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2002 年 11 月 21 日

法務委員会・文教科学委員会連合審査
法科大学院関連法案

  • 弁護士人口の地域偏在の解消のためにもロースクールの適正配置を求める。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、幅広い層から法科大学院の入学を保障するための問題についてお尋ねをいたします。

 幅広い層からの法科大学院への入学の確保は、多様な法曹養成を確保する前提条件と言えると思います。そのためには、働きながら学べる環境整備が不可欠なわけでありますが、いわゆる夜間コースとか通信コースということが言われております。

 法科大学院は標準三年ということになりますが、例えばこういうコースを作った場合の修了年限などはどういうふうになるのか、これ、いかがでしょう。

政府参考人(工藤智規君)

 御指摘のように、社会人の方々で法曹界を志す方なども当然いらっしゃるわけでございますので、法科大学院の制度設計に当たりまして、全日制のフルタイムのコースだけではなくて夜間、あるいは場合によっては、週に半分ぐらいしか授業へ行けないけれども物すごいゆっくり時間掛けて勉強したいという方もいらっしゃるわけでございますので、そういう場合は大学の御判断で、今でも標準修業年限を個別の制度設計で延長したカリキュラムを組む仕組みもございます。したがって、大学の御判断ではございますけれども、ゆっくり学びたいという方に三年よりも長い時間を掛けて授業を提供し、その分、授業料等も幾らか年額で言えば割り引くということもございますけれども、そういう制度設計ももちろんあり得るわけでございます。

 ただ、標準修業年限といいますのはあくまでも三年間で、きっちり一から百まで勉強するとすれば三年掛かるという制度設計でのコースでございまして、既に、御承知のように、その一部について、既修者といいますか、法学部で卒業であると否とを問わず、一定の既修者であると認められた方については一年以内の短縮が認められるということもございますので、お人により、あるいは大学の方針によって若干伸び縮みはあり得るところでございます。

井上哲士君

 今、通常の大学でも四年制の場合、八年掛かるともう駄目ということになっているかと思うんですが、今の夜間コースなどの修了年限などは、いわゆる設置基準の中などには一切定めない、すべて大学の判断に任せると、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。

政府参考人(工藤智規君)

 要は、カリキュラムの設定で、各大学が、夜間といいましても最近は、夕刻から始めて夜まで掛かりますけれども、土、日のようにお休みの日には日中お受けいただくような、昼夜開講といいますか、そういう組合せで工夫していらっしゃる大学もあるわけでございますので、要は、三年間で必要とされる単位あるいは授業をどういう形で組めるのか。夜間だけに集中したときには当然無理が来ますので三年ではできない、もう少し延ばさなきゃいけないということになりましょうけれども、いろいろ工夫することによって三年で卒業させるようなカリキュラム編成も可能は可能でございます。

井上哲士君

 現在、そういう夜間のコースを具体化している大学はあるでしょうか。

政府参考人(工藤智規君)

 法科大学院はこれからでございますので、まだ具体的にどこの大学でそういう御要望があるかというのは承知してございませんが、ほかの分野では学部レベルでも大学院レベルでもございます。

 従前、大分以前はきっちり夜だけという夜学があったんでございますが、その場合は学部レベルでは四年では無理で五年ということが多かったんでございますが、先ほど申しましたように、いろいろな工夫が可能な状況になってまいりまして、夜学でも学部レベルで四年で卒業という学部、大学は実例としてもあるところでございます。

井上哲士君

 現行では働きながら司法試験の勉強をしている人も多数いるわけですから、法科大学院が中核となった場合にそういう人たちが逆に入れないということになったら非常に困るわけですので、是非この夜間コースなどの柔軟な設置が広がりますようにお願いをしたいと思います。

 次に、いわゆる適正配置の問題について両大臣にお聞きをいたします。

 司法制度改革審議会の意見書では、「適正な教育水準の確保を条件として、関係者の自発的創意を基本にしつつ、全国的に適正な配置となるよう配慮すること」と、こう指摘をいたしました。全国的に法科大学院に入学できる条件を整える、この側面と同時に、全国的に司法サービスを保障していく上でも大変重要だと思います。意見書でも、法曹人口の大幅な増加、多様化の重要な要素として、「「法の支配」を全国あまねく実現する前提となる弁護士人口の地域的偏在の是正(いわゆる「ゼロ・ワン地域」の解消)の必要性、」ということを指摘をしております。

 弁護士人口の偏在といった場合に、それは結局、地方には余り弁護士の仕事がないんだという議論をされる方もおりますが、私、最近見させていただいた日弁連の調査を見ますと、大変興味深い結果になっております。

 司法修習の受入れ地と弁護士開業の関連を日弁連が調査をしております。司法試験の合格者が五百人だった時代は都道府県の三分の二しか司法修習を受け入れていないんですね。ところが、千人に今、合格者がなっておりますので、全国すべての都道府県が司法修習を受け入れております。ですから、いわゆる司法過疎と言われるような地域も司法修習を受け入れたわけですが、すると、修習地でなかった十年、それから修習地になって以降の十年を比べますと、非常に大きな変化があります。

