2005年3月9日(水)
- ブッシュ政権が開発をすすめる地中貫通型核兵器について、被爆国日本の政府として米国に中止を求めるよう追求。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
今年は被爆六十周年。私は広島に育ちまして、卒業した高校は原爆で全滅をいたしました。人間の形で死ぬことすら許されなかった先輩もいると、その思いで今日は質問をいたしますので、よろしくお願いいたします。
二〇〇〇年の核不拡散条約の運用検討会議で核兵器の全面廃絶に対する明確な約束が合意をされました。この検討会議の性格、それから二〇〇〇年の合意について、まず説明をお願いします。
- 政府参考人(天野之弥君)
お答えいたします。
まず、核兵器不拡散条約、NPTの運用検討会議の性格でございますが、これは、NPT条約に基づきまして、NPT締約国が一九七〇年の条約発効以来五年ごとにNPTの運用を検討するために開催している会議でございます。我が国といたしましては、NPTは国際的な軍縮、不拡散の基礎と考えておりまして、運用検討会議はこのNPTの信頼性を強化するための会議であると考えております。
二〇〇〇年の結果でございますけれども、二〇〇〇年のNPT運用会議においては、軍縮、不拡散の分野におきまして、将来に向けた措置を含む重要な最終文書が全会一致で採択されたと承知しております。
- 井上哲士君
その中に、核兵器の全面廃絶に向けた明確な約束ということが核兵器国も含めて合意されました。この合意に対する日本政府の評価はどうなんでしょうか。
- 政府参考人(天野之弥君)
お答えいたします。
御指摘のとおり、二〇〇〇年に合意された最終文書では、包括的核実験禁止条約の早期発効、兵器用核分裂性物質生産禁止条約交渉の即時開始、早期終了、並びに核兵器の全面的廃絶に関する核兵器国の明確な約束などに関する十三項目の措置を盛り込んだ合意が行われております。
我が国といたしましては、これらの合意は核軍縮・不拡散を推進するための方向性を示したものとして高く評価しております。
- 井上哲士君
今年五月にこの五年ごとの再検討会議が開かれますが、日本政府としてはこの会議をめぐる情勢をどう評価し、どのように対応をしようとされているんでしょうか。
- 政府参考人(天野之弥君)
お答えいたします。
今年の五月に開かれますNPT運用検討会議は、地下ネットワークによる核拡散、北朝鮮やイランの核問題、アメリカによるCTBTの批准の拒否といった軍縮・不拡散分野をめぐって極めて厳しい状況の中で開催される会議であると応承しております、受け止めております。
このような状況の中で、二〇〇五年の運用検討会議におきましては、NPT締約国が一丸となってNPTの信頼性を維持強化するためのメッセージを打ち出すことが非常に重要だと考えておりまして、日本としても最大限の努力をしていく考えでございます。
- 井上哲士君
今、厳しい状況というふうに言われましたけれども、最大の懸念はアメリカの動向だと思うんですね。ブッシュ政権は、この再検討会議の準備委員会などで、議論すべき軍縮課題はないとか、二〇〇〇年合意には拘束力がないと繰り返しております。そればかりか、新たに実践に使える核兵器の研究開発を進めております。
その一つである地中貫通核兵器について、アメリカの二〇〇五年、二〇〇六会計年度の予算がどういうふうになっていると承知されていますか。
- 政府参考人(河相周夫君)
お答え申し上げます。
今出されております二〇〇六会計年度につきましては、約四百万ドルが強力地中貫通型核爆弾の研究目的のために計上されているというふうに承知しております。
ちなみに、前年、二〇〇五年会計年度につきましては、の歳出法案で歳出が認められなかったというのが事実関係として承知しておるところでございます。
- 井上哲士君
この地中貫通核兵器とは一体どういうものなのか、説明してください。
- 政府参考人(天野之弥君)
地中貫通型核兵器というのは、地中に貫通した上で爆発するように設計された核兵器であると承知しております。
なお、現在アメリカは地中貫通型核兵器としてB61型11という核兵器を、核爆弾を保有していると承知しております。
