台になるのが、身柄を拘束して自白を強要するいわゆる人質司法という問題があるわけですね。この問題もこの基本規程には何も書かれておりません。身柄の拘束というのがやはり重大な人権制限であるということであるとか、それから供述を獲得するために身柄拘束を利用してはならないであるとか、さらには、違法や不当な捜査を認識したときには告発であるとか是正措置を講ずべきだとか、こういうことをやっぱりきちっと明記すべきことが必要だと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 この「検察の理念」においてもいろいろな項目がございますけれども、今委員が御指摘になった点につきましては、例えば基本的には法令を遵守し、基本的人権を尊重し、刑事手続の適正を確保するという文言、あるいは無実の罪を罰することのないよう事案の真相解明に取り組む、被疑者、被告人等の主張に耳を傾け、積極、消極を問わず十分な証拠の収集、把握に努めるというような文言などを記載しておりまして、被疑者、被告人の身柄関係を含む人権への配慮が盛り込まれているというふうに我々としては承知をしています。

井上哲士君

 あぶり出しとかしなきゃ分からないようなものでは駄目なんですね。すっきりとやはりこの問題というのは証拠開示の問題も含めて文言としてしっかり書くということなしには、私は、村木さんの無罪事件の反省が本当にされているのかということになるわけでありまして、そういうものに是非改善をしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、在日米軍関係者の裁判権の問題についてお聞きいたします。

 私、昨年四月に外交防衛委員会で、公務中を理由に日本が不起訴にしてアメリカに裁判権が移った場合も、これは検察審査会の対象になるんですかということを聞きますと、法務省はなるという答弁でした。

 その後、岩国と那覇で初めて米軍関係者の検審の申立てがあったんですね。那覇で申し立てられた事件は、今年一月に沖縄で米軍属が十九歳の男性を交通事故で死亡させましたけれども、公務中だということで不起訴になったものであります。遺族が不服の申立てをしまして、那覇の検察審査会は五月に、これは不起訴は不当だと、起訴相当という議決を初めて行いました。今検察が再捜査をしているわけですね。地位協定では、日本が不起訴にしてアメリカ側に裁判権が移って実際に裁判権が行使された場合に、日本が重ねて裁判をすることはできないと、こうなっておりますけれども、この米軍属の場合は五年間の運転禁止処分になっているだけなんです。

 そこで、一般論として聞きますけれども、日本では行政処分に当たるようなこういう運転禁止処分というのは、アメリカ側で行われた場合に、これはアメリカが裁判権を行使したと、こういうことになるんでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 今委員が御指摘になった点は、日米地位協定第十七条第一項(a)におきまして、「合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」と規定していることに関してだと承知しております。

 お尋ねのあった、米軍当局によってなされる運転免許停止処分等の言わば行政処分というものが、先ほど私が申し上げた懲戒の裁判権行使に該当するのか否かというような問題でございますけれども、これについては、先ほど委員が御指摘になった、今年の五月の二十七日、那覇検察審査会が、那覇地方検察庁が行った不起訴処分に対し、仮に運転禁止処分という行政処分が米軍による裁判権行使に該当するとしても、余りにも処分が軽く、不当と言えるのではないか、その意味からも我が国において第一次裁判権を行使すべきであるというような理由の下に起訴相当の議決をし、現在、那覇地方検察庁は、この検察審査会の議決を参考にして捜査中であるというふうに承知しております。

 というような状況の下で、お尋ねの点は、現在、検察当局において捜査中の個別案件にかかわるものであるので、法務大臣としてお答えすることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

井上哲士君

 さらに、これは半世紀以上こういうことが起きていたと思うんですね。そのことについて見解が出ないというのはどういうことかと思うんですね。

 これまで、米軍属で、公務中という理由で日本が裁判権を行使しなかったという事件は何件あるんでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 米軍属による公務中の犯罪に関して検察当局が第一次裁判権なしを理由として不起訴処分にした件数については、平成二十年が十九件、平成二十一年が十六件、平成二十二年が十七件であるというふうに報告を受けておりますけれども、この中身を見ますと、自動車運転過失傷害、あるいは自動車運転過失致死、道路交通法違反といったような事案となっているところでございます。

井上哲士君

 合衆国の連邦裁判所は、平時に軍属を軍法会議に付することは憲法違反だという判決を実は一九六〇年に出しているんですね。私、調べてみますと、駐留軍関係法規に関するハンドブックというのが出されております。その中で、アメリカの第七陸軍司令部の外国法部副部長という人が解説している。つまり、米軍の法規対策の方が解説しているんですが、連邦裁判所は平時における米国人家族及び軍属に対する米軍の軍事裁判権を事実上排除したと、こう書いているんです。

