2007年12月6日(木)
外交防衛委員会
- アフガンにおける米軍の掃討作戦が、市民犠牲を前提で行なわれている問題を追及
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- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
九・一一テロが起き、アメリカが武力行使をしてから六年がたちました。テロの根絶を言うならば、今必要なのは、この六年間を検証して、アフガンの現状が一体何を求めているかということを冷静に議論をすることだと思います。
そこで、まず外務大臣にお聞きいたしますが、この六年間でテロの根絶というのは進んだのかどうか、まずその認識をお伺いしたいと思います。
- 外務大臣(高村正彦君)
現下のアフガニスタンの治安情勢は不安定の度合いを強めており、今後の見通しを楽観できない状況にあることはそのとおりだと思います。
他方で、この六年の間にアフガニスタンでは憲法採択、大統領選挙、国会選挙、政府の発足等、統治機構が整備されたわけであります。また、例えば、難民、経済成長、教育、保健等多岐にわたる分野で前向きな動きもあります。パキスタン、イランなどから五百万人以上の難民が帰還いたしました。二〇〇三年から二〇〇六年のGDP成長率は年平均約一〇%であり、着実な経済成長を達成しました。初等教育就学率は、二〇〇〇年の一九・二%から二〇〇五年には八六・五%に向上しました。子供の就学数は、五年前の百万人超から現在は五百四十万人以上に増加し、女性の就学率に至っては、〇%だったのが三五%に増加しました。はしか予防接種を受けた子供は、二〇〇〇年の三五%から二〇〇五年の六四%に向上しました。
こうした進展はテロ発生を助長する要因の除去に資するものであり、我が国としては引き続き国際社会と緊密に協力しつつ、人道復興支援と国際的なテロリズムの防止のため幅広い取組を行っていく考えであります。
- 井上哲士君
この治安問題は楽観できないと最初にお話がありました。この治安の悪化というのは国連も認めておりますし、アメリカなどによる掃討作戦によって多くの市民の命が奪われたことが憎しみの連鎖を広げてそういう事態をつくっていると私は思います。
そこで、政府は、この間こうしたアメリカなどの軍事作戦によってどれだけの市民の命が奪われたのかと、この実態については把握をされているんでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
御指摘のアフガニスタンにおける掃討作戦の巻き添えによって亡くなった一般国民の数については、アフガニスタン政府等から発表された公式な統計があるとは承知しておりません。他方、テロ事案による犠牲者の数については、例えば米国の非営利団体MIPTの十二月五日付け発表によれば、千六百三十八人とされています。いずれにせよ、アフガニスタンにおけるテロ掃討作戦によって犠牲者が出ていることは私も遺憾だと思います。
他方で、一般市民の被害を最大限回避するための方策についてアフガニスタン政府とOEF参加国等との間で協議がされているものと承知しており、犠牲者が出ることが極力回避されることを期待しているわけであります。
- 井上哲士君
日本の給油がこのOEFによる空爆にこの間これまで使われてきたということは認めておられるわけですね。ですから、その結果がどういうこと起きているのかということを把握をされていないというのは私は大変問題だと思うんです。
例えば、イギリスの下院の国際開発委員会にはOXFAM英国という民間団体が報告書を提出をしております。人道援助団体です。それによりますと、今年のアフガンの民間人死者は既に千二百人に上る、そのうち約半数が米軍やNATO軍などの国際部隊の攻撃によるものだと、こう述べております。特に多数の犠牲者を出している作戦として空爆を挙げて、国際部隊によるアフガンでの空爆回数はイラクでの回数の四倍に当たると、こういう指摘をしております。ルイーズ国連の人権高等弁務官も十一月の二十日に、外国軍の作戦による民間人犠牲者は驚くべきレベルに達していると、こういうふうに言われ、これは国際法にも反すると、こういうふうに述べられているんです。
こういう事態がアフガンで今起きているということについて、改めて外務大臣の認識を伺いたいと思います。
- 外務大臣(高村正彦君)
カルザイ大統領が、米国等がアフガニスタンの領域内で実施している活動に関し一般市民に被害が及ばないよう要請したことを踏まえて、現在アフガニスタンとNATO及びOEF参加国との間で一般市民の被害を回避するための方策について議論が行われているわけであります。我が国は当事国でなくて詳細を把握できる立場にありませんけれども、一般市民の被害を最小限に回避すべきことは当然であり、米国もこの点を最大限考慮しているものと認識をしております。
なお、こうしたカルザイ大統領の要請は、米国等に対してアフガニスタンにおける治安維持回復活動そのものを中止するよう求めているものとは理解しておりません。
