二〇〇六年五月一日、日米両政府は「再編実施のための日米のロードマップ」(以下「ロードマップ」という。)に合意した。
また、二〇〇五年十月二十九日、日米安全保障協議委員会で合意された「日米同盟・未来のための変革と再編」に基づき、大阪防衛施設局は小松市長らに訓練回数の制限撤廃などを求める米軍機訓練移転の受け入れを迫った。しかし、本年三月二十三日、同市長は大阪防衛施設局長に対して、「本市としては、これ以上の新たな負担の増大については、直ちに受け入れられるものではありません」と、受け入れ拒否の態度表明を行なった。四月二十四日、大阪防衛施設局長は小松市長に対し、訓練回数の制限撤廃などの要求を「当面」取り下げるので、訓練移転を受け入れるよう要求し、七月十一日、同市長は受け入れを容認することとなった。
こうした経過の中で、小松基地周辺住民は不安と怒りを募らせている。地元の合意を取り付けるために、まずは「協定内で実施する」とし順次訓練回数や施設拡大を進めようとする、また関係自治体や住民への十分な説明がないまま訓練移転容認を迫るという、このような政府の態度に対し厳しく抗議する立場から、以下の質問をする。
一 これまで結ばれてきたすべての協定の遵守、訓練移転による騒音被害などについて
- 本年四月二十四日、大阪防衛施設局長が小松市長に宛てた文書「米軍再編に係る訓練移転について」には、「日米合同委員会において合意されている各基地の年間の訓練回数制限を一律に撤廃する必要がありますので、かかる合意の変更についてご理解願います。しかしながら、貴市との間で年間の訓練回数の制限を規定した『日米共同訓練に関する協定書』(一九八二年九月二十四日)については、当面、その改定を行なわないこととします。なお、今後の実績を踏まえ、将来、同協定の改定が必要な場合は協議します」とある。
(一)大阪防衛施設局長による文書「米軍再編に係る訓練移転について」(本年四月二十四日)は現在でもすべて有効か。政府の見解を示されたい。
(二)本年六月の小松市議会第二回定例会に提出された「小松基地・空港対策特別委員会委員長報告」の中に、本年五月二十三日に同特別委員長らが防衛庁に調査に訪れた際、「『当面』の言葉の撤回を防衛庁事務次官に申し出、了承された」とある。同報告のとおり、防衛庁は、「当面」を撤回したのか。撤回したとすれば、なぜ撤回したのか。また、撤回したことを将来にわたって維持するのか。それぞれ明らかにされたい。
(三)「日米共同訓練に関する協定書」(一九八二年九月二十四日)(以下「一九八二年協定」という。)について、「その改定を行なわない」としたことを米国政府は承知しているのか明らかにされたい。また、米国政府が承知しているとすれば、どういう経過で伝えたのか詳細を明らかにされたい。
(四)これまで結ばれてきたすべての協定を今後も維持するのか政府の見解を示されたい。
- 「小松基地・空港対策特別委員会委員長報告」では、「尾形小松基地司令はその懇談の中で、『離発着回数について訓練空域である小松沖のG空域の可能な訓練量総枠が限られている以上、たとえ米軍の訓練移転が行なわれても、それほど回数が増えることはない』と言明された」とある。本年四月五日の参議院決算委員会における仁比聡平議員提出資料(防衛庁資料より作成)によれば、小松基地における過去七年間の日米共同訓練と米軍機使用実績は、二〇〇一年の八日(二回)各四機(FA18)、二〇〇五年の三日五機(FA18)である。
(一)小松基地における過去七年間の日米共同訓練での、米軍機の離発着回数若しくは管制回数について示されたい。
(二)訓練移転に伴い、小松基地における米軍機の離発着回数はどの程度になるのか示されたい。
(三)小松基地司令が「それほど回数が増えることはない」と言明した根拠を明らかにされたい。
(四)訓練移転に伴い、一九八二年協定にある「年四回、年間合計四週間」の範囲(年間合計二十八日間)一杯に訓練を行なうことになるのか。範囲一杯の訓練となれば、周辺住民の騒音被害は格段に増えることになるのではないか。政府の見解を示されたい。
- 「ロードマップ」では、「必要に応じて、自衛隊施設における訓練移転のためのインフラを改善する」とある。しかし、大阪防衛施設局長が小松市長に宛てた文書「米軍再編に係る訓練移転について」(本年四月二十四日)の中で、「当局としては、当面、小松基地における追加的な施設整備は必要ないと考えています。なお、将来、同基地における現有施設の改修等の必要性が生じた時は、改めて具体的な説明を行ないます。いずれにせよ、追加的な施設として米軍専用の施設を整備することはなく、米軍の恒久基地化につながることはない」として、一九八二年協定にある「恒久的に米軍基地にしない」ことを守るとしている。
