お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、権力の濫用といった言葉は今回の改正法の案の中には入ってございませんが、具体的には入管法の改正案の第二条の第七号に定義規定が置かれているわけでございます。これは刑法の改正案の人身売買罪等の規定を参考にして作られているものでございます。結論といたしましては、人身取引議定書における人身取引の概念をすべてこの案でカバーしているものでございます。
委員御指摘ございましたように、議定書の中には権力の濫用ですとか脆弱な立場に乗ずることといった規定が、内容がございます。これにつきましては、この議定書の作成、交渉の経緯にかんがみまして、両者を併せて、自己の法的若しくは事実上の地位又は被害者との地位の差を利用して不法に有形力を行使し、又は害悪を告知するなどしながら、従う以外に道のない被害者を意のままにすることであると、こういうふうに解されているものと承知しております。そうしますと、この内容からしますと、刑法の略取罪の手段としての暴行、脅迫の概念に含まれるというふうに解されるものでございます。
したがいまして、この議定書における権力の濫用ですとか脆弱な立場に乗ずることというのは、この改正入管法の第二条第七号の片仮名のイの規定の略取という部分に含まれるというふうに解しているところでございます。