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2005年8月4日(木)

参院法務委員会
「一般質疑」

  • 交通事故被害者に対し、捜査資料の早期開示が行われないために、損害賠償や真相解明に支障をきたしていることを指摘し、起訴前の早い段階での実況見分調書、被疑者などの供述調書の開示を求める。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、更生保護の問題でお聞きをいたします。

 再犯を防ぎ、社会復帰を果たすという点で更生保護が非常に大事だということを私、何度も取り上げてまいりました。今、そして一方で、その実効性に対する注目ということも社会的に非常に広がっております。

 三月の質疑の際には、今この更生保護というのが、保護司の皆さんにボランティアの責務を超えるようなことまでお願いをしていることになっているんではないかということも申し上げまして、制度の在り方にも踏み込んだ検討が必要なんではないかということも申し上げてまいりました。

 そうしますと、先日、更生保護のあり方を考える有識者会議というのが設置をされたわけでありますけれども、その趣旨についてまず大臣にお聞きをします。

国務大臣(南野知惠子君)

 その趣旨につきましては、治安の回復が、これが大きな社会問題となっております今日でございますが、保護観察対象者によります重大再犯事件が相次いだことを契機といたしまして、保護観察の実効性に国民の厳しい目が向けられているのが現実であろうかと思っております。

 このような状況に対しまして、国民の期待にこたえる更生保護というものを実現するためには、幅広い観点から更生保護制度全般について検証する必要が生じてまいりました。そこで、様々な分野の有識者から構成されます会議を立ち上げまして、更生保護の在り方について議論していただくことにしたものでございます。

井上哲士君

 座長には野沢前大臣が座られる大変重厚な会議だなという感じがするんですが、今後どういうスケジュールで検討がされて、何らかの提言などが考えられているんだと思うんですけども、その点、局長からお願いをいたします。

政府参考人(麻生光洋君)

 第一回目の会議は七月二十日に開催されました。今後、毎月一回程度開催し、来年五月には最終的な提言をいただく予定にしております。

 なお、速やかな対応を求められている部分もございますので、本年中に一回、中間的な報告をいただくことをお願いしております。

 それから、第二回目の会議は今月の二十三日に予定しておりますけれども、保護司を始めとした更生保護関係者等からのヒアリングや意見交換が行われる予定でございます。

 今後、保護観察所等の関係施設の視察等も行っていただいて議論をしていただきたいと思っております。

井上哲士君

 何らかの結論をまとめられるのはいつごろで、どのような形をお考えなんでしょうか。

政府参考人(麻生光洋君)

 先ほど申しましたように、来年の五月までに最終的な提言をいただくことをお願いしております。

井上哲士君

 第一回目の会議の議事概要もいただきましたけども、例えば、刑事司法の一環である以上は国の仕事であるが、それにしては保護観察官の数が少な過ぎる、国は安全を安く買い過ぎていないかなどの発言も出されたようであります。一方で、もうこの保護司の制度というのは限界なので全部国だけでやったらどうかというようなことも、この会議ではないけども、言われることがございます。

 私は、この制度は非常に日本の独特の大変すばらしい制度だと思っております。かつて野沢大臣は宝と言われましたし、南野大臣は金の卵ならぬ金の鶏だということを言われたこともございました。

 やはり、これまでの保護司の皆さんの活動を評価をしつつ、これからも力も発揮してもらいながら、一方でやっぱり国が果たすべき責任をしっかりしていくと、こういう方向性で議論をしていくと、こういうことで考えてよろしいでしょうか。

国務大臣(南野知惠子君)

 概略は先生のおっしゃるとおりでございますが、我が国の保護観察と、又は保護観察官と民間のボランティア、これで地域の実情に精通しております保護司の方が、それぞれの特性を生かして処遇に当たっておられることが我が国の最大の特徴であろうというふうに思っております。

 無報酬の保護司が地域社会で犯罪者の改善更生を支えるという本制度は、十分に機能し成果を上げており、民間によります刑事司法への参加という意味でも極めて大きな意義を持っているものと理解いたしております。こうした保護司の方々の御労苦に対し、本当に頭の下がる思いでもう一杯であるところでございます。

 有識者会議の委員の皆様方にはこのような現状を御説明申し上げて、昨今の社会情勢の変化や現在の治安情勢等を踏まえながら、官民共同体制の在り方を含む更生保護制度の全般について十分に御論議いただけるものと思っておりますが、日本のすてきな制度はちゃんと継続していくように図りたいと思っております。

井上哲士君

 実は、平成十二年の十一月の二十八日に、当時、矯正保護審議会の提言が出ておりまして、二十一世紀における更生保護の在り方というものが出されております。私も何回か委員会でこれを取り上げたわけですけども、この中でも、例えば更生保護官署における人材確保と育成であるとか保護司制度の充実強化、そして更生保護基本法の制定の検討などいろいろなことが提言をされておりますが、残念ながらなかなか実現のできていないものが多いわけですね。ですから、五年前の話なんですが、提言自体は、やはり絵にかいたもちになってはならないと思うんです。

