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2006年6月2日(金)

政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会
「公職選挙法改正案」について

  • 在外選挙制度の対象範囲の拡大と、選挙人名簿の閲覧制度を見直す改正案のなかの、選挙人名簿の閲覧制度がもつ意義について質問。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、選挙人名簿の閲覧問題についてお聞きをします。

 国民は選挙人名簿に登載されることによって選挙権さらに被選挙権を保障されます。そういう点で、選挙人名簿は国民の参政権の基礎にかかわる重要な公簿だと思います。ですから、この選挙人名簿を政治や選挙活動の自由を確保する立場から有効に活用すること、また国民の政治参加という側面から公平に閲覧、利用できるようにすることは議会制民主主義の発展にとって欠かせないものだと私たちは考えておりますが、この選挙人名簿の閲覧制度の持つ意義について、まず大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

国務大臣(竹中平蔵君)

 この名簿の位置付け、どのように活用していくかということに関しては、今、井上委員が総論としておっしゃったこと、私も同じような思いを持っております。

 御承知のように、今、一方で個人情報意識の高まりがあって、それと一方での公益というのをどのように調和させるのかという、そういう非常に基本的な問題に位置付けられると思います。

 本人が登録の有無を確認する場合以外は一切閲覧させるべきではないという意見も、こういう個人情報保護の立場からあることはあるわけでございます。しかし、一方で、今委員言われましたように、この名簿の閲覧、抄本の閲覧は政治活動とか選挙運動、そして政治、選挙に関する世論調査等の閲覧件数がほとんど現実には占めております。そして、この活動、候補者、政党、政治団体が行う政治活動や選挙運動につきましては、これはやはり言うまでもなく民主政治の健全な発達の基礎になるものでございます。また、報道機関等が行う政治、選挙に関する世論調査等についても、そういうものを通して世論が形成されて、そして政策が形成されていくと、そして民意が反映されていくという意味では、民主政治の実質的な意味での、何ていいますか、それを担保する制度、正に公益性を有するということになっているものであるとも思います。また、これ間接的には選挙人名簿の正確性を確保するという面もあろうかと考えております。

 こうした点踏まえ、また学識者による検討委員会においても、今申し上げたような点が指摘されているところでございまして、そうした点を踏まえて、このたびの改正案で明文で閲覧を認めるというような形にさせていただいた次第でございます。

井上哲士君

 政党、政治団体の閲覧を認めるわけでありますが、政党、政治団体といいましても様々な形態がございます。例えば、私どもの党でいいますと、党本部があり、都道府県委員会があり、地区委員会があり、その下に支部があると、こういう形でありまして、地区委員会までは政治資金規正法上の届出をしておるという形になります。実際の局面ではいろいろ支部の皆さんなどがこれ閲覧をされるということもあるわけですね。

 先ほどの、大臣からも答弁があった、この制度の意義から考えますと、手続はできるだけ煩雑にせずに活用できるようにしつつ、やはり例えば政治団体の成り済ましなども防がなくちゃいけないと、こういうことがあろうかと思います。そういう点で、例えば申請する政治団体のレベルをどういうふうに考えるのかとか、実際の手続はどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

政府参考人(久保信保君)

 今回の改正法におきます政治団体でございますけれども、これは政治資金規正法上の政治団体の範囲と同一であるというふうに考えております。

 したがいまして、政治資金規正法第六条の規定による政治団体の届出をしたもの、これが政治団体であると想定をしております。

 そこで、実際の閲覧の届出、この際には、政治資金規正法第六条の規定による届出書、この写し、これを持ってきていただくということが大前提でございますけれども、そのほかにも、これまでの政治活動の実績が分かる資料、これを提出していただく等によりまして、申出を受けた市町村の区域が政治団体の主たる活動区域となっているかどうかなどを確認をするといった手続になろうかと思います。

 そして、政治団体設立届出書に記載された主たる活動区域外の市町村選挙管理委員会に閲覧の申出が仮にあったという場合には、市町村選挙管理委員会は、閲覧の必要性について疎明を求めても十分な回答がないといったような場合には閲覧を拒否できるというふうに考えております。

井上哲士君

 もう一つお聞きしたいのは、今、地方自治体の条例の制定改廃の直接請求という制度があります。それから、議会の解散とか首長のリコール請求、それから住民投票などありまして、それぞれに今、地方自治を発展させる上で非常に大きな役割を果たしていると思います。

 直接請求の場合は、選挙権を有する者の五十分の一以上の連署をもって請求することができるとされておりますし、リコール請求などは有権者の三分の一の署名が必要ということになっております。

 これまでも、こういう運動に取り組んだ様々な市民運動がそういう署名の、求める対象になる選挙人はだれなのかということを確認をしたり、そしてまた、集めたものが確かに規定数に達しているかということを確認する上で閲覧をするということは実際に行われてまいりました。ただ、そういう市民団体は、必ずしも政治資金規正法上の政治団体の届出をしていないわけですね。

 こういう地方自治の発展から非常に重要な活動が形骸化するようなことになってはならないと思いまして、こういうものも従来どおり認められるような運用がされるべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。

政府参考人(久保信保君)

 今回の改正は、個人情報保護意識の高まりに対応して、個人情報が記載された文書でございます選挙人名簿抄本について閲覧できる場合を明確化し限定したものであるという改正趣旨でございまして、市町村選挙管理委員会におきましては、今回の法改正の趣旨を踏まえて適切な運用を図っていただくことを期待をいたしております。

 そこで、御指摘にございます地方自治法に基づく直接請求のための署名でございますけれども、この署名を集めた後に署名者の数が法定数に達しているかどうか、これが不確定であるといったようなときに、署名した者が選挙人名簿に登録されているかどうかを確認する必要があるということが恐らくこれはあろうかと思います。その場合は、その確認に必要な限度において代表者が選挙人名簿抄本を閲覧することは可能であると考えています。

 これは、先ほど言いました三つのケース、この中での最初のケース、つまり特定の者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかを確認するといった閲覧に当たろうかというふうに考えております。

井上哲士君

 最後に、在外投票にかかわって一問お聞きしますけれども、事前に在外公館を通じた選挙人名簿の登録が必要で、国内の最終住所地の市町村選管が在外選挙人証を交付しているわけですが、この申請から交付までが約三か月掛かるということが低投票率の理由の一つともされております。その理由として、この各市区町村の名簿登録を審査する会議が二か月に一回程度しか開かれていないと、こういう報道もございました。

 今回の制度改正に合わせてこういうことも改善がされるべきかと思うんですが、その点、総務省としてはどのようにお考えでしょうか。

政府参考人(久保信保君)

 法律自体の改正というのは、在留届の提出等の時点で名簿登録申請ができるんだと、三か月要件というのはその後確認をするという、そういった改正内容は盛り込んでございます。

 ただいま御指摘のありましたお話、これは先ほども答弁を私いたしたと思いますけれども、確かに選挙管理委員会ごとで取扱いが異なっているということがございまして、長いところは二か月、三か月とか、二か月以上とか、そういったところもどうも私どもが調査いたしました結果ではあるということでございます。

 その原因も、ただいま委員が御指摘にございましたように、選挙管理委員会を開く頻度が少ないといったようなことが原因になっているところもございます。

 したがいまして、私ども、今後、選挙管理委員会の頻度、これを高めていただきますように、市町村選挙管理委員会にその旨徹底をしていきたいと考えております。

井上哲士君

 終わります。


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