2006年3月30日(木)
文教科学委員会
「独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備法案」について (質疑・採決)
- 東京美術館フィルムセンターについて、貴重なフィルムが散逸しているのに、逆に人を減らせば、取り返しがつかなくなることを指摘し、人的・物的強化を要望。また、放射線医学研究所の「内部被ばく研究」について、原子力安全委員会も必要性があることを示しながら、研究の中止の撤回を求める。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
今日は美術の、文化の問題が議論になっております。私も、東京国立近代美術館フィルムセンターの問題についてまずお聞きをいたします。
今映画の撮影所がどんどん売却などされている中で、京都には東映の撮影所が頑張っておりまして、私そこの土橋亨監督と親しくしておるんですが、最近「嗚呼! 活動屋群像」という本を出されました。監督、俳優、そして裏方さんまでいろんな人間模様を書いておりまして、やっぱり総合芸術だなということを改めて思ったわけです。
それで、文化庁長官の下に映画振興に関する懇談会がつくられまして、平成十五年四月に「これからの日本映画の振興について」という提言が出されております。そしてさらに、十六年の九月に「フィルムセンターの独立について」というのがまとめられておりますけれども、この二つの提言というのは、文化庁としてはどう位置付けて生かされてきているんでしょうか。
- 政府参考人(加茂川幸夫君)
お答えをいたします。
御指摘にございました「これからの日本映画の振興について」の提言、平成十五年四月に出されたものでございますが、これを踏まえまして、今文化庁が文化政策の柱の一つとして取り組んでございます「日本映画・映像」振興プランというのがございますが、これが着実に進展してきておりますのはこの提言を踏まえての結果でございます。
また、フィルムセンターの独立についての審議のまとめ、平成十六年九月に出されたものでございますが、ここでは同センターを独立した館として位置付けることなどが提言されたわけでございますが、正直申し上げますと、現在の厳しい財政事情でございますとか、独立行政法人をめぐる改革の状況を踏まえましたときには、この提言につきましては慎重に検討すべき課題ではないかと今文化庁としては考えておるところでございます。
- 井上哲士君
この振興に関する懇談会で出された提言でありますけれども、本当に生かされ切れているんだろうかと思ってお聞きをするわけですが、まず、一年間に公開される日本の映画の数、それから現存する日本の映画フィルムの数、さらにこのフィルムセンターに所蔵している日本映画、外国映画の数をそれぞれお答えいただきたいと思います。
- 政府参考人(加茂川幸夫君)
日本映画の劇場公開制作本数というものにつきまして調べてみましたら、映画年鑑に数字がございまして、これは株式会社時事通信社、民間の発行している書籍でございますが、これによりますと年間、一年間に約三百本という数字が示されてございます。
現存する日本映画の総数というものを残念ながら私ども今把握をしていないわけでございますが、戦後に限ってその制作本数、劇場公開映画の制作本数というものを調べてみましたら、十六年度末現在で約一万九千本あると承知をいたしております。そのうち、この一万九千本のうちでございますが、フィルムセンターで所蔵しておりますものが三千二百本に上ります。
なお、今申しましたのは劇場公開用の映画の本数でございまして、フィルムセンターではこれ以外にも記録映画でございますとかニュース映画等の所蔵を行っておりまして、こういった所蔵フィルム数を合計いたしますと、最新の数字で申し上げますと、日本映画、外国映画を含めましておよそ四万六千本ございます。
- 井上哲士君
そういう劇場以外のものも含めますと日本映画のフィルム数は約十万本という報道もされておりましたので、所蔵できているのは、日本映画でいいますと四割にも満たない数になるんだろうと思うんです。
そこで、フィルムセンターの職員体制がどうなっているか、お答えください。
- 政府参考人(加茂川幸夫君)
お答えをいたします。
フィルムセンターの職員数は、現在、常勤と非常勤を合わせまして三十九名、常勤が十一名、非常勤職員等が二十八名という状況になってございます。
- 井上哲士君
常勤十一人という大変少ない数です。神奈川県にこのフィルムセンターの相模原分館がありますけれども、ここには常勤の方がいないで、このフィルムセンターの管理係長が週二回勤務するだけということになっておりまして、文化遺産としての映画フィルムを収集、保存する国内唯一の国立の施設としては非常に寂しい限りだと思うんですね。