(一)一九八二年協定にある「恒久的に米軍基地にしない」ことを守るということは、米軍と確約しているのか。また、守られる保証はあるのか。それぞれ明らかにされたい。
(二)「当局としては、当面、小松基地における追加的な施設整備は必要ない」と判断したのは米軍と調整した結果であるのか。また、「必要ない」との言明が守られる保証はあるのか。それぞれ明らかにされたい。さらに、米軍側はどのような見解であるのか明らかにされたい。
(三)「ロードマップ」では、「将来の共同訓練・演習のための自衛隊施設の拡大に向けて取り組む」とあるが、小松基地においては具体的にどのようになるのか明らかにされたい。
(四)第一五九回国会衆議院予算委員会への防衛庁・防衛施設庁の提出資料(予算要求資料)の中で、自衛隊小松基地は「小松飛行場」という「施設・区域名」になっている。これは、日米両政府が米軍基地と位置付けているということではないか。また、「米軍の恒久基地化につながることはない」としたことと矛盾するのではないか。それぞれ政府の見解を明らかにされたい。
(五)米軍による小松基地の調査は、いつ、どのように実施されるのか明らかにされたい。
- 本年七月二十五日、大阪防衛施設局長が小松市長に宛てた文書「米軍再編に係る訓練移転について」では、「小松市と国との間で結ばれてきたすべての協定等を遵守します」、「中島方式が徹底されることになります」とあるが、これは米軍との確約であるのか明らかにされたい。また。確約であるとすれば、誰と誰が確約をしたのか経過と詳細を明らかにされたい。
- 一九七五年十月四日に防衛庁長官、石川県知事、小松市長らが結んだ「小松基地周辺の騒音対策に関する基本協定書」(以下「十・四協定」という。)では、「騒音を発生源で防止するため、機材の改良を心掛け」としている。しかし、訓練移転で飛来するFA18は明らかに騒音が大きい。
(一)大阪防衛施設局長が小松市長に宛てた文書「米軍再編に係る訓練移転について」(本年七月二十五日)では、「小松市と国との間で結ばれてきたすべての協定等を遵守します」とある。そうであれば現機種より騒音の大きいものは、認められないのではないか。政府の見解を示されたい。
(二)二〇〇二年の「第三、四次小松基地騒音訴訟」で金沢地裁は、現状でも「受忍限度を超える」と判示しており、騒音をこれ以上拡大してはならないと言えるが、騒音被害を拡大しないと言い切れるのか。政府の見解を示されたい。
(三)小松市長は大阪防衛施設局長に対して「これ以上の新たな負担の増大については、直ちに受け入れられるものではありません」(本年三月二十三日)と表明したが、FA18の飛来は「これ以上の新たな負担の増大」に当たる問題でないか。政府の見解を示されたい。
- 「小松基地・空港対策特別委員会委員長報告」で、「新しい飛行場に慣れるための訓練としてタッチアンドゴーが行なわれても、厚木基地などでの空母を想定しての頻繁な離発着訓練は行なわれないと大阪防衛施設局が説明した」とある。現状では、小松基地におけるタッチアンドゴーはどの程度の規模か。また、訓練移転により、現状より多くなるのかどうか。それぞれ明らかにされたい。
二 訓練内容及び事故問題について
- 「ロードマップ」では、「当分の間、嘉手納飛行場、三沢飛行場及び岩国飛行場の三つの米軍施設からの航空機が、千歳、三沢、百里、小松、築城及び新田原の自衛隊施設から行なわれる訓練移転に参加する」とある。
(一)嘉手納基地のF15、三沢基地のF16、岩国基地のFA18以外の訓練移転はないか。給油機などが飛来することはないか。それぞれ明らかにされたい。また、岩国基地に移駐が計画されている神奈川県の厚木基地空母艦載機FА18スーパーホーネットも移転の対象機となるのか明らかにされたい。
(二)「当分の間」とされているが、将来はそれ以外の基地からの訓練移転があり得るということか明らかにされたい。
- 嘉手納基地では、米国本土に向け深夜・早朝に飛び立っていく米国本土所属の外来機の騒音が問題になっている。
