本文へジャンプ
井上哲士ONLINE
日本共産党 中央委員会へのリンク
2005年3月18日(金)

法務委員会
「予算委嘱審査」

  • 犯罪や非行をした人が地域社会で立ち直ることを助ける更生保護事業の予算と体制の抜本的な強化を要求。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は、これまでの議論の中でそれぞれ更生保護の問題について触れられました。私もこの問題を今日は質問をしたいと思っております。

 平成十六年度の犯罪白書を見ますと、そのタイトルは「犯罪者の処遇」ということになっております。私の部屋にあります犯罪白書全部見ますと、まあ平成八年以降しかないんですが、こういうタイトルが付いたことはなかったんですね。で、この三年間を見ますと、「増加する犯罪と犯罪者」、「暴力的色彩の強い犯罪の現状と動向」、「変貌する凶悪犯罪とその対策」と、こうでありました。それがこの十六年版でこの犯罪者の処遇ということを重視をしたというその理由、そしてこの中で矯正処遇や更生保護の重要性というのをどのように認識をされているのか、まず大臣からお伺いしたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 先生にそのようにおっしゃっていただけると、大変うれしく思っておりますし、作業した者もやりがいがあったなと、次何にしようかということで、また先生の御指導をいただきたいというふうにも思うかなと思っております。

 近年、犯罪情勢が本当に急激に悪化いたしており、市民が安心して暮らすことのできる安全な社会をどのようにして取り戻すかということが極めて重要な課題となっております。罪を犯した人もいずれは私たちの社会の一員として立ち直っていただくことができる、それが必要であろうと、これは治安の回復を図る上でも重要なことであろうかと思っております。

 このように、犯罪者を検挙して処罰するだけではなく、犯罪者の改善更生、社会復帰を目指した処遇を行う矯正及び保護は刑事政策上重要な役割を担っていると認識いたしております。そういう意味では、刑務所の中で我々が矯正を行わさせていただくということは、お入りになった方が社会に新しく生まれ変わって出ていくリボーンの体制を中でつくっていきたいと思っております。

井上哲士君

 まあこの間、体感治安の悪化ということで、厳罰化ということが随分言われてきたわけでありますけども、昨今の仮釈放中の事件であるとか、また再犯などを見たときに、やっぱりこれでは解決しないということを国民の皆さんも今注目を始めているところだと思うんですね。そういう点で非常に更生保護の役割は大事だと。問題は、本当にそれにふさわしい体制と予算があるんだろうかということなんです。

 まずお聞きしますけども、満期釈放者の五年内の再入率と仮出獄者の五年内の再入率、そしてその評価、いかがでしょうか。

政府参考人(横田尤孝君)

 お答えいたします。

 平成十一年の数字で申し上げます。十一年を基礎にした数字で申し上げますと、この平成十一年の一年間に出所いたしました受刑者は合計二万三千百二十六名でございまして、その内訳は、仮出所により出所した者が一万三千二百五十六名、満期出所により出所した者が九千八百七十名でございます。

 これらの出所受刑者における出所年を含む五年間、つまり平成十一年から平成十五年の間に行刑施設に再び入所した、再入所した者の比率は、仮釈放者が約三八%、満期釈放者が約五九%、平均しますと約四七%ですけれども、仮釈放者が三八、満期釈放者が五九となっています。で、この比率は、平成十年以前の出所受刑者についてもほぼ同程度で推移していることがうかがわれます。

 受刑者の中には覚せい剤事犯者や暴力団関係者など社会復帰の妨げとなる深刻な要因を抱えた者もおりまして、こうした受刑者の再犯防止につきましては社会全体で取り組むべき問題でもございますけれども、しかしこうした再入者の実情につきましては私ども矯正に携わる者としてもこれでいいというふうに思っているわけではございません。我が国の刑務所等におきましては受刑者を改善更生させて社会復帰させることを基本とした処遇を進めているところでございまして、今後とも受刑者の円滑な社会復帰ができるよう矯正教育の充実等に向けて鋭意努力してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 満期釈放者の五年内再入率と仮出獄の場合で約二〇%差があったわけですね。これは仮釈放された方への保護観察というものが一定の効果を上げているということなんだろうと思うんです。