先ほどの独立についてという文書の中では、諸外国と我が国のフィルムセンターの人員数や所蔵フィルムを比較をしております。例えばスウェーデンのシネマテーケット、これは五十二名の職員の下収集、保存を行って、これまで約三万五千本のフィルムを収集、保存している。それから、フランスの国立映画センターや韓国の映画振興委員会及び映像資料院などは国としての法的な位置付けの下で法定納入制度に基づいた収集、保存、それから映画制作の助成、融資など幅広い業務を行っているということがこの中で書かれておりますが、その上でこの独立についてという文書では、現状のフィルムセンターについてはどのような評価をされているんでしょうか。
- 政府参考人(加茂川幸夫君)
お話にもございましたように、フィルムアーカイブの取組、各国によって様々でございまして、職員数又は予算に関しまして比較をするのはなかなか難しい状況にあると私どもは認識をしております。
委員御指摘もございましたように、いわゆる法定納入制度の有無、ある、なしによっても随分違ってまいりますし、文化行政の組織、制度が異にしているからその比較が難しいという認識に立つものでございます。特に、日本のフィルムセンターは独立行政法人美術館、その東京国立近代美術館と、一部門として運営をされておるわけでございますから、その組織自体が特異な、外国に例を見ない形を取っておることも言えようと思っておるわけでございます。そして、先生、委員御指摘にございました審議のまとめにおきましては、こういった一律の比較が困難だということも言及されておるわけでございまして、私ども、この認識と同じく考えをするものでございます。
- 井上哲士君
答えられませんでしたが、困難であるけれども、しかし決して日本の施設が充実したものとは言えないというのがこの報告の結論なんですね。しかも、収集、保存機能については国が中心的に行うべきだというふうにした上で、依然としてこれまでに劇場公開された日本映画のフィルムの一部しか収集、保存できなく、戦前のみならず戦後の映画フィルムについても貴重なフィルムの散逸が進んでいると、こう言っております。そして、収集、保存に係る機能とそれを果たすための必要な施設設備の一層の充実を図るべきだと、こう言っているわけですね。
ところが、今回、独立行政法人にも一律五%の人員削減が掛かってくるということになりますと、この方向と全く逆行する、映画振興と逆行することになると思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
- 政府参考人(加茂川幸夫君)
日本の映画に関する振興について文化庁はどう取り組むかということにつきましては、先ほどもお話を申し上げましたが、「日本映画・映像」振興プランというのを文化施策の柱として進めてきておるわけでございまして、この中では四つの柱がございます。映画、映像の創造について、作ることについての支援をする。人材育成と普及にも力を入れる。そして、流通の促進をするというのが三つ目。四つ目の柱がこのフィルムの保存、継承でございまして、委員が述べられておりますフィルムセンターの充実、機能強化もこの四番目の柱として位置付けられておりまして、私どもは、課題としては大きな課題になっておると認識を持ちながらこの振興プランに取り組んでおるところでございます。
ただ、独立した館にすべきであるという審議のまとめを踏まえて、現状でどう対応するかということについて考えますときに、先ほど申しましたけれども、財政状況が厳しいこと、さらには独立行政法人を取り巻く厳しい改革の見直しの流れの中でこの課題に対応していかなければならないわけでございまして、なお今後慎重に検討する必要があると、繰り返して恐縮でございますが、そういった認識が現在の認識でございます。
- 井上哲士君
このままほうっていくと貴重なフィルムの散逸が進むと、こういう危機感をこれ書いているんですね。先ほどから効率化という話も審議で出ているんですが、そういうことで打開できない事態だと思うんですね。
二〇〇四年度の独立行政法人評価委員会の評価で、このフィルムセンターについて、業務の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置、それから業務の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措置の保管の状況それから修理の状況、それぞれについて定性的評価ではどういうふうに述べているでしょうか。
- 政府参考人(加茂川幸夫君)
十六年度の評価について簡単に申し上げますと、国内で上映されなくなった映画を上映して国民に鑑賞する機会を提供したこと、実は高い評価を受けております。また、我が国で唯一の国立の映画に関する専門機関であるこのセンターの活動と役割の認知度を高めることによって民間会社等から多量の寄贈を受けることができた、所蔵フィルムの充実に努めることができたこと、これについても高い、非常に高い評価を受けておるわけでございます。