 ということは、軍属の場合、公務中だからといって日本が不起訴にしたら、アメリカの軍法会議にはかけられないんです、誰からも裁かれないんです。だから、この今あった三年間の五十二件について言えば、誰からも裁かれていないことになっていると思うんですね。これ、大臣、不合理だと思われませんか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 今御指摘のあったアメリカ合衆国連邦裁判所の判決というのは我々も承知しているところでございますが、その後、アメリカにおいても平時における軍属の起こした犯罪について国内法で裁くという法律も制定されているというような、いろいろな経緯もございまして、その経緯の結果として、先ほど私が申し上げたような取扱いになっているところでございます。

 ただ、本件については、重ねて申し上げますけれども、現在捜査中という状況になっておりますので、私の方からはどのような取扱いになるべきなのかについてコメントすることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

井上哲士君

 では、先ほど挙げられた公務中という理由で日本で不起訴になった軍属がアメリカでどのように処罰がされているのか、それ資料で出していただきたいと思いますが、いかがですか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 その資料がどうなっているのかということについて、私も情報を持ち合わせておりませんので、ちょっと部内で検討をさせていただいて、どういう対応ができるかどうか考えさせていただきたいと思います。

井上哲士君

 日本の裁判権にかかわる問題ですから、きちっと資料を出していただきたいと思うんです。

 それで、これは外務省にも通告していませんが、お聞きしますが、先ほど紹介したこのアメリカのハンドブックは更にこういうふうに書いているんです。米国人家族又は軍属が接受国の法に違反する犯罪を犯した場合には、実質的に接受国がそれらの者に対する専属的裁判権を持つと、こうしているんです。これは二〇〇一年に作られた、米軍が実際に、中で担当者が書いているハンドブックですね。

 ですから、これは日本が専属的に本来裁判権を持つということをアメリカ自身も言っているんですよ。これはもう日米地位協定と全く食い違っているわけですから、これはアメリカが言っているとおり、軍属の場合は公務中であっても日本が専属的に裁判権を行使するように私は地位協定を改めるべきだと思いますけれども、これは今まで余り議論になっていなかったことでありますが、是非外務省も、民主党政権は地位協定の改定を提起するということをマニフェストにも書いているわけですから、その中にきちっと入れて提起をするということでしていただきたいと思いますが、法務大臣、外務省、それぞれいかがでしょうか。

委員長(西田実仁君)

 どちらから。

井上哲士君

 法務大臣。

法務大臣(平岡秀夫君)

 日米地位協定の問題については、外交当局とよく相談しながら対応を考えてまいりたいと思います。

外務大臣政務官(加藤敏幸君)

 お答えをいたします。

 日米地位協定につきましては、今後とも日米同盟を更に深化させるよう努めていく中で、普天間飛行場移設問題など他の喫緊の課題の進展を踏まえつつ、その対応について検討していく考えでございます。

井上哲士君

 これ、現に今も、例えば一年間で十数人、さっきありましたように、公務中だということで軍属が不起訴になっているんです。そして、那覇ではさっき紹介したような事件が起きているわけですね。

 これまでよくアメリカ側と意見の違いがあって、それで調整が大変だということを言われていますけれども、これは、アメリカ自身の法律のハンドブックでこういう場合軍属は接受国が専属的な裁判権を持つというふうに書いているわけですから、向こうが言っているようにするということなんです。これが提起できなかったらどうやって地位協定改定するんですか。もうちょっときちっとした答弁を法務大臣はしていただきたいと思いますが、いかがですか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 いずれにしても、現在捜査中の問題も絡んでいますので、私からは個別にどうするかということについてはコメントはいたしませんけれども、地位協定の改定の問題については政府全体の問題でもありますので、外務当局と相談しながら対応を考えてまいりたいというふうに思います。

井上哲士君

 私は個別の事件について申し上げているんではなくて、現にアメリカの連邦裁判所の判決やそしてハンドブックがこういうことを書いているという下で日本の裁判権が極めて侵されているということがあるわけですから、これは本当にきちっと解決をしていただきたいということで、法務大臣そして外務省、きちっとやっていただきたいと繰り返し申し上げておきます。

