2006年4月5日(水)
経済・産業・雇用に関する調査会
「高齢者雇用の在り方」について
- 高齢者雇用安定法が4月1日から施行されたが、「希望者全員の雇用の継続」という法の趣旨に反し、企業側が様々な条件をつけて選別する自体が各地でうまれている。こうした現状への評価と、高齢者雇用を前進させるために必要な企業側への対応について質問。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。
まず、大久保参考人に改正高齢者雇用安定法の施行にかかわってお聞きをいたします。
年金支給年齢を六十五歳に遅らせるということが契機になったことを考えますと、先ほどもありましたように、希望者全員の雇用ということが、本来、法の精神だと思います。ただ、やはり、これも先ほどありましたが、施行を前にいたしまして、過去五年の平均考課が何々以上とか、それから過去何年間の出勤率が何%以上とか、こういうようなことが出て、事実上の選別というようなことがあるじゃないかということで、いろんなトラブルもあるわけですね。先生、この施行に当たって、いろいろの御研究の中で、こういう現状をどのようにつかんでいらっしゃるのかという点と、それからやっぱり法の本来の精神からいった場合に、どのようにこの点をお考えで、どう改善をすべきとお考えかということをお聞きしたいと思います。
それから、大橋参考人にお聞きいたしますが、いただいた資料の表の二で、「高齢者に対する特別の措置の現状」というのが最後の表がありましたけれども、先ほどありましたように、特別の措置を取っていないというところが職種全体でいいますと七七・六%、実に四分の三というのはちょっと私も驚いたんですけれども、これだけこの問題が言われながら、こういうところにとどまっているという理由はどうお考えか。そして、手を付けるとすれば、まず優先的にどこからここで言われている課題についてやるべきとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
それから、島賀参考人にお聞きいたしますが、やはり大きな一つの鍵は財団にあるんだろうと思うんです。それで、資料の中では、特に人事部というのが会社にはないんだということも書かれておりますと、この財団の運営というのが非常に大事な鍵になっているんじゃないかと思うんですが、先ほどいわゆる運営費の点は会社とのかかわりも出されたわけですけれども、日常的な運営とか人的配置とか、そういう点での今の会社の経営陣との関係はどのようにされているのか、その辺をお聞きしたいと思います。
以上です。
- 会長(広中和歌子君)
それじゃ、まず大久保参考人、お願いします。
- 参考人(大久保幸夫君)
再雇用等が選別、選抜を伴ったものになっているということに関しては、実際そのとおりでございます。
非常に企業側の方々の悩ましい部分も、お話を伺っておりますと、要するにこの背景には、それぞれの企業が六十歳を超えた人たちをどういう形でその企業、事業の中で生かしていくのか、何をやってもらうことが彼らにとってもやりがいがあるし、企業にとってもちゃんと企業、事業に貢献してもらうことになるのかという、その方法論がやっぱり見出せていないんですよね。
ですから、結果的には、やはりそれは法律で決まったから、いわゆる定年退職してこれまで貢献してもらった人への一種退職金や年金にプラスアルファするような、そういう感覚の中でこの再雇用の問題をとらえざるを得なくなっている企業が非常に実態として多い。そこでは、要するに全部雇って給料払うということは、それを企業価値に転嫁できないわけですから、どうしてもその選抜とかという問題がまたそこにも出てくるという。もちろん、そのことがいいことだというふうには思っていませんけども、足下が全然できていないということがやっぱり背景にはあるのかなと。つまり、本当の意味では、どういう形で高齢者とそれを雇い入れる企業とがお互いにメリットのある就業関係がつくれるのかというところがやっぱりない限り、この問題はなかなか前に進まないかなというふうに今の段階では思っています。
それからもう一つは、私は、企業に高齢者雇用の場をすべて、その元々所属していた企業にですね、求めることのやっぱり限界もあるなというふうに感じていまして、企業の中では六十歳定年を前に本当のピーク時を超えてしまっていて、その後の段階、もうあと五年引っ張るというような、そういう感覚にどうしてもなっているところがありまして、元々いた企業に責任を持ってもらうということ以外の選択の場もつくっていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思うわけです。
例えば、私は、その一つのヒントは、仕事を分かち合うジョブシェアリング型の仕組みがあるんじゃないかと。
例えばサービス業なんかでいうと、サービス時間がすごい長いわけですよね。ある企業なんかでは、朝の時間帯は高齢者の人たちにメインで店長をやってもらって、昼間の時間は主婦の人たちに頑張ってもらって、夕方以降の時間は学生に頑張ってもらうとか、そういうようにいろんな人たちを組み合わせてうまく使うみたいなこともやっているわけですが。