一方で、企画上映について、若い人たち、若年層を引き付けることについて検討すべきであるという意見も付いておるものと承知をいたしておるところでございます。
- 井上哲士君
肝心なところを読まれないんですね。
いいですか。定性的評定でどう言っているか。「フィルムセンターについては、既に限界近くまで、効率化を達成しているため、これ以上の効率化は本来の業務に支障を来たす恐れがある。」と、こう書いております。さらに、収集について言えば、「今後とも積極的に収集することが望ましいが、担当研究員が一名」「増員して管理すべき」だと。それから修理の問題、「充分な努力が払われており、現状の体制では、これ以上の実績を望むことができない。」と。要するに、正に限界までやっておられるということをこの評価委員会自体が書かれているんですね。
私もこの間行ってまいりましたけれども、本当に映画がお好きな皆さんばかりですから非常に献身的な奮闘をされておりますけれども、しかしこれ以上の実績はやっぱり望めないと。そして、一方でこの貴重なフィルムの散逸が、危機感が表明されているわけですから、私は、やっぱりこれは取り返しが付かない事態になる前に、ここについてはしっかり人的、物的強化をやっていくということが必要だと思いますけれども、大臣、見解いかがでしょうか。
- 国務大臣(小坂憲次君)
映像文化を保存する、映像文化というか、このフィルムセンターという名前が付いたことからしても、映画だけでなく、いろいろなパフォーマンスを映像として保存することも含めて、フィルム化されたものを全部保存していくという意図も含まれていると思うんですね。
文化というのは人類の遺産だと思うということを申し上げたんですが、バレエであっても歌舞伎であってもいろんなパフォーマンスがありますが、それを保存する方法としては、やはり音と絵を同時に保存しなきゃいかぬということから、フィルムあるいは最近ではビデオ、最近ではデジタル化されたそういった映像の保存方式がありますが、こういったもので保存していくことが必要だと思いますし、その重要性は私は非常に強く感じておりまして、その点においては、党は違いますが、委員の御指摘は私も本当に共感をいたします。
そういう意味で、今フィルムセンターが人的にも物的にも限界に来ているという御指摘でございますが、そういった意味では非常によく努力をしていただいて、日本映画の振興に重要な役割を果たし、今日そのフィルムの散逸を防いで必死な努力をされていることに心からの敬意を表したい、こう思います。
しかし、一方では、私どもの一つの状況としては、一つの政府の方針というものがありまして、総人件費削減というものがございます。ですから、そういう中で、今後の運営交付金についても、金額その他から見れば大変に厳しい状況になることは私どもとしては避けられない部分があると思っておりますので、そういった厳しい環境を踏まえた中で、どのような在り方としてフィルムセンターの在り方を検討できるのか、現場の者とよく相談をしながら、慎重に検討したいと思っております。
しかし、重ねて申し上げますが、気持ちは非常に、私は実は放送文化の保存のためにNHKアーカイブス、そしてまた放送センターの設立に関しても私も大きく関与してまいりましたし、強くそれを主張してきたものでございますし、またそれらに関連したものの保存についても今いろいろ考えておりますが、そういった意味で、いろんなことを考えて、日本の文化、そして特に映像文化という人々に大きな感動を与え、その感動を再び呼び起こすことができるような環境を維持するということの必要性を強く認識はいたしております。
- 井上哲士君
力強い認識をいただいたわけですが、その認識にふさわしい支援を是非よろしくお願いしたいと思います。
次に、放射線医学総合研究所の問題についてお聞きします。
この研究所でプルトニウムによる内部被曝に関する研究が行われてきましたけれども、その目的と経緯について、まずお願いします。
- 政府参考人(清水潔君)
プルトニウムの内部被曝に関する研究に関しましては、欧米先進諸国においては、プルトニウムの人体内での動きと放射線量、発がんリスク、その低減化のための手法等について、ネズミ、犬、猿等を用いた動物実験研究が一九五〇年代から八〇年代にかけて行われております。
我が国でも、一九六〇年代より放射線医学総合研究所において内部被曝に関する基礎的研究が行われてきたところでありますけれども、その後、高速増殖炉開発を含む核燃料サイクルの確立という国のエネルギー政策の展開を踏まえて、その安全性の確保と関連する生物学的な安全性研究を行うためのプロジェクトとして、一九八五年、同研究所に内部被曝実験施設が整備されたところであります。同研究所では、この実験施設を活用し、プルトニウムによる内部被曝に関して、人体内部に入った放射性物質の挙動あるいはその放射線の影響等を動物実験により把握、分析することを目的として、一九八六年から約二十年間にわたり動物実験研究を実施してきているところであります。
