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井上哲士ONLINE
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2005年5月11日(水)

経済・産業・雇用に関する調査会
「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」

  • 経済社会の変化に対応した人材育成の在り方について

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 今日は参考人の皆さん、ありがとうございます。

 最初に、梅津参考人にお伺いをいたします。

 ここ最近は、JR西日本のあの事故の問題における経営者の在り方というのが大変大きな話題になっていると思います。目先の利益で安全を軽視をしたんではないかとか、それからリストラと一体となった職場の在り方の中でなかなか物が言えなかったんではないかとか、それから、非常に三十代が少なくて、二十代、四十代になっていて、技術の継承がうまくいっていなかったんじゃないかとかということが指摘をされております。

 先生が書かれたものを読みますと、EQという言葉を使われて、気働きですかね、一部、幾つかの企業も挙げられまして、安易なリストラを廃して雇用を守った企業が非常にやる気を高めている、高いEQを持っている会社だということで評価もされておられます。そこで、こういうJRの問題なども対比をされながら、社会的責任とか雇用の確保という点での経営者のリーダーシップの在り方について御意見をちょうだいをしたいと思います。

 それから、多賀参考人と耳塚参考人にお伺いをいたします。

 耳塚参考人から、夢や希望を捨てるなという進路指導が結果としては職業社会への分配機能を弱めているというお話がございました。一方、多賀参考人からは、アメリカなどで自分を大切にするという教育の良さというのが、お話があったと思うんです。これはやっぱり自分の夢を大切にするということなんだと思うんですね。

 実は、前回の参考人質疑のときにも、ニートの若者を支援をしている団体の方から、そのニートの若者というのがやりたいことが分からない、言わばやりたいこと探しをしていると。それに対して、そんなみんなやりたいことがあるわけじゃないんだとか、やりたい仕事をみんなしているわけじゃないんだよということを諭しているんだというお話がありまして、ちょっといろんな思いを持って聞いたんですね。我々政治家としては、やっぱり夢は捨てるなと、それが、夢が実現する社会を一緒につくろうじゃないかということを訴えたいわけでありますが、それとは少し違うお話だったのかなという気がして、今回も聞いたわけです。

 そこで、まず多賀参考人にお聞きしますのは、そういう自分を大切にする、夢を大切にするという教育と、言わば職業指導といいましょうか就職指導、それから就職への道というのが米英などではどういうふうに連携をしているのか、うまくいっているのかいっていないのかということが一つ。

 それから、耳塚参考人には、そういう今の進路指導というものについてはやっぱり変えるべきだという御意見なのか、むしろそれが生きるような方向に教育やいろんな社会環境を変えるべきだという御意見なのか、もう少し詳しくお話しいただければと思います。

 以上です。

会長(広中和歌子君)

 それでは、梅津参考人、お願いします。

参考人(梅津祐良君)

 大変難しい御質問でございますが、できるだけはっきりした形で申し上げたいと思いますが。

 最近、経営者の責任って、バランススコアカード法というのがうたわれています。アメリカ企業では、利潤、利益を追求する、それで株主に対して高い配当を払い、そして株価を上げていくことが優れた経営者というふうに今まで評価されてきたわけですが、最近、ノートンさんとキャプランさんというのが、いやいや、そうじゃなくて、経営者というのは、もっと顧客に対する責任と、それから従業員に対する責任と、それから社内のシステムですね、継続的に成長するような社内のシステムをつくりましょうとか、財務的な目標だけではありませんよという、これは非常にいい指摘だと思うんですね。

 ですから、JR西日本について、まだ私は分析は済んでいないと思いますが、ちょっとやはり財務的な目標に目を向け過ぎたんではないかという気がします。というのは、効率経営ですね。効率を高めて利益を高めようという、そこがちょっと強調され過ぎている。