- 井上哲士君
そこで大臣の認識を聞くんですが、この地中貫通核兵器の開発というのは、ブッシュ政権が二〇〇二年の一月に作成をしたアメリカ国防総省の核態勢の見直しという報告の中で位置付けられておりますが、この中では、地下の核爆発というのは地表爆発兵器と同じ損害を与えても少ない放射能降下物しかないと、こういうふうに言っているわけですけれども、これ政府も同じような認識でしょうか。
大臣、大臣の認識、大臣の認識ですよ。
- 政府参考人(河相周夫君)
事実関係に関することですので私からまず説明させていただきますけれども、今御指摘のニュークリアポスチュアレビュー、日本語に訳しますと核戦略見直し報告、これは二〇〇二年一月に出されたものでございますが、この内容につきましては非公式の文書の扱いになっておりますので、政府として今御指摘の点にお答えすることは適当ではない、差し控えさせていただきたいと思います。
- 井上哲士君
それでは、一般論で大臣にお聞きしますが、こういう地中で爆発する核兵器というのはいわゆる死の灰などを余り出さない兵器だと、こういう認識を持っておられますか。
大臣、大臣の認識をお願いしますよ。
- 国務大臣(町村信孝君)
私は余りこの核兵器の詳しい中身について、不勉強なものですから、これがいかなるものであるのか、率直に言って私もまだ不勉強でございまして、どういう性格のものか今後よく勉強していきたいと思います。
- 井上哲士君
唯一の被爆国の政府の外務大臣がね、それでは困るんですよ。どうやって交渉するんですか、NPTで。
今、私、資料を手元に配っておりますけれども、これはアメリカの議会の調査局が二〇〇三年十二月十一付けで出している報告書なんです。過去の核実験のデータを見ましても、数十メートルから百メートル程度の深さで核兵器が爆発させれば、火球が地表に噴出して、土地をえぐるような形で放射能で汚染された土壌が降り注ぐ。この範囲は地表や空中での核爆発よりもはるかに多いんですね。最大百倍以上になる。けたが違うようなことになるんです。
そういう残虐兵器だという認識、大臣おありなのかどうか。被爆国の外務大臣としてしっかり答えてほしいと思うんです。
- 委員長(中曽根弘文君)
天野部長。
- 井上哲士君
外務大臣、大臣。
- 政府参考人(天野之弥君)
事実関係ですので、私からお答えさしていただきます。
核兵器、地中貫通型でありましても核爆発によりまして降下物が出てくることはそのとおりでございます。その量が具体的に多いか少ないかという点については、様々な条件もあると思いますので、具体的には承知しておりません。
- 井上哲士君
アメリカの議会に出された資料なんです。そして、こういう残虐兵器の予算が新たに計上されたと。重大なのは、このアメリカの核態勢の中にどういうふうに位置付けられているのか。先ほども言いました核態勢見直しの報告書ではこれについてどういうふうに位置付けていますか。
- 政府参考人(河相周夫君)
先ほども御説明申し上げたところでございますけれども、米国防省が発表しました核戦略見直し報告、この内容については非公式の文書になっておりますので、これとの関連での御質問にお答えすることは差し控えさしていただきます。
- 井上哲士君
これはね、アメリカ国内でも全部報道されているんですよ。そんなこと知らないんですか、日本の外務省は。
もう一回お答えください。
- 政府参考人(河相周夫君)
繰り返しになりまして申し訳ございませんけれども、この文書は非公式、非公表の文書という存在でございますので、これについて政府としてお答えすることは差し控えさせていただきます。
- 井上哲士君
私、ここにほぼ全文持っていますけれども、これはアメリカ国内でも全部報道されているんです。持っているはずなんですね。