 平成十五年で見ますと、保護観察事件の受理人数が七万九百四十九件だと思うんですが、ほぼ、刑務所にいる受刑者とほぼ匹敵する数ですよね。ですから、この保護観察に付されている皆さんが、本当に社会復帰して、更生して社会復帰するのか、再び罪を犯して刑務所に入ってしまうのか、本当にこれ大きいと思うんです。で、もっとこの再入率を下げるということは、社会にとってもそうですけども、本人や家族にとっても本当に大事なことだと思うんですね。そういう大事な分野なんですね。

 ちょっと大臣にテストをしてみるんですが、じゃ、この更生保護の、更生保護官署の予算というのは、法務省の一般会計予算に占める割合というのは幾らと認識されているでしょうか。

国務大臣(南野知惠子君)

 大体三%だそうでございます。

井上哲士君

 実にそうなんですね。百九十二億五千万円で、法務省の一般会計予算が六千二百三億六千三百万円でありますから、約三・一%。今や消費税よりも低いということになっているんですね。私ども、消費税引上げは反対ですけれども、この率は高くしてほしいと思っているんです。非常にわずかな予算でこの更生保護の制度が支えられておりますのは、何といいましても全国五万人の保護司の皆さんの本当に献身的なボランティアの活動があります。

 この犯罪白書を見ますと、イギリスの場合は、こういう保護司の制度、日本ぐらいしかありませんから、保護観察官は八千人いるとありました。ですから、人口比でいいますと日本の二十倍ぐらいの観察官がいるわけですね。逆に言いますと、こういう部分を保護司の皆さんが担っていらっしゃる。

 私も保護司の皆さんといろんな懇談をしましたけれども、この白書の中で直接アンケートも出されておりまして、大変献身的な涙ぐましい活動が出てまいります。私も初めて知ったんですけれども、対象者との保護司の皆さんの接触というのは、そのうち四分の三は対象者を自宅に迎え入れている、来訪ということを中心にされているんですね。これに関連して聞きますと、外国の方なども日本のこの保護司さんというのがこの言わば犯罪を犯した人を自宅に迎えているということを大変びっくりされると言うんですね。そういうことも含めてやっていらっしゃいます。

 一方、この活動の喜びについてもいろいろアンケートの中で書かれております。かつて暴力団関係のあった仮出獄者が結婚を機に生活が安定して、期間満了後も子供を見せに来てくれたとか、保護観察終了後、対象者の親が泣きながら感謝してくれたとか、こういういろんな喜びの言葉も書かれております。

 ところが、本当に、じゃ、これにふさわしい待遇がされているのかといいますと、今日も審議の中でありましたけれども、十分ではありません。

 私、去年も実はこの委嘱のときに質問をいたしまして、例えば、実費も賄えていないんだということを認められました。それから、保護司の皆さんは実費賄えないだけじゃなくてこの保護司会の事務局の費用も自分たちで、会費で出されておると。これについては何とかするべきでないかと申し上げますと、前の大臣はかなり前向きの御答弁もいただいたんですけれども、結果、来年度予算ではどういうふうに手当てをされているんでしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 保護司の基盤、失礼しました、保護司の処遇活動の基盤を強化するため、平成十七年度予算案におきましては、事件数の増加を踏まえ、補導費、環境調整費及び保護観察所等出頭実費を見直しましたほか、保護司の処遇能力向上のため保護司研修の充実等を図ることとし、保護司実費弁償金に対前年度一億四千三百万円増の四十億三千万円を計上しております。

 次に、保護司会の事務局の関係でございますが、これ先生御存じのとおり、保護司会事務局に対する実費弁償の規定はございませんけれども、地区保護司会の代表として関係機関との連携調整等を行う保護司に対しましては、その活動に対して保護司実費弁償金が支給されております。

井上哲士君

 事務局への支援は去年と同じ答弁であります。要するに、直接の事務局支援というのは引き続きやられていないということなわけですね。

 今、実費弁償金全体拡大したと言われましたけれども、それで実費が賄えるように増えたと、こういう認識でしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 なお努力いたすべきものと思っております。

