2005年4月20日(水)
参院経済・産業・雇用に関する調査会
「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」
- フリーター・ニート等若年者をめぐる雇用問題について
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
各理事の御配慮で最初に質問させていただきまして、ありがとうございます。今日は四人の参考人の方、若者と接しておられる現場での本当に具体的なお話をいただきまして、ありがとうございます。
つい数年前までフリーター、ニートという問題は、言葉自身もそうですが、専ら怠け者というような評価がされておりましたけれども、今これは社会全体の課題として取り組むべきやはり日本の未来が懸かった問題だということに急速になってきたし、そういう取組の先頭に皆さん立ってこられた、大変有意義なお話をいただいたと思います。
厚生労働省も、この五月にいわゆる今年度中にフリーター二十万人減らすための国民会議というものも開くというようなことも報道をされていたように、まあ教育、経済、労働、いろんな幅広い分野での取組が言われているわけですが、そこでまず工藤参考人にお聞きをするんですけれども、ニートの若者たちの生育過程のことを原因としてお話もありましたけれども、いったん職に就いてからできなくなるという若者がいることも玄田参考人からございました。この言わば雇う側の方の問題、この調査会でも、例えばここ十年ぐらいで見ますと、社内教育の費用などが非常に減らされているであるとか、いろんなことも指摘もされてきているわけですが、雇う側の問題として何が解決すべきことにあるのだろうかという点があればお願いをしたいと思います。
それからもう一点、工藤参考人に、これも玄田参考人からも同じように出ましたけれども、若者を支援する若者への支援が非常に必要だということが言われました。そういうNPOがむしろ今減っているということも私は初めて聞いて大変驚いたんですが、じゃ、どういう支援が今皆さん方に求められているのか、具体的な点がありましたらお願いをしたいと思います。
それから、玄田参考人にお聞きをいたします。
いわゆる、中高年ニートの問題ということをお話の中でありました。私も先日、四月の四日にUFJ総合研究所が増加する中高年フリーターという調査レポートを出したのを大変興味深く読んだんですが、十年後の二〇一一年には中高年フリーターが百三十二万人に増えると。この中にはニートという人たちも出てくるということがございました。単純に今の若者ニートが年齢が上がっていくだけの現象と見たらいいのか、この中高年ニート、フリーターという問題の原因と実態、それからその影響や対策についてどのようにお考えか、以上三点、お願いしたいと思います。
- 会長(広中和歌子君)
それでは、まず工藤参考人、お願いいたします。
- 参考人(工藤啓君)
私個人としては、雇う側の企業さんも、私も一応経営者ですけれども、余り負担というのは、利益を生むのが基本的な目的なので、余りこう、もっと雇えとか、もっと給料上げろとかって言えないんですけれども、ただ、一度働いた人でそういうニート状態になってしまう方で非常に多いのはSEとプログラマーがとても多い。先ほど玄田先生からお話もありましたけれども、やっぱり体を壊す、心の問題、病にかかる方がとても多いので、そこに関してメンタルヘルスでもいいですし、何か企業の方で、雇う側の方でしていただけたらなと思いますけれども、じゃ、単純に会社内にカウンセラーを置いたときに本当に若い人が行くかといえば、その情報が人事に上がるのが怖いとか、なかなか難しい問題があって、活用してないんですね。
先ほどもちょっと言いましたけれども、相談できる人が会社と家以外にないというのが一番の問題で、そういう人たちをどういうふうにつなげるのかが本当に大事であって、雇う側としてできることというのは彼らの心身の面を少しケアしてあげることかなと思います。
若者を支援する若者を支援するためにどうすればいいかということはあるんですけれども、一つは、NPOで、若いと事業を起こしてもお金が借りられません。この前、お金借りるときに、僕の場合、連帯保証人を二人付けろと。本当は一人でいいんですけれども、一応二人付けてくれということで、いろいろあったりとか、実際、事業をやるのに幾ら幾ら必要なんだけれども、不安だからその八割だけ貸せますよという形で、正直、事業をやるときにお金が借りられないのが一点。
