国会質問議事録

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外交防衛委員会(女性差別撤廃条約選択議定書未批准問題①)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 三月八日は国際女性デーでありました。国連は、今年の女性デーを、ジェンダー平等達成、全ての女性と少女に人権を保障する世界的な運動を起こす好機だ、要の年だと呼びかけております。日本は、一九八五年に女性差別撤廃条約を批准して三十五年ということで、今年はジェンダー平等へ重要な節目の年であります。
 そこで、まず外務大臣にお聞きしますが、この女性差別撤廃条約の批准の際の参議院の外務委員会で、当時の安倍晋太郎外務大臣は、条約について画期的とした上で、日本もこれに加入することによって条約の趣旨を生かして、今後まだ日本に残っている問題を解決し、条約の趣旨が完全に履行されるよう努力していかなければならないと述べておられますけれども、当然この立場には変わりありませんね。

○外務大臣(茂木敏充君) もちろん、変わりございません。
 政府として、女子差別撤廃条約の完全な履行を通じて、ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントにつき、積極的に努力をしてまいりたいと考えております。

○井上哲士君 変わりはないという答弁でありました。
 ところが、資料一を見ていただきたいんですけれども、昨年十二月に発表されました世界経済フォーラムのグローバルジェンダーギャップ指数、これ日本は百五十三か国中百二十一位となっております。【配付資料200318①.pdf】前年から十一位下がって、公表が始まった二〇〇六年の百十五か国中八十位から大きく後退をしております。これ、なぜ下がっていると認識をされているか、どう解決をしようとされているでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 所管ではありませんが、御指名いただきましたので、お答えできる範囲でお答えさせていただきたいと思いますが、日本のジェンダーギャップ指数につきましては、とりわけ経済分野、そして政治分野において改善すべき点があるとの指摘を受けているところであります。
 このような現状を踏まえますと、政治分野、経済分野を含みます、様々な分野で女性の参画を一層促進していくための取組をしていく必要がある。恐らく企業においても、例えば幹部社員に女性を登用する、外部から任用する、こういったことを進めるためにも、まずは、何というか、女性社員の比率を増やしたり、こういった土台の部分をつくっていくということが極めて私は重要ではないかな。そういった中で、男性と女性、違っている部分もあるわけでありますから、そういった中で、女性の活躍が阻害されるような要因をそれぞれの組織において取り払っていく努力をしていく必要があると思っております。
 そして、外務省に若干関連することで申し上げますと、国際機関におけます日本人の幹部職員、これ、女性が四六・六%占めているわけであります。ただ、絶対数が御案内のとおり今少ないわけでありまして、外務省としては、国際機関の邦人職員、特に幹部職員の増加を図るべく取り組んでおりますが、恐らくキャリアパスというのをもう少し考えて、若いうちに国際機関に一回出して、また日本に戻ってきてそれなりのポストに就いて更に高位の職で就くと、こういったキャリアパス等々も確立する、こういったことも含め、女性がグローバルに活躍できるようしっかりと支援を行っていきたいと思っております。

○井上哲士君 政府が様々な努力していることを否定するつもりはありませんが、問題はなぜ下がっているのかということなんですね。
 ちょっと追加して外務大臣にお聞きしますけど、表にありますように、ジェンダーギャップ指数は経済参画、教育の到達度、健康と生存率、そして政治参画、四つの分野から総合しております。これ、どれ見ましても日本の指数は停滞したままなんです。その中で、他国が指数をどんどん改善する中で日本の順位が落ちていっているわけですね。特に遅れているのが経済参画の百十五位と政治参画の百四十四位であります。安倍総理は、二〇一四年、この指標を発表している世界経済フォーラムの会議で、二〇二〇年までに指導的地位にいる人の三割を女性にしますと演説しましたけれども、いまだ程遠いわけですね。一番遅れているのが政治参画の分野です。
 資料二に、国会議員の女性比率を比較しておりますけれども、これは下院又は一院の女性議員の割合です。【配付資料200318②.pdf】一番下で低迷しているのが日本で、一九七〇年代はヨーロッパの国々も現在の日本と余り変わらないんですね。ところが、その後、大きな差が出ております。日本は、七〇年は一・六%。最近、多少伸びていますけれども、一六年で九・三%。参院を含めても現在一四・三パーです。一方、各国は女性差別撤廃条約の発効後、特に九〇年代から急速に増えて、七〇年と一六年で比べますと、フランスは一・七パーから二六・二パー、イギリスは四・一パーから二九・六%へと増えております。これは一例でありまして、表にありますように、どの分野でも指数が後退する、停滞する中で、日本が、各国にどんどん抜かれて順位を落としているんですね。
 ですから、撤廃条約採択後のジェンダーギャップ克服の世界の大きな進化と比べて、日本の進化が遅々としていると。これが順位が下がっている理由だと私は思いますけれども、大臣はそういう認識おありでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 基本的な部分で井上委員の指摘、私も共有させていただきます。