- 井上哲士君
今述べたルイーズさんは、こういう空爆による市民の被害がアフガン政府に対する国民の支持を破壊するものだと、こういうふうにも言われております。
この問題を衆議院で何度か議論をしたときに、大臣は、カルザイ大統領はつい最近テレビのインタビューに答えて、米軍等はアフガニスタンを助けるためにアフガニスタンに来ているんだ、こういうことを言っておりますと、こういう答弁を何度か繰り返されておりますが、このカルザイ大統領の最近のインタビューというのはいつどこで行われたものでしょうか。
- 外務省中東アフリカ局長(奥田紀宏君)
カルザイ大統領のその趣旨の発言は恐らくいろいろなところで行われていると思いますけれども、今問題になっている発言は十月二十八日のアメリカCBSでのテレビインタビューでの発言内容ではないかというふうに思っております。
- 井上哲士君
このテレビインタビュー自身を大臣はごらんになっているんでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
私自身が見たわけではございません。
- 井上哲士君
これ、アメリカのCBSテレビのドキュメンタリー番組で、アメリカで最も人気のあるテレビニュースショーだそうでありまして、シックスティーミニッツという番組の十月二十八日放映のものです。これはネットでも見られますので、私も昨日見ました。
カルザイ氏は確かにこういう発言をそこでされております。しかし、大臣が答弁で引用されているのはその一部を切り取ったものなんですね。カルザイ氏は、その後、今言いたいことを言われておりまして、どう言っているかといいますと、アフガン人は五、六年たってもなぜいまだに空軍力が必要なのか全く理解ができないと、同じ発言の中で述べられているんです。
このことについては大臣は承知されているんでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
私も一部を切り取って話をいたしましたが、委員もほんの一部を切り取って話されたように思います。私が話したことと委員が話したことの間に言っていることは、米国及び連合軍は意図的に市民への攻撃を行ってはいない、米国はアフガニスタン国民を助けるためにアフガンにいる、アフガニスタン国民は過ちが起こることを理解している、そしてしかしながらと言って、今委員がおっしゃったようなことを言っているわけであります。
そして、その結果、今アフガニスタン政府とOEF参加国との間でこういう悲惨な過ちがどうやって起こらないようにするかということを協議していると、こういうふうに承知をしているところでございます。
- 井上哲士君
しかし、大臣が引用された、アフガニスタン国民を助けるために駐留をしているというところで切るのと、その後に続けられた、つまり、これまでのことはいろいろあった、しかしなぜ今五、六年たっても空軍力が必要なのか全く理解できないということに私は大統領の思いは込められているし、ここを言わなかったら全く逆の意味になるんじゃないですか。
それは、ここまで発言があったということはちゃんと大臣の手元まで来ていたのか、それとも途中までの発言しか報告が上がっていなかったのか、これ、どっちだったんでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
内々のことをそこまで言わなきゃいけないかどうかは分かりませんが、私は極めて正直な人間だから申しますが、そこまでは来ておりませんでした。来ておりませんでしたが、全体を見ても、少なくとも私が言った文脈は、今空爆をやめるかやめないかという議論になっていたときではなくて、要するに、アメリカを始めOEF参加国がやっている活動全体について、アフガニスタンの同意がなくなっているのではないかどうかということについて総体的な話をしている中での話でしたから、そういう文脈の上では私が言った部分が大切なんだろうと、私は今でも考えております。
空爆で人が死ぬということは悲惨なことであり、特に誤爆等は避けなければなりませんから、そういうことについて今協議をしてそういうことがなくなるようにしようとするのは、それは当然のことだろうと思います。
- 井上哲士君
大統領はこの後に、軍事力、空軍力使用の代替策を要求したい、文書で明確に述べたと、こう言っているんですね。要するに、もう空爆、空軍力は使ってほしくないということをはっきり言われているんです。そのことを私どもは衆議院でもずっと言ってまいりました。実際、アフガン政府がこの五月の声明で、依然として無辜の市民の殺害が続いており、アフガン人の我慢も限界に達しつつあると、こういうふうに言って、その犠牲を回避するあらゆる努力をしなければならないと、こういう声明を出しているんです。