 そこで、今回ちょっと発表を伺っていたら、安全を重視する風土をつくりますということ、それから社内のコミュニケーションをどんどん濶達にするような改革をします、それから安全教育ですね。あのねらいというか方向性は全く間違っていないと思いますが、風土とか文化を改革するというのはとても骨が折れるというふうに思いました。ですから、それについて真剣に取り組んでいただきたいのと、それから、単に、何というんでしょう、井上先生のおっしゃった気働き、EQですね。これは役には立つと思いますが、その前に、やはりもう一つ、文化的な面あるいは風土的な面の改革を進めていかなければいけないというふうに思いました。その上で気働き、EQを導入されたらよろしいかなというふうな感じを受けております。

 それから、トップマネジメント、JR西日本のトップマネジメント下の行動といいますか、私は、単に記者会見の映像を見ながらの感想ですけれども、やはり非常に官僚的組織だなという感じがいたしました。やっぱりトップダウンですね。ボトムアップというか、例えば下から改善提案が来て、それをちゃんと新しい方向に結び付けていくというところまでまだちょっと行っていない。非常にトップダウンという感じがいたしまして、これは今のトップマネジメントが悪いということではないと思うんですけれども、伝統的な、あるいは今までそういう経営が続いてきたのかなと。

 まだ、大変、私、外部的な発言で申し訳ないんですが、私見を申し上げました。

会長(広中和歌子君)

 ありがとうございました。

 それでは、多賀参考人。

参考人(多賀幹子君)

 御質問ありがとうございました。

 アメリカとイギリスの職業指導ということだと思うんですけれども、アメリカとイギリスとは、同じ英語をしゃべるんですけれども、ちょっと違っていまして、アメリカの方は、アメリカンドリームを追うというのがもう国是というか、大変これが重要なことだと言われているんですね。

 一番驚いたといいますか、それは、企業がファミリーデーというのをこしらえていまして、働いている人の子供とか、配偶者でもいいんですけれども、会社に連れてきて、お父さんが何をしているか、どういうところに座って何をしているか、あるいは、もちろんお母さんでもいいわけですね。お母さんがどこで、どういう会社で何をしているかというのを見せるというのがもう当然のように行われていまして、子供に、それで自分の同僚やら上司と会わせて、一体職業とは何かというものを、ごくごくもう小学生、幼稚園ぐらいからもう連れていって自分の会社を見せる、働くということは何かを見せると。

 あるいはアルバイトですね。ニューヨーク、とても雪がよく降りまして、よく雪が積もるんですけれども、すぐ男の子がシャベルを持ってきて、雪かきさせてくださいと言って来るんですよね。五ドル取られるものですから、もうちょちょちょっとやったぐらいで、すぐ、はい五ドルとか言われるもので、またすぐ積もると、また次の男の子が来てすぐ五ドルとか言われるもので、もう何とかして稼いでやろうというか、それをまた親が、小学生から金に汚いとか、何か妙に金にうるさい子だとかということを全然言わないで、何とおまえはアイデアがいいんだろうね、こうやって稼いできたのかということを非常に褒めるんですよね。

 あるいはカーターさん、大統領なんですけれども、一番下に女の子がいて、カーター大統領が大統領になったとき、南部から出たというので記者がわっと来たときに、そこにジュースを並べまして、やってきた全国の記者に一杯これで二ドルで売ったというので、大統領の娘が商売やっているという、驚いたんですけれども、いやいや、なかなかアイデアが良く、若いときから起業家精神がもうあふれているとかといって褒められて、さすがはカーターさんのお嬢さんだなんて、ファーストドーターだなんて言われていましたから。

 子供のときからアイデアで稼ぐというのがとても大事なことだというように言っていて、そういうことから、もう遠くからだんだん職業指導をしているといったような感じですね。稼ぐことに何のちゅうちょも恥ずかしさもないということが、起業家精神が豊富、ビル・ゲイツとかすぐ思い浮かぶんですけれども、ああいったことで、アイデアで勝負して、それでお金をもうけようというのが子供のときからどんどん進められているというような感じで、親も会社に連れていくし、学校にもコミュニティーの方が次々に、パン屋さんでも銀行の方でも呼ばれて、自分がどんな仕事をしているかお話しするといったようなことがありまして、それが職業訓練にだんだんつながっていくんじゃないかと思うんですね。

