おっしゃるとおり、私どもは必ずしもアメリカの法制のみを参考にして会社法を作っているわけではございませんけれども、他方で、アメリカ的な要素というのもあることも事実でございます。
反面、当然のことながら株主の利益を守るためには訴訟への道が開かれているというだけではなくて、その訴訟において対等に闘えるという環境をつくるということも一つの大きな課題でございます。
ただ、おっしゃられましたクラスアクションの制度といいますのは、これは非常にアングロサクソンの法系において特徴的な制度でございまして、ねらいは、多数の消費者等の一般の方々が企業を相手取って同じ争点で訴訟する際に、個々の当事者にとっては訴訟しにくいけれども、全体としてはまとまれば訴訟はしやすいということを前提に訴訟のしやすさをねらった制度になっているわけであります。
その意図ということを私どもも十分に理解をするところでございますが、他方、この制度についてはアメリカの国内においてもいろいろな御批判がございまして、実際に公告をして訴訟をするわけでございますけれども、その際に一体だれが当事者になるのかと。クラスの中に含まれて敗訴した場合の判決の効力を受けるかということについて必ずしも合理的な仕組みをなかなか作れないという問題がございます。つまり、知らない間にクラスアクションによる訴訟がされてその判決の効果を受けてしまうという不利益も、これも決して無視できないところではございます。
また、クラスの認定でありますとか代表者の適格性について、相当程度裁判所のかなり裁量的な後見がないとこの制度というのはうまく動かないという指摘もあるわけでございますが、果たして日本の裁判の現状においてこういうことが可能かどうかについてもまた十分に検討してみなきゃならないところでございます。
したがいまして、私どもは現段階ではこのクラスアクション制度というのの導入にはなかなか慎重な検討が必要だなというふうには思っておりますけれども、しかし、必ずしもこのクラスアクション制度に限らず、非常に多くの方々が訴訟をしやすい制度として今ヨーロッパの団体訴訟のこともおっしゃられましたけれども、いろんな制度を検討していく値打ちは十分にあるだろうという理解でおります。