2006年2月24日(金)
参院災害対策特別委員会
「豪雪地域での除雪費用に関わる税金の軽減」について
- 豪雪地域の融雪屋根の燃料費を、屋根の雪下ろし費用と同じように所得税の雑損控除の対象にするよう要求。また、住宅周辺や農地で使用する除雪機の経由税を免除するよう要求。
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
まず、今回の豪雪の、亡くなられた方へのお悔やみと被災者へのお見舞いを申し上げます。
私も二月六日の委員派遣に参加もし、その前にも、最も雪の多かった一月九日に党としての調査で同じ勝山市、大野市にも参りました。そのときに市の幹部の方が豪雪対策に勇み足なしと、こういうことを言われたのが大変印象的に残っております。一瞬のちゅうちょが被害の拡大になると。ですから、現場の皆さんがそういうちゅうちょなしに対策が打てるような支援が本当に今国に求められていると思います。日本共産党として災害救助法の積極的活用や自治体に対する特別交付税の増額、また県道や市町村道の除雪費に対する早期補助金交付等を求めてまいりましたけれども、改めて強く求めたいと思います。
今日は時間も限られておりますので、融雪屋根や除雪機の燃料費にかかわる税金の軽減の問題に絞ってお聞きをいたします。
まず、融雪屋根にかかわる灯油や電気代の問題です。
先ほどの質疑にもありましたけれども、屋根の雪下ろしにかかわる費用については所得税の雑損控除の対象になっておりますけれども、この制度ができた経緯と趣旨についてまず説明してください。
- 政府参考人(竹田正樹君)
お答え申し上げます。
雪下ろし費用に係る雑損控除の適用の経緯につきましては、さかのぼりますとちょっと三十年以上前のことになりますので、詳しくは実は私どもにとりましても明らかではない点は御理解いただきたいんでございますが、概略といたしましては、御指摘の雪下ろし費用につきましては、昭和四十八年の秋田県の豪雪の際に初めて個別に、非常な豪雪で雪を下ろさないと家屋が壊れてしまうというような状況を勘案して、初めてこの雑損控除の対象として取り扱ったわけでございます。
その後、昭和五十二年に至りまして、豪雪地帯におきます雪下ろしの実情等を考慮して、こうした豪雪の場合における雪下ろし費用等が雑損控除の対象になるということを明確にいたしました通達を発遣いたしております。その後、昭和五十六年に至りましてこの雑損控除の制度が拡充され、災害関連支出に新たに五万円控除の制度が導入されたことに伴いまして所得税法施行令が改正、整備されまして、その下で雪下ろし費用が雑損控除の対象として適用されるということが明確になっているというわけでございます。
- 井上哲士君
この制度ができた当時と比べますと、随分豪雪地帯は変わっております。過疎化と高齢化が非常に進行している。例えば新潟県の松之山町の場合は、昭和五十六年当時、人口五千百八十二人で高齢者率は一七・七%です。去年の九月でいいますと、人口は二千九百三十五人、高齢者率四二・四%となっております。これはここだけじゃありませんから、今、今冬でも雪下ろしの人手がなかなか足りないということが各地で起きました。そういう下で先ほど来議論のありますような融雪住宅というものを国や自治体も支援して広めているという状況にあるわけです。
ところが、付けてみますと非常に燃料費が高く掛かると。私、聞きますと、ある津南町の高齢者世帯の場合に、補助制度も使いまして六百五十万掛けて融雪屋根設置したと。ところが、今年は灯油代も非常に上がっておりまして、十二月の十二日から二月九日までで二十七万一千四百五十五円掛かったということなんですね。ところが、先ほど答弁がありましたけれども、融雪のための燃料費は雑損控除の対象にならないと。
人を雇って雪下ろしをするのも融雪屋根を使うのも、倒壊防止のために屋根の上から雪をなくすという点では全く同じ目的であると思うんですね。大体あの制度ができたころは融雪屋根なんていうのはなかったわけですから、非常に高齢化も進行しているという新しい社会的な状況にあって制度も変わってしかるべきだと思うんです。そういう点でも当然雑損控除の対象にすべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
