2007年12月20日(木)
外交防衛委員会
- アフガンに派兵している各国で戦略見直しの論議が相次いでいることを示して、米国に掃討作戦の中止を求めるよう求める
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〈午前の参考人質疑〉
- 井上哲士君
日本共産党の井上哲士です。
今日は、アフガンでの戦略を見直す声が派兵各国でも相次いでいることに関連してお聞きをいたします。
イギリスのブラウン首相は十二日の下院での質疑で、反政府勢力の壊滅を目指した軍事中心の手法からアフガン政府と反政府組織との対話を通じて和解を促進させるという戦略に重心を移していくと、こういう考えを明らかにしたと大きく報道をされております。
外務大臣にお伺いしますが、今なぜ派兵国でこういう見直し、戦略見直しの議論が進んでいるとお考えでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
アフガニスタン戦略については、各国による様々な発言があることは承知をしております。我が国がその背景、内容等につき詳細を説明する立場にはありませんけれども、アメリカ、イギリス、NATO等は、アフガニスタンの治安情勢やアフガニスタン政府による反政府戦闘員に対する投降の呼び掛けを含む様々な取組を踏まえ対応していくものと思われるわけであります。
ブラウン首相の演説の中には、現在アフガニスタンにおける英軍兵力は約七千八百名であると、右水準は維持していくということも含まれているわけであります。
- 井上哲士君
これはアメリカ国内でも様々な見直しの声がございます。十一月の二十五日付けのワシントン・ポスト紙は、米政府、アフガニスタン戦争の進展は限定的と認めると、こういう見出しの記事でありますが、この中で、アフガニスタンはどこに向かっているのかという点をめぐる米軍と米情報機関当局者との明確な相違があるということを書いているんですね。軍の方は事実上切れ目のない一連の戦術的勝利を成功とみなしている、しかし情報担当官は戦略的失敗を懸念していると、こういう違いがあるんだということを書いてありますが、こういうようなアメリカ国内での議論については承知されているでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
米国が、アフガニスタンの治安情勢の悪化を受けて、駐アフガニスタン米軍の増強の検討を始めたとの報道もあるわけであります。他方、米国の対アフガニスタン政策に関し、米国務省のケーシー副報道官は今月十七日の定例記者会見において、ブッシュ政権は対アフガニスタン戦略を実施するための計画及び取組を絶えず再検討していると、そう述べつつ、新しい戦略を策定する努力があるとは承知しておらず、むしろ既存の戦略を実施し続けようとする努力があるのみであるとも述べたと、こういうふうに承知をしているわけでございます。
- 井上哲士君
様々な見直しの声や見方の違いがある中でも軍はそういう方向を取っているということだと思うんですね。
ただ、このワシントン・ポストの記事は、過去のどの年よりも多くのタリバンの指導者と兵士を殺害したというNATOの軍の将校の発言を紹介しています。その上で、そういう発言は戦略的な戦いにおける極めて戦術的な見方だという、米軍の元アフガニスタンの駐留米軍司令官の言葉を言っているんですね。つまり、個々の掃討作戦が米軍的には勝利をしたとしても、戦略的に見ればテロの根絶やアフガンの安定につながっていないんじゃないかという、こういうことだと思うんですね。これは、実は今様々いろんなところから出ております。
最近、オーストラリアの新政権のフィッツギボン国防大臣が十五日と十六日の両日に開かれましたNATOや同盟八か国の会議で発言をしておりますが、米軍やNATO軍が率いるアフガンの軍事作戦について、大幅な方向転換をしない限り敗北するおそれがあると、こういう発言をしております。多数のアリを踏みつけているけれども、アリの巣をつぶそうとはしていないと、こうとも述べているわけですね。私はやっぱり、こういう個々の掃討作戦が仮に成功したように見えても、戦略的に見ればアフガンの安定につながっていかない、こういう声が出ている。