今日午前中の質疑で、アフガン政府はこうした犠牲など空爆の問題で何の異議も上げていないという答弁が大臣からありましたけれども、現にこういう声上げているんです。ですから、アフガン政府がやめてくれと言うものまで必要だと、こういうお考えでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
要するに、カルザイ政権がやるべき治安維持活動をカルザイ政権が十分にできないので、それを補完的にOEF参加諸国にやってもらうということについて、それ同意をしているかしていないかということの中で、そういう文脈の中で、そのことについてカルザイ政権は異議を申し立てておりませんよということを申し上げたので、全体の活動の中の空爆について、これを無辜の民が殺されるようなことがないようにしてほしいということと、全体のOEF参加国が治安維持活動の維持なんかはもうしてほしくないんだというのとは全然別のことだと思いますし、私が言った文脈上は、それは間違っていることを言ったつもりはございません。
- 井上哲士君
私は今空爆や様々な掃討作戦について先ほどから聞いているんですね。OEF参加国とカルザイ政権の間で犠牲者をどうやって少なくするかという話合いが行われていると言われました。これは先ほど紹介した五月の声明で言われているわけですが、それから半年以上たっているわけで、じゃ具体的にどういう手だてが取られているのか把握されているでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
具体的に私が把握しているわけではありませんが、一つ申し上げますと、例えば海からミサイルを使って攻撃するようなことは激減、激減というかほとんどなくなっているというふうに私は聞いております。
- 井上哲士君
実際にはこの十一月にも市民の犠牲がありまして、十一月の二十六日、多国籍軍が道路建設作業員の野営地を空爆をして作業員十四人が死亡したと、こういう報道もあります。結局収まっていないんです。
この先ほど紹介したCBSの番組は、現地に行って取材をしています。今メディアがなかなか入れないから大変貴重な映像なわけですけれども、今年の三月の四日にカピサ県というところの北にある村で、一家四世代九人が亡くなったというそこに行って、ただ一人残った七歳の男の子に取材しているんですね。これを見ますと、この米軍への砲撃の後、ライフル銃を携えた二人が村の住宅地に入るのを米軍が見たと、それをもって夜間に一時間にわたる砲撃が行われて、しかもその後に二回も空爆やっているんです。空爆が終わって煙がなくなって行ったら、そんなライフルを持った人の姿はなくて、家族が殺されていた、男の子一人残されたと、こういうことが言われているんですね。
私、この間の本会議のときに総理が、この治安活動する上で市民に対して危害を与えるということは、まあそういうことを目指しているわけじゃないけどと言いながら、起こり得ることだと、こういうふうに答弁をされました。これでは、テロ対策といえばこういう無辜の市民の命が奪われても仕方がないと、こういうことにしか私には聞こえないんですけれども、いかがでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
いや、それは、無辜の市民が殺されるということは悲惨なことであり、あってはならないことだと思います。ただ、そういう中でも、いわゆるアルカイダ、タリバンのような勢力の掃討については、カルザイ大統領自身もアフガニスタン国民は過ちが起こることについては理解していると述べていることもまたこれ事実なんです。
ですから、だからいいということではありません。そういうものをできるだけ限りなくゼロに近づけていく努力というのはこれからもしてもらわなければいけないわけでありますが、そういう中で、だからといって、アルカイダ、タリバン掃討作戦を直ちにやめろという意見には私は直ちに賛成しかねます。
- 井上哲士君
過ちはあるというお話でした。
これ、衆議院での議論を聞いておりますと、これは石破さんの、大臣の答弁でありましたが、精密誘導兵器を使ってできるだけ民間人犠牲を少なくしていると、こういう答弁もあったんですね。しかし、今も誤爆はあります、本当に誤爆だけなんだろうかと、こういうことなんですね。
このCBSの番組では現地の米空軍の大佐のインタビューを交えております。ペルシャ湾岸のある国にあって、統合航空作戦センターの副責任者のゲリー・クラウダーという大佐でありますけれども、アフガニスタンとイラク両国の上空で実施される航空戦を管理していると。この人のインタビューも交えてやっているんですが、実際にはとんでもない計算法があると。一般市民の犠牲者というのは事前に見積もられて、それだけの犠牲を出しても空爆を行うかどうかというのは、現場の司令官の責任で決定されると言っているんですね。ですから、誤爆で市民が犠牲になっているんじゃなくて、あらかじめ市民の犠牲というのは前提にして、それでもやっているというのが実態じゃないでしょうか。いかがでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
