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2002 年 11 月 5 日

法務委員会
司法制度改革で参考人質疑

  • 検討会の情報公開の拡大や、裁判員制度の検討にあたって国民の声を広く聞くことの必要性について参考人にただす。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。

 まず、佐藤参考人にお尋ねをいたします。

 最近の雑誌で、司法改革の魂を忘れるなという対談に出ていらっしゃるのをお読みをいたしました。その中で、司法審が比較的地味なテーマにもかかわらずあそこまでたどり着けたのは、徹底的な情報公開をして国民に関心を持っていただき後押しをしてもらったからだと、こう述べられておりまして、私も大変同感なわけですが、現状では、先ほど来問題になっている例えば裁判員制度の検討会は、議事録、議事概要の公開というのはリアルタイムにはちょっとほど遠いものになっておりまして、六月十一日の検討会の議事録が二か月以上遅れて八月二十日に公開をされたということもありますし、いわゆる発言者名を伏せているということになっております。発言者名を伏せますと、例えばこの裁判員制度の検討会でいいますと、裁判員の人数を少なくしようという発言をたくさんの人がされているのか、それとも一人の人が何回もされているのか、なかなか議論の全容が分からないというような声が随分出されております。

 最高裁の一般規則制定諮問委員会ですら顕名公開ということになっている下で、一層の情報公開を進めることが必要ではないかと思うんですが、現状についての御認識と御意見はいかがでしょうか。

参考人(佐藤幸治君)

 御指摘のように、あの審議会、司法制度改革審議会の場合には、最初から顕名で議事録をできるだけ速やかに公開すると。同時に、しかし一般の国民に傍聴できるようにという意見も当初からございましたが、そのとき私は、言わばセンス・オブ・ミーティングといいますか、お互いに気心が分かってその段階で御相談しましょうということで、半年後、マスコミの皆さんでございましたけれども、すべてリアルタイムでごらんいただくという手法を取りました。そういう手法を取ったことが、今、先生御指摘のように、審議会がいろんな激しい意見の対立がある中で最終的には全員一致の合意にたどり着けた一番の大きな理由だったと私は今もそう確信しております。

 今の検討会の状況ですが、様々な立場の方がおられて、顕名にすることについてはいささかちゅうちょされるということもあったんではないかと思いますけれども、現状では検討会、十一ございまして、この間の十月にできた知財の関係の検討会は公開に顕名でもう出すということになっております。今、五つの方がまだ顕名になっておりませんけれども、聞くところによりますと、いずれ顕名でもいいんではないかという方向でお考えいただけるんではないかという感触を得ております。

井上哲士君

 一層の公開を期待をしたいと思います。

 次に、若林参考人にお伺いをするんですが、国民的関心を高めるという点でこういう情報公開とともにマスコミのいろんな報道というのは大きかったと思うんです。先ほど来、少し熱意が薄れて、熱気ですか、が薄れているんではないかという御議論があるわけですが、その点でジャーナリストのお立場として今もっと報道が後押しをするべきではないかと私など思うんですが、その点いかがでありましょうか。

参考人(若林誠一君)

 私自身に突き付けられた質問というような感じが実はしています。

 確かに、今の報道がなかなかこの問題を取り上げていないというのは事実でありまして、それが国民的な関心を、あるいは議論を起こしてこない一つのというか最大の理由かもしれません。なかなか、議論の過程を報道するという場合に、報道しにくいというか、なかなか興味を持ってもらえないということから、取り上げにくいということはあるというのは事実だろうと思うんですね。これからは節目がだんだん出てまいりますので、徐々にその報道の量も増えてくるでしょうし、議論もまた活発になっていくんではないかと思います。

 やはり、最終的にはこの姿がある程度見えてきたときには、恐らく相当程度関心を持たれることは私は間違いないというふうに思っているんですね。今はまだちょっとそこまで行っていないということではないかと思います。

 そして、この制度がいよいよ本当に動き出すということになりますと、その時代をちょっと想定しますと、多分、テレビの番組なんかで裁判員になったことを前提としたような裁判の番組なんて一杯出てくるんじゃないかというような気がしますし、裁判員の裁判になりますと法廷が活性化しますから法廷ドラマも一杯出てくるんじゃないか。今の日本の裁判はあれ、ドラマになりませんので、面白くも何ともないから。しかし、本当に法廷でやり取りが、生き生きとしたやり取りが行われるようになればドラマも一杯作られるという、そういうことがお互いに相乗効果として関心を高めていくのかなという感じがしています。

井上哲士君

 是非、制度設計の段階でのこの関心を高めるという点で、是非お力をお願いをしたいと思います。

 次に、裁判員制度について佐藤参考人と四宮参考人にお伺いをいたします。

 検討状況を聞いておりますと、来春からいわゆる第二クールの議論に入って、四月ぐらいから法案化作業に入っていくというようなことをお聞きをいたしました。ヒアリングは一度行われたようでありますが、その対象は法曹三者と警察、経済界、労働界、被害者関係の有識者ということになっておりまして、必ずしも一般市民の声を広く聞いたとは言い難いんではないかと私は思うんです。今のところ、二度目のヒアリングは予定もされていないようですし、市民団体などが求めている地方公聴会なども予定をされていないとお聞きをしているんです。

