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書評:『聞こえますか 命の叫び 戦没学生永田和生の「軍隊日記」』 児玉健次 編著


 永田和夫は、京大学生時代に治安維持法違反で検挙・起訴され、卒業後、陸軍に入隊し、二十八歳の時にインパールで戦病死した。『きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記』に掲載された永田の「軍隊日誌」に心惹かれた元衆議院議員の児玉健次氏が、その足跡をたどり、生い立ちや大学での活動、未発表の軍隊日誌、関係者の思い出等をまとめたのが本書である。

 日本が戦時体制になだれをうつ頃、京大生だった永田たちは、非合法の読書会活動を力にして、京大学友会の戦時体制化に内部から抵抗し、軍国主義と戦おうとしたが、弾圧を受ける。永田は、執行猶予で出所した後に入隊し、日本を離れる時、京都で活動を共にした友人への手紙にこう書いた。「僕は考える。世界戦争の激しい展開の中を力強く、自己を貫徹してゆく法則を」―歴史の法則への揺るぎない確信と展望がそこにある。

 中学生のときにこの手紙を知り、その後京都で学んだ永田の姪、岡田三抄さんの詩で本書は締めくくられている。

 「…もだえ聞こえるわだつみの あなたの怒り その思い 私は生きて今ここに あなたの命さけびます」

 危険な内閣が誕生した今、若い皆さん永田の命の叫びを伝えたい。

 奇しくも児玉氏は、私の母校、広島国泰寺高校の前身である広島一中の出身であり、永田は京大の先輩である。二人の大先輩に心からの敬意を捧げ、奮闘したい。

(「京都民報」2006年10月1日付)


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