○井上哲士君 なぜ他国がこの取組を加速をさせていたのかと。その一つが、個人通報制度を内容とする選択議定書の採択なんですね。これは、女性差別撤廃条約の実効性を強化して一人一人の女性が抱える問題を解決するために、一九九九年に改めて採択をされました。
 資料三を見ていただきますと、現在、条約の締約国百八十九か国のうち、選択議定書の批准国は百十三か国に増えております。【配付資料200318③.pdf】自由権規約など八つの条約やその選択議定書に個人通報制度がありますけれども、批准国が百超えているのは自由権規約と女性差別撤廃条約だけなんですね。しかも、自由権規約は三十年掛かりましたけど、女性差別撤廃条約は十年で百を超しました。そういう批准国が急速に増える一方で、未批准のままの日本がジェンダーギャップ指数を逆にどんどん落としているというのがこのグラフなわけでありますね。
 この個人通報制度は、通報した個々の女性の人権を守るだけではなくて、やっぱり行政や国会、司法など、これ、ジェンダー平等の国際水準を生かしていくという役割を果たしている。これがてこになって大きく進化している。この流れに私は日本は加われていないと思うんです。
 国連女性差別撤廃委員会の個人通報作業部会長のパトリシア・シュルツさんが二〇一八年に来日されました。そのときに、選択議定書の批准によって日本はこの数十年の間に見られた人権に関する重要な進化に加わることになると述べられました。逆に言えば、日本は未批准の中でこういう世界の重要な変化に加われていないということだと思うんですね。
 私は、このジェンダーギャップ指数が今や百二十一位にまでなっていることを見れば、日本がこの世界の進化に加わる上で選択議定書の批准が必要だと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 選択議定書では、個人通報制度、これが規定をされておりまして、この制度は、委員おっしゃるように、条約の実施の効果的な担保を図る、こういう大きな趣旨から注目すべき制度と考えております。
 また、この加入に当たっては、委員もよく御案内だと思いますが、女子撤廃差別条約に基づき設置をされております女子差別撤廃委員会からの個人通報制度に基づきます通報に関して、例えば、国内の確定判決とは異なる内容の見解であったり、通報者に対する被害賠償や補償を要請する見解、そして法改正を求める見解等が出された場合に、我が国の司法制度であったり立法制度との関係でどのように対応するか等の検討すべき論点があるのは事実でありまして、このため、個人通報制度の受入れの是非について、各方面から寄せられている意見等も踏まえて、関係省庁と連携をして真剣に今検討しているところであります。
 早期締結に向けて真剣に検討を進めていると、こういう考えに変わりはございません。

○井上哲士君 真剣に検討していると、締結に向けてと、こうおっしゃいました。ただ、これ、ずうっと検討が続いているんですね。注目するという答弁が出て、もう二十八年になるわけであります。
 その中でも、この閣議決定された男女共同参画基本計画、第三次からこの選択議定書の早期締結について真剣に検討を進めるという文言が盛り込まれ、四次にも明記をされています。現在、第五次に向けて基本計画の策定専門調査会が行われておりますが、ここでこの閣議決定と反するような外務省の対応が問題となっております。
 資料四を見ていただきますと、これ、昨年十一月の第一回調査会の議事録でありますけれども、この会議の資料として外務省が配付した個票の中に、この早期締結について真剣に検討を進めるという文言から早期という文言を削除すべきと、こういうふうに書いてあるわけですね。【配付資料200318④.pdf
 これについて、質問に答えた外務省が、この下線を引いた部分にありますように、政府として真剣に検討を進めているところというのが政府の立場ですので、早期締結に向けてというふうに書くのは、外務省としては厳しいのではないだろうかということで個票に記載をさせていただいておりますと。これが、早期を外した方がいいというのが今の外務省の現状認識でございますと、こういう発言をされまして、これはもう重大な後退だということで各方面から驚き、批判する声が上がっておりますけれども、なぜこういう外すと、こういう資料を出されたのか、どういう現状認識なのか、いかがでしょうか。

○外務省 大臣官房参事官(赤堀毅君) お答えいたします。
 第五次男女共同参画基本計画の検討過程の中で、女子差別撤廃条約選択議定書における個人通報制度の受入れには検討すべき論点があるとの現状に照らしまして、いかなる書きぶりが適当かとの観点から、外務省といたしまして、早期という文言を削除すべきという意見を提出したことは御指摘のとおりでございます。
 他方、政府としまして、早期締結について真剣に検討を進めるとの立場はこれまでと変わっておりません。早期の文言を削除することで政府の取組が後退したとの印象を与えることは本意ではないことから、現在は、外務省といたしましても、同基本計画において早期の文言を維持すべきとの意見を改めて提出いたしたところでございます。

○井上哲士君 政府の立場は変わりないというのは外務大臣にも確認したいんですが、同時に、長い間検討を続けている実態とこの早期という文言が実態に合わないというのであれば、この早期を削るんじゃなくて、検討を加速化させるのが私、当然だと思うんですよ。そのことも含めて、外務大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 実際にこの検討のプロセスでありますが、早期という文言を削るのよりも検討を加速すると、それが正しい方法だと思います。

○井上哲士君 是非進めていただきたいと思うんですが、その際に、今後も第五次計画にも早期締結について真剣に検討を進めるということがですから残るんだと思いますが、ここで検討を進めるというのは、受け入れるかどうかではなくて、早期締結に向けて受け入れるために解決すべき課題は何かということを検討すると、こういうことでよろしいでしょうか。大臣、お願いします。

○国務大臣(茂木敏充君) 若干補足がありましたら事務方からも補足をさせていただければと思いますが、おっしゃるように、早期に締結するために、障害になっている、また課題になっているものを早期に解決するということであります。ただ、その問題が例えば国内法制に関わったりするときに、それがすぐにできるかどうかというのはちょっと外務省独自では判断できませんので、そこは関係省庁等と鋭意協議をさせていただきたいと思います。

○井上哲士君 それぞれの分野でどういう問題があるのかということについてはまた別の機会に質問したいと思っているわけでありますけれども、このあらゆる女性差別をなくしていくためにも条約の誠実な遵守が必要でありますし、それを進めるのがこの選択議定書でありますから、検討を加速させて一刻も早く批准ができるように求めたいと思います。
 以上、終わります。

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