井上哲士君

 こういうやはり待遇の問題というのは保護司の皆さんを確保する困難さの一因になっているということは各方面が指摘をしております。

 実は、司法制度改革の課題でもあるんですね。審議会の意見書の中でも取り上げておりまして、「保護司の高齢化など適任者を確保することの困難さ等が指摘されており、この制度を更に充実させるため、実費弁償の在り方を含め、国民の幅広い層から保護司の適任者を確保するための方策を検討すべきである。」と、こういうふうにしておりまして、我々ずっと取り組んできた司法制度改革にとっても大変大事な課題なんです。

 特に、保護司の方々の高齢化というのはここでも指摘されておりますが、今年度から定年制が始まったと思うんですけれども、今後五年間で定年になる方というのは大体どのくらいと予想されているんでしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 保護司のいわゆる定年は、七十六歳以上の者は再任しないとするものでございます。

 保護司の任期は二年となっておりますので、健康上の理由等から定年までの間に退任される場合もあることなど、退任の理由は様々でございますので将来の退任者の数を確定的に予測することは困難でございますが、平成十七年一月一日現在で七十歳以上の保護司の方が一万一千二百三十七人おられます。したがいまして、今後五年間で一万人程度の方のこの保護司の方は退任されることが見込まれております。

井上哲士君

 全体の定員がほぼ五万人でありますから、今後五年間で四分の一近い方が退任をされていくわけですね。それに伴って比較的若い保護司の方などが選任をされていくならばいいわけですが、果たしてそういう保証があるんだろうかと。やっぱり、今待遇の改善などをしっかり打ち出していかなかったら保護司の確保の困難というのは急速に増していく可能性があるし、制度の維持ということにも様々な困難ができてくると思うんですね。

 しかも、そういうことがないままに新たないろんな困難な課題というのがこの更生保護の分野にかぶさってきております。いわゆる触法精神障害者の処遇というのがありましたし、それから、そもそもいわゆる薬物の関係とか処遇困難者が増えているというのがあります。それに加えて、今被害者支援をこの更生保護の分野に担うべきだという動きがあるわけですね。

 法務省の労働組合の皆さんが更生保護職場の職員を対象に年末にアンケートを取られたのがその新聞に載っているので見ました。これは組合員でない方も含めてたくさんの回答があったということで、大変、職場の皆さん、言わば専門家の皆さんの声を反映していると思うんですが、犯罪被害者について国が責任を持って積極的に行うべきだと、その支援を、これは七割以上の皆さんが賛成をされているんです。

 じゃ、それをこの保護観察所や保護司が効果的に行えるんだろうかという質問に対しては、過半数の方がそれは不可能ではないかと、条件によって可能という方が三割弱と、こういう数なんですね。

 なぜ効果的に行えないのかという理由を聞いてみますと、一つは利害の対立する加害者と被害者の双方に保護司が対応することは無理だという大きなそもそもの意見。それから、この被害者支援が保護司の職務に加えられることで保護司の確保がより困難になると、こういう心配もされているんですね。保護観察というのは期限がありますから、その期限が過ぎますと仕事は終わるんですけれども、被害者対策というのはそういう期限がないわけですね。被害者の人は何年もその思いを持っていらっしゃるだろうし、場合によっては、例えばテレビで同じような事件を見たときに突然感情が高ぶって相談したくなるということになりますから、これなかなか大変な仕事なわけですね。

 これを新たに加えようじゃないかというような今の声に対して、様々な危惧の声もこういう形で出ているわけです。

 私は、先ほど来申し上げているような今の状況からいえば、保護観察所や保護司の分野にこれ以上新たなこういう仕事をもたらすというのはなかなか困難ではないだろうかと、こういうふうに思っておるんですけれども、この点いかがでしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 ただいまの御質問に対する答弁の前に、先ほど保護司の定年につきまして、定年制につきまして私七十六歳を超えて再任しないというふうに申し上げたと思いますが、それでよろしゅうございましょうか。もし七十歳と申しておったとしたら間違いでございますので、訂正いたします。七十六歳でございます。

 今の御質問でございますけれども、昨年の臨時国会におきまして犯罪被害者等基本法が制定されましたことなどを踏まえまして、現在、更生保護官署及び保護司がその担当する地域、地区に居住する犯罪被害者や御遺族の方々に対しまして支援を行うための制度の導入について所要の検討を行っているところでございます。その詳細はまだ定まっておりませんけれども、今後の検討に当たりましては委員の御指摘のような観点も踏まえまして進めてまいりたいと考えております。