こういう戦略の見直しの必要性については、大臣、どうお考えでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
いろいろな見方があると承知をしておりますけれども、先ほど申し上げたのは米国務省のケーシー副報道官の定例記者会見における発言でありまして、直近のアメリカの公式な、公式的な見方であると、こういうふうに考えております。
- 井上哲士君
私、申し上げましたのは、アメリカの国務省がそういう見解を出しているだろうと、しかしイギリスなども、例えばイラクから撤退したんだからもっと増やせというような声もある中で現状維持ということが先ほどございました。いずれにしても、ブラウン首相はそういう和解を促進させる戦略に重点を移していくべきだと言い、オーストラリアの国防相が大幅な方向転換をしない限り敗北するというところまで述べているという、戦略的転換の必要性については日本としてはどう考えているのかということをお聞きしているんです。
- 外務大臣(高村正彦君)
日本とすれば、アフガニスタンに対して従来から、和平プロセス、治安改善、復興の三本柱の同時並行的な達成なしには平和は実現しないとの平和定着構想を打ち出して、東京でこれをテーマとした国際会議を二〇〇三年二月、二〇〇六年七月の二回開催したほか、これらの分野に対して合計千四百億円以上の支援を実施してきたわけであります。
また、二〇〇一年十二月以降、旧テロ対策特措法に基づいて海上自衛隊が海上阻止活動参加各国に対し補給を支援をしてきたわけでありますが、海上阻止活動はアフガニスタンの治安、テロ対策や民生支援の円滑な実施を下支えしているわけであります。このような我が国の取組は各国から高い評価、支持を得ているわけであります。
現在のアフガニスタン情勢に関して言えば、治安については、連合軍やISAFがアフガニスタン政府と連携してテロリスト掃討作戦や治安維持活動を行っているにもかかわらず、タリバンによる活動が引き続き継続していることは懸念される。その一方で、和平プロセスについては、アフガニスタンに民主的なカルザイ政権が発足し統治機構が整備された現在、カルザイ大統領がテロリストとの関連のない勢力との間で国内和平プロセスを推進し始めたこと、さらに、復興については依然道半ばであるが、教育、保健、社会、経済等の各分野において進展が見られ、パキスタンやイランなどから五百万人以上の難民が帰還している。
このような情勢を踏まえて、我が国としては今までどおり、引き続き政治、治安、復興の三分野を同時に進展させることが重要との基本的考え方の下、今後もテロ発生を助長する貧困等の除去や国際テロリズムの防止、根絶のために粘り強くアフガニスタンへの取組を続けていく、そういう考えであります。
- 井上哲士君
給油活動については、この間の質疑の際にも申し上げましたが、アフガンの国民の多くは日本が給油活動に参加していることは知らないという美しい誤解があるというのはNGOの皆さんからも度々出ていることでありまして、むしろ、そうした掃討作戦の支援につながる給油活動をしていたということがこの間報道等を通じて明らかになる中でむしろアフガン国民からの信頼が薄れているということになっているわけでありまして、私は逆ではないかと思うんですが、見直すべき戦略の方向というのはそれぞれ出ておりますが、私は大変一つの方向があると思うんですね。
先ほど紹介しましたオーストラリアの国防大臣の発言でありますが、こう言っているんですね、更に。我々には軍事的な対応以上のものが求められている、それは主にタリバンの穏健派やアフガン社会の他の勢力の心を取り込むことだと、こう述べております。これはイギリスのブラウン首相とも同じ見地だと思うんですね。私は、やっぱり和平の道しか今アフガンの戦乱から救い出す道はないことはますます明瞭だと思うんです。
この間、この問題を質疑する中で大臣も、こういう国内和平プロセスの推進の取組は支援していきたいと、こう述べてこられました。先ほど来、過去の様々なことはあったわけですが、しかし、今こういう新しい局面、そして様々な戦略を変えようという発言が相次ぐような状況が今アフガンにある中で、そしてカルザイなどもそういう和平の方向に足を踏み出していこうという新しい局面の中で、日本が具体的にどう支援していこうとお考えなのか、もう一度お願いしたいと思います。
- 外務大臣(高村正彦君)