 次に、八月の二十六日に、一九五三年の日米行政協定改定の際の議事録と資料が公開をされました。これは、在日米軍の関係者の犯罪行為について法務省の刑事局の津田総務課長が、日本にとって著しく重要な事件以外は第一次裁判権を行使しないという旨を述べた議事録であります。

 これは二〇〇八年にアメリカの公文書館で発見をされて、公開がずっと求められてきたけれども、自民党政権時代は、それはないということで存在そのものを否定をしてきたものであります。私、昨年の外交防衛委員会で求めますと、当時の岡田外務大臣が地位協定に関するものは優先的に公開をしたいと、こういう答弁があって今回の公開になったわけですね。従来は存在を否定していたものが今回公開に至った経緯について、まず外務省からお願いいたします。

外務大臣政務官(加藤敏幸君)

 井上議員御指摘のいわゆる資料につきましては、本年八月、外務省といたしまして、一九五三年に行われました日米行政協定第十七条の改正交渉にかかわる記録を公表いたしました。御指摘の一九五三年十月二十八日の合同委員会裁判権小委員会刑事部会での日本側代表の発言の記録は、外務省が保管していた過去のファイルには含まれていなかったということでございます。しかし、本件ファイルの公表に際しての米側との種々のやり取りの中で米側から当該記録の写しの提供がございましたので、今般、併せて公表することにしたという経緯でございます。

井上哲士君

 自民党政権時代は、これ以外でも、私たち、例えば核密約などでアメリカ側で公表された文書を示して質問をしても、それはアメリカがやっていることで私たちは知りませんということで、アメリカに調査すらしないという対応でありました。今回は、日本にはなかったけれどもアメリカ側にあったというものを提供を受けたということでありますが、これは日本政府として公式に存在を認めたと、こういうことで確認してよろしいですか。

外務大臣政務官(加藤敏幸君)

 これは、もう先生御承知だと思いますけれども、公表されたかかる文書につきましては、一部のみ米国が保管するということで米国にあり、我が国にはコピーも写しもなかったというのは事実であります。したがいまして、求められても外務省としてはないということは、これはもうまさにそのとおりでございましたけれども、今般、米国側から写しをいただいたということで併せて公表をしたということでございますので、それは公表したという事実をもって、私は、まさにないものは公表しないわけですから、そういうふうなことで認識をしております。

井上哲士君

 これ以外にも、アメリカでは公開されているのに日本政府が認めていないものがあります。一層きちっと調査し、公表していただきたいと思います。

 この発表に当たって、前日の日米合同委員会で、この議事録は確かだけれども日米間に合意はなかったということを確認したというふうに言われているんですね。しかし、公開された文書全体を見ますと、そういう説明は成り立たないということは私は明らかだと思うんですね。

 お手元に、資料から幾つかピックアップして並べてみました。この一九五三年の日米行政協定の改定というのは、それまで日本における在日米軍関係者の裁判権は全てアメリカが持っていたのに、それはちょっと余りひどいという声が広がる中で、公務外については日本に第一次裁判権を移すという、こういう改定でありました。しかし、協定自身はそうするけれども、実際には日本は第一次裁判権はもう重要なもの以外は行使しないと、こういうことを約束しようじゃないかということがアメリカから言われて、それをめぐっていろんな交渉をしていたというのが非公式会談、今回出てきた記録なわけですね。

 日本の第一次裁判権の行使の程度をどういうふうにするかということを日米間で非公式交渉をして、八月二十五日に、日本がその裁判権の実際的運用方針を一方的に陳述すると、これなら法務省もオーケーするんじゃないかということを日本側が言ったら、アメリカ側は、形式は重きを置いていない、実質を確保せよと言われていると、こういうことを言って話が付いて、九月の十日に、日本は日本にとって実質的に重要と認める以外の事件については通常第一次裁判権を行使するつもりはないと一方的声明を出す形にして、それを部外秘とするということでアメリカ側と合意をします。そして、十月七日にそれと同じ中身の通達が法務省から検事長、検事正あてに出されて、この通達もずっと秘密にされてきました。そして、この中身に基づいて、十月二十八日に当時の津田総務課長が声明をして、署名をし、この議事録自身もずっと秘密にしてきたというのが経過なんですね。

 ですから、これ見ますと、行政協定の改定はこれはもう国民の前に明らかになりますけれども、改定はするけれども実際は日本は重要なもの以外は行使しませんということを約束をして、それをまるで合意でないかのように装って国民に隠してきたという経過ですよね。まさに、実際にはそういうことでやられてきた密約ではないんですか。

 まず、外務省、いかがですか。

外務大臣政務官(加藤敏幸君)