井上哲士君

 是非この点は関係者の意見を十分に聴いてやっていただきたいと思うんですね。被害者の皆さんもこういう方向を望んでいらっしゃるのかどうかということもありますし、是非それはお願いをしたいと思うんです。

 それで、保護司の皆さんの待遇の改善というのは、先ほど来述べてきたように本当に緊急の課題だと思うんですね。しかし、少なくともそのこう抜本的な改善なしに新しい仕事を担うと、担っていただくと、保護司の皆さんに。こういうことは、私は人の道としてもあってはならぬと思うんです。

 例えば、一九九八年に保護司法が改正をされたときに、当時の下稲葉大臣も保護司そのものに対する実費弁償、それから保護司会に対する実費弁償についても法務省として最善の努力をしたいと、こういう答弁をされているんですね。私、去年のこの委嘱のときにも野沢大臣にもお聞きをいたしますと、この事務局への支援なども含めて同じ感覚で改善をしなければならない、そういった思いに駆られておると、ここまで言われたんです。

 そういう点でいいますと、先ほどの司法制度改革推進本部の審議会の意見書もそうですけれども、この問題をずっと必要だ、必要だ、必要だと言われ続けてきているのに改善をしていないという下で、それなしに新たな困難な仕事を保護司さんに押し付けることはあってはならないと思うんです。その点はどうでしょうか。

 ちょっと大臣、是非それは、そういうことはあってはならないということをお約束をいただきたいと思うんですが、いかがでしょう。

国務大臣(南野知惠子君)

 いろいろ検討をさせていただくわけで、お約束ここでできるかどうかというのはちょっと分かりませんが、心はそのような方向で、私の心であります。

井上哲士君

 是非これは本当に大事な問題でありますので、その心が本当に実現をするようにお願いをしたいと思うんです。

 問題は、やっぱりこれ以上、保護司の皆さんの本当に献身に支えられてきましたけれども、これ以上頼っていいんだろうかと。保護司の皆さんのそういうボランティア活動非常に貴重でありますし、日本の誇るべき制度でありますから、これはこれで発展をさせていきながらも、やっぱりボランティアの責務を超えるようなことをお願いするべきでないと思うんですね。

 やっぱり国が責任を持つということについてはしっかりやるということをしないと、私は制度自身の崩壊にもつながりかねないと思うんです。特に、困難者、処遇困難者への対応などをしっかり国が責任を果たすようにするべきですし、そのために保護観察所の体制もしっかりする必要があると思うんです。

 そこで、保護観察官の仕事についてお聞きをするんですが、まず保護観察官の数ですね、社会復帰調整官を除いて、全体の数と、そして現実に現場にいらっしゃる数はどうなっているでしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 平成十六年度に保護観察所に置かれる保護観察官の定員は一千四人でありますが、このうち第一線で実際に保護観察事件等に従事している保護観察官は約六百三十人でございます。

井上哲士君

 現場には六百三十人ということでありましたが、大きく言いますといわゆる環境調整事件と保護観察に分かれるかと思うんですが、まず環境調整事件でのこの観察官の仕事内容と、大体どのぐらいの数を抱えていらっしゃるのか、どうでしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 若干古い数字で恐縮でございますが、平成十五年に保護観察所が取り扱いました環境調整事件は年間十万八千五百四十八件でありました。同年末現在、保護観察所に係属しておりました環境調整事件は五万九千六十三件であります。

 したがいまして、先ほど申しました約六百三十人の現場の保護観察官が担当しておりますので、保護観察官一人当たりが年間担当いたしました環境調整事件は約百七十二件であり、常時担当しておりました環境調整事件は約九十四件でございます。

井上哲士君

 この環境調整という仕事の中身というのはどういうことなんでしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 保護観察所の長が、監獄とか少年院に収容されている者の社会復帰を円滑にいたすために、その者の家族でありますとかその者の関係者などを訪問させたりいたしまして、その者の社会復帰のための環境を調整をすると。すなわち、帰住先を決めますとかあるいは就職先を決めるとか、こういうことを行うということでございます。