 イギリスの方はちょっとまた違っていまして、やっぱり階級がまだあるんですね。クラスレスの社会になったとかとブレアは言っているんですけれども、やっぱり新聞も違うし食べるものも違うし、もう英語の発音も違うというぐらいまだ階級がありまして、ここでどういうふうに職業訓練をするかというと、非常にあめとむちといいますか、非常にはっきりしているんですけれども、職業訓練学校、今とても力入れているんですけれども、その学校を退学したりサボらないで学校に行くとお小遣いくれるんですね。よく学校を休まなかったといってお小遣いくれるんです。それでみんなとても喜んで学校に行くといったよううなことが、ちょっと日本人から考えると、学校に行ってお金くれるなんて何か余りにもって感じがするんですが、学校を休まないと、よくやったと褒められるぐらいじゃなくてお金をくれる、お小遣いをくれるんですね。

 あるいは子どもに非常にボランティアをさせるんですね。それで職業訓練をさせるというか、ボランティアだとお金は入らないんですけれども、インターンシップといいますか、それぞれのいろんな会社がインターンシップを受け入れるように制度ができていますので、そこのインターンシップで夏休みに一か月とか何かを教育を受けるというか職場の体験をするというようなことが非常に重要視されていまして、今そのインターンシップをやったことが就職の重要な良い会社に合格する必須条件とまで言われていまして、働いた経験を全然持っていないで新しく自分の会社に働くというのは余り良くない、どこかで働いてもらったらコミュニケーションの能力はできるし、いろんな苦労もあるだろうし、忍耐力も養われるだろうし、いろんな人と付き合うすべも学ぶだろうということでインターンシップ、大学時代のインターンシップがもう良い就職のための必須のようなことになっていまして、イギリスは、階級を超えていかに労働者階級のお子さんも職業の自由を与えるかといったような感じで、お小遣いを上げてでも学校は真っ当に行くようにとか、あるいはあめとむちでして、悪いことをすると割と早めに刑務所に入れちゃうということをやるんですよね。あるいは足にタグを付けて夜間外出禁止令というのをやるとか、割と厳罰主義なんですね、イギリスは。その代わり、ちゃんと勉強したり頑張ったりしたりする子にはお小遣いをくれるといったような、割と実践的な実務的なところがイギリスでは非常によく見られました。

 以上です。

会長(広中和歌子君)

 ありがとうございました。

 それでは、耳塚参考人、お願いします。

参考人(耳塚寛明君)

 お答えしますと、私のレジュメの二ページの二の三の二というところに書かれたことについてのお尋ねだと思います。

 バリュー、価値、主観的な価値とポシビリティー、実現可能性、機会、この値を掛け算して最も大きな選択肢を人々は選ぶという、これは進路選択の合理的な理論とでも言ったらいいかと思いますけれども、これをここに示しました。そして、これを示しましたのは、かつてはポシビリティーの方が、つまり何が可能か、どこに入れるかというポシビリティーが重視された進路選択であり進路指導であったものが、今日はバリューの方にウエートが置かれるようになってきたということ、その変化を示すためにこれを出したわけであります。

 私の主張といたしましては、言ってみれば非常に月並み、凡庸なものでございます。要するに、両方ともの視点が重要じゃないかという点であります。

 第一に、バリューだけであっても実現可能性が考慮されないような選択というのは、実際には実現できないわけですので無意味であります。この意味で、人々の選択、青少年の選択は機会構造の中で、それに制約された範囲で行われるにすぎないということであります。しかし同時に、ポシビリティーだけが重視されていたら、人々はその職業に自負だとか誇りだとか熱意だとかを持つこともできません。継続することも不可能になるでしょう。そのためには、既存の機会に唯々諾々と従うというだけではなくて、できるだけ人々が意欲とか誇りを持てるような仕事を創出するという努力もまた同時に必要になるのではないかと考えます。


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