アフガニスタン現政権がタリバン等の反政府戦闘員への投降を呼び掛けるいわゆる平和和解プロセスは、和平強化プログラムとして二〇〇五年五月に既に開始されているわけでありまして、二〇〇七年五月までに約三千八百名のタリバンが投降したわけであります。最近もカルザイ大統領は、我々はアルカイダ又はその他のテロリストネットワークに参加していない多数派のタリバンと平和和解プロセスを進めつつある、また、アルカイダ又はその他のテロ団体の構成分子でないタリバンとの対話を望んでいる旨述べ、テロリストと関連のない勢力との間で国内和平プロセスを推進していく決意を表明しているわけであります。
もっとも、これに対してタリバンの報道官は最近も、タリバンがアフガン政府と接触したことはない旨述べている等、カルザイ政権が国内のいろいろな勢力との和平を進めることは困難な道のりとなることが予想されるわけであります。
我が国としては、和平プロセスに対するアフガニスタン政府の取組を支援していきたいと考えておりますけれども、その支援の具体的内容については、まず当事者であるアフガニスタン政府の和解努力の動向を注視しつつ、今後アフガニスタン政府の要請をも踏まえ具現化していくべき、そう考えているわけであります。
正にカルザイ政権が投降を呼び掛けるという形で和平努力しているわけですから、それについてそのカルザイ政権が何をやってほしいかということをよく聞きながらそれをお手伝いするということをやっていきたいと、こう思っています。
- 井上哲士君
私は、日本がお手伝いすべき一番大事なことは、やはりこの無辜の住民を奪ってテロの温床を拡大しているような掃討作戦がそういう和解プロセスの明らかな妨げに今なっていると思うんですね。それをやっぱりやめさせていくということに日本が一番お手伝いすべき中身があると思うんです。
この間、この問題では大臣も、空爆と特に誤爆による被害みたいなものはできるだけ少なくするようにしなくてはならないという答弁もされているわけですが、じゃ具体的に、これやっているアメリカにはどのような働き掛けを日本としてはしてきているんでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
これは正に当事者であるカルザイ政権とそしてNATOとそれからアメリカを含むOEF参加諸国が具体的に、一方ではテロリストたちの掃討作戦をしなければいけない、そして一方では空爆による被害は最小限にとどめなければいけないと、そういう具体的なデータを持っている当事者同士が話を進めているわけでありますから、日本政府は残念ながらこの作戦そのものに参加しているわけではなくて、具体的データも持たないで、抽象的に空爆の被害は少なくしてくださいねと言うだけでは余り意味のあることじゃない。正にカルザイ政権とNATOとOEF加盟国がそれで具体的な協議に入っていると、こういうことでありますから、この協議を見守っていくと、こういうことであります。
私たちは、もちろん空爆の被害あるいはましてや誤爆などということはあってはならないことだと考えているわけであります。
- 井上哲士君
この間の質疑でもあったんですが、五月ぐらいからその協議が始まっているんですが、いまだに同じような事態が続いているわけですね。ですから、私は、当事者じゃないから口を出せないということじゃなくて、しかるべき物を言うべきだと思います。
イスラエルによるレバノン国内のヒズボラの攻撃がありました。イスラエルはこのヒズボラをテロ組織だと言っているわけですね。昨年の七月十二日に国境で紛争があって空爆があったときに、日本はちゃんと外務報道官の談話というのを当時出しております。レバノン空港施設の破壊及び民間人の死傷をもたらしたイスラエル軍の軍事行動は、域内の緊張を高めるものであり、こうした行動は問題の解決に資さないといったものであって、イスラエル政府に対して強く自制を求めると、こういう外務報道官の談話を出しているわけですね。当事者じゃなかったわけです、日本は。しかし、現実にそういう事態が行われているんです。
ですから、イスラエルに対してもそういう市民の被害を起こすような空爆はやめろと言ったんですから、私はアメリカに対してもちゃんと言うべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