(一)本年五月十九日衆議院外務委員会での赤嶺政賢議員の質問に対し、防衛庁は「外来機が訓練移転に参加することは排除されない」と答弁しているが、小松基地にも外来機が飛来することはあり得るのか明らかにされたい。
(二)「十・四協定」では、「早朝、夜間には緊急発進その他、特にやむを得ない場合を除き、離発着及び試運転を中止する」とされている。小松基地において、外来機が米国本土に向けて深夜・早朝に離着することはあり得るのか。また、外来機が米国本土から深夜・早朝に発着することはあるのか。それぞれ明らかにされたい。
(三)「早朝・夜間」とは具体的にどのような時間帯を指しているのか明らかにされたい。
- 3本年四月四日、私と石川県の関係県議・市議が防衛庁と交渉を行った際、小松基地周辺での超低空飛行訓練の実施については、あいまいな回答であった。米軍による小松基地周辺での超低空飛行訓練は絶対に行わないと言明できるか明確に答えられたい。
- 小松基地での訓練移転はいつから実施されるのか明らかにされたい。
- 二〇〇四年八月十三日の沖縄国際大学での米海兵隊輸送ヘリ墜落事故の際、米軍は事故現場を封鎖し、地元警察の現場検証すらさせないなど、日米地位協定からも許されない事態となった。
(一)訓練移転中の米軍機の事故では、日米地位協定及び関連取り決めに関し、どの規定が適用されるのか明らかにされたい。
(二)日米地位協定は、米軍の基地外での警察権を基本的に認めていないにもかかわらず、一九八〇年の在日米軍司令部と防衛施設庁の合意などを理由に、米軍の警察権を優先させる不当な事態となっている。訓練移転でもこのような事態が起きるのか明らかにされたい。
(三)小松基地内若しくは小松基地周辺でも、米軍による封鎖などの事態が採られる可能性があるのか明らかにされたい。
- 官民共用空港としての小松基地では、自衛隊の航空管制官が管制業務を行なっている。
(一)訓練移転時の管制に関し、管制業務は誰が行なうことになるのか。
(二)訓練移転時の管制に関し、米軍機の小松基地への進入規制なども、自衛隊の航空管制官が行なうのか。また、米軍は一切関与しないのか。それぞれ明らかにされたい。
(三)訓練移転時の管制に関し、小松基地周辺で米軍機が事故を起こした場合、米軍機・自衛隊機・民間機の管制業務は、米軍の管理下に入ることになるのか。
三 防音対策について
- 1大阪防衛施設局長が小松市長に宛てた文書「米軍再編に係る訓練移転について」(本年七月二十五日)では、「いわゆる告示後住宅については、真に騒音の著しい区域に所在し、建設年度の古いものを対象として、新たに防音工事の助成措置を講じる」としている。「真に騒音の著しい」とは具体的にどのようなことか。また、「建設年度の古いもの」とは具体的にどのようなことか明らかにされたい。
- 同文書では、「樹脂サッシ及びペアガラスの使用については、防音工事希望者の意向等を踏まえながら、個々に対応を検討」とある。希望があれば応じるということか。明らかにされたい。
四 米兵の犯罪について
- 本年五月二十三日の小松飛行場周辺整備協議会理事会の小松基地視察において、小松基地司令は、米兵は「夜中は、あまり遊べない」と言明した。
(一)「あまり」というのは具体的にどういう意味か明らかにされたい。
(二)「米国人が単独で市内を行動することは無い。必ず自衛隊員を伴って行動する」と小松基地司令は言明したが、そのとおりか明らかにされたい。
(三)過去、米兵が小松市内を行動したことはあるか明らかにされたい。
(四)「市内を行動する」ことについては、事前に小松基地周辺の自治体や町会などに、「いつ、どのような行動か」の連絡があるのか明らかにされたい。
- 全国で、米兵の犯罪が頻発し、報道されているが、小松基地周辺(金沢市も含む)で、犯罪が起きないという保証はあるのか明らかにされたい。
五 官民共用空港としての機能との関係について
「小松基地・空港対策特別委員会委員長報告」による大阪防衛施設局の説明では、「民間航空機が一日四十便以上発着している」、「以前と同じく管制能力にはまだ余裕があり、民間航空機には一切影響がない」としている。
- 小松空港における自衛隊機の一日の発着回数若しくは管制回数の実績を示されたい。
- 民間航空機を含む小松空港全体の一日の発着回数(若しくは管制回数)の実績とその上限(管制能力)を示されたい。
- 訓練移転に伴う、米軍機と自衛隊機の一日の発着回数の増加の見通しを示されたい。
右質問する。