平成十六年十二月の総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会による勧告の方向性も踏まえながら、現行中期計画が満了する平成十七年限りでこの施設における動物実験研究を終了することといたしております。
- 井上哲士君
なぜ中止をするんでしょうか。その理由についてお願いします。
- 政府参考人(清水潔君)
この動物実験研究でございますけれども、二十年にわたって研究活動をやってきたわけでありますが、この二十年間で相当の成果を上げてきております。
例えば、プルトニウム吸入暴露動物の体外線量計測法であるとか、アルファ線量算定・評価方法の確立でありますとか、あるいは酸化プルトニウムのエアロゾルを吸入暴露したラットにおける肺がん発生率の線量効果関係の解明でありますとか、あるいはキレート剤、これは除去剤でございますけれども、ラットからの体内プルトニウム除去効果の解明等の成果を上げ、また、それぞれ動物実験より得られた病理学的なデータを中心としたデータベースを作成し、広く研究の活用に供するためのアーカイブを整備したと。
こういうふうな成果から、本件の動物実験研究に関しては所期の目標を達成したものと考えており、そういう意味で終了するということでございます。
- 井上哲士君
所期の目標を達成をされたということなんですが、本当にいいのかどうかということなんですが。
原子力安全委員会から来ていただいておりますが、平成十六年七月二十九日に原子力の重点安全研究計画を決定されておりますが、この決定の位置付けというものはどういうものなんでしょうか。
- 政府参考人(片山正一郎君)
御説明を申し上げます。
原子力の重点安全研究計画は、原子力安全委員会が原子力安全研究専門部会の報告を受けて、委員御指摘のとおり平成十六年七月に決定したものでございます。原子力安全委員会及び規制行政庁が行う原子力安全の確保のための安全規制の向上に向け、必要な研究成果を得るために重点的に進めるべき安全研究について、原子力安全委員会として提示したものでございます。
- 井上哲士君
その中で、放射線影響に関する安全研究の推進というところがありますが、今後進めるべき研究課題として幾つか例示をしていると思いますけれども、何を挙げているんでしょうか。
- 政府参考人(片山正一郎君)
御説明を申し上げます。
原子力の重点安全計画では、放射線影響に関する安全研究課題として、低線量の放射線の生体影響に関する研究、あるいは放射性核種の体内取り込みによる内部被曝に関する研究、あるいは被曝線量の測定・評価に関する研究などを示しているところでございます。
- 井上哲士君
今もありましたように、今後の安全研究の推進として、放射性核種の体内取り込みによる内部被曝に関する研究ということも挙げられております。そしてさらに、この原子力安全にかかわる人材を養成確保するとともに、研究施設の維持活用に努めていく必要があると、こういうふうにも明記をされております。
しかも、この放医研のホームページを見ますと、自らこう書かれているんですね。プルトニウム化合物の生物学的安全性について科学的データを提供し、放射線安全・防護基準の確立に資するというのが最終目標と。そのためにはまだまだやるべき研究課題は多く残されているということで、例えばプルサーマルで用いられるMOX中のプルトニウム組成比、あるいは核燃料再処理過程で生じる様々な化学形等による生物影響のリスクの違いなど挙げておられるわけです。
ですから、所期の目標を達成したというよりも、むしろ今後の研究課題は多く残されているということが、この安全委員会のこの計画からいっても、研究所自身の明言からいってもあると思うんですけども、その点いかがでしょうか。
- 政府参考人(清水潔君)
御指摘の放射線核種の体内取り込みに関する内部被曝に関する研究でありますけれども、御指摘のようにこの施設を使いました動物実験研究というのもさることながら、例えば低線量放射線の生体影響に関する研究でありますとか、環境中の放射線による人体の被曝線量の実態把握予測等、そういう重要課題も当然あるわけでございます。
御指摘いただきました原子力の重点安全研究計画におきましても、放射線医学研究所がこれから取り組むことが期待される重要課題として挙げておりますのは、例えば低線量放射線の生体影響に関する研究でありますとか、あるいは分子生物学的手法による研究の積極的推進でありますとか、あるいは環境中の放射能による人間及び環境の被曝線量の実態の把握、予測等でございますとか、いずれにいたしましても、放射線医学総合研究所のこれまでの様々な研究活動の蓄積と併せて、例えば原子力研究開発機構でございますとか環境科学技術研究所でありますとか、様々な研究機関、大学とともに得意分野を生かしながら、放射線総合医学研究所に期待されているのは、これまでの研究の成果、データを解析、整理して利用できるような総合的なリスク評価手法の開発に向けた、そういうことが課題となっている、私どももそういうふうに認識しております。