全く違う例を出して同じように論ずるというのはいかがなものかと私は思います。
レバノンの中でのイスラエルの攻撃というのは、レバノン政府の全くの同意のない行為でありまして、これは我々は国際社会の一つの紛争として当然口を出してしかるべき、国際社会の一員として口を出してしかるべき話であります。
ただ、空爆そのものについては、カルザイ政権にもいろいろな意見があるにしても、治安関係を維持するためにアメリカに手伝ってくれと、そういう総体的な意味の同意がある中で、空爆による被害をできるだけ少なくしてくれあるいは誤爆はなくしてくれと、そういう具体的な協議を当事者間でしている中で、これは国際紛争ではないわけでありますから、当事者でない我々が口を出すことではないと、そのレバノンの例とは全く違うと、私はそのように思います。
- 井上哲士君
国際人道法というのは、そういう戦争の種別にかかわらず、これひとしく適用されるんですよ。ですから、国連決議が存在するとか国際社会の賛否など、武力行使の正当性の議論にはかかわらず無辜の市民が犠牲になるようなことをやってはならないというのが国際人道法だと思うんですね。イスラエルだってレバノンの空爆においては、あれはヒズボラによる自国兵士の誘拐に対する自衛権を主張したんです、自衛権を主張してやっているんですね。
しかし、そういう戦争や武力行使の正当性の議論にかかわらずこの人道法というのは当てはめられて、市民の犠牲をなくすようにしなくちゃいけないということになっているわけですから、私は、日本もジュネーブ条約の加盟国として同じようにアメリカにも中止を求めることが必要であるし、テロとの戦いだという冠を付ければ人道に反するようなことが起きていてもこれはいいということになれば、私はこれは重大な事態だと思うんですね。日本は、やはり相手がどこであれ、こういう犠牲をなくすようなことでしっかり物を言うべきだと思いますけれども、もう一度いかがでしょうか。
- 外務大臣(高村正彦君)
私は、前々から、空爆の被害は少なくなることが当然望ましいし、まして誤爆などはあってはならないことだということを申し上げていますが、具体的なことがはっきり我々には分からない、もっと正に具体的なことが分かるカルザイ政権と、そして先ほどから言いましているように、NATOとそしてOEF加盟国、アメリカを含む加盟国で具体的にどうそれを少なくしながら治安を良くすることをやろうかという、そういうことを当事者同士で話しているわけで、必ずしも対立構造じゃなくて、一緒にいい方向に持っていこうということで話している中で、私たちが、その事実関係をNATOほども知らない、アメリカほども知らない、カルザイ政権ほども知らない我々が、あそこをこうやった方がいい、こうやった方がいいと言う話ではないと。ただ、私は何度もここで言っていますように、そういう被害は最小限に抑えることが望ましい、誤爆はあってはならないということを申し上げているわけであります。
それで、もう一つ申し上げれば、この間、NATOの事務総長が来られたときに、私から空爆の話についてはいろいろ意見を聞かせていただきました。そして、日本の中にも空爆についてはいろんな意見があるということを率直に申し上げて、そしてその意見を聞かせてもらいました。そのときNATOの事務総長が言っておられたのは、むしろタリバンは正に一般市民、無辜の民を人間の盾として使っているようなことがあると。そして、その人間の盾として使っている一般人に被害を及ぼすような可能性があるときは自分たちはやっていない、空爆をやらないようにしていると。だけれども、家の中に閉じ込めていて、外から分からないようにしていて、被害が出たらそれを写真を撮って公表するような、そういうタリバン側の宣伝工作があって困っているというような話も聞いたということは一応申し上げておきたいと、こう思います。
- 井上哲士君
時間ですので終わりますが、現にカルザイも、この間も紹介しましたように、空爆ストップということを言っているにもかかわらず、現に無辜の市民の犠牲は続いているわけですから、私は日本としてきちっと物を言うべきだということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。
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