この中では、現在の核戦力の限界というふうにして、地中に深く構築された堅固な目標など、新たな出現した脅威を撃破するために新しい能力が開発されなければならないと、こういうふうに述べているんです。しかも、撃破する目標として、今七十以上の国が地下施設を軍事目標に使用していると。千四百という数出しているんですね。結局、アフガニスタンの攻撃のときに通常兵器のバンカーバスターなど使ったけれども、タリバンに、洞窟にこもっているのに手を焼いた。やっぱり新しい兵器が必要だということでやっているわけですよ。正に使用を目的とした開発なんじゃないですか。大臣、いかがですか。
- 国務大臣(町村信孝君)
先ほど局長が答弁をしたように、アメリカの予算でございます。二〇〇五年はゼロ、二〇〇六年度は四百万ドルと。これは強力地中貫通型核爆弾の研究の予算であるということでございまして、開発予算あるいは配備の予算ではないと、こう私は理解をしております。
- 井上哲士君
開発、使用と研究というのは結び付いているんです。
しかも、ラムズフェルド国防長官は、つい先日、二月十七日の議会の証言で、この地中貫通核兵器の実現性の研究を完了するために二〇〇七年までに新たに千四百万ドルの予算が必要だと言っているんですね。それだけじゃないんです。二〇〇六年の予算でも、模擬爆弾の投下実験も計画しているんですね、研究と別に。これは四百五十万ドル計上しているんです。正に実戦で使用するための研究開発じゃないですか。中止を求めるべきじゃないですか、被爆国として。いかがですか。
- 委員長(中曽根弘文君)
天野部長。
- 井上哲士君
大臣です、大臣。
- 委員長(中曽根弘文君)
天野部長。
- 井上哲士君
大臣のあれでしょう。
- 政府参考人(天野之弥君)
事実関係ですので、私からお答えさせていただきます。
アメリカが二〇〇六年度予算で要求している予算に基づいて行おうとしておりますのは衝撃、コンクリートなどに当たった衝撃の実験を行う予定であるというふうに承知しております。
- 井上哲士君
だからこそ、開発、使用目的そのものだから世界の国から今批判の声上がっているんですよ。なぜ中止を求めないんですか。
- 国務大臣(町村信孝君)
ラムズフェルド国防長官の証言の概要でございますけれども、ここで議論をしているのは研究の話でありますと、既存の兵器の出力及び致死性を低下させ、米国の利益保護に資するという形で地下に貫通するようにできるかという研究を行うことでありますと、本研究を行うことはアメリカの国益に資すると、こういう答弁をしているようでございます。
- 井上哲士君
だから、それに対して日本政府としてはどういうふうにアメリカに物を言っているのかと、物を言う気があるのか、そのことを聞いているんです。
- 国務大臣(町村信孝君)
まあ、いろいろな国がいろいろな研究をするということについて、私どもとして一々この研究はいいの悪いのということを言う立場にはない。
ただ、日本国政府としてのこの核兵器全体についての基本姿勢というものは、これまで累次の国連総会における決議等々の共同提案国になっている、あるいはイニシアチブを取っているということからも明らかなように、私どもは、究極的には核のない世界をつくっていこうと、そういう方向で核兵器の拡散等々には断固反対をするということで常に発言もし、イニシアチブも取っているところでございます。
- 井上哲士君
二〇〇〇年の合意で全面的な核廃絶を約束をした、その後に新たなこういう研究をしているわけですよ。正に合意に反するものだとして被爆国日本の政府が物言えなくてどうするんですか。研究だから自由なんていう話ないでしょう。もう一回答弁してください。
- 国務大臣(町村信孝君)
共産党の御意見として承っておきます。
- 井上哲士君
これは本当にひどい答弁ですよ。世界の今国々がこの二〇〇五年の再検討会議に向けてアメリカのこういうやり方について批判の声上げているんです。被爆者の皆さんも言っているんです。それをそんな答弁をするということは、本当に私は情けないと思います。結局、アメリカに物が言えない、追随という姿勢がこういうことをやっているわけですから、これでは被爆国政府として責任を果たせないと。
二〇〇五年の今度の会議に向けて、アメリカへ向けてしっかりと物を言ってほしい、改めて強く要請をいたしまして、質問を終わります。
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