 ただ、審議会意見書は、この制度が機能するためには、国民の積極的な支持と協力が必要になるので、制度設計の段階から、国民に対して十分な情報を提供し、その意見に十分耳を傾ける必要があると、こう言っているわけですね。といいますと、今のやはり現状というのは少しこの意見書が示した方向からは私は懸け離れているんではないかなと思いまして、せっかくできた制度が十分に機能していくんだろうかという危惧も感じております。

 その点で、現状とこうすべきだという点でそれぞれに御意見を伺いたいと思います。

参考人(佐藤幸治君)

 御指摘のように、あの意見書の百二ページ、百三ページにおいて制度設計の段階、それから実施するに当たって、それから実施後もこの国民の強い関心と参加の下でこれをやっていかなければいけないということを強調しているところです。

 率直に申しまして、今の検討会は、今までの検討会は、今回、三本法案が掛かっておりますけれども、まず法科大学院、養成の方に、まず法曹養成検討会ですね、そこのところに非常に力点があって、そこで重点的に行われて今回、三法案ができたわけですが、提出されたわけですけれども、これからいよいよ国民参加のこの問題が非常に重要な課題として登場してくる。そして、それによってまた国民の関心を司法制度改革に持っていただく、そういう重要なきっかけになると思っております。

 ですから、今のヒアリングのやり方なども含めまして、顧問会議としても国民の様々な意見が十分反映されるように、関心を引き付けるように、そういうやり方でやっていただきたいということを、これから顧問会議としても検討会に、あるいは推進本部に注文していきたいというように考えております。

参考人(四宮啓君)

 井上先生御指摘のとおりで、私も、先ほど申し上げましたように、国民の声を具体的にどのように確実に反映させていくかということは非常に重要だと思います。ヒアリング、この間行われまして、その意味では参加する国民の側としますと、経済界の代表の方と労働組合の代表の方ということになってしまうのかもしれません。その意味で、私個人としては多くの国民の声を今後とも吸収することを検討会としても努力していってほしいと思います。

 本当は公聴会も司法制度改革審議会のときには全国四か所で大変実りある公聴会をなさったわけで、特に、国民が直接参加をし、ある意味では国民が直接義務を負う制度については、直接国民の声を聞く機会をなるべく多く設けることが私も望ましいと思います。弁護士会が全国八か所でこの問題に関する民間の公聴会をいたしましたけれども、その中でもやはりいろいろな希望が具体的に出てきております。なるべくならばそういった機会をこれからも、また今度年が改まりますと具体的な制度設計の議論が始まりますので、一層の民意の反映ということを心掛けていきたいというふうに思います。

井上哲士君

 佐藤参考人にお聞きいたしますが、先ほどの「論座」の中でも、裁判官の増員とか法科大学院の発展のためにも一番大事なのは財政的な裏付けだというふうに述べられております。本委員会でも附帯決議も付けて強調したことでありますけれども、例えば法科大学院などに本当に経済的事情の悪い方でも進むことができるんだろうかとか、それからその後に、司法修習生の給費制すら維持するのかどうかという検討の声も上がっている状況がありますけれども、本当に今一番大事なと指摘をされた今の財政的な裏付けという点で、先ほど四宮参考人からも御意見ありましたけれども、現状をどうお考えで、どの程度の更に裏付けが必要かと。この辺いかがでしょうか。

参考人(佐藤幸治君)

 学費とかもろもろの点について、今の若いといいますか、これからロースクールへ入ろうとする人たちが非常に強い関心を持っているということはいろんなところで感じております。

 幸い、今回のこの法案の中で、養成について必要な、法科大学院の関連ですが、必要な法令上及び財政上の措置を講ずるとありますが、そういう文言が入っておりますので私自身は非常に勇気付けられている次第です。これは、いずれこれから裁判官の増員だとか検察官の増員だとかいろいろなものに関係してくる事柄だと思っておりますので、これが一つの重要な取っ掛かりとなって、司法制度改革を進める上についての必要な財政的な措置が講じられていくということを非常に心から期待しております。

 司法修習の給費制の問題につきましては、これはやや、ちょっといろんな考え方がございまして、なおいろいろ考えるべきことがあろうかと思いますけれども、法科大学院の養成、それから裁判官、検察官等のあれにつきましては、是非これから引き続き財政的な問題について先生方に御高配いただきたいというように切に願っている次第です。

井上哲士君

 もう一点、佐藤先生にお聞きをいたします。

 先ほど来、裁判の迅速化の法案のことが議論になっているわけですが、迅速化は重要でありますけれども、裁判官や事務官の増員であるとか法廷自身を増やしていくとか、そういうことの当然、条件整備が前提になろうかと思うんですが、その整備とこの法案との関係というのはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。

参考人(佐藤幸治君)

 一体的に考えております。いずれそういう制度的な基盤が整えられていくということは当然の前提です。七月五日に決めましたペーパーでも書いておりますけれども、長くとも二年以内に判決がなされるように必要な人的それから制度的な基盤について全体的にきちっと考えていくべきであるということを強調しておりますので、それは一体的なものとして私の頭の中にはあります。

井上哲士君

 終わります。


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