 そういう点で、この前回の答申が必ずしも全面実行されていない、そこの問題、どこにネックがあったと大臣はお考えでしょうか。

国務大臣(南野知惠子君)

 ネックを探すのは大変難しいこと、いろいろな問題が関連していると思いますので、それを一本だけに絞ることは難しいと思っておりますけれども、矯正保護審議会からの御提言、これは非常に多岐にわたる内容のものでありました。

 その実現のため鋭意努力を重ねてまいりましたけれども、例えばどういうことかと申しますと、更生保護事業法等を一部改正して、更生保護施設を処遇施設として明確化するということの実現は、これは図らせていただきました。また、必要な保護観察官の確保など人的体制の充実にも努めてまいりましたが、これはまあ現在の状況にとってみれば、これはまだまだ問題点があることかなというふうにも思っており、課題が残されていると思っております。

 しかし、中長期的な検討を要する課題もありますし、なお、実現されていないものもあるということの先生の御指摘でございますが、今後は有識者会議におきます議論を、これを見守りながら、引き続き矯正保護審議会の提言の実現にも鋭意努力し、検討してまいりたいと思っております。

井上哲士君

 必要な制度的改善をするとともに、やはりこの分野は予算であり体制というものが非常に大事だと思います。で、やっぱりそれをしっかり獲得していくということになりますと、法務省全体の中での位置付けもそうでありますし、政府の中でこの重要性を全体のものにしていく必要があると思うんですね。

 今、法務省を見ますと、刑事局長も矯正局長も元保護局長出身ということになっているわけでありまして、省全体としては保護の重要性というのは大変理解をされていることなんだと思うんです。その点で、しっかりやっぱりその部分を獲得をしていく。特に、来年提言が出て、それから場合によっては法制化という、それ待ちではなくて、現に今年から例えば新しい心神喪失者の制度なども始まっているわけでありますし、その重要性が広がっていることから考えれば、今年の概算要求からしっかりこの予算と体制、とりわけ保護観察官の確保ということについてはしっかり取り組んでいただく必要があると思うんですが、その点での決意をお伺いしたいと思います。

国務大臣(南野知惠子君)

 本当にこの分野については、このたびはしっかりと予算を取っていきたい、マンパワーのこともございますし、いろいろ課題がありますので、しっかりと頑張っていきたいというふうに思っております。

 また、有識者会議におきましては、保護観察制度の問題点と改善策、それから民官共同体制の在り方を始め、様々な事項について御議論をいただき、先ほど事務当局からも御説明させていただきましたとおり、年内に中間報告をいただき、そして来年の五月までに最終的な御提言をいただけるようお願いいたしております。

 しかし、保護観察対象者の再犯防止対策を強化するなど、更生保護において緊急に取り組むことが、これが求められております課題でもございます。そのために、保護観察の体制の整備を充実することが必要でございますので、そういう意味でも、有識者会議の提言を待つことなく、できるところから、できるものがあればやっていきたい、先生の御提言のような形で我々も取り組んでいきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、安全で安心な社会を実現する上で更生保護制度が果たす役割は本当に重要でございますので、その充実強化に向けて真剣に取り組んでいきたいと思っております。

井上哲士君

 もう一点、今度は被害者保護という観点から何点かお尋ねをいたします。

 犯罪被害者の皆さんや関係者から、刑事資料を閲覧したいという要求が非常に強いわけですね。損害賠償請求のための場合もありますし、一体どういう事件だったのかという真相を知りたいという要望もあります。

 で、犯罪被害者保護法などによりまして、起訴された場合、公判記録については、限定的でありますけれども被害者が謄写できるようなことにもなりました。ただ、一方で、公判に出てこなかった資料、それから起訴されてない事件の記録については、その閲覧は法的に保障されているとは言えない現状だと思います。

 交通事故被害者の方にお話を聞く機会がありましたけれども、真実を明らかにしたいということで民事訴訟を提起しようと思っても、当時の状況が分からない、加害者や関係者が当時どういう証言していたかも分からない、それから目撃者探しも非常に困難だと、いろんな苦労があるわけで、実況見分調書とか供述調書、目撃者情報など、この開示を積極的に行うべきだと思うんですけれども、この点、刑事局長いかがでしょうか。

政府参考人(大林宏君)

 不起訴事件記録につきましては、関係者のプライバシーを保護し、又は捜査、公判に対する不当な影響を防止するため、刑事訴訟法第四十七条により原則として公開を禁じられていますが、同条ただし書により、公益上の必要その他の事由があって相当と認められる場合はこの限りではないとされているところでございます。

 他方、犯罪被害者の保護の必要性にかんがみ、平成十二年の法務省刑事局長通知により、当該証拠が代替性に乏しく、その証拠なくしては立証が困難であるという事情が認められる実況見分調書等の客観的証拠については、被害者等から開示の求めがある場合であって、損害賠償請求権等の権利を行使するため必要があるときは、相当と認められる範囲で開示することといたしました。