 御指摘の文書並びにやり取りの中で、日本側代表の発言は起訴、不起訴についての日本側の運用方針を説明したにとどまるものであり、日米両政府間で先生御指摘の合意の上に行ったということではないということでございまして、この点につきましては、先生御承知のとおり、八月二十五日の日米合同委員会の中でも確認をし、両国政府の一致した理解となっていると。またこの経過につきましても、その合同委員会でのやり取りについてもお話をさせていただいているということでございます。

井上哲士君

 私は今の経過、先ほど説明しましたけれども、これを見れば、国民の常識から見ればやっぱり密約だったんじゃないかと、こういうことを思うと思うんですが、法務大臣、いかがですか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 これについては、中身の問題にも関係するんではなかろうかというふうに思います。これは、文章を借りて読みますと、実質的に重要であると日本が認める以外の事件についてはというくだりでありますけれども、ここは日本側において起訴を必要とする程度に重要であるとは認められない事件を指しているわけですけれども、これについては、日本人に対して起訴猶予の処分を相当とするような事件と実質的には同一であるという理解に立っておりまして、そういう意味で、日米間において米軍人等に対する刑事裁判権の行使に関して何らかの約束とかあるいは密約があったというようなこととしては認識をしておらないところでございます。

井上哲士君

 交渉の経過の中で、形式は重きを置かない、実質を確保しろというふうに言っているんですね。ですから、結局アメリカが協定上は裁判権を、公務外を移すけれども、実際上は多くは従来どおりという、そういう実質を確保するということで話をしたということはこの経過を見れば明らかだと思うんですね。

 今、実際に重要なもの以外は起訴されていないというふうな、日本が起訴するというふうなお話がありましたけれども、例えば強姦とか強制わいせつ、傷害などの重要事項についてはいまだに非常に起訴率が低いということがいろいろ指摘をされております。

 例えば、大臣の地元の、在日米軍の岩国基地の海兵隊四人が広島市で十九歳の女性を集団強姦した二〇〇七年の事件もこれ不起訴になりました。この事件はアメリカの軍法会議で有罪判決が出ているんですね。なぜこんな事件が日本で裁かれないのかということが大変大きな問題になりましたし、大臣もこの事件の直後に、なぜこの米兵四人の身柄を拘束して取調べを行わなかったのかと、これでは非常に国策非捜査だと、こういう批判をして、地位協定を改定しなければアメリカの属国みたいな扱いだと、こういうことまで言われているわけですね。

 ですから、こういう重要な事件が先ほど言ったような取扱いの中で日本で起訴もされないということが現に起きていると。これはやっぱりこの密約が土台にあってこういうことになっている。これはやっぱり改善すべきじゃないでしょうか。

法務大臣(平岡秀夫君)

 今、井上委員から岩国基地の米軍人による強姦事件ということで御指摘がございました。この事件も、新聞報道等によって得た情報に基づいて私も委員が御指摘になったような質問をさせていただいた記憶がございます。

 ただ、その後のこの推移を見てみますと、事実関係として言えば、日本側は嫌疑不十分ということでの不起訴処分であったと。米側の処分状況も、これは強姦については無罪とか訴追取下げというようなことにもなっているようでございまして、個々の事実関係に基づいてどう判断するのかというのは、なかなかちょっと私が今ここで言うべきことではないのかなというふうに思います。

 いずれにしても、先ほど私が申し上げましたように、日本にとって実質的に重要と日本が認める事件については通常第一次裁判権を行使するということに反対解釈としてなろうかというふうに思いますので、それを前提として今後の在り方については考えていくべきではないかというふうに思っております。

井上哲士君

 時間ですから終わりますが、私は、この事件でいいますと、日本が不起訴になりましたから、被害女性は米軍の軍法会議でもう涙ながらに証言したんですね。強姦事件の場合はよほど配慮しなければ裁判での証言が二次被害を及ぼすわけで、軍法会議でこの証言をするというのはどんな女性は思いだったかということを思うわけで、こういうやはり重要な事件が現実に日本で不起訴になっているということは、これは厳然たる事実でありますから、私は、こういう土台にある密約であるとか、それに基づくような通達というものをこれは見直して、本当に国民の命、安全が守られると、米兵の事件というものがきちっと日本で裁かれると、こういうことに地位協定の改定も含めて取り組むべきだということを改めて強く求めまして、質問を終わりたいと思います。

委員長(西田実仁君)

 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。

  午後四時四十五分散会


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