- 政府参考人(竹田正樹君)
先生の御指摘は、融雪屋根の燃料費は業者に雪下ろしを委託する場合の費用と効果として同様のものである、したがって当該燃料費についても雪下ろし費用として雑損控除の適用を認めるべきであるというお考えであろうかと思います。
住宅の屋根に大量の積雪があって、この雪下ろしを業者に委託する場合といいますのは、正にこれは雪下ろしをせずにほっておくと家屋が倒壊してしまうという、そういう切迫した状況が存在するわけでございまして、これが、先ほど申し上げました所得税法施行令二百六条一項三号に規定がございますが、正に被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合における、その被害の発生を防止するために緊急に必要な措置を講ずるための支出と、これに当たるということで雑損控除の対象としておるわけでございます。
しかしながら、融雪屋根につきましては、融雪屋根を設置される方は、その燃料費も掛かるということを当初から御認識の上で、そういうランニングコストやあるいは設置そのものに掛かる費用と、それからそれに対します家屋の倒壊を予防できるという便益をあらかじめ勘案して、まあある意味御自身の資産保全のためにあらかじめ設置しておられると。(発言する者あり)そういう、そしてその融雪装置を稼働させることによって屋根に危険な積雪を生じるという切迫した事態は生じることはないと。
したがいまして、正に先生御指摘のように、家屋の倒壊を防止するということでは同じ効果ではないかということから、効果としては同様であるとしても今申し上げましたような違いがございますので、これにつきましてはやむを得ない支出で正に被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合における緊急な支出には当たらないと私ども解しているわけでございます。
そういう社会の変化とか、あるいは融雪屋根の普及という見地から対応を行うべきであるとの御意見はもちろんあろうかと思いますけれども、それを私どもで税法の解釈、適用の変更でそれに対応するというのは、私どもも法令の限界があるという点については御理解いただきたいと思います。
- 井上哲士君
へ理屈だという声が上がりましたけれども、今のは雪国では全く通用しない議論だと思うんですね。雪のままためて下ろすのか、ためないように解かすのかということなんです。ほっといたら倒壊の危険があるというのは全く一緒なわけですね。
しかも、克雪住宅には落雪方式と融雪方式があります。落雪方式で屋根から下ろした雪が横にたまった。これを人を使って除雪する場合は、これは雑損控除の対象になるわけですね。ですから、解かして落とすかそのまま落とすかの違いでこれが違うというのは非常に不合理な話でありまして、霞が関の暖房の利いた部屋で考えた机上の空論だと私思うんです。これは是非よく事情を見て正していただきたいと強く求めておきますし、私は雪国出身の大臣にもその点御尽力いただきたいと思うんです。
もう一つ不合理な問題で、除雪に使用した軽油に対する軽油引取税の免除について聞くんですが、現在は一定の業種、例えばゴルフ場の芝刈り機は免除対象になっていますけれども、この制度の理由と要件について簡潔にお願いいたします。
- 政府参考人(岡崎浩巳君)
お答え申し上げます。
軽油引取税の課税免除の対象につきましては、今の御指摘のようなものとか船舶の動力源とか、こういったものが規定されております。
これらの要件としましては、道路の使用に直接関連を有していないこと、それから脱税の防止が容易であること、あるいは免税手続に係る、特に課税庁側等の事務が、負担が大変でないことというようなことを勘案して要件が定められているということでございます。
- 井上哲士君
今、住宅の周辺とか農地で除雪機の使用は不可欠になっているんですね。この燃料費が非常に負担になっています。
津南町でユリハウスを経営している農家に聞きますと、ハウス周囲の除雪のために三十八馬力の除雪機を使っていますけれども、この二か月で軽油代が四万八千九百九円、これに加えて軽油引取税が二万四百十五円も掛かるわけですね。
ところが、この除雪機の場合は免除対象になっていないんです。なぜゴルフ場の芝刈り機が対象になって農家の除雪機は対象にならないんでしょうか。