 また、供述調書につきましては、平成十六年の刑事局長通知により、民事裁判所から文書送付嘱託がなされており、かつ、その内容が重要な争点に関するもので、当該民事訴訟において必要不可欠なものであるなど、一定の要件が認められる場合に開示することといたしました。

 いずれにいたしましても、不起訴事件記録の開示の問題につきましては、捜査、公判への支障や関係者のプライバシー等への侵害のおそれ等に対する配慮も不可欠なところでございまして、その上で被害者保護の観点からどのような対応が可能か更に検討してまいりたいと、このように考えております。

井上哲士君

 二つの通達、とりわけ平成十六年の通達などは前進だと思っております。ただ、運用上も内容上もまだまだ十分とは言えないと思うんですね。

 で、交通事故調書の開示を求める会という被害者の関係の団体がありますけれども、アンケートを取られておりまして、中間結果が出ております。これ見ますと、現在でもやはり供述調書類の開示はほとんどなされていないし、しかも不開示の理由が説明があったのは八%にすぎないということになっております。

 また、現場の検察官や警察官が被害者に対する配慮からいろんな情報を提供することはできるわけですが、非常に対応がばらばらだと。例えば、目撃者の有無や目撃者供述内容、その提供があったのは、警察からは二四%、検察からは一五%というのがこのアンケートの結果であります。

 事故ごとに対応が変わるというのは、それはあるとは思うんですが、どうも現場の担当者、まあ良い担当者に当たれば一定の対応があるけれども、そうでなければなかなか難しいという、こういうばらばらな状況があるということを関係者からお聞きをするわけですが、こういう実態をどのように認識をされているのか、これ警察庁の方にお聞きをしたいと思います。

政府参考人(矢代隆義君)

 お答えいたします。

 交通事故の関係書類も、刑事訴訟法第四十七条の規定からこれは外部に示すことは控えておるわけでございますが、個別的、具体的なケースに応じまして、この四十七条の趣旨を踏まえまして、被害者の心情への配慮あるいは被害回復の必要性等の事情を考慮しつつ、事故の概要や捜査状況についての説明については努めておるわけでございます。

 ただ、この説明でございますが、この説明時の捜査の進展状況がどの程度の段階かということによって説明がどの程度可能かが異なってまいりますし、また現場の状況、目撃状況等から原因が明白な事故についてはある程度説明できるわけですが、そうでない事故については説明が困難な場合もあり得るということでございます。

 いずれにいたしましても、警察といたしましては、被害者の心情に配慮した適切な対応に努めてまいるよう都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

井上哲士君

 先ほど紹介したアンケートでは、遺族、被害者の二次被害についても出ておりまして、事故の情報を知らされないことからくるストレス、それから、そのためによる家族間の葛藤なども相当あるということが出ているわけでありまして、これはしっかり徹底をしていただきたいと思います。

 もう一つ、その通達の内容の問題にかかわって、法務省、お聞きしますけれども、通達では、供述調書について、原則として民事裁判所からの文書送付嘱託による場合に限定すべきというふうにしております。ただ、民事訴訟ができるかどうかという判断をしたい場合、それからその訴訟準備の必要性、それからとにかく事件の真実を知りたいんだと、こういう場合もありまして、提訴前にこの不起訴記録を閲覧したいという要求も非常に強いわけです。

 法務省も去年の通達で十分だという立場ではないんだと思うんですが、こういう提訴前の不起訴記録の閲覧の要求に対してどのような検討がなされているんでしょうか。

政府参考人(大林宏君)

 先ほど御説明しましたように、実況見分調書等の客観的証拠につきましては民事訴訟の提起前であっても弾力的に開示する運用を行っているところであり、これらの証拠を見ることで民事訴訟を提起するか否かの検討をしていただけるものと考えております。

 今御指摘の供述調書につきましては、客観的証拠と比べ一般的に代替性に乏しいとは認め難く、また関係者の名誉、プライバシーを侵害するおそれ等が否定できないなど、広く開示するということは適当ではないと考えられますので、民事裁判所から文書送付嘱託がある場合に限定しておるところでございます。

 ただ、私どもとしても、被害者保護という点で、御指摘のあるように、事件の実態を知りたいということについて私どももいろいろな申入れを受けております。なかなか、例えば先ほど申し上げた刑事局長通知みたいな一律的な形ではそこは触れられない部分もございますけれども、私どもも会同あるいは研修等において、不起訴理由についてなるべくその理解を得るように被害者の方々に説明するように申し上げているところでございまして、そういう被害者との接触を通じて、できるだけその事件の実態について御援助できるところはしたいというふうに考えております。

 この問題は、先ほど申し上げたように、捜査、公判あるいは関係人のプライバシー等の問題があって非常に難しい点はございますけれども、更に検討を進めてまいりたいと、このように思っております。

井上哲士君

 終わります。


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