- 井上哲士君
内部被曝の問題がこの安全研究計画でも明確に書かれているわけですね。この内部被曝の問題は、今、例えば原爆症認定の裁判でもイラクの劣化ウラン弾の影響でも様々問題になっているわけでありまして、更に研究が必要だと思うんです。ほかの分野のことをやるなって言っているんじゃないんですね。ここの問題を所期の目標は達したということでやめてしまうことは問題ではないかということを申し上げているわけであります。
使用済みの核燃料からウランとプルトニウムを取り出す、青森県の六ケ所村の再処理工場の最終試験に向けた協議会が先日開かれました。この場には小坂文部大臣も出ておられたわけですね。そして、安全確保が前提だということを述べているわけですね。さらに今、プルサーマル計画に踏み出そうとしているわけですから、そういう、我々は原発の危険を増大させるこのプルサーマルの実施は反対でありますけれども、その上この安全研究さえも後退をするというようなことになったら私は大問題だと思いますけれども、この点、大臣の所見を伺いたいと思います。
- 国務大臣(小坂憲次君)
御指摘のプルサーマル計画においては、今の内部被曝研究、それからこういったものを含めて、軽水炉の運転経験及びこれまでの種々の原子力研究の成果すべてに立脚した上で、安全性の確保を大前提としてこれ実施するものでございますから、御指摘のプルトニウムの内部被曝実験施設を活用した研究については、その知見から得られた成果というものの蓄積がございます。
そういった意味での所期の目標を達成して終了することとしておるわけでございますけれども、今後はその得られたデータを基に、研究成果を基にした放射線の安全研究を更に進めていくことは、これはもうやるわけでございますので、その実験施設における所期の目的の知見、それから計測方式の確立等々の、そういう実験の施設を使った一連の研究は所期の目的を達成したという判断を得たわけでございますが、しかし、そこから得られた知見に基づくこの安全研究というのは今後とも続けていくということをやはり御理解をいただいた上で今回の処置についての理解を得たいと、こう考えます。
- 井上哲士君
独法化によって国の責任が後退し、安全とか文化とか、採算が合わない分野、すぐに効果が出ない分野が削られていくということになれば、これは大きな問題だということも指摘をし、これが非公務員化になれば更に助長されるおそれがあるということも述べまして、質問を終わります。
- 委員長(中島啓雄君)
他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
- 井上哲士君
私は、日本共産党を代表して、独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備に関する法律案に対する反対の討論を行います。
反対理由の第一は、公務員型の法人を非公務員型に移行させる点です。
独立行政法人の現状は、短期的な成果を求めるプロジェクト研究などに重点が置かれ、長期的な基礎研究や国の貴重な文化財、美術品等の収集、保存など、利益追求の民間企業では担えない、採算性は期待できない、公共性が高い研究などが軽視される状況があります。非公務員化になれば、これを一層助長し、国の果たすべき役割、責任を放棄することになり、認められません。
全体の奉仕者として安心して職務に専念できる公務員の身分保障をなくすことは、困難な基盤的研究や中長期的研究の推進、産官学連携の公共的、中立的立場からの円滑な推進に支障を来しかねません。また、非公務員型の独立行政法人には雇用継続を明確に保障する規定がなく、業務の変化等に応じた人員削減が行われる可能性があります。
さらに、この間、効率性追求の中、研究所などの新規採用がほとんど任期制職員になるなど非正規雇用が増えている中、非公務員型へ移行すれば、任期制職員のほか、非常勤職員や派遣など不安定雇用を更に拡大するおそれがあるからであります。
第二に、国立青年の家及び国立少年自然の家を国立オリンピック記念青少年総合センターに統合することにより、採算のみを理由に事業が縮小される危険性があります。子供や青年を取り巻く環境の悪化や行き過ぎた管理と競争による教育のゆがみから、青少年教育を始めとする社会教育の施設の充実こそが求められると思います。
以上、反対の理由を述べて討論といたします。
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