そういうことについてももっと検討する必要があるだろうと思いますし、あともう一つは、何といいますかね、ある程度経験した人が、できたばかりのベンチャー企業みたいなところに行って、ベンチャー企業の経営を安定させるというサービスをする会社も最近は出てきているわけです。若い人ばかりでやっていくと、非常に勢いはいいんだけど同時に危なっかさもあるわけで、そういうところに定年退職近くまで企業で幹部をやっていた方が行くと、非常にいいアドバイスをしたりとか、経営に対して参考になると。そういう人たちを取締役で入れたり監査役で入れたり顧問で入れたりするというような仲介をしている会社も最近はあるわけですけれども、実は高齢者はいろんな形で貢献できるところがあると思っているんですけど、その本当にいろんなパターンをこれから作っていかなければいけないのかなというふうに感じております。
- 会長(広中和歌子君)
大橋参考人、お願いいたします。
- 参考人(大橋勇雄君)
表二について、高齢化対応、特別な措置が、非常に企業の割合が低いということで、実は私もこれはショックを受けております。これ、二〇〇〇年、平成十二年のデータなんですけど、こんなに低いのかと。
これをいろいろ考えましたけれども、結局のところ、例えば高齢者専用会社をつくるとかそういった、あるいは作業改善をする、そういうしゃれたことをするのは、大手の企業さんはそういうことをおやりになる体力もある。ところが、五から九十九人ぐらいの小企業、実はここのところで高齢者の比率は、従業員のうち高齢者の比率が圧倒的に高いんですね。
ちなみに、千人以上の大企業、これは高齢者の比率が、六十歳以上の高齢者の比率はわずか四%です。続いて、百から九百九十九人、まあ中企業ですね、これはその倍ぐらいで七・六%。小企業、五から九十九人ですと一五・二%高齢者の方が占めておられます。そういう意味では圧倒的に多くが五から九十九人の小企業であると。しかも、数も多いですし、そういう小企業では余り高齢化対策なんてやってないんじゃないかなというのが私の解釈なんですね。そういう点では、これはちょっと心配すべきことだと思うんですね。だから、今後こういった対応をどういうふうに進めていくのかというのが大きなテーマになると思います。
- 会長(広中和歌子君)
ありがとうございました。
それでは、島賀参考人、お願いいたします。
- 参考人(島賀哲夫君)
深川高齢者職業経験活用センターについて先生からもうちょっと突っ込んだ御質問があったわけでございますけど、先ほど、前川製作所がスタート時に三千万の寄附をしたということ以外には、人材派遣がメインでございますので、前川製作所グループ会社に年間給与を決めるときに手数料をこの事務経費として入金しております。したがって、前川製作所グループの独立法人がその費用を負担しているということが一つ。それからもう一つは、働いている方といっても大した人数おりませんで、常務理事が一人とそれから女性が二人ぐらいでほとんど事務をこなしておりますので、その給与の半分ぐらいのものを年間、前川製作所が負担して助成をしております。
先ほどの記載でちょっと誤解があってはいけないんで、総務部というのは、あるいは人事部というのはないんですけど、総務グループというのはございまして、各大学、工業専門学校等にリクルートをする採用の動きだとか、あるいはグループの給与計算をするとか、あるいは社会保険の関係の手続、計算事務をやるとか、これらは製作所本体の総務グループがほとんど代行しております。
したがって、人材派遣業がメーンであるということ、そこからは、経費だけは採用してもらうその独立法人に負担させますから赤字にはならずに、今財団法人の見直しが今国会で行われているようでございますけど、その点では非常に、基本財産などは幾らもありませんけど、赤字にならずにぎりぎりやっているという財団でございます。
あともう一つ、先ほどちょっと触れましたけど、地域に開かれた形にしなければいけなかったわけです。したがって、深川という名前を付け、前川じゃなかったということで、事務所は同じビルの中にございますけど、私が副会長をやっております東京商工会議所の江東支部などにもパンフレットをスタート時に配りまして、募集をしたんですが、意外に反響が少なかった。まだPRが足りないのかもしれませんが、地域に根差してだんだん広げていきたいと。
前川グループでまだ、これ七、八年やってきましたけど、この先はできれば派遣する企業も、ほかの前川製作所グループ外の企業で手を挙げるところがあれば、そこへも派遣していきたいと。あるいは、ここへ登録する方々も今いる人数より、百二十一名と申し上げましたけど、だんだん増える傾向ですが、社外の方も登録できれば、特殊技能を持った人がですね、受け入れていきたいということで、門戸をいつも開いてございます。
以上です。
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