私はそういうふうには思いません。
やっぱり無辜の民を殺そうというそういうことを最初から思ってやるということはそれはないと思っていますが、いずれにしてもそういう無辜の民が殺されることをできるだけ少なくしなければいけないというのは当然のことであり、OEF参加国とアフガン政府が今協議をしていただいて、そしてそういうふうになっていく、なっていってもらいたいと、そういうふうに思っております。
- 井上哲士君
この番組は、そのインタビューを大臣が答弁に使われましたので、私もこの番組を使って言っているんですけれども、今申し上げたことは、更にもう一人の証言がありまして、アメリカの国防総省でイラク戦争開始時に重要目標設定の責任者だったというガルラスコ氏というのが登場されます。彼は、イラクではどうなっていたかといいますと、その権限が与えられた数は三十人だったというんです。つまりサダム・フセインを攻撃する際に一般市民を二十九人まで殺害するのは問題ない、現場の判断でやれと。三十人以上殺したときにはその時点でブッシュ大統領かラムズフェルド国防長官に報告しなければならないと、インタビューでこうはっきり答えているんですね。
そして、イラク侵攻前に、重要目標であるイラク政府高官を標的に五十回の空爆を勧告したけれども、一人も殺害できなかった、代わりに数百人の一般市民が殺害されたと、こういうことが起きているんです。ですから、誤爆誤爆と言いますけれども、実際には誤爆もありますよ、しかし民間の犠牲者が言わば見積りをされてやられていると。私は、こういうやり方が今国民の前にある中でやはり国民の多くの怒りがあり、それが新しいテロの温床を作っていると思うんです。
へルマンドというところで作戦に従事をしたイギリス軍の大佐が辞職のときにこういうふうに言っています。家を壊され、息子を殺された人々はすべて英軍の敵になってしまった、村を空爆したり機銃掃射をする米軍と違う方法を取るはずだったのが米軍と同じになった、これが人々を自分たちの敵にしてしまったと、こう言っているんです。
この間の議論の中で、和平のテーブルを前進させるのは必要だ、しかし車の両輪でこういう掃討作戦も必要だと、こういうふうに言われました。実際には、こういう無辜の市民を犠牲にする掃討作戦というものがアフガンの政府への求心力を弱め、むしろ反発を強めて、本当に泥沼の方向になっているんじゃないかと、私はそう思います。いかがでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
委員がおっしゃるような側面がないとは私も言うつもりはありませんが、そうだからといってそれじゃオサマ・ビンラーディンを放置しておいていいのか、オサマ・ビンラーディンを取り巻くアルカイダの人たちを放置していていいのか、そしてそれと一体となってテロをやっているタリバン中枢の人たちを放置しておいていいのか。そういうことを考えれば、やはりテロとの戦いというのはけじめを付けなければいけない話だと、私はそういうふうに思います。
- 井上哲士君
我々は、テロの根絶のための取組というのは必要だと思っています。しかし、現実にはそういう今のやっているようなやり方が国民の言わば憎しみの連鎖を広げてテロの温床をつくり、結局市民の中にいるということは、そういうテロリストをかくまったりするような、かくまうといいますか同調するような土壌が市民の中にできている。だからこそ、今これだけ六年間やってもこのテロ根絶というものが私は前進をしていないということになると思うんですね。
私は、本当に今この前進を考えようと思うんならば、日本がやるべきことは、こういう掃討作戦などはやめて、そして和平のプロセスの前進や民生支援にやっていくということを強めることだと思います。国益国益ということを言いますけれども、アフガンの皆さんというのは非常に親日感情が強い、非常に信頼をされているんです。私は、それは日本にとって大変大きな国益だと思います。この間、日本のこの法がなくなるという話がアフガンで様々報道される中で、今までは日本が民生支援活動だけやっているという美しき誤解があったのが、それがなくなってきた、日本もおまえもかと、こういうことを言われるということをたくさんのNGOの方から聞きました。
私は、今やっていることはむしろ日本の国益にとってもマイナスであるし、テロ根絶にとっても役に立たない、これは転換するべきだと、こういうことを申し上げまして、質問を終わります。
- 外務大臣(高村正彦君)
委員長、一言。
- 外交防衛委員会委員長(北澤俊美君)
はい、高村外務大臣。
- 外務大臣(高村正彦君)
一言だけ申し上げますが、日本も掃討作戦などやめてとおっしゃいましたが、日本は掃討作戦はやっておりません。
- 井上哲士君
掃討作戦にかかわるような給油活動をやめてということであります。
以上です。
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