日本共産党を代表して、会社法案に反対の討論を行います。
反対の第一は、本法案が取締役会の経営の自由度を高める一方で、その責任を軽減し、会社経営に対する監視機能を弱体化するものだからであります。
会社法案では、資本配当規制など様々の規制を一層緩和するとともに、取締役会の決議のみで行える簡易再編行為の要件を緩和し、配当の決定権を株主総会から取締役会に移すなど、経営の自由度を大幅に高めています。ところが、これまで無過失責任だった取締役等の責任を過失責任とするなど、経営者責任、監視機能は弱体化しています。
経営者の責任強化、経営の透明性拡大など、牽制手段の強化なしに経営の自由を一方的に拡大することは、違法配当、粉飾決算など不正行為の温床になりかねません。JR西日本の事故、コクド・西武鉄道問題など、企業犯罪が頻発する今日において、経営者の責任強化と透明性を高め、労働者、国民による監視、監督の強化こそ求められているのであります。
第二は、本法案が企業再編を大幅に自由化しますが、企業グループとして責任を負う法整備のないまま企業再編の自由だけを拡大すれば、債権者、労働者などの保護が不十分になるからです。
欧米では、企業グループは一体で活動する以上、企業グループで責任を取るということが当然ですが、日本ではそれがないため、企業再編によって経営の失敗を労働者、債権者、地域に押し付けるということが横行しており、本法案によって拍車が掛かることは明らかです。
今日では一体として活動する企業グループには実態に即して責任を取らせる企業結合法制の整備が不可欠ですが、会社法案では完全に見送られました。
第三は、有限会社制度の廃止が中小企業に新たな負担をもたらすだけでなく、中小企業経営者や国民の間に混乱を招くおそれがあるからです。
有限会社制度の廃止は、計算書類の報告義務などの中小企業に新たな負担をもたらすことになります。中小非公開会社と大規模公開会社という実態が相当違う企業を別々の会社形態で規制してきたのは当然です。会社法案における株式会社のように、自由度があり過ぎて中小企業が会社運営上で違法か否かの線引きの判断に悩む制度は、中小企業を対象とする会社制度としてふさわしくありません。また、一般国民にとって、名前を見ればどんな会社か分かるということは経済生活を行う上で重要と考えます。
なお、会社法案八百二十一条について法務省の解釈と条文に乖離があるのは事実ですが、擬似外国会社による会社法の脱法行為を防ぐこと自身は必要であり、八百二十一条を削除する民主党修正案には賛成はできません。
以上申し上げまして、討論といたします。