井上哲士君

 出所前の方の社会復帰のために、いろんな環境のために調査をするわけですね。

 もう一つ、保護観察事件については、その中身と一人当たりの担当数はどうなっているでしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 これも同じように、平成十五年に保護観察所が取り扱いました保護観察事件は、年間で十四万四千八百四十七件でございまして、同年末現在保護観察所に所属しておりました、係属しておりました保護観察事件は六万六千八百十六件でございました。

 これも先ほどの六百三十人が担当しておりましたので、保護観察官一人当たりが年間担当いたしました保護観察事件は約二百三十件でございます。常時担当しておりました保護観察事件は約百六件でございます。

 それから、保護観察の内容でございますけれども、これは保護観察に付されている者につきまして遵守事項を守るように指導監督いたしますことと、それから本人に自助の責任があることを認めて、これを補導援護することによってその改善更生を図ることを目的としております。

 遵守事項といたしましては、一定の住居に居住すること、善行を保持すること等がございますし、補導援護の内容といたしましては、教養訓練の手段を助けること、医療、保養を得ることを助けること、宿所を得ること、職業を補導し就職を助けること等が内容でございます。

井上哲士君

 今のを足しますと年間合わせて約四百件を担当し、常時二百件の事件を観察官の方が担当されているわけですね。

 保護観察の場合、保護司を通じてというものもかなりあるわけですが、いわゆる直接担当するという事件も、平成十一年でいいますと六百四十件ぐらいあるということをお聞きをいたしました。さらに、今度は性犯罪者についても、保護司を通じてのみならず、観察官の直接関与を強めろということになっているかと思うんですが、その対象の数というのはどのぐらいでしょうか。簡潔にお願いします。

政府参考人(麻生光洋君)

 最初の方の直接担当事件の方は、平成十一年当時とほぼ変わらない数字でございます。

 今回、新たに処遇の強化をすることといたしました性犯罪対象者でございますけれども、現在、保護観察では類型別処遇制度というものを実施いたしておるわけでございますけれども、このうちの性犯罪対象者といたしましては、罪名が強姦や強制わいせつなどの暴力的性犯罪者、それから犯罪の原因が性的欲求に基づく下着盗やストーカー事犯なども含んでおります。平成十六年十二月末現在でのこの性犯罪対象者でございますけれども、これは千九百四人となっております。

井上哲士君

 ですから、今直接担当が六百四十五、これに直接関与、その三倍ぐらいのものをやるということになるわけですから、本当に忙殺をされるという状況なんですね。ですから、体制の増強なしに幾らこれにもっと関与しろという掛け声を掛けても、ほとんど絵にかいたもちになるんじゃないかという危惧を私は持っているんです。

 昨年の暮れに大阪の近畿地方更生保護委員会とか大阪の保護観察所もお訪ねしてお話聞きましたけれども、近畿は特にこの数が多くて、これ以上の実態があるわけですね。本当に大変でありますし、先ほどありましたように、この五年間で相当数の新しい保護司の方が入ってきた場合に、この人たちのいろんな研修であるとか連絡であるとか、これはやっぱり観察官に相当の比重が掛かってくるわけです。ですから、今本当に思い切って体制の強化をしなかったら、この今担うべき役割はとても担えないと思うんですね。

 で、資料をいただきますと、例えば刑務所は昨年末が七万六千四百十三人いるんですが、その収容に関する費用を聞きますと千七百五十六億九千三百万円ですから、一人頭年間二百二十万円掛かっているという見当なんですね。更生保護の場合は、やはり約七万人の方をさっき言いました百九十二億の予算でやっているわけですから、一人頭に掛かっている金額は二十七万五千円なんです。

 単純な比較はできませんけれども、しかし、本当に予算の効率という使い方といいますか、そういうことからいいましても、もっともっと更生保護に力を入れて刑務所に入る人を減らすということは、予算という点からいいましても私は大変大事だと思うんですね。何よりも社会復帰ということは本人と家族にとっても大変なプラスでありますし、そのことは犯罪の少ない社会もつくるし、そして新しい社会の担い手つくるわけですから、予算の使い方も考えますと一石四鳥ぐらいの効果があると思うんですね。

 そういう点で、是非大臣、この分野に思い切った予算、体制をつくっていくという点で、先ほどもありましたけれども、是非固い決意をお聞きしたいと思います。それで私の質問を終わります。


リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。
© 2001-2005 Japanese Communist Party, Satoshi Inoue, all rights reserved.