 要するに、弁護士開業をどれだけしたのかと。鹿児島では、修習地になる前は十年間で八人、それから後は二十一人なんですね。鹿児島全体の弁護士さんが八十人だそうですから、大変大きな増加をしております。沖縄の場合は、なる前が八人、その後が二十五人、釧路の場合は、前の十年がゼロ、それから後は七人と、非常に顕著な変化になるわけですね。ですから、司法修習地になったことによって、その土地になじんで法曹として出発する人が非常に増えているということがここからも表れていると思います。

 修習は今一年半でありますが、法科大学院で三年間学ぶということは地域の法曹を新しく開業する上で非常に大きな力になると、私はこの数からも思うんですが。法科大学院を適正に配置をする、地方に。このことが弁護士過疎の解消に大きく貢献をすると。

 この点での認識をそれぞれ大臣からお願いしたいと思います。

国務大臣(森山眞弓君)

 弁護士人口の地域偏在を是正するということが大変大切でございまして、まず何よりも法曹人口を大幅に拡大するということが基本的に必要ではないかと思います。

 また、地域に根差した法科大学院が設置されまして、その修了者が当該地域で弁護士等として活動するということが期待されるわけでございますが、司法制度改革推進本部事務局において昨年末実施いたしました調査の結果によりますと、法科大学院の設置を予定あるいは検討している大学院は全国に及んでおりまして、法科大学院の全国的な設置が期待できるかなと思っております。

 もとより、弁護士がどこの地域で開業するかというのは個々の弁護士さんが御自分で選択されることでありますので、どこで開けということをよそから言うわけにはいきませんけれども、しかし弁護士の地域偏在の是正のための取組につきましては、日弁連を始めとする関係機関と協力いたしまして既にいろんな努力がなされておりますが、更に一層努力し、検討していきたいと思っております。

国務大臣(遠山敦子君)

 法科大学院の設置につきまして全国的な適正配置を配慮するようにということは、司法制度改革審議会を始めとしまして、関係機関あるいは関係者からの強い要望であることは私どもも十分認識いたしております。現在、各大学におきましても、北は北海道から南は沖縄まで全国的な広がりの中で構想されているというふうに仄聞いたしております。

 もちろん、一般的に大学が大都市圏へ集中しておりますし、地方においては、今お話ございましたように、法曹人口そのものが少なくて実務家の確保も困難ということから、地方におきます法科大学院の整備といいますものは大都市に比べますと課題が多いことも確かではございます。しかし、我が省といたしましては、それぞれの大学の自主的な構想というものを重視しながら、教育水準の確保ということを前提とした上で、地域の実情を踏まえて望ましい形の適正配置が行われるように、関係機関とも相談しながら多元的な方策を検討していきたいというふうに考えております。

井上哲士君

 地方にはやはり私立大学は余りありませんので、適正配置といった場合には国立大学の役割は非常に大きなものになるかと思います。

 今の御答弁でありますが、そういう適正配置を進めていく上で文部省としてもこういう弁護士過疎の解消ということを視野に入れて進めるんだと、こういうことでよろしいですか。

国務大臣(遠山敦子君)

 私どもといたしましては、むしろ学ぶ機会につきまして全国的な適正配置ということが必要であろうかという角度を中心にしながら、司法制度改革審議会の方で御提言になっておりますことも十分配慮して進めたいという趣旨でございます。

井上哲士君

 内閣挙げてこの司法制度改革を進めているわけでありますから、今御答弁にありましたけれども、このやはり弁護士過疎の解消ということを十分に配慮し、視野に入れた取組が必要だと思います。

 かつて、日本全国に質、量ともに密度の濃い医者をつくろうということで、一県一医大構想というのが掲げられました。その結果、医者の地域的隔たりがどのぐらい解消されたのかということを研究された方がいらっしゃいますが、人口十万人当たりの医師の数を比較しますと、一九七四年には、医大のある県は平均百二十六・四人、医大のない県は十万人当たり九十九・五人で、二十七人の差があったんですね。ところが、一九八一年に一県一医大というのが達成をいたしまして、それから十五年たった九六年時点で比較をいたしますと、七四年時点で医大があった県が九六年では人口十万人当たりの医者が百九十九・六人、それから、なかったところ、その後できたところ、これは人口十万人当たり百八十五・七人、ほとんど差がなくなってきておりまして、やはり地域に根差した医大を作ったということが、そういう医者の地域偏在をなくす点で非常に大きな貢献をしたことが明らかでありますし、卒業生の追跡調査をしても、大体かなりの部分がその県に定着をしたということもなっているわけであります。

 司法制度改革審議会の意見書は、国民の社会生活上の医師としての法曹というのを言っているわけですね。町医者のように相談できる弁護士が地域にいるということを考えますと、かつてそういう密度の濃い医師をつくろうということで取り組まれたような形でのやはり適正配置ということが非常に求められると思います。

 大学の自主性というのは尊重されなければなりませんが、私どもが仄聞しますと、どうも地方の国立大学などで計画があっても文部省の方がブレーキを掛けているようなこともお聞きをすることもあるわけであります。同時に、地方はいろんな教育の確保や情報不足などの困難があるわけでありまして、大いに文部省が、ブレーキを掛けないのはもちろん、必要な援助もしていかなくちゃいけないと思います。その点で大臣の御所見を聞いて、質問を終わります。

国務大臣(遠山敦子君)

 適正配置についての考え方は先ほど来申しているところでございますし、法科大学院の設置にかかわります様々な条件整備については、私どもとしては本当に多元的な方途でこれについて努力をしていかなくてはならないと考えております。


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