- 政府参考人(岡崎浩巳君)
お尋ねのとおり、現在、住民の除雪用の機械の軽油はなっておりません。こうした機械の場合には、軽油の使用量が比較的少量の割に住民の側の申請の事務あるいは報告の事務、課税庁である都道府県側の申請受理あるいは使用実態調査等の事務が非常に、大変な事務が生じるというようなこともありまして、こういう個別の小さな機械ごとに課税免除措置の対象とすることは困難であるというふうに考えております。
- 井上哲士君
農家の場合も対象になってないんですね。そうですね。農家の問題を私今さっき言っているんです。
ここに除雪機のパンフがありますけれども、かなり大きい、三十八馬力というものでも、これは全部手押しで使うものなんですね。乗るんじゃないんです。ですから道路は通りません。しかも、豪雪があったときしかこれは使えませんから、軽油の使用実績は把握しやすいですし、さっき言われた脱税という防止も非常に容易なわけでありますね。ですから、農家でも耕運機は課税免除なのに除雪機は課税免除にならないというのはどう考えてもおかしいと思うんですけれども、もう一度お願いします。
- 政府参考人(岡崎浩巳君)
漁船とか農業用機械というものは現場では大変農協とか漁協の協力をいただきまして、実績の報告をいただいたり、あるいは申請についても非常に事務の簡便なやり方をさせていただいているということがありまして何とか可能になっているということの事情がございまして、個別のこういう除雪機械とは若干事情は異なるということを御理解いただきたいと思います。
- 井上哲士君
さっきのユリハウスの件も言いましたけれども、こういう雪国農家の場合に、こういう除雪機なしに農業ができないんです。耕運機と全く同じ必要性があるわけですから、余りへ理屈を重ねずに、これはやっぱり是非この除雪機についても課税免除ということをやっていただきたいと思うんです。
今日二つの税金の問題について豪雪地帯にかかわって質問をしたんですが、いずれも高齢化とか過疎化という社会的条件の変化、それから除雪にかかわるいろんな機材や設備の発展に伴う新しい問題だと思うんですね。こういう社会変化への状況に応じて税制度とか運用が必要だと思います。これはやっぱり、国税庁も局も総務省も自ら減収になるようなことはなかなか言いませんから、政治の側がいろんな取組をすることが必要だと思います。私たちも自治体や各省にも働き掛けますけれども、雪国出身の大臣として、これ是非積極的に取り組んでいただきたい、その所見を伺いたい。
同時に、こういう新しい社会的変化に応じた雪害対策をどう取り組んでいくのか、決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
- 国務大臣(沓掛哲男君)
まず、後半の方からお答えさせていただきたいと思います。
我が国の日本海側は世界でも有数な豪雪地帯であり、豪雪地帯は我が国の重要な防災政策の一つであるというふうに認識いたしております。従来よりも、豪雪地帯対策特別措置法に基づきまして豪雪地帯対策基本計画を策定いたしまして、交通、通信の確保、農林業等における対策、生活環境施設等の整備等の各種対策を推進いたしております。また、高齢化、過疎化に対応するため、ハード、ソフト両面にわたる豪雪対策について、国土交通省に各分野の専門家や自治体の代表から成る懇談会を立ち上げ、豪雪対策に対する再点検も行っているところでございます。政府としては、今後とも関係省庁が連携して雪による被害を軽減できるよう対策を講じてまいりたいと思っております。
今、新しい制度的なお話もございましたが、まだなかなか、この制度的なものには各省庁の御協力も必要です。政治家の皆様方の御指導も大切ですが、協力も必要です。そういう協力を得ながらいろんなことを今年新しくやらせていただいたので、皆様方から御指導いただいたことをしっかり頭に置きながら、これからどういうふうにやっていけるか、一生懸命前向きで頑張りますから、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
- 井上哲士君
終わります。
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