もう一点は、政策意思決定とか、そういう少しレベルの高い話の場所、私も委員会入っても正直付いていけないときがたくさんあります。ドイツ語を片仮名で言われたりとか、中心を取るということをヘゲモニーって使われたときに、最初ヘゲモニーという言葉が分からなくてどうしたものかと思うこともありますし、視野が余りにも広くて自分が付いていけない、目線は、自分が付いていけないという思いはするんですけれども、やっぱりその先進国の状態を見ても若者支援の委員会には必ず三割ぐらい若い人が入っています。そういう意味で鍛えられたりとか、識者の方と人脈つくったりとかという、そういう出会いがどんどんどんどん支援者を育てていくと思いますので、お金の面というのもあるんですけれども、どちらかというと大人、若い支援者にしても大人と触れ合うチャンスをもっといただけたらと思います。
以上です。
- 会長(広中和歌子君)
それでは、玄田参考人、お願いいたします。
- 参考人(玄田有史君)
中年、中高年のニートについてその実態と対策について御質問いただきました。
中高年ニートが増えた原因は、これまたいろいろなので一概に言いにくいんですが、一つは、やはりいわゆるリストラの影響というのがあったと思います。様々な理由で前に働いていた会社を離れる、しかし年齢が四十代、場合によったら五十代近くなってきますと当然再就職は非常に難しい。先ほど、若者が新卒採用の中でも落ちて、落ちて、落ちまくってニートになる。同じように、場合によっては中年の方がもっと再就職が非常に難しい中で、ああもう職探しをしても駄目なんだというふうなあきらめになっているケースというのはやはり少なからずあると思います。
そういう面では、中高年ニート対策というのはもしかしたら今回非常に話題になる二〇〇七年問題と言われるような団塊の世代の再就職も含めて、やはり実は、中高年の場合の再就職には資格とか専門性が強調されますけれども、実は先ほど中井さんがおっしゃったように、迷路に迷っているのは中高年も同じであります。今、自分が何を目指せばいいのか、自分がどこにいるのか、どうやったら抜け出せるのか、そういう情報が時にはなかったりします。そういう面では、こういう就職とか将来の進路について相談ができるような相手というのを若年のみならず中高年にも増やしていくというのは、大変大切な対策になるだろうと思っています。
ただ、一方で、中年ニートの場合には実際にはそういうリストラの影響ではなくて、若者ニートが中年になったケースというのは少なくないと思います。もっと言えば、いわゆる社会的引きこもりと言われる方々の高齢化という現象もその中には当然あります。そうなった場合には、やはり先ほど生活保護の話を若干しましたけれども、今後数年間のうちに大変大きな問題になろうかと思っています。今はまだ親御さんが御健在で家族の経済的な支えを得ているわけですけれども、先ほどニートの家計は決して豊かな場合ばかりではないとお話ししました。今後、親と死別した場合には正に生きていくということが大変困難になる可能性が出てきます。
そういう意味では、生活保護のやり方について、自立を支援する、就労を支援するようなタイプの生活保護とは具体的にどういう姿なのかということを、様々な方面の知恵、生活保護のエキスパート、就労支援のエキスパート、また心理面のエキスパート、それぞれがつくり上げていく、連携してつくり上げていくということがこれからは大変重要な対策になろうかと思っています。
そういう面では、中年のニートの問題というのはまだまだ原因が分からない部分もたくさんありますけれども、心理面のケア、また、実際にもう生きていけなくなる、さっき憲法の話が出ましたけど、基本的な人権からして生存権が危ぶまれるようなケースがもうすぐそこまで来ているんだというふうな危機意識を持って、先ほどの話と共通しますが、福祉対策、就業対策をもっと連携させて具体的な支援策というのを考えていく段階に来ていると思っております。
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